セブン&アイH、イオン、中間決算、事業構造の違い!
セブン&アイHとイオン、どちらも小売業界の巨頭であり、今期中間決算の営業収益は、2兆5,591.73億円(0.5%)と2兆5,051.21億円(-0.9%)と良く似た結果となった。数字だけを見ると、どちらがセブン&アイHかイオンかわからない状況であるが、その事業構造は全く違う。この中間決算の詳細な分析については、食品スーパーマーケット最新情報、プレミアム版を参考にしていただくとして、ここでは、その事業構造について両企業の違いを、最新の決算、中間決算の数字をもとに見てみたい。
まずは、セブン&アイHであるが、その他を抜くと、5つに事業が分かれている。その営業収益、構成比、昨対を見ると、コンビニエンスストア事業1兆320.28億円(構成比40.32%、106.6%)、スーパーストア事業9,872.92億円(構成比38.57%、96.9%)、百貨店事業4,431.99億円(構成比17.31%、97.8%)、フードサービス事業416.61億円(構成比1.62%、90.6%)、金融関連事業547.15億円(構成比2.13%、97.3%)という結果である。柱は2つ、コンビニエンスストア事業とスーパーストア事業であり、この2つの事業で約80%となる。
ちなみに、コンビニエンスストア事業であるが、この数字は変動が激しい。その要因は為替相場であり、今回のように円高になると、海外依存度の高いセブンイレブンは大きく影響を受ける。特に、今回の為替レートは91.36円で換算しているが、すでに現在80円台前半まで来ているので、10%前後はすぐ変動することになる。また、損益計算書では、この91.36円で換算しているが、貸借対照表では88.48円であり、細かい調整が入る。同様に中国、元も相場があり、これはスーパーストア事業に若干の影響がでるといえる。
そのセブンイレブンのセブン&アイHへの貢献であるが、営業収益については、圧倒的に海外、アメリカの貢献度が高く、この中間決算では日本が2,781.29億円であるのに対し、アメリカは7,419.39億円と、2倍以上アメリカのセブンイレブンの貢献度が高いのが実態である。これは、日本のセブンイレブンは売上高を計上しているのではなく、いわゆるフランチャイズフィー、加盟店収入を計上しているためである。したがって、円高の影響がコンビニエンスストア事業には大きく跳ね返り、厳しい営業構造となる。
では、営業利益はどうかを見ると、コンビニエンスストア事業1,025.05億円(構成比85.8%、103.5%)、スーパーストア事業34.53億円(構成比2.8%、128.4%)、百貨店事業-10.51 億円、フードサービス事業3.00 億円(構成比0.2、昨年赤字)、金融関連事業151.06億円(構成比12.6%、96.8%)となる。コンビニエンスストア事業のみに依存する利益構造といえる。これも日本とアメリカの関係であるが、日本が900.07億円、アメリカが160.44億円であり、逆転、圧倒的な日本のセブンイレブンの利益貢献度が高い結果となる。
一方、イオンであるが、事業構造は大きく4つに分かれており、その結果は以下の通りとなる。まずは営業収益であるが、総合小売事業2兆339.51億円(構成比69.7%、100.0%)、専門店事業2,579.68億円(構成比8.8%、93.4%)、ディベロッパー事業841.08億円(構成比2.9%、102.7%)、サービス事業5,441.02億円(構成比18.6%、105.3%)となる。圧倒的に総合小売事業、すなわち、GMS、食品スーパーマーケットが営業収益の大半、約70%を占める事業構造となっている。
では、営業利益はどうかであるが、総合小売事業216.40億円(構成比37.4%、1,754.4%)、専門店事業15.72億円(構成比2.7、昨年赤字)、ディベロッパー事業176.35億円(構成比30.4%、103.8%)、サービス事業170.55億円(構成比29.5%、87.1%)という結果である。営業収益では総合小売業が約70%であったにもかかわらず、営業利益では40%弱と、収益の柱となれないことに大きな構造上の課題があるといえ、結果、ディベロッパー事業、サービス事業と、ほぼ均等な利益貢献度となり、3つの事業がバランス良く利益を上げていることがわかる。ただ全体の営業利益率は2.48%であり、セブン&アイHの4.66%と比べるとかなり差があり、全体の営業収益の約70%を占める総合小売事業の不振が響いているといえよう。
こう見ると、セブン&アイHもイオンも規模はほぼ同じであり、どちらも、小売業として総合化を目指しているが、その事業構造は全く違い、特に、収益構造に大きな差があるといえる。セブン&アイHは営業収益はコンビニエンスストア事業とスーパーストア事業の2本柱であるが、営業利益構造はセブンイレブン、それも、営業収益の圧倒的に少ない国内のセブンイレブンに大きく依存する状況であり、極めてバランスが悪い事業構造であるといえる。また、イオンは営業収益は圧倒的に総合小売事業であるが、営業利益はディベロッパー事業、サービス事業を加え、3つの事業がバランス良く利益を上げており、総合小売事業の不振が大きい。
したがって、どちらも、本来の柱、GMS事業に大きな課題を抱えているといえ、GMS事業が営業収益への貢献度が高いにも関わらず、営業利益に結び付かないところに大きな構造問題があるといえ、それを別の事業で補わざるを得ないところに経営課題があるといえる。今後、中長期的な経営戦略として、このGMS問題は避けて通れない大きな経営課題であるといえ、セブン&アイH、イオンがどのように大ナタをふるい、経営改革に本格的に踏み込むか、その動向に注目である。
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