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October 04, 2010

N004:大丈夫か日本の農業?

   今後の日本農業行政の方向性を決める調査データ、農林業センサス2010が農林水産省から9/7に公表され、約1ケ月が過ぎた。今回の農林業センサスは通常は5年に1回の統計調査であるが、10年に1回行われる世界農林業センサスを兼ねており、FAO(国際連合食糧農業機関)が世界的規模で提唱している世界農業センサス要綱に則った、重要な農業の統計調査である。この9/7に公表された内容は速報版であり、今後、数ケ月から1年近くかけて詳細版が公表される予定であるが、現時点の速報版でも十分に日本の農業の現状が把握でき、今後の日本の農業を考える上で参考になる貴重な統計データである。なお、詳細については、食品スーパーマーケット最新情報、プレミアム版でも解説しているので、参考にしていただければと思う。

   マスコミ各社がこの農林業センサス2010が公表された9/7以降、盛んに報道された内容に農業就業人口と平均年齢の数字があった。当時は、ほぼこれ一色といってよい報道内容であり、その他の統計数字があまり取り扱われることはなかった。特に、この内容は農林水産省がサマリーとして公表している、「2010年世界農林業センサス結果の概要(暫定値)、(平成22年2月1日現在)」というタイトルのレポートでもグラフ付きで大きく扱われているため、ここに焦点が当ったものといえよう。

   ちなみに、サブタイトルは「農業経営体数が減少する一方、経営規模の拡大、多角化が進展」であり、2つテーマがあったといえる。ひとつは各社マスコミが報道した農業就業人口の減少と高齢化の問題、そして、もうひとつは経営規模の拡大が進んでいることと、いわゆる農業の6次産業化といわれる農業の多角化が進んでいるという実態である。残念ながら、後者はほとんど取り上げられなかったが、確かに、実際の生データを見ると、後者の傾向も読み取ることができる。

   ここで、再度、各社マスコミが取り上げた最大の関心事であった農業就業人口と高齢化の問題を実際の農林業センサス2010の生データで確認しておきたい。この統計データの集計はExcelで公開されており、誰でもインターネットでダウンロードすることができる。問題の統計データは、Ⅰ.農林業経営体調査の1.全国の(3)のウにあり、この農業就業人口というタイトルでの集計結果である。

   その数字を見ると、農業就業人口は260万人であり、2005年度と比べ-22.4%と衝撃的な数字となっており、しかも、2005年度は2000年と比べ-13.8%、389万人であるので、何と100万人以上の農業就業人口が激減したことである。ちなみに、男性130万人(2005年比-16.6%)、女性130万人(-27.5%)と男女の逆転が見られる転換点の年となっており、今後、女性の農業就業人口の激減が予想される。そして、さらに深刻なのは平均年齢であり、65.8歳(2005年63.2歳、2000年61.1歳)と高齢化が一層進んでいるという結果であったことである。

   これは極めて衝撃的な数字であり、ここにマスコミ各社の関心が集中したのは理解できるが、今回の農林業センサス2010の生の統計データをつぶさに見ると、マスコミ各社ではあまり報道されず、農林水産省のサマリーでも詳しくは取り上げられなかった内容で大きく2つ気になった点があった。1つ目は、260万人の農業生産者、正確には農業経営体167.6件の規模(年商、経営耕地面積)であり、そして、もうひとつは出荷先への変化である。

   まず1つ目の規模であるが、農林業センサス2010では、最大ボリュームは0.5から1.0ha(ヘクタール)の33.2%であり、ついで、0.3から0.5haの19.2%、1.0から1.5haの16.2%となり、1.5ha以下で71.8%となり、大半が小規模農家で占められ、5ha以上で約5%、10ha以上では約3%にすぎないという実態である。また、年商であるが、最大ボリュームは50万円未満であり、31.5%、ついで50から100万円が17.2%、100から200万円が13.5%であり、販売なしを含め72.5%となることである。ちなみに1億円以上は0.3%であるが、ここが唯一2005年度比で増加している層である。

   そして、もう一つは出荷先であるが、最大のボリュームゾーンは農協の66.0%であるが、2005年度比で-20.1%と大きく減少しており、これを実際の農業経営体で見ると2005年度の138.4万件から2010年度は110.6万件と約30万件弱減少していることである。農協の合併問題が浮上するのも頷ける数字である。ついで、ボリュームゾーンを見ると19.6%の消費者に直接販売、いわゆる市場外流通、直売であり、しかも、0.5%であるが伸びている。これは農産物の売上げ1位ではさらに顕著であり、農協は-20.1%に対し、直売は19.0%の伸びとなっている。

   このように農林業センサス2010の生のデータを丹念に読み込んでゆくと、日本の農業の実態が浮かび上がってくるが、農業就業人口が激減し、高齢化が進んでいるという事実もさることながら、それ以上に、マクロに見た日本の農業の構造全体が気になるところである。ここがしっかりしないと、日本の国家戦略である食料自給率のアップも、その存立基盤から揺るぎかねない。日本の農業構造そのものをどう再構築し、生産基盤をどう確立するか、その根本問題が突きつけられた農林業センサス2010の結果であるといえよう。

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