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October 17, 2010

ウォルマート、農業支援に本格参入!

   10/15の日経夕刊にウォルマートの農業参入の囲み記事が掲載された。見出しは、「米ウォルマート、途上国農家から直接調達を拡大」、「15年までに年810億円分」である。その記事の中身であるが、ウォルマートが2015年までに、世界中の中小農家から、年間10億ドル(約810億円)の農産物を直接調達し、世界中のウォルマートの店舗で販売するとのことである。農家数に換算すると、中小規模100万件となるとのことであり、その目標数字を農業技術指導や農機の貸し出しなどを通じ、1農家当たり平均10%から15%の年間収入を伸ばすことに設定したとのことである。

   それにしても1民間企業が100万人の中小農家の支援に乗り出すとのことで尋常ではない経営決断であるといえ、びっくりである。ちなみに、日本の農業就業人口は農業センサス2010によれば260万人であるが、農業経営体は163.1万件であり、100万件はすごい数である。この163.1万件の内、専業農家は45.2万件、兼業農家が118.0万件であるので、日本の全兼業農家分に当たるボリュームとなる。また、10億ドルを100万件で割ると、1,000ドルであり、これが10%から15%の年間収入ということで、逆算すると10,000ドルから15,000ドルとなる。ここがウォルマートの中小農家の中核規模であるといえる。たまたま、先のブログでも取り上げた首都圏、1都6県の約1,000件の直売所約50,000件の農家の売上げが100万円強であるので、直売所での売上げの構成比にもよるが、ほぼ一致するイメージである。したがって、日本に置き換えれば、その対象農家は、直売所をメインに販売している中小農家ということになろう。

   さらに、農業センサス2010を見ると、163.1万件の農業経営体の内、約60%が100万円以下の農業収入であり、300万円まで入れると約80%となる。いかに、日本の農業の規模が小さいかがわかる。したがって、ウォルマートが提示している1,000ドルの収入増は日本でもかなりのインパクトであるといえ、これが世界中となると、さらに、大きな農業へのインパクトであるといえよう。

   さて、ここからは、ウォルマートのニュースリリース、原文に当たってみたい。もちろん英文であるが、最近、Googleの翻訳機能が強化され、原文にやや近い形で日本語になるようになった。短いセンテンスの場合は発音もついており、英語を学ぶ上においても役にたつまでに進化したといえよう。早速、訳して見ると、まず、日経の記事にはなかった点がいくつかある。

   まず、ウォルマートのCEOマイクデゥーク氏のコメントであるが、「世界には1億人以上の人が農業に従事しており、その内、何百万人の農民が1日2ドル以下の生活を余儀なくされている。」という認識である。また、「2050年には世界人口は90億人に達し、少なくとも70%以上の食料の増産をしなければならない。」と付け加えており、この観点からウォルマートが何をすべきかを検討したとのことである。当然、日経の記事でも言及されているが、逆に考えれば、農産物の安定供給がままならない状況がウォルマートに近づいていることになり、既存の流通ルートではなく、独自の安定供給ルートを築く必要があるということにもなろう。

   そして、この認識のもとに、ウォルマートの経営資源を鑑みると、マイクデゥーク氏は、「持続的に農業を支援することにより、ウォルマートは食品産業界において、特に農家にとって決定的な差別化をはかることができる。たとえば、農家の所得向上が図れることはもちろん、農薬、肥料、水の供給を支援することもでき、結果、消費者に新鮮な野菜と果物を届けることができる。」と続けている。具体的には2015年までに100万人の農家に10億円ドルの売上げの機会を提供することに加え、この100万人の農家へ経営育成支援も行い、特に、女性にも力を入れ、10%から15%の所得向上に寄与するこちになろうということである。ちなみに、日本の西友に関してであるが、少し観点が違い、まずは35%の農産物の廃棄物を削減し、同時に、現在15,000件の農家との直接取引を、17,000に増やして行くとのことで、廃棄物の削減にも力を入れてゆくとのことである。中国では有機農産物の直接取引を15%引き上げるとのことであり、各国、様々な取り組みをはじめるとのことである。

   このようにウォルマートが今後本格的な農業支援、特に、中小農家への支援に取り組むとのことである。その目標数字も10億ドル、100万件の農家への支援であるとのことで、具体的である。しかも、アメリカ国内だけではなく、世界全体での取り組みであるとのことで、日本の西友も組み込まれたグローバルな取組みであり、インパクトは大きいといえよう。それにしても、1民間企業が世界的な規模で農業問題に真正面から取り組むのは異例のことといえる。残念ながら、日本ではこれほど巨大な小売業が存在しないので、これほど、インパクトのある農業戦略を打ち出すことはできないが、100万件とはいわず、数10万件の中小農業者の所得向上に関しては、大都市を直売所の拠点として確立できれば可能であるといえよう。その意味で、今回のウォルマートの取組に関しては日本の中小農業者の所得向上にとっては、極めて参考になる取組みであるといえよう。

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