日銀、異例の金融政策、「包括緩和」発動!
10/5、日本銀行の金融政策決定会合において、異例ともいえる金融緩和政策が決定された。すでに、新聞、テレビ等で報道され、実際、10/5の株式市場、為替市場等もこの決定に反応しており、結果として、これまでにないインパクトのある内容であったといえよう。では、今回の日銀の金融緩和政策のポイントは何かを、新聞、テレビ等の報道ではなく、日銀が実際に公表した原点の資料をもとに読み解いてみたい。
まず、今回、びっくりしたのは、(2)の「「中長期的な物価安定の理解」に基づく時間軸の明確化」である。タイトルからして難解な言葉であるが、要は、「物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していく。」ということであり、さらに噛み砕くと、消費者物価指数(CPI)が前年比で1.0%ぐらいの安定的な状況になるまで、ゼロ金利政策を継続するということである。本ブログでも消費者物価指数(CPI)は毎月取り上げているが、この消費者物価指数(CPI)とゼロ金利とがリンクするとは全く予想していなかったことであり、その意味でびっくりである。今後、この観点からも、改めて消費者物価指数(CPI)を見てゆきたい。
ちなみに、消費者物価指数(CPI)は3つの総合指数があるが、今回の日銀が重視しているのは生鮮食品を除いた総合指数であり、最新の8月度は昨対1.0%の下落である。すでにブログでも取り上げているが、今年に入ってずっと-1.0%で横ばいが続いており、これがプラス1.0%になる兆しは全く見えない状況であり、それを目標にして大丈夫なのかとやや心配になる。特に、高校授業料無償化が4月からはじまり、その寄与度が-0.5%前後あり、1.0%になるには実質1.5%のプラスであり、かなりきついのではないかと思う。
この(2)は(1)の「金利誘導目標の変更」と連動しており、これがいわゆるゼロ金利政策である。数字では0~0.1%程度で推移するよう促すとのことで、この状況を消費者物価指数(CPI)が1.0%に安定するまで続けるとのことである。通常はこの2点で金融緩和政策は終わることもあるが、今回は、この2つに、もうひとつ、異例ともいえる(3)「資産買入等の基金の創設」が加わった。日銀もコメントの中で、「こうした措置は、中央銀行にとって異例の措置であり、特に、リスク・プレミアムの縮小を促すための金融資産の買入れは、異例性が強い。」と敢えて言及しており、ここに日銀の強いデフレ克服の決意が感じられる。
具体的にどのくらいの規模の基金が創設されるかであるが、実は、この基金は2つの目的があるという。日銀によれば、「バランスシート上に基金を創設し、多様な金融資産の買入れ、およびこれと同じ目的を有する固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションを行うことが適当と判断した。」とのことである。難解な表現であるが、ひとつは金融資産の買い取りのための基金であり、もうひとつはいわゆる公開市場操作のための基金である。そして、規模であるが、前者が約5兆円、後者が約30兆円であり、合計35兆円程度となるという。ごく簡単にいえば、日銀が約35兆円のキャッシュを市場に放出するということになる。これに政府の約5兆円の景気対策が加わると、合計、約40兆円のキャッシュが市場に出回ることになり、結果、デフレが克服され、物価が上昇、景気も良くなるという読みである。
ここで、最新の日銀の決算書、B/S(バランスシート)を見てみたい。現在、最新は2010年9月20日のものであるが、まず、資本金は1億円である。日銀はその意味で資本金1億円の株式会社である。総資産は124.46兆円であり、純資産は2.67兆円、比率で2.14%と極めて小資本である。そして負債であるが、その大半が発行銀行券、いわゆる日銀券、円であり、76.55兆円(総資産の61.50%)となる。ついで、売現先勘定22.63兆円(総資産の18.18%)、当座預金17.12兆円(総資産の13.75%)となり、この3つで93.43%と大半を占める。ここに今回、基金が35兆円加わることになり、総資産の20%強となり発行銀行券につぐ規模となる。
一方、資産は国債79.85兆円(総資産の64.15%)と、ここが圧倒的な比率である。ついで、貸付金36.12兆円(総資産の29.02%)であり、これで総資産の93.17%と大半を占める。今回は、この貸付金が公開市場操作の項目であるので、ここが最大30兆円増加し、国債並みに大きく膨らむ可能性が高いといえよう。また、買入資産には国債も含まれることから、さらに、国債も最大5兆円増加する可能性もあり、結果、資産が約35兆円増加するものと思われる。
このように、今回の日銀の金融緩和政策はゼロ金利だけでなく、消費者物価指数(CPI)と連動した実質インフレターゲット政策であり、しかも、バランスシートに基金を約35兆円設けて、5兆円を資産買入れに当て、30兆円を公開市場操作に当てるということで、これまでにない複合的な、現時点で日銀が持てる最大のパワーをかけたデフレ克服政策であるといえる。日銀はこれを「包括緩和」と命名したとのことであるが、この「包括緩和」が市場にどのようなインパクトを与え、実際、デフレが本当に克服されるかが焦点となったといえよう。政府の景気対策の5兆円が加わり、ここ数週間、そして数ケ月の間に、どう日本全体の経済が動きだすか、注目である。
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