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November 19, 2010

マルキョウ、2010年9月期、減収減益、財務は改善!

   九州、福岡のマルキョウが2011年9月期の本決算を11/15、公表した。結果は売上高897.95億円(-3.1%)、営業利益17.97 億円(-1.0%)、経常利益19.19億円(0.9%)、当期純利益11.86億円(46.0%)となり、当期純利益は増益となったが、営業段階では減収減益となる厳しい決算となった。ただ、自己資本比率は75.8%(昨年70.2%)となり、極めて高い比率となり、財務は大きく改善した。この自己資本比率は決算公開企業約50社の中では、ヨークベニマルの80.3%につぐ、2番目の高さであり、いかに高い数字であるかがわかる。

   そこで、今期、マルキョウがどのように自己資本比率を改善したのかを、キャッシュフローとB/Sをもとに見てみたい。まず、今期は通常はマイナスとなる投資活動によるキャッシュフローがプラスとなっており、異変が生じている。実際の数字は24.31億円(昨年-15.77億円)であり、明らかに異常値である。その中身であるが、出店関連への投資、有形固定資産の取得による支出は-7.04億円(昨年-15.74億円)と半減し、投資を控えているが、投資は実施しており、この段階ではプラスではない。

   では、何がプラスとなったかであるが、定期預金の払戻による収入が41.34億円(昨年60.32億円)と昨年よりは金額は少ないが、大きく増加している。一方、同時に定期預金の預入による支出を計上しているが、その金額は-11.35億円(昨年-62.34億円)と、昨年と比べ、大きく減少しており、結果、その差額がプラスとなり、投資活動によるキャッシュフローを異例のプラスに転じさせたといえる。しかも、営業活動によるキャッシュフローは28.62億円(昨年20.34億円)と、増加しているので、結果、フリーキャッシュフローは何と、52.93億円(昨年4.57億円)となった。明らかに異常値といえる。

   そこで、この潤沢なフリーキャッシュフローをどう活用したかであるが、財務活動によるキャッシュフローを見ると、-40.13億円(昨年-15.33億円)と、大半を財務改善に回している。その中身は、長短借入金の返済に-37.04億円(昨年-12.89億円)であり、昨年以上の負債の削減を行ったといえる。したがって、有利子負債は41.42億円(昨年78.46億円)と、半減しており、総資産532.10億円(昨年562.40億円)に占める割合は7.78%(昨年13.95%)と半減した。結果、トータルキャッシュフローは12.80億円(昨年-10.75億円)と、プラス、現金及び現金同等物の期末残高も47.04億円(昨年34.23億円)と増加した。

   これが、今期、マルキョウの自己資本比率が増加し、上場食品スーパーマーケットとしては最高の数字を達成した要因といえる。投資を控え、営業活動によるキャッシュフローに加え、定期預金の払い戻しを加え、その大半を財務改善に充てた結果であり、経営者の財務改善への強い意志が感じられるキャッシュの配分である。仮に、来期も同様に財務改善に取り組めば、有利子負債が全額返済でき、自己資本比率は7.78%改善し、80%を超え、ヨークベニマルを超え、日本一となるのではないかと思われる。

   ただ、気になるのは投資を控えているがゆえに、増収の確保は厳しいものがあり、今期減収減益となった営業面の改善が可能かどうかである。そこで、今期の営業利益が減益になった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、78.99%(昨年79.68%)となり、-0.69ポイント改善している。結果、売上総利益は21.01%(昨年20.32%)と上昇した。一方、経費の方であるが、19.38%(昨年18.84%)と、0.54ポイント上昇しており、経費の上昇が見られる。結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は1.63%(昨年1.48%)と改善した。これに不動産収入等のその他営業収入が0.38%(昨年0.48%)加わり、営業利益は2.01%(昨年1.96%)と、率では、増益となった。ただ、売上高が-3.1%と、減収となったため、営業利益高では減益となり、減収減益の厳しい決算となった。

   こう見ると、営業面では経費の上昇が見られるが、それをカバーする原価の改善が図られており、売上高が改善できれば増収増益は構造的に可能といえよう。マルキョウ自身も、「売上総利益の改善を掲げ、販売データの分析など諸施策に取り組んでまいりました結果、当連結会計年度は売上総利益率が21.0%となり前連結会計年度より0.7ポイント改善することができました。次期につきましても、販促の強化、売れ筋商品のフェイス拡大による売り場改善などの諸施策を行い、引き続き売上総利益の改善に取り組み業績予想の数値を達成するよう努力してまいります。」と、コメントしており、原価の改善はさらに進んでゆくものと思われる。

   このように、マルキョウの2010年9月期の決算は減収減益とはなったが、今期は敢えて投資を控え、財務改善にキャッシュを優先的に配分しており、結果、上場食品スーパーマーケットではNo.1の自己資本比率となり、財務の安定が図れた。また、その影響で、売上高はマイナスとはなったが、営業利益率ではプラス、特に、原価の改善が進んでおり、収益性はむしろ改善している。したがって、強固な財務基盤をもとに、成長戦略に転換することはいつでも可能な状況にあるといえ、今後、マルキョウが引き続き、財務の基盤強化を進めるか、成長戦略に舵を切るか、その経営戦略に注目である。

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