ヤオコー、2011年3月期中間、増収減益!
ヤオコーが2011年3月期の第2四半期、中間決算を10/28、公表した。結果は、営業収益1,075.77億円(5.0%)、営業利益43.80億円(-3.6%)、経常利益43.02億円(-4.0%)、当期純利益22.74億円(-12.2%)となり、増収とはなったが、減益となるやや厳しい決算となった。ヤオコー自身は、「個人消費は、経済対策の効果もあって一部持ち直しの傾向にあり、消費者マインドに改善も見られますが、スーパーマーケット業界におきましては、デフレが続くなか低価格志向は変わらず、依然として価格競争・安売り競争が続いております。」との認識で、価格競争が厳しかったとのことである。
そこで、ヤオコーが減益となった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、71.53%(昨年71.38%)と0.15ポイント上昇しており、若干の原価の上昇が見られる。結果、売上総利益は28.47%(昨年28.62%)となった。この28.47%の売上総利益は食品スーパーマーケット業界ではトップクラスであり、2010年度の決算公開企業約50社の本決算で見ると、ベスト5前後となる。平均がちょうど25.0%であるので、この数字を見てもヤオコーが付加価値の高いマーチャンダイジングを実践していることがわかる。
実際、今期のヤオコー単体の部門別収益構造を見ると、生鮮部の粗利は28.54%、グロサリー部は23.38%であり、これに、まさに付加価値の高い惣菜(三味)が49.02%のり、結果、28.73%、連結よりも高い粗利率となる。また、この惣菜(三味)は売上構成比が14.0%と、食品スーパーマーケット業界の中でもトップクラスであり、相乗積を取ると6.86%となり、粗利全体の23.88%、約1/4を占める。いかに、ヤオコーの惣菜が食品スーパーマーケットの商品全体の中で付加価値が高いかがわかる。
ただ、今期ヤオコーは、付加価値を追求し、惣菜を中核にミールソリューションを追求する一方、価格コンシャス、すなわち、価格にもこだわっており、価格に対しては競合を意識した価格帯への修正に入っている。今後、この高い粗利率を維持できるか、今後の数字が気になるところである。この価格コンシャスネスについては、「具体的には価格コンシャスを徹底するという観点から、競合他社の価格調査も踏まえ、従来よりは価格帯を広げ、頻度品の下限価格を引き下げるとともに中心価格帯より少し上のセミアップグレード商品の品揃えも強化し、より広いお客様のニーズに対応できるようにいたしました。」とのことで、プライスラインを含め、価格構造そのものの見直しを行っているとのことである。
一方、経費の方であるが、28.68%(昨年28.46%)となり、0.22ポイント上昇している。これについて、ヤオコーは、「経費削減につきましても、引き続き販売・事務消耗品から店舗施設関係経費まで全般に亘って発注方法、仕様の見直しなど徹底したコスト削減に努め、・・」とのことであるが、残念ながら、若干経費の上昇が見られる。ちなみに、ヤオコー単体で見た場合、先の惣菜(三味)はヤオコーの子会社であるので、これを抜いた場合は23.1%に下がる。惣菜(三味)を加えると、単体では27.4%であるので、惣菜(三味)が粗利への貢献度も高いが、経費への負担も大きいといえよう。また、これも2010年度の決算公開企業約50社の本決算で見ると、平均は25.6%であるので、ヤオコーはかなり高めの経費比率であるといえる。経費をかけて付加価値を極限まで追求するという営業戦略といえる。
結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-0.21%(昨年0.16%)と、プラスから、マイナスへ転じた。原価、経費双方が上昇したことが大きくマーチャンダイジング力に影響を与えたといえよう。これに、ヤオコー特有のNSC(近隣型ショッピングセンー)を主体とした経営構造により、不動産収入等のその他営業収入が4.47%(昨年4.48%)のり、結果、営業利益は4.26%(昨年4.65%)と、減益となった。売上高は新店等の貢献があり、105.05%伸びたにも関わらず、その伸びで営業利益の減少を補えなかったといえ、それだけ、原価、経費ダブルでのマイナスが大きかったといえよう。
気になる今期、本決算の予想であるが、営業収益2,170.00億円(5.1%)、営業利益 91.25億円(6.1%)、経常利益88.85億円(5.0%)、当期純利益49.70億円(3.0%)と、増収増益予想である。ヤオコー自身も、「通期の業績予想につきましては、当第2四半期連結累計期間の業績が、概ね予定通りに推移していることから、平成22年5月6日に公表した期初の予想を変更しておりません。」とのことで、後半、挽回し、増収増益にもってゆくとのことである。
このように、デフレが深刻さを増し、食品スーパーマーケット業界にとっては厳しい経営環境の中、高付加価値を目指しているヤオコーの決算が注目されたが、結果は増収とはなったが、原価、経費、双方が上昇し、減益となるやや厳しい決算となった。ヤオコーもデフレ対策として、今期から価格コンシャスネスを掲げ、競合状況も意識した価格にこだわる価格政策を打ち出しているが、まだ、全体の結果には成果が表れていないようであり、今後、さらに、強く押しすすめる必要があろう。ただ、付加価値追求と価格訴求は相反する課題であり、そのバランスを取るのは極めて難しいマネジメントが要求される。今後、この両立をどうはかり、収益の改善をはかるのか、ヤオコーの後半の動向に注目である。
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