原信ナルスH、2011年3月期決算、増収増益!
原信ナルスHが2011年3月期、中間決算を11/2、公表した。結果は売上高615.04億円(3.7%)、営業利益20.47億円(26.4%)、経常利益20.35億円(32.3%)、当期純利益2.77億円(-64.1%)と、当期純利益は資産除去債務に関する会計基準等の適用により、特別損失が-13.61億円発生し、マイナスとなったが、営業、経常段階では増収増益の好決算となった。原信ナルスHは、この決算時についての経営環境を、「春先の天候不順から一転、当四半期は異常な猛暑となり、お客様の購買行動に様々な影響が出ました。加えて、7月に競合他社6店舗の出店があり、当社グループの出店地域を取り囲む状況も大きく変化いたしました。・・」とのことで、地元、新潟県の競合激化が一層進んでいるとのことである。
ところで、資産除去債務に関する会計基準等の適用に関しての財務への影響であるが、P/L上は特別損失として、13.61億円計上し、当期純利益が2.77億円(-64.1%)と、大きな影響を受けているが、この時点では実際のキャッシュは発生しておらず、キャッシュフローでは、同額が営業活動によるキャッシュフローに計上され、その結果、営業活動によるキャッシュフローは35.64億円と昨年の29.75億円を上回っており、増加した。いわば、キャッシュフロー上は減価償却費と同じ扱いであり、これがP/Lとキャッシュフローとの大きな違いである。
したがって、この中間期の投資活動によるキャッシュフローを見ると、昨年の-6.74億円に対し、今期は-24.19と、約4倍の投資を実施している。その中身は、新規出店関連と思われる有形固定資産の取得による支出が-26.37億円(昨年-6.91億円)と多額の投資となった。当期純利益上は厳しい決算となったが、キャッシュフロー上は昨年よりも潤沢な資金が確保でき、今後の成長へ向けての投資が可能になったといえる。また、財務活動によるキャッシュフローも-7.21億円(昨年-21.56億円)と大きく抑えており、結果、内部留保も4.23億円(昨年1.44億円)と増加した。P/L上は当期純利益が大きく減少したにも関わらず、キャッシュフローはむしろ増加しており、結果、前期と比べ、成長戦略への多額の投資が可能となったといえ、経営的には今期の中間決算は前期よりも積極的な経営を実践しているといえる。
さて、原信ナルスHの営業利益について、26.4%と大幅な増益となったが、その要因を原価、経費面から見てみたい。まずは原価であるが、73.74%(昨年73.74%)と、偶然の一致であろうが、小数点以下2桁まで一緒である。この点について、原信ナルスHは、「当社グループの食品製造加工機能や出店地域での圧倒的な販売力を活かして、おいしく、しかも、毎日低価格で販売できる商品を開発し、他社との差別化を図りました。・・」とのことで、これら商品開発が原価維持に寄与したものといえよう。結果、売上総利益は、26.26%(昨年26.26%)となった。
一方、経費の方であるが、22.87%(昨年23.59%)となり、0.72ポイント減少しており、経費の削減が進んでいる。これについても、原信ナルスHは、「チラシ広告の実施方針見直し、消耗品や什器関連に関する調達価格見直しと管理の徹底、作業割当の精度向上による人件費の適正化等に一層の取り組みを行い、諸費用削減に努めております。」とのことである。ただ、「猛暑の影響から、四半期累計期間で水道光熱費6.5%、修繕費が17.9%それぞれ前年同期に比べ増加いたしました。また、ガソリン価格の上昇影響で、配送費は16.3%前年同期に比べ上昇いたしました。」とのことで、上昇した経費もあったが、全体としては、
経費の削減が進んだといえる。
結果、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は3.39%(昨年2.67%)となり、大きく改善した。原価は横バイであったが、経費削減が寄与し、利益を押し上げた形である。原信ナルスHの場合は、その他営業収入が計上されていないため、マーチャンダイジング力=営業利益となり、これが営業利益を押し上げた要因である。
ちなみに、原信ナルスHの客数、客単価等であるが、現在、65店舗あるが、平均1日当たりの客数は約2,800人(昨対103.2%)であり、客単価は1,761円(昨対100.3%)である。やや客単価が伸び悩んでいるといえ、その中身、PI値は1043%、平均単価168円である。客単価よりも、客数に重点を置いた営業構造であるといえ、平均的な食品スーパーマーケットと比べ、かなり客数が多いのが特徴といえる。
このように、原信ナルスHの2011年3月期の中間決算が公表されたが、増収増益の好決算であったといえ、特に、経費削減が大きく進んでおり、これが今期の利益を押し上げたといえる。ただ、原信ナルスH自身もコメントしているように、競合の食品スーパーマーケットの出店が増加し、経営環境は厳しさを増し、これにデフレも拍車をかけ、価格競争が激しくなっているという。したがって、原価を改善するのは容易ではなく、今期も昨年と同じ数字となり、この面からの利益の改善は厳しさが増しつつあるといえよう。残された後半、どこまで経費を削減し、原価を維持できるか、今後の原信ナルスHのマーチャンダイジング戦略に注目である。
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