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November 15, 2010

N009:直売所と食品スーパーマーケットの青果の違い!

   九州、福岡へ飛んだ。直売所関連の調査である。1泊2日の調査であるが、前回の北海道同様、中身の濃い調査となった。特に、木の花ガルテンでは1号店、大分県の大山店のレストランで矢羽田組合長へヒアリングをさせていただき、翌日には福岡の明野店へ朝一番にお邪魔し、商品の搬入から、陳列、在庫の引き取りまでの一連のオペレーションをつぶさに視察させていただいた。その詳細については、いずれ、調査報告書の中でまとめる予定であるが、ここでは、直売所と食品スーパーマーケット、八百屋との青果の違いについて改めて考えて見たい。

   すでに、本調査の中で、数多くの文献を読み、直売所1,000件以上の個別データを収集分析し、数千件の消費者アンケートを読み、数百人の生産者ヒアリングを確認し、そして、数10件の現地調査を行ったが、これらを通じて直売所の実態が明確になるに従い、食品スーパーマーケット、そして、八百屋等との青果の違いが決定的なものであると確信しつつある。一言でいえば、直売所には商品管理がない。あるのは生産者管理のみである。

   したがって、極論であるが、直売所にはマーチャンダイジングは存在せず、あるのは、生産者の需要創造を支援する、新たな流通システムともいえる実態である。一見すると、トマトがあり、きゅうりがあり、ほうれんそうがありと、これら青果物が直売所においても、食品スーパーマーケットにおいても、八百屋においても同じように販売されているように見えるが、その本質は180度違い、似て非なるものである。同じトマトであっても、直売所のトマトは極論すれば無限にあるが、食品スーパーマーケット、八百屋のトマトは有限である。せいぜい数種類が限度であり、それ以上増やすには、かなりの努力が必要である。

   なぜ、こうなるのか。その本質は、商品に対しての根本的な捉え方に違いがあるからであるといえよう。食品スーパーマーケット、八百屋においてはトマトという商品を考えた場合、トマトの種類、大きさ、色、形、食感、糖度、鮮度など、商品を様々な要素に分解し、トマトのマーチャンダイジング戦略を決定し、その商品を仕入れようとする。そして、そのために、バイヤーが市場に仕入れにゆき、ない場合は、産地めぐりをし、その目的のトマトを見つけ出すことになる。

   一方、直売所では、そもそもトマトという商品管理をしていない。トマトを種類、大きさ、色、形、食感、糖度、鮮度などに分けることもない。意味がないからである。あるのは生産者のみであり、誰が生産したトマトであるか、この一点のみの管理である。種類も、大きさも、色も、形も、食感も、糖度も、鮮度も関係ない。誰が生産したトマトかが問われるのみである。したがって、直売所にバイヤーは存在しない。そのような組織もないし、そのような組織をつくる必要もない。強いてあげれば、トマトを生産している農家、個人を探すことが最大の課題であり、トマトを探すことが課題ではない。

   食品スーパーマーケット、八百屋ではトマトの品揃えを検討することが、売上げアップの課題であると信じ、消費者が好むトマトを見つけ出そうとする。そして、あらゆる消費者の需要にこたえるべく、可能な限りのトマトの品揃えを増やそうとする。これがトマトのマーチャンダイジングであり、結果、売上げアップを目指すことになる。これに対して、直売所はトマトの品揃えを増やそうとはしない。増やすのはトマトの生産者であり、その生産者が創意工夫を行い、消費者の好みにあうトマトを開発してくれることを期待する。結果、トマトの生産者が増え、それぞれのトマトの生産者が切磋琢磨し、結果、トマトの品揃えも増え、売上げアップを目指すことになる。

   トマトを含め、青果物という観点で見た場合、食品スーパーマーケット、八百屋は青果物において、数百種類の品揃えを確保しようとマーチャンダイジング戦略を検討し、実践に移してゆく。これに対して、直売所の青果物は、数百人の生産者を確保し、それらの生産者の創意工夫、切磋琢磨により、様々な商品改善、商品開発が起こり、結果、売上げがあがることを期待する。同じ売上アップを目指していながら、全く、その方向、手段が違うことに驚かされる。

   このように、食品スーパーマーケット、八百屋と直売所は同じトマトを扱いながら、その本質が全く違い、似て非なるトマトを販売しているといえる。トマトそのものは一見すると違いが見えないが、売場に置かれるまでの、プロセスが全く違い、商品戦略から選ばれたトマトであるか、生産者戦略から選ばれたトマトであるかの決定的な違いがある。結果、商品戦略から見たトマトは生産者を問わないが、生産者戦略から見たトマトは生産者に徹底的にこだわり、商品戦略を問わないことになる。商品戦略を生産者に全面的に委ねることになるといえる。これが直売所の本質であり、食品スーパーマーケット、八百屋との決定的な違いであるといえよう。

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