市場シェアと金額PI値(インストアシェア)について
いまから約20年前、1992年10月、市場シェアと金額PI値(インストアシェア)が繋がった。本来、この2つは簡単につなげることができない。市場シェアは文字通り、市場におけるシェアであり、金額PI値(インストアシェア)とは無関係で存在している。一般に、計算式はマーケットサイズ×商圏人口×シェアで表すことができ、市場全体のマーケットサイズを算定し、これに商圏人口を掛け、そこからシェアを推定する。ここには、金額PI値(インストアシェア)の入る余地はなく、すべて、アウトストア、まさに、市場において決まる数字である。一方、金額PI値(インストアシェア)は、市場とは無関係に決まる指標であり、インストアの売上高を客数で割って表す指標である。金額PI値(インスとアシェア)は、顧客1人当たりの売上高であり、これをカテゴリー別に算出すれば、そのカテゴリーに属する商品に関してのシェアは、カテゴリー全体から割れば算出できる。
この2つの指標は従来、別々に算出され、2つの関係を結びつける方法はないと思われていた。したがって、メーカーは市場シェアを使いマーケティング戦略をつくり、小売業へ様々なアプローチをしているのに対し、小売業は金額PI値(インストアシェア)を使い、自社のマーチャンダイジング戦略をつくり、メーカーに働きかけている。2つのアプローチは似て非なるもの、これが商談という場でぶつかり、双方理解不能の中で、マーケティングとマーチャンダイジングが交錯し、何らかの妥協点を見出し、商談が成立するという構図である。
しかも、いまでも見かけるが、小売業の方も、自社の販売計画を立てる時には、意外なことに、市場シェアを使っている場合もある。これは家計調査データや様々な統計データを駆使し、カテゴリーごとのマーケットサイズを算定し、これに自社の商圏人口を掛け、自社のカテゴリーの売上高で割って現状の推定シェアを算出する。そして、その数字を前提にランチェスター理論を当てはめ、地域一番店を目指すために、どのくらいまで売上高が望めるかをはかり、販売計画に活かしている。まさに、メーカーの市場シェアの応用ともいえる。
ただ、小売業が本来立てるべき販売計画は金額PI値(インストアシェア)に基づくべきであり、ここから販売計画を立てるのが無理のない手法といえる。これは、売上高を客数と金額PI値(インストアシェア)に分けて、それぞれの目標数字を過去の数字、自社の他店の数字、入手可能な他社の小売業の数字等を参考にし、算定する方法である。この手法を使えば、部門、カテゴリーだけでなく、単品の販売計画を策定することも可能であり、ここから、様々なマーチャンダイジング戦略を策定することもできる。しかも、金額PI値(インストアシェア)は、PI値×平均単価に分けることも可能であり、ここから、プラスラインの設定、販売数量の算定もでき、販促、発注、物流計画の策定も可能となる。
このように、商品の販売計画には2つのアプローチがあり、メーカーが主に使うアプローチが市場シェアからのアプローチであり、マーケティング的手法である。一方、小売業が主に使うのが金額PI値(インストアシェア)からのアプローチであり、マーチャンダイジング的手法である。そして、この2つは、従来、交わることがないと思われ、別々の手法として、メーカーはメーカーの中で、小売業は小売業の中で活用されてきたといえる。
ところが、一見、この交わらないこの2つの手法は、実は深い関係にあり、見事に融合することができる。それを発見したのが冒頭の1992年10月のことである。どのように結び付くかであるが、まず、どちらも販売金額は共通である。したがって、どちらのアプローチもこの販売金額を算出するための手法であり、その指標には共通点があるはずである。メーカーは販売金額をマーケットサイズ×商圏人口×シェアと表す。一方、小売業は販売金額を金額PI値(インストアシェア)×客数と表す。したがって、この2つをつないで見ると、販売金額=マーケットサイズ×商圏人口×シェア=金額PI値(インストアシェア)×客数となる。
そこで、よく、この2つを見ると、マーケットサイズ=金額PI値(インストアシェア)であり、商圏人口×シェア=客数であることがわかる。ただ、メーカーはマーケットサイズ×商圏人口を市場規模として、これにシェアを掛けて販売金額を算出しているが、これをマーケットサイズと商圏人口×シェアに分ければ、まさに、小売業の金額PI値(インストアシェア)と客数に対応可能となり、双方の算出した販売金額をメーカー用、小売業用に翻訳することができる。
このように、実は市場シェアと金額PI値(インストアシェア)は全く同じものであり、販売金額を市場から見て算出するか、小売業の店内から見て算出するかの違いである。しかも、名前は違うが、マーケットサイズは金額PI値(インストアシェア)のことであり、商圏人口×シェアは客数のことであり、双方は同じ指標を、名前を変えて活用していただけであり、本質は同値、同じものであるといえる。したがって、双方が双方の指標を理解し、販売金額の目標の数値を共有すれば、商談がうまく運ぶはずであり、無理のない販売計画を双方が立案し、さらに、そこから販促計画、物流計画、生産計画へと落としてゆくことができるのではないかと思う。
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