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November 22, 2010

食品スーパーマーケット、中間決算、新聞記事!

   日経MJ11/19、日経新聞11/20、食品スーパーマーケットの中間決算の評価について、対照的な記事が掲載された。先に公表された日経MJの見出しは、「食品スーパー10年度中間決算、猛暑効果は限定的、価格競争で粗利率悪化」、「マルエツなど4社、営業2ケタ減」との厳しいトーンの記事である。一方、翌日に掲載された日経新聞の見出しは、「食品スーパー、収益が改善、主要17社、今年度15社が経常増益に」、「低コスト経営で高収益、販売管理費圧縮」という、収益改善のトーンの見出しである。

   いったいどちらが正しいのだろうか、どちらの記事も同じ、食品スーパーマーケット業界の2010年度の中間決算の結果を前提としての記事であり、取り上げた食品スーパーマーケットも、ライフコーポレーション、マルエツ、アークス、カスミ、いなげや、ヤオコー、ベルクと7社が共通であり、同じP/L(損益計算書)をもとに記事が書かれている。であるにもかかわらず、見出しのトーンが日経MJは悪化と日経新聞は改善と対照的なものとなり、両方を同時に見ると、混乱してしまう内容である。

   なぜ、同じ食品スーパーマーケットのP/L(損益計算書)を基にした記事であるのに、このような対照的な記事となるのか、不思議である。一般に同じ数字に対しての解釈が違う場合は、その数字の解釈そのものに問題があるのか、あるいは、その数字が2重に解釈できるかであるが、今回の場合は、記事を読む限り、後者のように思える。食品スーパーマーケットのP/L(損益計算書)は2重の評価を含んだ要素があり、どちらに焦点を当てるかにより、良くも悪くもなるということがたまたま起こり、日経MJは悪い面を取り上げ、悪化のトーンの記事となり、日経新聞は良い面を取り上げ、改善のトーンの記事となったと思われる。

   また、双方の記事で取り上げた主要食品スーパーマーケットのP/L(損益計算書)の数字を見ると、日経MJは売上高と営業利益の昨対比較、日経新聞は売上高と経常利益の昨対比較と、利益の焦点の当て方が違う。決算短信、有価証券報告書等で公開されている食品スーパーマーケットのP/L(損益計算書)には、利益面では3つの利益がある。日経MJが記事で取り上げた営業利益、日経新聞が取り上げた経常利益、そして、当期純利益である。このどれに焦点を当てるかで、中身はかなり変わってくる。営業利益は比較的マーチャンダイジングの結果を反映するが、経常利益は営業外収入、支出等が加わり、マーチャンダイジングの要素が薄れる。さらに、当期純利益に関しては、特別損失などが加わり、さらに、マーチャンダイジングの要素から遠ざかった利益となる。

   今回の記事は、日経MJが営業減益に焦点を当て、悪化のトーンを出しているのに対し、日経新聞は経常利益に焦点を当て、改善のトーンを出しており、食品スーパーマーケットの利益の焦点の当て方に違いがあり、評価が対照的になったことも大きいといえよう。ただ、記事の中身をつぶさに読んでみると、実は、評価がわかれた要因は、P/L(損益計算書)では、公開されていない利益の解釈の違いにあったように思われる。

   実は、食品スーパーマーケットには、もうひとつ、第4の利益が存在している。本ブログでも取り上げているマーチャンダイジング力である。これは、営業利益の前にある利益であり、原価(粗利)と経費で決まる、商品売買から得られる、まさにマーチャンダイジング戦略の結果の利益である。営業利益はこれに不動産収入、物流収入等のその他営業収入が加わるため、実は、原価(粗利)、経費の利益が撹乱されてしまい、食品スーパーマーケットのマーチャンダイジング力を正確に評価することができない。

   今回の日経MJ、日経新聞の記事の中身を見ると、日経MJは営業利益というよりも、粗利率、すなわち、原価(粗利)に焦点を当てているのに対し、日経新聞は販管費、すなわち、経費に焦点を当てており、評価が対照的になったものと思われる。なぜなら、今期の各食品スーパーマーケットの中間決算のマーチャンダイジング力を見ると、原価が上昇(粗利が悪化)し、経費が減少(販管費圧縮)、結果、差し引き、マーチャンダイジング力が改善しているケースが比較的多いからだ。

   したがって、粗利に焦点を当てれば悪化、経費に焦点を当てれば改善ということになり、最終的にマーチャンダイジング力、差し引きはというと、改善がやや多いという状況であるといえる。食品スーパーマーケットの利益は原価(粗利)、経費の一方だけでは評価が難しく、差し引き、マーチャンダイジング力の利益で評価すべきであり、原価(粗利)、経費のバランスをどうとるかがマーチャンダイジング戦略そのものといえよう。

   こう考えると、日経MJも日経新聞もどちらもある意味、正しい評価ともいえるが、経営は常にバランスであり、もう一歩踏み込み、マーチャンダイジング力ではどうなのか、さらに、その他営業収入を加えた営業利益ではどうなのか、そして、経常利益、当期純利益ではどうかと利益を詰めてゆけば、今回の記事とは違ったトーンの記事になったのではないかと思う。それにしても、改めて、数字の解釈、そして、その評価、特に、経営に関しての評価は、難しいものであると思う。

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