N008:くるるの杜(もり)を見る!
直売所関係の調査事業の一環で11/1、11/2と北海道に飛んだ。目的は北海道庁へのヒアリング、札幌市役所へのヒアリング、そして、北海道の生産者へのヒアリング、さらに、札幌市、および札幌市郊外の農産物直売所へのヒアリングと視察である。1泊2日の行程、朝一の飛行機でゆき、最終で帰るという慌ただしいスケージュールであったが、成果は十分、充実した調査となった。おいおい、本ブログでも取り上げてゆくつもりであるが、今回は、この調査の中で最も印象に残った直売所、くるるの杜(もり)について取り上げてみたい。
農産物直売所の調査については、いま話題の、札幌市のど真ん中、狸小路にあるHUGも興味深い直売所である。ここでは、店長に約1時間ヒアリングさせていただき、HUGオープンからこれまでのおいたち、現状の営業、そして、経営状況、今後の課題等をお話いただき、かなり活発な議論をもさせていただいた。これについても、いずれ、本ブログでも取り上げてゆきたいと思うが、今回は、くるるの杜(もり)、恐らく、現時点では、日本で最も完成度が高く、かつ、北海道ならでのスケールの大きさ、そして、雄大な夢、構想をもった直売所であるといえ、取り上げてみたい。
このくるるの杜は、ホクレンが総力をあげて、今年の7月にオープンした農産物直売所を核にした農業体験までできる一大農業アミューズメントパークのような施設である。ホクレンの平成22年度の投資計画の中では直売所、農村レストランなどの固定資産取得に9億3,000万円が計上されているので、この大半がくるるの杜に投資されたものといえよう。運営費等を加えれば、10億円プロジェクトといえ、一直売所への投資金額としては、異常値である。ただ、実際にくるるの杜へ行ってみると、10億円かかっても、けっしておかしくない規模であり、納得ができる。
くるるの杜の概要であるが、敷地全体面積は176,561平米(約5万坪強)であり、歩いて回れるような広さではない。この広大な土地に農産物直売所380平米(約115坪)が核店舗としてあり、さらにもう一つの核店舗が農村レストランであり、150席ある。この2つだけの施設だと約5万坪の広大な敷地面積を埋めることは到底できないが、ここを埋めるのが体験農場10,000平米(約3,000坪)、市民農場120区画、ビニールハウス(冬場の体験農場などに使用)、たんぼ、多目的ハウス、多目的広場、そして、312台の駐車場がある。これでも、まだ、敷地面積は埋まらないが、おそらく、今後、さらに、農場、他の施設等を増加してゆくのではないかと思われる。
したがって、直売所自体は約100坪強であるので、直売所としては、中型クラスといえ、けっして、大きな直売所ではないが、この広大な複合施設とともに配置されると、食品スーパーマーケットのNSC(近隣型ショッピングセンター)と、ほぼ同じコンセプトであるといえ、NDS(近隣型複合直売所)という新たな直売所の都市近郊における業態がホクレンにより、開発されたともいえよう。おそらく、現時点ではまだここまで完成度の高いNDS(近隣型複合直売所)はないのではないかと思われ、今後の直売所の1つの時代をつくるのではないかと思う。
通常、直売所の運営はJA、行政、第3セクター、生産者、民間企業等が行うが、いずれが運営主体になっても、ここまで大がかりな投資をすることはまず難しいといえる。今回、通常ではありあえないようなことが起こったのは、運営主体がホクレンという強大な組織が本格的に動いたからといえよう。ホクレンはひとことでいえば、北海道の農協により組織された連合会であり、130会員からなり、出資金201億円、総取扱高1兆4,734億円(平成21年度実績)という、巨大な組織である。経常利益は61.48億円であるので、総取扱高対比0.41%と利益率は低いが、扱高は大きい。資産も9,663.96億円と1兆円近い資産を持ち、今年度の投資額も74.39億円と経常利益以上の投資であり、積極的である。この投資額にくるるの杜、約10億円が含まれている。
したがって、ホクレンという、これだけ、巨大な組織だからこそできた投資であり、直売所のNDS(近隣型複合直売所)であるといえよう。実際、直売所で商品を見て見ると、通常の直売所とは違い、生産者の名前に交じって、JA名がある野菜、果物が数多くある。したがって、流通ルートも通常の直売所では見られないJAが集荷し、市場へ出さない商品であるといえ、いわば、市場外流通、もっと正確にいえば、規格外市場外流通ともいえ、ある意味、直売所革命、新たな小規模農家のための農産物の流通ルートの登場ともいえる。
このように、くるるの杜はホクレンが総力を挙げて取り組み、直売所の概念を打ち破り、NDS(近隣型複合直売所)という新たな直売所業態を構築したといえよう。ホクレンというJAの連合会であるがゆえに可能であったといえ、また、商品戦略も各JAが集荷した、いわば、市場流通に加え、新たに規格外市場外流通市場を作り上げたといえ、これまでの私的な直売所が、このくるるの杜によって、はじめて認知されたともいえる。その意味で、くるるの杜は直売所という業態が新たな段階に踏み込んだ転機となる直売所ともいえ、今後の動向、そして、全国的なうねり、広がりになってゆくのではないかと思われる。それにしても、改めて北海道は広く、大きいと感じた。
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