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November 09, 2010

キャッシュフローの絶妙な配分とは?

   キャッシュフローには企業経営にとって、極めて重要な経営決断が反映されている。このキャッシュの配分如何で今後の成長が決まってしまうし、財務の改善がどのように図られるかも見える。さらに、配当を見れば、いかに、株主を重視しているかもわかる。しかも、この決断は最終的には経営者が自ら行うために、経営者の意思が最も反映される財務諸表のひとつであるといえ、経営者の微妙な心のゆれ、心理までが読み取れる指標であるといえる。では、このキャッシュフローに最適な配分は存在するのか、存在するとすれば、それはどのような配分比率なのかを、実際の決算数値から読み取ってみたい。

   決算数値は、決算公開企業約50社の2010年度の本決算、必要に応じて、2011年度の中間決算をも参考にし、その絶妙な配分比率を読みとってみる。まず、キャッシュフローであるが、大きく、3つに分かれる。キャッシュインとしての営業活動によるキャッシュフロー、これが配分の原資となる。そして、このキャッシュを投資活動によるキャッシュフローで配分する。ここが1つ目の配分であり、ここに経営者の成長戦略への意思が強く反映される。食品スーパーマーケットの投資活動によるキャッシュフローは、ほぼ100%が固定資産、敷金保証金等への投資であり、その大半は新規出店と考えられるので、投資活動によるキャッシュフロー=新規出店=成長戦略といっても過言ではない。

   この投資活動によるキャッシュフローを営業活動によるキャッシュフローから引いたものがフリーキャッシュフローであり、これが財務活動によるキャッシュフローに配分される。財務内容が良好な企業は、その大半を配当と内部留保に回すことができるが、財務内容が厳しい企業は財務改善にこのキャッシュを回さざるをえなく、特に、有利子負債の返済に回すことになる。さらに、財務内容が厳しい場合には、キャッシュを有利子負債を通じて、新たに調達することもあり、これを投資活動によるキャッシュフローに逆流させることもある。ただ、経営的にはますます厳しい状況に追い込まれかねず、ここにも経営者の心理が強く表れることになる。また、有利子負債を調達せず、内部留保を取り崩す場合もあり、この財務活動によるキャッシュフローには様々な選択肢があり、どの選択肢を取るかも、経営者の決断にかかっており、ここにも経営者の心理が強く反映される。

   そこで、実際の数字であるが、決算公開企業約50社の2010年度の本決算を見ると、1社1社はバラバラなキャッシュフローであるが、全体の合計数字を見てみると、食品スーパーマーケットとしての黄金律とでもいうべき、絶妙なキャッシュの配分の状況が浮かび上がる。その数字であるが、まずは、営業活動によるキャッシュフローであるが、276,861百万円であり、これは、売上高対比3.7%となる。その大半が当期純利益と減価償却費であるといえ、この2つが食品スーパーマーケットのキャッシュの源泉となる。

   さて、このキャッシュの内、何%を投資キャッシュフローに配分しているかであるが、-187,497百万円であり、これは営業活動によるキャッシュフローの67.7%となる。すなわち、営業キャッシュフローの約70%が投資に振り向けられている。その投資であるが、食品スーパーマーケットの場合は、先にも見たように、ほぼ100%が新規出店関連、すなわち、有形固定資産の取得と敷金保証金等への配分である。この事実を見ても、食品スーパーマーケットの投資=新規出店といっても過言ではなく、=成長であり、食品スーパーマーケットは営業活動から得られるキャッシュの約70%を成長戦略への投資に配分しているのが実態であるといえる。

   では、残り、約30%が財務活動によるキャッシュフローとなるが、財務活動へのキャッシュをどのくらい配分しているかであるが、-69,830百万円であり、これは営業活動によるキャッシュグローの25.2%であり、約25%となる。その中身であるが、大よそ営業活動によるキャッシュフローの15%が有利子負債の返済に回され、約10%が配当に配分されているのが実態である。したがって、食品スーパーマーケットの財務活動によるキャッシュフローは有利子負債の返済と配当に大半が配分されるといえ、その比率は、営業活動によるキャッシュフローの約15%、約10%であるといえる。そして、残りが内部留保ということになり、差し引き、約5%となる。

   このように、食品スーパーマーケットのキャッシュの流れ、そして、その配分比率は、営業活動によるキャッシュフローの約70%を投資、その大半を新規出店、すなわち、成長戦略に配分し、残った約30%の内、約15%を財務改善に配分し、約10%を配当に回しているといえる。そして、最終的に残った約5%を内部留保し、キャッシュを増やし、財務体質の強化を図っているのが実態といえる。これが決算公開企業約50社のキャッシュフローの実態であるといえ、食品スーパーマーケットを経営する上でのキャッシュの配分の黄金比率といえよう。個々の食品スーパーマーケットを見ると、かなりバラツキはあるが、全体で見ると、このような絶妙な配分となり、実に興味深い実態である。

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