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December 19, 2010

顧客IDから見た金額PI値の本質、イノベーションへ!

    ここ最近、ID-POS分析を実施する機会が増えた。ID-POS分析は通常のPOS分析と違い、顧客IDを把握することができることが最大の違いである。その結果、これまでのPOS分析では見えなかった新たな世界を垣間見せてくれる。そして、その新たな世界を見ることによって、これまでのマーチャンダイジングにない新たな視点を加えることができ、これまでは思いつかなかった新たな仮説をつくることができる。ただ、ID-POS分析は全く新しい分析ではなく、これまでのPOS分析を包み込む分析であると位置づけた方が良く、従来の仮説をID-POS分析で検証することもでき、さらに、従来の仮説以上の新たな仮説をつくることができるという方が実態に近いといえよう。

   その象徴的なケースが金額PI値の位置づけであろう。金額PI値はこれまでのPOS分析では検証の判断となる最終指標であり、金額PI値が上がった場合は検証結果が正しく、下がった場合は正しくないと判断してきた。ところがID-POS分析では、仮説の検証結果をID金額PI値で判断することになる。ID金額PI値が上がった場合は仮説が正しかったと判断し、下がった場合は正しくなかったと判断することになる。

   ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値であるので、金額PI値はID金額PI値の一構成要素となるためである。この数式が成り立つために、仮に、金額PI値が上がっても、ID客数PI値がそれ以上に下がれば、当然ID金額PI値は下がることになる。逆に、金額PI値が下がっても、ID客数PI値がそれ以上に上がれば、ID金額PI値は上がることになり、必ずしも、ID金額PI値は金額PI値に左右されないことになり、従来のPOS分析の検証結果とは正反対になることが起こる。

   ここで、ID客数PI値はレシート/IDのことであり、頻度であるといえ、顧客の購入頻度を表すID-POS分析特有の指標である。ごく単純化すれば、従来のPOS分析とID-POS分析の違いは、この頻度にあるといっても過言ではなく、この頻度を数字として把握できる点がID-POS分析のID-POS分析たるゆえんであるといっても過言ではない。

   では、実際、そんなことがあるのかというと、実はよくある。たとえば、店舗の金額PI値、いわゆる客単価を分析すると郊外型の店舗の方が都心型店舗と比べ、高くなる傾向が強い。それは金額PI値=PI値×平均単価であるので、郊外型の店舗ほど、品揃えも多く、また、まとめ買い等が多いことがその原因であるといえる。一方、都心型店舗は店舗面積も限られ、品揃えも十分でなく、まとめ買いも発生しにくいので、金額PI値は低くなる傾向がある。

   そこで、ID金額PI値を同様に算出してみると、これが見事に逆転するケースが続出する。特に、1ケ月、3ケ月、6ケ月、1年と時間が立つにしたがい、その差は広がってゆく。これはID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値であるので、ID客数PI値、すなわち、購入頻度が大きく違うためである。郊外型の店舗は一般的に購入頻度が低く、週1回から数回が中心となるが、都心型店舗では、週数回以上が中心となる。中には、1日2回以上購入する顧客もいる。そのため、時間とともに購入頻度の差が生じ、金額PI値の低さをID客数PI値でカバーし、ID金額PI値が逆転してしまうのである。したがって、これまで、都心型店舗は客単価が低いことがよく問題にされたが、ID金額PI値はむしろ高く、長い目で見ると、郊外型店よりも顧客1人1人からいただけるキャッシュははるかに高いことが明らかになる。

   このような結果が出ると、逆に、郊外型の店舗はこれまで明確にならなかったID客数PI値、すなわち、購入頻度の低さの問題がクローズアップされ、これを引き上げるマーチャンダイジング政策を都心型店舗から学ぶ必要があり、これまでのマーチャンダイジング政策もID客数PI値から再検討することが求められる。これがID-POS分析のマーチャンダイジング政策のポイントである。

   そして、このID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値を単品にまで当てはめてゆくと、ここでも従来のPOS分析では全く把握できなかったID客数PI値、すなわち、頻度を単品ごとに算出できるようになり、この違いにより、先の店舗全体と同様、金額PI値とID金額PI値の逆転現象がいたる商品で起こる。したがって、これまでのマーチャンダイジングのように単純に金額PI値の高い商品を重点商品として強化するだけではなく、ID金額PI値の高い、特に、ID客数PI値の高い商品をロイヤルカスタマーの重点商品として強化してゆくかが新たなマーチャンダイジング政策として加わってゆくことになる。しかも、その商品の購入実態を顧客1人1人まで落とし込むことができ、これが顧客へのきめ細かなマーチャンダイジングへと繋がってゆく。

   ここまで来ると、マーチャンダイジングというよりも、マーケティングといった方がぴったりくるが、これがID-POS分析の本質といえよう。すなわち、ID-POS分析は商品政策、すなわち、マーチャンダイジング政策から顧客を強く意識したマーケティング政策へと転換を促すPOS分析であり、その意味で、今後、次世代の食品スーパーマーケットを目指すうえにおいての新たな技術革新、すなわち、イノベーションであるといえよう。

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