紀ノ国屋出店再開、小型店を東京駅へ!
紀ノ国屋のホームページに次のような記事が掲載された。「12月4日(土)JR東京駅構内に KINOKUNIYA entréeがオープン!」、「日本の玄関口、JR東京駅に「日本の台所」をコンセプトにした食の新名所GRANSTA DINING(グランスタ ダイニング)が誕生します。KINOKUNIYA entrée GRANSTA DINING店では、オリジナリティあふれたこだわりの商品や”メイドインジャパン”の逸品をセレクトしてお届けします。旅のおともに、おみやげに、また毎日の出勤前やお仕事帰りのお買い物にもぜひ、お気軽にご利用ください。」との内容である。今年の4月、紀ノ国屋が東日本旅客鉄道(JR東日本)の傘下に入って以来、はじめての新規出店であり、その1号店が東京駅にオープンということで、今後の展開が注目される。
店舗面積は約30坪という小型タイプであり、entréeという駅中出店タイプでの業態であり、このKINOKUNIYA entrée GRANSTA DINING店以外にも、平塚ラスカ店、エキュート立川店、赤坂Bizタワー店、羽田店とすでに展開しており、このタイプでは5店舗目となる。基本コンセプトは、「店名の「entrée (アントレ)」はフランス語で入り口という意味。紀ノ国屋のこだわりやクオリティを気軽に味わっていただけるよう、たくさんのお客様をお迎えする「入り口」という気持を込めて名付けました。生鮮を除く幅広いラインナップで、上質な食生活のお手伝いをしてまいります。」とのことで、生鮮食品がないのが特徴である。まさに、通常の紀ノ国屋への入口となって欲しいという位置づけでもあり、紀ノ国屋のトライアル顧客を増やしてゆく目的があるといえる。
紀ノ国屋は、このentrée (アントレ)タイプ以外にも小型業態として、OMOを開発している。その基本コンセプトは、「紀ノ国屋のクオリティ、おいしさ、安全性はそのままに、より利便性を追求した品揃えです。自家製ブレッド、ランチボックスからチーズ・ワイン、シャンパンまで、紀ノ国屋ならではのおいしさをコンパクトに集めたスペシャリティフーズショップ。」であり、これはまさに、紀ノ国屋の縮小型の圧縮型店舗である。すでに、エチカ表参道店、ベルビー赤坂店、Esola池袋店と3店舗を出店している。今後は、このOMOとentrée (アントレ)を立地によって使い分けながら、駅中出店戦略が展開されてゆくことになろう。
ちなみに、通常の紀ノ国屋であるが、インターナショナル(東京都港区北青山)、国立店(東京都国立市)、等々力店(東京都世田谷区等々力)、吉祥寺店(東京都武蔵野市)、鎌倉店(神奈川県鎌倉市)、渋谷店(東京都渋谷区道玄坂)、新宿髙島屋店(東京都新宿区千駄ヶ谷)に出店しており、全部で7店舗である。また、これら食品スーパーマーケット業態以外にも、ベイカリー店があり、キノクニヤベーカリー小田急新宿店、KINOKUNIYA Salut!東武池袋店、三鷹KINOKUNIYAの3店舗を出店している。したがって、総店舗数は、これらすべて合わせて18店舗となる。
さて、紀ノ国屋の現在の経営状況であるが、JR東日本の傘下に入ってからはじめて公開された決算公告、2010年3月期を見ると、公開されたのは貸借対照表のみであるが、かなり厳しい経営状況であることがわかる。まず、自己資本比率(純資産比率)が21.57%であり、約80%を負債に依存しており、負債が重く経営を圧迫している状況である。しかも、繰越利益剰余金が-39,069千円発生しており、利益面でも厳しい状況が伺える。ただ、総資産は2,657,694千円と食品スーパーマーケットとしては軽い資産であり、その主な中身である出店関連の資産は、土地849,735千円、建物243,005千円、差入保証金74,780千円と、合計1,167,520千円(総資産の43.93%)であり、単純に1店舗当たりを計算すると64,862千円と、都心部への出店としては少ない出店関連の資産といえよう。これは、小型店が多いことに加え、土地等の資産を取得しないテナントでの出店が多いためと思われる。
一方、総資産の約80%を占める負債の中身であるが、その大半は有利子負債であり、1,707,950千円、総資産の64.26%と重く経営にのしかかっているといえる。自己資本(純資産)-出店にかかわる資産、すなわち、出店余力は-22.36%であるので、有利子負債に大きく依存した出店構造であるといえ、この財務内容を見る限りでは、出店余力は厳しい状況にある。当面、新規出店よりも財務改善が優先され、既存店の活性化によるキャッシュの獲得が経営の最優先課題であるといえよう。
このように12/4、この4月にJR東日本の傘下に入って以来、はじめての新店を東京駅に出店したが、本格的な紀ノ国屋タイプでの出店ではなく、生鮮を扱わない小型店、KINOKUNIYA entréeタイプでの出店となった。本来、紀ノ国屋としては、生鮮食品も取り扱っている小型食品スーパーマーケット、OMOでの駅中出店を優先したいところであろうが、財務内容を見る限りでは、充分な出店余力が蓄えられていないといえ、当面、財務改善を優先せざるをない面もあったものといえよう。このような状況の中、紀ノ国屋が次の出店戦略において、いつ、どのような選択をするのか、その動向に注目である。
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