しまむら、2011年2月期、第3四半期、増収増益!
しまむらが、12/28、2011年2月期、第3四半期の決算を公表した。しまむらはファッションが専門のチェーンストアであるが、経営戦略、特に、マーチャンダイジング戦略においては、食品スーパーマーケットに通じるものがある。そこで、ここでは食品スーパーマーケットの経営にとっても参考になるマーチャンダイジング力を中心に、その最新の決算内容を取り上げてみたい。まずは、結果であるが、売上高3,276.63億円(2.1%)、営業利益305.87億円(7.6%)、経常利益312.90億円(7.3%)、当期純利益180.49億円(9.4%)となり、増収増益の好決算となった。ただ、売上高は2.1%とやや伸び悩んでおり、気になるところだ。
しまむらは、12月現在、1,199店舗を全国に展開しており、今期新規出店38店舗、閉店1店舗という状況であり順調に店舗数を拡大している。12月現在の全体の売上高は100.5%、その中身は客数100.8%、客単価99.7%であり、既存店は96.9%と伸び悩んでいる。それにも関わらず、しまむら全体の売上高が2.1%と堅調であった要因は、その他の業態が伸びたことによる。しまむらは、しまむら事業以外にアベイル事業、バースデイ事業、シャンブル事業、ディバロ事業、そして、海外、台湾の思夢樂事業があり、これらの事業が好調に推移したことが全体を押し上げたといえる。
そこで、これらの事業の結果を見てみると、若者向けの感度の高いファッションを扱うアベイル事業は334.92億円(4.7%、243店舗)、ベビー・トドラー用品を扱うバースデイ事業は125.66億円(15.9%、120店舗)、女性のファッション雑貨を扱うシャンブル事業は62.18億円(9.6%、69店舗)、10~20代の女性を主たる顧客層としたカジュアル・シューズを扱う専門店のディバロ事業は3.58億円(19.2%、2店舗)、そして、台湾で事業展開する思夢樂は19.85億円(15.3%、30店舗)という状況である。いずれも、順調に店舗数を増やし、数字が伸びており、本業、しまむら事業を大きく支えたといえる。
一方、売上高に比べ、特に好調であった利益の方であるが、その要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、経費の方であるが、67.07%(昨年67.96%)と、0.89ポイントと大きく改善している。これについて、しまむらは、「当第3四半期連結累計期間のプライベート・ブランドの販売額は前年同期比31.1%増となり、売上全体に占める割合は40.1%となりました。」とコメントしており、PBの影響が大きかったといえよう。このPBは「「ファッション性」・「高品質」・「低価格」を併せ持つプライベート・ブランド」であり、まさに、しまむらのマーチャンダイジング戦略の根幹をなしているといえ、それが、31.1%増となり、しかも、食品スーパーマーケットでは考えられない40.1%の売上構成比であり、まさに、しまむらの強さの源泉といえよう。
結果、売上総利益は32.93%(昨年32.04%)となった。食品スーパーマーケット業界の粗利が約25%であるので、しまむらは7%近い粗利の高さであり、その要因が強力なPB戦略にあるといえよう。一方、経費の方であるが、23.80%(昨年23.41%)と0.39ポイント上昇しており、経費削減にはいたらなかったようだ。この経費比率は食品スーパーマーケット業界の平均よりもやや低いが、ほぼ近い数字である。したがって、食品スーパーマーケットとの営業構造上の最大の違いは原価にあるといえ、この原価率67.07%を達成できることが、しまむらのマーチャンダイジングの強さといえよう。そして、その要因が売上構成比40.1%の強力なPB戦略にあるといえ、しまむらにとっては、このPB戦略が利益の源泉であるといえる。
ここから、差し引き、商品売買から得られる利益、すなわち、マーチャンダイジング力を算出すると、9.13%(昨年8.63%)となり、何と9%を超えるマーチャンダイジング力であり、極めて高い数字である。ちなみに、上場食品スーパーマーケットでは大黒天物産の5.2%がトップであるので、9.13%がいかに高い数字であるかがわかる。そして、これに、その他営業収入が0.22%(昨年0.22%)のり、結果、営業利益は9.35%(昨年8.85%)となり、好調な決算となった。
ちなみに、しまむらは、営業面が好調であることに加え、財務面でも自己資本比率が67.9%(昨年76.4%)と、昨年よりは下がったとはいえ、極めて高い数字であり、安定している。結果、負債は約30%強であるが、その内、有利子負債は178.00億円であり、総資産2,443.43億円の7.28%と、経営に対する影響度は低い。特に、現金が265.58億円であるので、実質、無借金であるといえる。
このように、しまむらの2011年2月期の第3四半期決算は増収増益の好決算となった。ただ増益幅に比べ、増収幅が小さく、やや気になるところであるが、それを充分に補う原価の改善が強力なPB戦略により、カバーできている。しかも、財務内容も安定しており、この厳しい経営環境の中、しまむらの強さが発揮された結果となった。食品スーパーマーケット業界では、原価よりも経費削減による増益決算が多いが、しまむらは逆に原価改善による増益を達成しており、原価改善の重要性が改めてクローズアップされた結果といえ、小売業にとって、この厳しい経営環境の中で、今期の収益確保の方向性を示しているといえよう。
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