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January 2011

January 31, 2011

消費者物価指数、2010年12月、昨対99.7%!

   1/28、総務省統計局から、2010年12月の消費者物価指数(CPI)が公表された。2011年度の動向を占う上でも注目の数字であるが、結果は全体の総合指数は昨対99.7%と、わずかであるがマイナスとなった。消費者物価指数は3つの総合指数がある。その3つとは、(1)総合指数は平成17 年を100 として99.6前月比は0.3 % の下落、前年同月と同水準、(2)生鮮食品を除く総合指数は99.4前月と同水準、前年同月比は0.4 % の下落、(3)食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は97.6、前月と同水準、前年同月比は0.7 % の下落であり、いずれも、マイナス、依然としてデフレ気味で物価は推移しているといえよう。

   実際、これまでの食品スーパーマーケット業界の直近の第3四半期決算の数字を見ても、増収とはなっても、その伸び率はわずかであり、また、利益についても、原価は特に競争激化により、平均単価の下落が厳しく、下がるケースがあいついでいる。まさに、消費者物価指数通りといえ、デフレ基調が続いているといえよう。

   ちなみに、消費者物価指数は算出の仕方が2つに分かれている。ひとつはまさに、指数、平成17年度を100とした場合の現在の物価水準を表す数字である。そして、もうひとつは、単純に昨年対比を示す指標である。ここでは、昨年対比を基本に、必要に応じて平成17年度対比をもとにした指数も見てゆくことにする。

   その昨年対比であるが、過去4年間、すなわち、平成19年1月から、平成22年12月までのグラフを見ると、実に興味深い消費者物価指数の流れである。平成19年はほぼ昨対プラスマイナス0で推移しており、10月頃から物価がやや上昇しはじめ、平成20年度になると急激に物価上昇に転じる。そして、7月にはピークを迎え、この4年間で最高の2.5%前後まで上昇する。そして、ここから今度は物価が下がりはじめ、12月にはわずかな上昇幅となる。ちょうど上に凸の半円形を描くグラフである。

   そして、平成21年度に入ると、今度は打って変って、物価がどんどん下がりはじめ、8月から10月ごろにピークを迎え、-2.5%前後となる。そして、その後、徐々に物価がもどりはじめるが、ここで異変が起こる。物価が上げ止まってしまう。-1.5%前後で動かなくなる。流れでいけば、プラスマイナス0へ近づいても良いように思えるが、全く動かず、平成22年の9月頃まで、この傾向が続く。この期間ほぼ1年強であり、デフレが定着したといえる。そして、10月になり、やや物価が上昇しはじめ、全体の総合指数が0%を1年半ぶりに超えるが、全体以外の残り2つの総合指数は依然としマイナスが続き、そして、この12月である。やはり、また、全体の総合指数がマイナスとなり、依然として、若干のマイナスが続いており、プラスへの動きが鈍い状況といえる。

   こう見ると、当面、物価指数がプラスにもどる気配が薄く、しばらくは、このデフレ基調が続きそうな状況といえよう。それにしても、まる2年デフレ基調が続いており、明らかに、異常な状況といえよう。そこで、その要因を寄与度、すなわち、プラスマイナスへの影響度で見てみると、まずプラス要因は生鮮食品の0.41が最も大きく、青果の相場高が強く影響をしているといえよう。これに対して、マイナス要因の最大のものは何といっても公立高校綬業料であり、-0.40である。したがって、この2つがプラスマイナスとなり、相殺している状況である。

   それにしても、高校綬業料の無償化はこれだけ、物価にインパクトをあたえるほど大きいといえ、びっくりである。ただ、これが一般消費者にとってはあまり、実感としてはなく、やや違和感を覚える項目ともいえる。一般感覚からすると、生鮮食品、特に青果の高騰が物価高のように感じるのではないかと思う。

   これ以外では、プラス要因はたばこ0.27、ガソリン0.13、灯油0.08、都市ガス0.05、電気代0.03であり、以上が主なプラス項目である。こう見ると、消費者物価指数を3つに分ける意味が良くわかり、食品、資源エネルギーが、消費者物価には大きな影響があることがわかる。逆に、マイナス要因であるが、私立高校綬業料-0.11、その他-0.22であり、公立だけでなく、私立高校の授業料もマイナス幅が大きく、それ以外が-0.22であるので、いかに、高校綬業料の無償化が大きいかがわかる。

   なお、今回の消費者物価指数の公表は12月度ということもあり、平成22年度の全体を含め、過去5年間の比較表も公表されており、中期的に消費者物価を見る上において、参考になるといえる。10大費目指数、中分指数、財・サービス分類指数、総合・前年同月比の推移、生鮮食品を除く総合・前年同月比の推移、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合・前年同月比の推移、そして、ラスパイレス連鎖基準方式による消費者物価指数(参考指数)である。

   このように、依然として、消費者物価指数はマイナス、デフレ基調が続いているといえ、厳しい消費環境にあるといえよう。ただ、その大きな要因は高校授業料の無償化の影響にあるともいえ、実際の肌感覚は生鮮、特に青果の相場高にともなう価格上昇、資源・エネルギーの高騰による燃料費の増加、そして、たばこの値上げが家計には直撃しているといえ、やや上昇気味の感覚ではないかとも思える。当面、この傾向は続きそうであり、平成23年度も全体としてはデフレ基調で、しばらくは推移するのではないかと思わる。食品スーパーマーケット業界としては、依然として、価格競争が激化する1年となりそうである。

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January 30, 2011

東武ストア、2011年2月期、第3四半期、減収減益!

   東武ストアが1/7、2011年2月期、第3四半期決算を公表した。結果は、売上高607.02 億円(-1.1%)、営業利益5.83億円(-50.4%)、経常利益7.59億円(-43.8%)、当期純利益2.97億円(-63.4%)となり、減収減益となる厳しい決算となった。東武ストア自身も、「小売業界におきましても、個人消費の低迷、デフレの進行、販売競争の激化などにより非常に厳しい状況が続きました。」とのことで、経営環境の厳しさが、業績に影響をあたえているといえよう。

   それにしても、利益が半減しており、厳しい決算である。そこで、その要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、73.44%(昨年73.65%)と、原価は0.21ポイント改善している。この厳しい価格競争においても、原価が改善しており、減益の要因は原価ではないといえよう。東武ストアも、「「Vマーク商品」(私鉄系チェーンストア8社が共同で企画開発した商品)の拡販に継続して取り組みました。」とのことで、PBを強化しており、その貢献もあるといえよう。結果、売上総利益は26.55%(昨年26.35%)となった。

   一方、経費の方であるが、25.59%(昨年24.43%)と1.16ポイントと大幅に上昇している。それにしても、1ポイント以上の経費の上昇は大きいといえる。そこで、主な経費項目を見てみると、最大の経費項目、人件費であるが、56.27億円(昨対1.9%)と上昇しているが、この範囲であれば、本来全体の売上げが上がれば吸収できる範囲であるが、今期は売上高が-1.1%と減少し、特に既存店の数字が伸び悩んだとのことで、経費増が相対的に上昇する要因となったといえよう。一般に、食品スーパーマーケットの経費率を下げるための最大の対策は既存店の活性化にあるといえ、既存店の売上げが上昇すれば、その分固定費の比率が下がり、経営に好影響を与えるといえる。今期、東武ストアはその意味で既存店が下がり、売上げが伸びやんだことが大きかったといえよう。

   結果、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は0.96%(昨年1.92%)と大きく減少しており、経費の上昇が利益を直撃したといえよう。東武ストアはその他営業収入が0であるため、イコール、営業利益となり、大幅な減益となった。それにしても、これまで公表された食品スーパーマーケットの第3四半期決算を見ると、その大半が原価の上昇を経費の改善でカバーし、増益となるケースが多い中、東武ストアは全く逆のパターン、原価の改善を経費が相殺し、さらに、利益を悪化させるという構図であり、経費コントルールに課題が残った決算となった。

   これに対し、売上げの方であるが、今期、東武ストアは、「7月に朝霞店(埼玉県朝霞市、売場面積1,269㎡)、同年11月に馬橋店(千葉県松戸市、売場面積1,305㎡)を開設し、当社の店舗は同年11月30日現在で合計57店舗となりました。」とのことで、2店舗の新店を出店しているが、それ以上に既存店の数字が下がったとのことで、売上高が-1.1%と厳しい結果となったとのことである。現在57店舗であるので、安定的な成長をはかってゆくには、5店舗前後の出店が欲しいところであり、今期は出店を抑え、既存店の活性化に取り組んでいるといえよう。

   なお、既存店に関しては、「厨房のシースルー化、惣菜売場の拡大など売場と商品の大幅な変更により、商品力と販売力の強化を図る改造を豊春店、前野町店等の6店舗、競合店との差別化として衣料品売場の拡大を図る改造を鳩ヶ谷店で行い、いずれの店舗も売上向上に大きく貢献しておりますが、・・」とのことであるが、全体の数字を改善するほどにはいたらなかったといえよう。

   この第3四半期決算は利益面ではかなり厳しい結果となったが、東武ストアの財務面を見ると、自己資本比率は66.4%(昨年68.8%)とやや下がってはいるが、食品スーパーマーケットではトップクラスの安定した財務基盤が確立されている。実際、有利子負債は13.92億円(前決算時17.62億円)であり、総資産333.72億円に占める割合は、わずか4.17%であり、現金が13.61億円であるので、実質、ほぼ無借金経営といえ、堅固な財務状況であるといえる。したがって、出店余力は十分であり、本来であれば、成長戦略を重視したいところであるといえよう。ただ、既存店の状況、経費の上昇を考慮すると、まずは、既存店の活性化が最優先課題といえよう。

   このように、東武ストアの2011年2月期、第3四半期決算は減収減益、特に、営業利益が-50.4%と昨年に比べ半減するという厳しい結果となった。その要因は、原価は改善したが、それを大きく上回る経費比率の上昇が大きかったといえる。これは、これまで公表された食品スーパーマーケットの傾向とは明らかに反対の構図であり、東武ストアとしては、まずは、この経費増をどう改善するかが当面の最優先の経営課題といえよう。そして、そのためにも、いかに、既存店の活性化をはかり、相対的に固定費を下げることがポイントであるといえる。本決算まで残された期間は少ないが、来期を見すえ、東武ストアが既存店をどのように活性化してゆくかの注目である。

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January 29, 2011

ID-POS分析の本質を突き詰めると、・・

    ID-POS分析を理解するのは中々難しいと良くいわれる。実際、ID-POS分析を本格的にやろうとすると、たったひとつのカテゴリーでもすぐに100万件単位の分析が必要となり、めげてしまうといえる。これが普及しにくいひとつの要因であるといえよう。また、ID-POS分析の方程式も通常のPOS分析と比べるとやや複雑になるため、理解しにくく、これも普及しにくい大きな原因であるといえよう。さらに、ID-POS分析はポイントカードが前提となるため、すでに、ポイントを通じて売上げの0.5%から1.0%ぐらい顧客還元しているため、さらに、ID-POS分析用の顧客への還元費用が捻出しにくく、その効果がいまひとつ確認できないという面もある。このような様々な事情が重なり、ID-POS分析は興味深い分析であることはわかっていても、中々普及しないのが現実といえよう。

   そこで、確かに、このような問題がID-POS分析にはあるといえるが、実は、その本質を理解するのはそんなに難しいことではない。むしろ、日常的に、様々な場面でなにげなく取り組んでいることが多く、それに気づかないだけである場合が多い。また、ID-POS分析を実施していない企業でも、ID-POS分析の本質をついたアクションを起こしていることも日常茶飯事のことであり、これも気づかずに当たり前のように実行していることが多い。特に、顧客と対面で接している客商売をしている業種では、ID-POS分析の本質をついたアクションが至るところで見受けられる。

   では、ID-POS分析の本質とは何であろうか。突き詰めるとたった2つの要素に集約できるといえる。ひとつは顧客の買った商品(サービス)、そして、もうひとつは顧客の買った回数である。この2つがID-POS分析の本質であるといえ、この2つを理解し、実際の商売の中で区別がつけられれば、ID-POS分析の本質をつかみ、それを実践していることになるといえる。

   1つめの顧客の買った商品(サービス)であるが、これは数式的には客単価、すなわち、金額PI値のことである。したがって、ここから何をつかむかであるが、ひとつは、顧客がどのような商品を何個買ったか、そして、その価格である。さらには、一歩進め、同じ商品が1個だけなのか、それとも同じものを2個買っている場合もあるかなどまでつかめればなお良い。これが顧客の買った商品として、注目すべきポイントである。

   常に、顧客の買った商品をこのような観点で見ることができると、ID-POS分析の第1歩を理解したことになる。ちなみに、金額PI値はPI値と平均単価に分解でき、PI値はそれぞれの商品のPI値とその商品の同時購入回数、客数PI値とに分解でき、これを商品に置き換えると、全体の商品数、平均単価、商品ごとの購入数、同時購入回数となる。

   たとえば、Aさんの買い物を見ると、牛乳2本、たまご1パック、食パン1斤、菓子パン2個、トマト1パック、豆腐1丁、・・であった場合、ここからつかむべきポイントはAさんがどのような商品をいくつ買ったか、その価格はいくらか、さらには、同時に複数購入したものは何があり、何個かまで把握することがポイントである。ここでは、1回の買い物だけなので、同時購入回数は算出されないが、Aさんの来店が増えると、購入回数が重要なキーとなる。

   そして、そのAさんの購入回数が、まさに、2つ目の顧客の買った回数である。これがID-POS分析の本質をつかむ上でのもうひとつのポイントである。先の顧客の買った商品(サービス)は通常のPOS分析でもできる分析であり、ID-POS分析の最初の一歩ではあるが、まだ、本質に迫っているとはいえない。これに対して、この買った回数は全体では把握できても、Aさんという顧客の買った回数は通常のPOS分析では把握できない。ID-POS分析ではじめて把握できる指標であり、これをつかむことがID-POS分析の本質を理解することになる。

   先の事例ではAさんの買い物は1回だけだったが、次のAさんの買い物が2回目になり、これを再度、つかむことがポイントである。この時、2つの点が重要な課題となる。ひとつは、いつ2回目となるか、そして、その時の買った商品(サービス)は何かである。ここがポイントであり、これがID-POS分析の本質である。その結果、Aさんが比較的早く買い物に来てくれているか、なかなか、買い物に来てくれなかったかで、売上げが大きく変わる。また、その時の買った商品、すなわち、「牛乳2本、たまご1パック、食パン1斤、菓菓子パン2個、トマト1パック、豆腐1丁、・・」がどう変化したかをつかむことであり、その結果、前回よりも買い物が充実しているか、否かがポイントとなる。

   ID-POS分析の本質はこの2点、顧客の買った商品(サービス)、顧客の買った回数にあるといえ、この2つに集約できる。結果、この2つの数字をいかに引き上げてゆけるかという観点から、その具体策を2つに分けてつくり、実際にその具体策を実施し、その結果を見て、再度、具体策を練り直すという、この繰り返しがID-POS分析の本質を理解してゆくことになるといえる。ID-POS分析は確かに膨大なデータを分析し、複雑な方程式を駆使し、難しく、とっつきにくい点があるが、その本質は意外にシンプルであり、日常的に実践していることも多いといえ、その本質をつかめれば、実はすぐに実践できるものであるといえる。是非身近なところからはじめて欲しいところだ。

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January 28, 2011

ハローズ、早島物流センター稼働、投資額約60億円!

   1/16、岡山県のハローズが、「「ハローズ早島物流センター」の竣工及び稼働について」と題し、プレスリリースを行い、いよいよ、ハローズ待望の早島物流センターが1/15、稼働を開始した。食品スーパーマーケット業界としても注目の物流センターといえる。ハローズの年商は現在681.07億円(2010年2月期決算)であるが、中期構想は年商1,000億円、そして、長期構想は年商3.000億円であり、この中長期構想を実現するための物流体制はどうあるべきかについての、現時点での答えをハローズは、この物流センターにて示したといえ、注目の最新鋭の食品スーパーマーケットを支える物流センターである。

   その内容であるが、「新センターは、広島県・岡山県内に分散していた7 か所のうちの6 か所のセンターを集約し、常温・低温の両温度帯の保管・物流機能にデリカセンター、青果センターを併設、物流面以外でも、チェッカートレーニングセンターと品質管理室を新たに設けております。」とのことで、グロサリーのみならず、青果、惣菜、品質管理、そして、チェッカートレーニングセンターも兼ねた総合物流センターといえる。さらに、この物流センターの稼働に合わせ、昨年の10月に物流センター併設の事務所棟に本部機能を移転しており、本部と物流が一体となったまさに、ハローズの戦略拠点ともなっている。

   施設概要であるが、敷地面積71,380.15平米(21,592坪)、建築面積27,459.42平米(8,828坪)、延床面積52,031.66平米(15,740坪)の2層建てであり、1階が常温センター、2階が低温センターとなっている。総投資額は約60億円であり、日本政策投資銀行等からの借り入れで賄っている。そして、その機能であるが、保管規模約240,000ケース、方面別仕訳システム約38分岐、パレット自動倉庫1,554パレット、ケース自動倉庫29,400ケース、ケースピッキングライン6ライン、ケース自動補充システム2式(6台)等である。

   そして、この最新の早島物流センターの基本コンセプトであるが、①商勢圏拡大に伴う物流拠点の中心化、②24時間稼働で24時間営業の店舗オペレーションを支援、③1拠点集中化による効率改善、④産地直送、メーカー直送による中間流通機能コスト改善、⑤鮮度管理、欠品の削減など商品管理への取り組み強化、⑥積極的な環境問題への取り組み、⑦人材の育成である。

   特に、②の24時間はハローズがこだわる仕組みであり、現在、ハローズは、「出店形態は「24時間営業450坪型食品スーパーマーケット」及び「24時間営業600坪型食品スーパーマーケット」の2つの業態を主力としています。今後は、「24時間営業600坪~800坪型食品スーパーマーケット」を主力業態としていきます。」とのことで、大型化、24時間化が基本の出店戦略であり、これを支える物流体制が望まれていたところであった。

   また、①の商勢圏の拡大は、年商規模では、中期1,000億円、長期3,000億円であるが、立地的には、中期は地元岡山、広島、そして、四国の香川県までであるが、長期になると、兵庫、四国の愛媛まで入り、その勢力図は瀬戸内海沿岸となる。したがって、その中心拠点に物流センターが必須といえ、早島はまさに、その中心となる立地かつ、高速道路の集約点でもあり、ハローズの中長期の戦略を支える上に最適な立地であるといえる。

   ハローズは、この基本コンセプトの実現以外にも、今回の早島物流センターに寄せる期待は大きく、これまでできなかった課題の解決が図れると考えている。たとえば、これまでは5社に外部委託していたものを、3PL(サードパーティロジスティックス)で1社に運営を任すことができ、7拠点7便体制を2拠点6便体制に集約でき、これまでできなかった通路別納品の実施が可能となり、TC機能に加え、DC機能を持たせることができるようになるなど、物流の仕組みが根本的に変わり、戦略的な対応が可能になるといえる。

   ただ、気になるのはハローズの財務面である。今回の総投資額は約60億円であり、全額借入で賄うことになるが、直近の2011年2月期の第3四半期決算を見ると、有利子負債が140.54億円であり、これは総資産369.71億円の38.0%であり、財務にとってはやや重い負担となっていることである。総資産の約20%弱という、資産の規模からすると、大きな投資である。結果、自己資本比率も31.7%と負債に大きく依存する財務構造となっており、今後、いかに、企業全体の収益性を強化し、財務構造の改善をはかってゆくかも課題といえよう。

   このように、ハローズ待望の早島物流センターが稼働し、中長期戦略である年商1,000億円、そして、3,000億円への体制が整ったといえる。あとは、いかに、早く、その目標を実現するかであるといえるが、現在の財務内容を見る限り、けっして、出店余力が十分とはいえず、財務の改善も同時に進める必要があろう。その意味で、今回の早島物流センターは、営業規模の拡大はもちろんであるが、企業全体のコスト改善、収益性の改善につなげ、どうキャッシュを生み出すかも重要な課題といえよう。今後、この早島物流センターの稼働を機に、ハローズの売上げはもちろん、財務改善がどのようにはかられてゆくかにも注目である。

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January 27, 2011

食品スーパー、売上速報、2010年12月、101.2%!

   1/25、オール日本スーパーマーケット協会、日本スーパーマーケット協会社団法人、 新日本スーパーマーケット協会、3団体合同のスーパーマーケット販売統計調査(12月実績速報版)が公表された。結果は全体が101.2%となり、堅調な結果となった。同時期に公表された日本チェーンストア協会が公表したチェーンストア販売統計の12月度の結果が食料品が99.0%であるので、GMSの店舗数が多く、その影響が強く反映されるチェーンストア協会と比べ、純粋な食品スーパーマーケットの統計である3団体合同の結果の方がやや高く、食品スーパーマーケット業界は比較的、この厳しい時期においても堅調な売上げを維持しているといえよう。

   これまで、食品スーパーマーケットの統計数字は日本チェーンストア協会の数字を見るか、各団体の数字を個別に見るかしか、その実態をつかむことは難しかったが、昨年4月度から、食品スーパーマーケットの主要業界団体、オール日本スーパーマーケット協会、日本スーパーマーケット協会社団法人、 新日本スーパーマーケット協会が合同で統計数字を公表することが実現し、食品スーパーマーケットの実態をより正確につかめるようになった。

   ちなみに、日本チェーンストア協会と3団体合同調査の基礎数字の違いであるが、企業数(日本チェーンストア協会62社、3団体合同263社)、店舗数(7,925店舗:127.8店舗/社、7,117店舗:27店舗/社)、売場面積(23,124,388平米:884坪/店舗、11,819,394平米:503坪)、食料品売上高(7,375.34億円:0.93億円/店舗、8,838.21億円:1.24億円)となる。店舗数はやや日本チェーンストア協会が多いが社数では、3団体合同が4倍以上であり、数多くの食品スーパーマーケットの統計数字であることがわかる。したがって、こと食品スーパーマーケットの数字を把握するには、3団体合同の数字を基本にし、日本チェーンストア協会の食料品の数字を参考にするという見方が良いといえよう。

   さて、3団体合同の売上速報2010年12月度の詳細であるが、最も伸びた部門は青果(売上構成比11.0%)の108.2%である。11月度の確定数字が111.0%であるので、相場高が依然として続いていることも加わり、ここ数ケ月、好調を維持しており、全体の売上げを大きく牽引しているといえよう。これについで堅調な数字となっているのが惣菜(8.7%)であり、102.9%である。11月度確定値も103.2%と堅調な数字であり、この2部門が食品スーパーマーケット業界全体の売上げを牽引している部門といえよう。

   逆に、売上げが厳しい部門は水産(10.1%)であり、98.8%である。11月度確定値も97.9%であり、厳しい状況であり、食品スーパーマーケット業界としてはいかに水産の活性化をはかってゆくかが当面の課題といえよう。特に、水産の構成比は101%、青果11.8%、畜産10.1%と比べ、ほぼ同じ数字であり、全体に与える影響も大きく、まずは昨対をいかにクリアーするかがポイントである。

   これ以外の部門は、畜産(10.1%)が101.3%、一般食品・その他(44.0%)が101.0%と昨対を上回っており、非食品合計(15.3%)が97.8%と苦戦している。特に、非食品に関しては日本チェーンストア協会の結果を見ると、衣料品90.2%、住関連99.2%であり、衣料品が厳しい状況にあるといえる。

   一方、この売上速報を地域別に見ると、昨対を下回った地区はなく、ほぼ各地区微増という状況であるが、比較的好調であったのが九州・沖縄エリアの103.2%である。ついで、関西エリア101.4%、北海道・東北エリア101.3%、東海・北陸エリア101.1%、関東エリア100.9%である。関東エリアがやや低いのが気になるところであるが、ほぼ、全体的にはこの12月度は堅調な売上げであったといえよう。

   この3団体合同販売統計では売上速報に加え、スーパーマーケット景況感調査も同時に実施している。これは、景況感のアンケートからDI(Diffusion Index)という指数をとる。この数字の判断基準は、DIが50以上なら景気の現状や見通しが改善したとみる企業が多く、50以下なら厳しい見方が多いということである。そこで、今後、2から3ケ月の見通しを見ると、景気判断DIは46.6であり、各社厳しい見方をしている。この統計を取り始めた8月からの数字も46.9、45.2、44.7、44.7、45.8、そして、46.0であるので、一度も50を超えたことがなく、当面の景気の回復は難しいのではではないかと思われる。

   これ以外では、売上判断DIは49.0であり、収益率判断は50.0、客単価DIは45.7であり、客単価DIが最も厳しい判断であり、特に、客単価はPI値×平均単価であるので、平均単価の下落、デフレ感が影響しているものといえよう。この客単価DIも過去すべて50以下であり、景気判断と連動する動きである。

   このように、食品スーパーマーケット主要3団体合同の2010年12月度の売上速報を見ると、101.2%と堅調な数字となり、依然としてデフレが続き、競争環境が厳しい経営の中、食品スーパーマーケット業界としては、健闘しているといえよう。ただ、これまでの、そして、今後、数ケ月の景況感を見ると、いずれも、DIが50を下回り、客単価DIも同様に50を切り、各社、今後に関しては厳しい見方をしている。こう見ると、今期は売上げよりも、利益をどこまで改善できるかがポイントとなる決算となりそうである。

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January 26, 2011

サンエー、2011年2月期、第3四半期決算、増収増益!

   沖縄のサンエーが1/7、2011年2月期、第3四半期決算を公表した。サンエーの今期の決算では連結の結果が公表されているが、まだ昨対が開示されていないため、参考に公開された個別決算をもとに見てみたい。結果は、営業収益1,039.76億円(2.66%)、営業利益70.01億円(6.77%)、経常利益71.56億円(7.30%)、当期純利益42.65億円(16.56%)となり、増収増益、特に、利益が好調な決算となった。ちなみに、売上高で比較した場合、連結は1,012.03億円(個別1,009.48億円)であるので、その差はわずかである。今期決算では、株式会社ローソン沖縄が連結対象となっており、その分が加わったことによる。

   そこで、特に、営業利益が増益となった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、69.74%(昨年69.61%)となり、0.13ポイント原価が上昇している。サンエーも、「食料品は、低価格販売による競争激化で商品単価が下落しましたが、・・」とコメントしており、価格が下がったことが原価に影響したものといえよう。結果、売上総利益は30.26%(昨年30.39%)となったが、この数字は食品スーパーマーケットとしては極めて高い数字である。決算公開企業約50社の前期決算の中では、トップクラスである。サンエーは原価の低い衣料品、飲食、ホテル等があり、これらが全体の原価を押し下げているといえ、GMS等に近い利益構造であるといえる。

   次に、経費であるが、26.32%(昨年26.80%)と0.48ポイントと大きく下がっており、経費の改善が進んだ。これについて、サンエーは、「企業理念の浸透、七大基本(クリンリネス、鮮度と味、品揃え、価格、陳列技術、サービス、正しい表示)の徹底、既存店の活性化、効率化を図るとともに商品力の強化、情報システム開発、人事制度改革等を行いました。」とのことで、特に、既存店の活性化が経費に寄与しているものと思われる。

   一般に、既存店が堅調な場合は、固定費が下がり、結果、経費比率が相対的に下がる傾向にある。今期、サンエーは、「10月に「北谷はまがわ店」(沖縄県中頭郡北谷町)を新規出店いたしました。また、3月に「V21うえばる食品館」(沖縄県那覇市)、4月に「豊見城ウイングシティ」(沖縄県豊見城市)を改装し、その一部に「薬マツモトキヨシ」を出店、4月に「つかざんシティ」(沖縄県島尻郡南風原町)、6月に「与勝シティ」(沖縄県うるま市)のフードコートを改装し、「大阪王将」を出店いたしました。」とのことで、新規出店は1店舗である。売上高が2.66%増であり、サンエーは全業態の店舗数が79店舗であるので、結果、既存店が堅調に推移しているといえ、これが経費改善をもたらしているといえよう。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は3.94%(昨年3.59%)とプラスとなった。原価の上昇を経費の削減で補った構図である。これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が2.99%(昨年3.08%)のり、営業利益は6.93%(昨年6.67%)の増益となった。

   それにしても、営業利益率が7%近い数字であり、もちろん、この数字は決算公開企業約50社の前期決算と比べると断トツのNo.1である。これだけ高い営業利益となる要因は、食品スーパーマーケットに原価の低い業態をミックスさせた業態ミックスに加え、その業態ミックスが生み出す、特に、SC、GMS等の不動産収入に加え、沖縄全土に店舗展開し、その店舗への自社物流センターを通じて商品供給される物流収入等が加わるためであるといえよう。

   通常、食品スーパーマーケットは1エリアにおいてドミナントを完了すると、次のエリアへ参入し、ドミナト展開をはかってゆくが、サンエーの場合は、沖縄という特殊事情があるため、沖縄以外のドミナト展開が事実上難しいといえる。それでも、企業の成長をはかってゆくためには、次の業種、衣料、住関連、クスリ等への拡張が必要といえる。また、業種を超えた業態、SC、GMS、ドラックストア、コンビニエンスストア、家電、ホテル、飲食等、新たな業態の導入が課題といえる。これはイコール、顧客の全需要を取り込む戦略であるといえ、小売業のコングロマリット化といえよう。サンエーの収益性の高さはまさに、このコングロマリット化にあるといえる。

   このように、この2011年2月期、第3四半期決算は増収増益、特に、経費の改善が寄与し、利益が堅調な数字となった。ただ、気になるのは、価格競争が一段と増し、平均単価が下がり、原価の下落が見られることである。また、新規出店が今期はわずか1店舗であり、増収とはなったが、売上げが伸び悩んでいることである。サンエーの自己資本比率は68.9%(昨年64.3%)であり、食品スーパーマーケット業界の中でもトップクラスである。財務的には十分な出店余力があるにも関わらず、新規出店がここ数年少ないといえ、今期はまだ1店舗止まりである。今後、この堅固な財務基盤を活かし、食品スーパーマーケットの新店に加え、次世代の食品スーパーマーケットのフォーマットづくりに挑戦して欲しいところだ。

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January 25, 2011

カスミ、2011年2月期、第3四半期決算、増収増益!

   カスミが、1/7、2011年2月期、第3四半期決算を公表した。結果は、営業収益1,632.63億円(0.6%)、営業利益48.75億円(20.6%)、経常利益51.47億円(17.2%)、当期純利益 20.27億円(-7.6%)となり、当期純利益は減益となったが、営業利益、経常利益段階では2桁の増益となる好決算となった。ここ最近の各食品スーパーマーケットの決算を見ても、増収増益となる決算が多いといえ、特に、利益面での改善が大きいのが特徴である。

   そこで、カスミの営業利益が2桁の増益となった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、74.25%(昨年73.79%)と、原価は0.46ポイント上昇しており、原価面に関しては厳しい状況であったといえよう。カスミ自身も、「営業面では「なっとくの品質を1円でもお安く」をテーマに、定番商品の価格を見直すと共に、曜日毎に特定の品目をお買得価格で提供する「曜日市」の充実、鮮度と価格面からその日一番お買得な青果物を提供する「一番野菜」「一番果実」の展開など、販促企画の強化を行いました。」とのことで、価格にこだわった取組みを強化している。

   また、「平成23年に創立50周年を迎えるにあたり、これまで当社を支えて下さったお客様への感謝の気持ちを込めた記念セールやプレゼント企画、イベントなどを開催しております。」とのことで、これらの販促企画が価格を下げ、原価を押し上げた要因のひとつといえよう。結果、売上総利益は、25.75%(昨年26.21%)となった。

   一方、経費の方であるが、26.15%(昨年27.03%)となり、0.88ポイント改善しており、経費が大きく改善された。カスミも、「ローコスト化の取り組みでは、店内作業において時間帯毎の作業量に応じた適正な人員配置を行うことで、売場のサービスレベル向上と総労働時間のコントロールに取り組みました。また、業務の見直しによるコスト削減を継続強化しました。」とのことで、オペレーションの改善に加え、業務見直しを強化したとのことである。ただ、依然として、経費比率26.15%は決算公開企業約50社の前期決算の平均が25.6%であるので、やや高めであり、今後、さらに、経費削減が課題といえよう。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、-0.40%(昨年-0.82%)となり、0.42ポイント改善してはいるが、結果はマイナスとなった。これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が3.49%(昨年3.40%)のり、営業利益は3.09%(昨年2.58%)と、大きく改善し、2桁の増益となった。原価は厳しかったものの、経費の削減が大きく進んだことが増益につながったといえよう。

   ただ、この好調な増益に対し、営業収益はわずか0.6%と伸び悩んでいる。その要因であるが、「出店につきましては、瓜連店(茨城県那珂市)、FOOD OFF ストッカー川口末広店(埼玉県川口市)の2店舗を開店しました。既存店の活性化では、茂原店を食の専門性をより高めた提案型店舗「フードスクエア」に、真岡店、千代川店、田尻店の3店舗をディスカウント業態である「FOOD OFF ストッカー」に業態転換しました。」とのことで、新店が2店舗であったことが大きいといえよう。カスミの現在の総店舗数は138店舗であるので、10%の成長を目指すには約14店舗、5%の成長でその半分、約7店舗は欲しいところであり、今期は2店舗であり、営業収益が伸び悩んだといえよう。

   そこで、今後、カスミが新規出店をどのように取り組んでゆくのかをキャッシュフローから見てみたい。キャッシュフローにおける新店関連の数字は投資活動におけるキャッシュフローに現れ、特に有形固定資産の取得による支出、敷金及び保証金の差入による支出がその数字と見なすことができる。今期のカスミの数字を見ると、合計17.57億円(昨年41.12億円)であり、半減している。カスミの1店舗当たりの出店にかかわる資産は約3億円強であるので、5店舗前後であり、前期と比べ、半分以下であり、これを見る限り、今期、そして、今後は新規出店を抑制してゆく方針であるといえよう。

   また、財務活動によるキャッシュフローを見ると、有利子負債の返済が-29.84億円(昨年-28.93億円)と、昨年同様、返済にキャッシュを割いており、結果、有利子負債は56.56億円(前期決算時88.06億円)と大きく削減され、総資産786.90億円の7.18%となり、財務の改善が進んでいる。自己資本比率も50.9%(昨年47.9%)と改善しており、こう見ると、新規出店を抑制し、財務改善に力を入れていることがわかる。

   このように、カスミの2011年2月期、第3四半期決算は、当期純利益は減益とはなったが、営業、経常段階では増収増益、特に、利益は2桁の増益となる好決算となった。ただ、その中身は、経費の削減による増益であるといえ、原価は上昇、営業収益も新規出店がわずか2店舗であり、微増にとどまったといえる。キャッシュフローを見る限り、当面、新規出店による成長戦略よりも、財務の改善に力を入れてゆくものと思われる。したがって、今期決算は堅調な決算が予想されるが、来期以降、カスミが引き続き、財務改善に力を入れてゆくのか、それとも、成長戦略に舵を切るか、その動向に注目である。

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January 24, 2011

食品スーパーマーケットのPBR、時価総額を見る!

   前回のブログで日経新聞の記事、「低PBRで好業績な内需株」、「スーパー・コンビニ上位」を取り上げたが、気になったので、改めて、食品スーパーマーケットの上場企業のPBRを取り上げてみたい。PBRは一株当たりの純資産のことであり、株価と純資産との関係を表したものである。数式では時価総額/純資産であり、時価総額が株数×株価であり、現時点の株価水準を純資産面から見るものである。判断のポイントは1.00倍が目安であり、これ以上であると、時価総額が純資産を上回る、すなわち、株価が高いと判断し、1.00倍以下だと、時価総額が純資産を下回る、すなわち、株価が低いと判断することになる。特に、PBRが1.00倍を大きく下回った場合は、株を持ち続けるよりも、その時点で会社を解散し、純資産を分配した方が理論上は得になるので、ある意味、株価が安いと判断できる。

   そこで、改めて、上場食品スーパーマーケットのPBRを見てみると、現時点では以下のような結果である。なお、参考に、ダイエー、イオン、セブン&アイH等のGMSも含めている。マルキョウ(福証、PBR0.2倍、直近株価494円、時価総額77億円)、イズミヤ(東証、0.3倍、339円、289億円)、ダイエー(東証、0.4倍、296円、363億円)、マルヤ(東証、0.4倍、148円、34億円)、PLANT(JASDAQ、0.4倍、483円、33億円)、タイヨー(大証、0.5倍、949円、264億円)、マルミヤストア(福証、0.5倍、24億円)、オークワ(大証、0.5倍、880円、398億円)、Olympic(東証、0.5倍、615円、144億円)、ヤマザワ(東証、0.5倍、1,169円、128億円)、ダイイチ(JASDAQ、0.5倍、640円、26億円)、MV東海(東証、0.5倍、1,129円、198億円)であり、ここまでが、PBR0.5倍以下の食品スーパーマーケットである。

   このPBRを見る限り、かなり厳しい状況にあるといえる。PBRは時価総額と純資産で表されるので、実は、奇妙なことが起こる。PBR=時価総額/純資産であるので、当然、時価総額が高い方が良いが、同時に純資産が低い方が良いということにもなる。したがって、自己資本比率が低い方が純資産が低くなるので、PBRは上昇することもある訳であり、負債を極端に増やし、負債に依存した成長戦略を積極的に推し進めている場合もPBRは高くなる傾向がある。逆に、自己資本が高い安定した財務の場合はPBRが低くなる傾向もあるといえる。

   次に、PBRが1.00倍までの食品スーパーマーケットを見てみると、ユニバース(東証、PBR0.6倍、直近の株価1,230円、時価総額130億円)、天満屋ストア(東証、0.6倍、724円、84億円)、スーパーバリュー(JASDAQ、0.6倍、1,002円、21億円)、北雄ラッキー(JASDAQ、0.7倍、409円、26億円)、マルエツ(東証 、0.7倍、324円、418億円)、平和堂(東証、0.7倍、1,081円、633億円)、アオキスーパー(JASDAQ、0.7倍、718円、101億円)、ベルク(東証、0.7倍、981円、205億円)、サンエー(東証、0.9倍、3,315円、530億円)、関西スーパーマーケット(大証、1.0倍、797円、229億円)、ヤマナカ(名証、1.0倍、752円、154億円)、マルヨシセンター(大証、1.1倍、29億円)となる。

   ここまでが、PBR1.0倍以下の食品スーパーマーケットである。したがって、ここまでの食品スーパーマーケットの今期決算が好調な場合は株価としては、PBRを見る限り、割安感があるといえ、すでに、公表された直近の決算、今後、公表される決算の結果、および、今後の業績予想には注目といえよう。

   そして、前回のブログでは対象外だったPBR1.0倍を超える食品スーパーマーケットであるが、フジ(東証、PBR1.1倍、直近の株価1,705円、時価総額602億円)、いなげや(東証、1.2倍、882円、462億円)、ハローズ(JASDAQ、1.2倍、780円、142億円)、アークス(札証、1.3倍、514億円)、原信ナルスH(東証、1.3倍、1,222円、220億円)、イズミ(東証、1.4倍、1,254円、1,368億円)、ライフコーポレーション(東証、1.4倍、1,245円、665億円)、セブン&アイH(東証、1.4倍、2,149円、19,050億円)、ヤオコー(東証、1.5倍、2,486円、497億円)、イオン(東証、1.5倍、1,062円、8,501億円)、MV中部(名証、1.7倍、891円、227億円)、マツヤ(JASDAQ、1.7倍、675円、57億円)、マックスバリュ北海道(JASDAQ、1.7倍、1,545円、107億円)、丸久(東証、2.0倍、785円、205億円)、イオン北海(札証 、2.1倍、98億円)、ドミー(名証、2.6倍、70億円)、大黒天(東証、3.1倍、2,823円、406億円)、マックスバリュ東北(東証、3.5倍、670円、80億円)となる。

    こう見ると、食品スーパーマーケットの現在のPBRは、けっして、全体が低いわけではないことがわかる。0.5倍以下は12社(28.5%)、0.5倍よりも大きく、1.0倍以下が11社(26.1%)、1.0倍よりも大きいのが19社(45.2%)であり、単純平均では1.1倍となる。したがって、PBRが1.0倍よりも大きい食品スーパーマーケットが多数であるといえ、厳しい消費環境の中、健闘しているといえよう。それにしても、セブン&アイHの時価総額は1兆9,050億円、イオン8,501億円と、食品スーパーマーケットの単純平均の900億円と比べ、異常な数値であり、いかに、この2社が食品スーパーマーケットと異質な経営構造であるかがわかる。今期、食品スーパーマーケット業界がどのような決算となるか、PBRと株価の動きを含め、ここ数ケ月の動向に注目である。

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January 23, 2011

日経新聞で食品スーパーマーケット、低PBR、好業績!

   1/22の日経新聞に気になる記事が掲載された。見出しは、「低PBRで好業績な内需株」、「スーパー・コンビニ上位」であり、サブ見出しは、「衣料好調や経費削減効果」である。記事とともに一覧表が掲載されているが、タイトルは2011年2月期が営業増益予想で割安感のある銘柄」、ベスト30である。ただし、低PBRに着目しているので、PBRを1.14倍未満の企業とし、前期が赤字の企業は除いた東証1部、2部上場(金融は除く)の全企業を対象としたという。

   PBRは記事の中での解説では、「株価を1株自己資本で割った値で、株価の割高、割安を示す」とのことであり、通常は1.00倍以下が割安と判断される指標である。計算式では時価総額を自己資本で割って算出することができる。良く似た指標でPERがあるが、これは株価を1株純利益で割った指標であり、時価総額を純利益で割って算出し、PBR同様、株価の割安感を示す指標である。株価を資産面から見るか、利益面から見るかの違いであるといえる。そして、この2つの指標の関係は、PBR(時価総額/純資産)=ROE(純利益/純資産)×PER(時価総額/純利益)となる。したがって、双方は比例関係というよりも反比例関係にあるともいえ、双方を追い求めるのではなく、そのバランスが重要といえよう。

   さて、記事にもどると、ランクは予想営業増益率であるが、ベスト10に食品スーパーマーケットが2社、コンビニエンスストアが4社入っている。当然、PBRが1.14を下回っている。その企業であるが、食品スーパーマーケットでは、No.2にオリンピック(予想営業増益率3.6倍、PBR0.51倍)、No.7にイズミヤ(47.5%、0.30倍)である。コンビニエンスストアでは、No.4にスリーエフ(2.1倍、0.73倍)、No.5にミニストップ(75.0%、0.83倍)、No.9にポプラ(41.0%、0.55倍)、No.10にCSVベイ(34.4%、0.76倍)である。また、No.8にはGMSのユニーが(43.6%、0.68倍)、No.3にはセキドが(3.2倍、0.26倍)入っており、小売業がベスト10に8社と独占状況といえる。

   それにしても、そのほとんどのPBRが0.50倍前後であり、極めて低いPBRといえる。一般に、PBRが1.00倍を下回ると、純資産よりも時価総額が下回ることになるので、株を持っているよりも、会社を解散して純資産を分配した方が単純な損得では得となるため、それだけ、株価の価値が低く見積もられているということになる。したがって、業績が上向けば、少なくとも1.00倍までは株価は上昇するのではないかという思惑が働き、株価上昇へとつながる可能性が高いということになる。

   果たして今回、ランキング上位に入った企業、特に小売業の株価が今後上昇してゆくかどうかはわからないが、PBRトップ10は0.50倍前後であるので、倍になっても理論上はおかしくない低さであるといえる。ちなみに、トップ30の中に、イオン、セブン&アイHも入っているが、そのランクを見ると、No.13にイオン(22.9%、1.01倍)、No.24にセブン&アイH(5.9%、1.11倍)であり、この2社のみがベスト30の中ではPBRが1.00倍を超えている企業である。

   さらに、ベスト11以下の食品スーパーマーケットを見てみると、No.11天満屋ストア(31.7%、0.56倍)、No.17カスミ(9.9%、0.76倍)、No.20平和堂(8.7%、0.61倍)、No.23オークワ(6.21%、0.53倍)、No.26マックスバリュ東海(5.4%、0.54倍)、No.27アークス(5.2%、0.85倍)という状況であり、6社入っており、食品スーパーマーケットの業績が好調であるといえよう。実際、現在、食品スーパーマーケット業界は第3四半期決算の公表があいついで行われているが、その結果は、営業収益はやや厳しいものがあるが、営業利益は増益の企業が多いといえ、業績がここへ来て回復しつつある状況が見受けられる。

   記事の中でも、クレディ・スイス証券のアナリスト山手剛人氏のコメントとして、「スーパはコスト管理で収益力が上向きつつあるが、・・・」とコメントしているが、実際の第3四半期決算も原価の上昇はみられるが、経費の削減が進んでいるのは事実であり、これが営業利益を押し上げ、業績の回復につながっている食品スーパーマーケットが多いといえる。また、記事の中では、PBRがそれでも1.00を下回るのは、「個人消費の先行きがなお不透明なため、・・」とのことで、個々の食品スーパーマーケットの業績よりも、デフレの消費環境の厳しさを投資家は見ているためではと解説している。

   このように、日経の記事を見ると、いかに、小売業界のPBRが低いかが鮮明であり、得に、食品スーパーマーケット、コンビニが0.50倍前後と低いのが特徴である。ただ、そのPBRが低い小売業の業績が上向きつつあるのも事実であり、今回のベスト30の中にも食品スーパーマーケットが8社、1/4以上となり、業績がここへ来て上向きつつあるといえる。実際、この第3四半期決算を見ても、それは裏付けられているといえ、今期の食品スーパーマーケット業界は堅調な決算となる企業が多いのではと予想される。このような状況を踏まえ、いよいよ、本決算の時期が近づきつつあるが、投資家が食品スーパーマーケット業界をどう評価するか、株価、特に、今回、ランクインした食品スーパーマーケットの株価に注目である。

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January 22, 2011

コンビニ、売上速報、2010年12月度、堅調!

   (社)日本フランチャイズチェーン協会が1/20、コンビニエンスストア正会員10社の2010年12月度の売上速報を公表した。結果は全体の売上高が7,191.52億円、昨対5.6%増となる堅調な伸びとなった。これで、11月度に続き、2ケ月連続のプラスであり、売上げは回復しつつあるといえよう。正会員10社であるが、ココストア、サークルK サンクス、スリーエフ、セイコーマート、セブン-イレブン・ジャパン、デイリーヤマザキ、ファミリーマート、ポプラ、ミニストップ、ローソンであり、ほぼ、日本全体のコンビニを網羅しており、コンビニ全体の数字といっても良いといえよう。

   また、既存店も6,628.44億円となり、昨対3.3%増であり、全体だけでなく、既存店も堅調な伸びとなり、新店による売上増ではなく、既存店の押し上げもあり、コンビニの復調が鮮明である。ちなみに、店舗数であるが、43,372店舗であり、昨対1.7%であり、店舗数の伸び以上に全体の売上げは5.6%と伸びており、既存店の伸びの方が、新店の伸びよりも大きく、全体の売上げが堅調な要因は既存店によるところが大きいといえ、コンビニの業績が回復基調に入ったといえよう。逆に、気になるのは新店の数であり、この数字を見る限り、コンビニ各社が新店を抑制し、既存店の活性化に力を入れていると思われ、今後、新店戦略をどのように進めてゆくか、課題であるといえよう。

   そこで、売上げが全体、既存店ともに、堅調であった要因が客数にあるのか、客単価にあるのかを見てみたい。まずは、全体であるが、客数は116,846.9万人となり、昨対3.4%となった。これに対し、客単価は615.5円となり、昨対2.1%である。客数、客単価ともに、バランスよく伸びており、理想的な結果である。一方、既存店であるが、客数108,762.0万人となり、昨対1.3%、客単価609.4円となり、昨対1.9%であり、全体同様、バランスの良い伸びである。しかも、既存店は客数よりも、客単価の方の伸びが高く、マーチャンダイジングの改善が功を奏しているといえよう。

   ところで、コンビニの売上げも、食品スーパーマーケットの年末商戦と同様、12月度の数字が各月と比べ跳ね上がるのかを見てみたい。比較のため11月、10月、そして、昨年の1月度の全体の売上げの数字を見てみると、11月度6,542.59億円(12月度対比90.97%)、10月度6,429.93億円(12月度対比89.40%)、そして、昨年1月度6,132.26億円(12月度対比85.27%)であり、明らかに12月度が突出しているといえよう。食品スーパーマーケット同様、年末年始に加え、恐らく、クリスマス関連の売上げが押し上げているのではないかと思われる。

   さて、この12月度の売上げが堅調な要因を別の角度、商品面から見てみたい。コンビニは大きく商品構成を4つに分けて管理しているが、それぞれの構成比は、コンビニの中核商品、ファストフードの属する日配食品33.2%、加工食品27.9%、たばこの属する非食品33.7%、サービス5.2%である。ほぼ、日配食品、加工食品、非食品が約30%づつの構成比であり、バランスがとれているといえよう。

   そこで、それぞれの伸び率であるが、特に、この12月度は、11月度同様、たばこの属する非食品がどのような結果となったかがポイントであるが、結果は、非食品が何と8.5%と、大きな伸びである。(社)日本フライチャイズチェーン協会も、この売上速報の中のコメントで、「たばこ税増により一時的に減少したたばこの売上も金額ベースで大きく前年を上回り、全体の売り上げを牽引した。」とのことで、たばこが再び、コンビニの売上げの伸びを支えるまでに回復したといえよう。実際、ここ最近、コンビニのたばこの品揃えが増えており、以前は100SKUぐらいが標準であったが、100SKUを優に上回るコンビニが増えており、たばこはまさに、コンビニの中核商品といえよう。

   この非食品以外では、日配食品5.3%と堅調な伸びを示しており、その中核商品であるファストフードの数字も回復基調にあるといえよう。ただ、加工食品が2.5%、サービス2.1%と、この2部門については、全体が5.6%であるので、やや伸び悩んでおり、課題といえよう。特に加工食品は、食品スーパーマーケット、ドラックストア等と直接競合する商品も多く、その影響もあるといえよう。

   このように、この12月度のコンビニの売上速報は11月度に続き、堅調な売上げの伸びを示しており、数字を見る限り、明らかに、回復基調に入ったといえよう。特に、既存店の数字が堅調であり、客数、客単価ともにバランス良く伸びており、底固いといえる。また、懸案のたばこの動向であるが、非食品の数字を見る限り、明らかに、回復しており、値上げ問題も3ケ月で完全にもとにもどり、それ以上の数字となっているといえ、たばことコンビニとの関係がより、強くなったといえよう。消費環境は依然として厳しいものがあるが、コンビニは回復基調といえる。来月以降も、堅調な売上げが期待できるものと思われるが、その数字がさらに上向くのか、横ばいとなるのか、気になるところである。

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January 21, 2011

マックスバリュ東海、2011年2月、第3四半期、増収増益!

   マックスバリュ東海が1/6、2011年2月期、第3四半期決算を公表した。結果は売上高1,148.89億円(10.0%)、営業利益27.29億円(31.1%)、経常利益27.14億円(30.3%)、当期純利益9.75億円(14.6%)となり、増収、大幅増益となる好調な決算となった。マックスバリュ東海は前期本決算が増収減益、前前期決算も増収減益と厳しい決算であったが、今期は、この第3四半期を含め、中間、第1四半期ともに増収、大幅増益となる好決算が続いており、今期は現在までのところ好調に推移している。

   そこで、増収、大幅増益となった要因をまずは増収面から見てみたい。今期マックスバリュ東海は、「上半期の3店舗に加え、9月にマックスバリュ富士水戸島店、10月にマックスバリュ富士江尾店、11月にマックスバリュ富士宮万野原店と静岡県富士・富士宮エリアに3店舗の新店を開設いたしました。その結果、当第3四半期会計期間末における店舗数は92店舗、・・」とのことで、新店を合計9店舗、全店の約10%に当たる店舗数を出店したことが大きいといえる。

   一般に食品スーパーマーケットの既存店は100%前後で推移するが、マックスバリュ東海も、「第2四半期累計期間においては対前年同期比96.0%でしたが、当第3四半期会計期間においては同100.3%になりました。」とのことで、累計では100%をやや下回っていると思われる。したがって、この新店9店舗が全体の売上を大きく押し上げたといえよう。それにしても、この時期に、これだけ新店を出せる財務力は他社にはないマックスバリュ東海の強みといえる。

   実際、この第3四半期のキャッシュフローを見ると、営業活動によるキャッシュフローは53.89億円(昨年33.91億円)と、大幅増益が寄与し、大きく改善している。そして、新店開発に関係する投資活動によるキャッシュフローの中の、有形固定資産の取得による支出は-25.93億円(昨年-81.69億円)である。これは、マックスバリュ東海の1店舗当たりの出店に関する資産が前期決算から試算すると3.86億円であるので、この第3四半期では6.7店舗、前期では21.1店舗に匹敵するキャッシュフローであるので、合計27.8店舗となる。したがって、今期すでに9店舗を出店しているが、今後、まだまだ出店余力は高く、高成長が続くものといえよう。

   これに対し、さらに好調な利益の方であるが、その要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、75.11%(昨年74.71%)と、0.40ポイント上昇している。マックスバリュ東海自身も、「家計所得の伸び悩みが予想される中、お客さまの生活防衛意識による節約志向が継続し、依然として厳しい経営環境が続いております。」と、コメントしており、原価の改善は厳しい経営環境であったとのことである。結果、売上総利益は24.89%(昨年25.29%)となった。

   一方、経費の方であるが、24.46%(昨年25.17%)と、0.71ポイント改善しており、大きく経費を削減している。特に、今期は、「「高コスト体質からの決別 オペレーション改革元年!!」を当事業年度のスローガンに掲げるとともに、基本の徹底と1円の積み重ねを大切にするという小売業の原点に立ち返り、店内作業の効率化と生産性の向上に取り組んでおります。」とのことで、高コストを意識した経費削減に取り組んでおり、その成果が表れたといえよう。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は0.43%(昨年0.12%)と、大きく改善した。ただ、その比率は0.43%であり、食品スーパーマーケットのトップクラスが3%以上であるので、今後、さらに経費削減に踏み込む必要があろう。そして、これに、物流収入、不動産収入等のその他営業収入が1.95%(昨年1.89%)加わり、営業利益は2.38%(昨年2.01%)となった。したがって、原価の減少を経費削減で大きくカバーし、増益を確保した形であり、これに売上増があいまって、大幅な増益につながったといえよう。

   それにしても、今期9店舗の新規出店はラッシュともいえ、しかも、キャッシュフローを見る限り、来期も今期以上の新規出店が予想され、いよいよ、来期100店舗を突破する可能性が高まったといえよう。ここまで積極的な新店開発が可能な理由は、マックスバリュ東海の財務の強さにある。特に、自己資本比率が61.9%と極めて高く、決算公開企業約50社の前期決算で見るとベスト5に入る。したがって、負債に依存することなく、新規出店が可能であり、これがマックスバリュ東海の新店ラッシュを支えている財務余力である。

   このように、マックスバリュ東海の2011年2月期、第3四半期決算は増収、大幅増益となったが、その要因は、堅固な財務体質に支えられた積極的な新規出店を行ったことに加え、「高コスト体質からの決別 オペレーション改革元年!!」を当事業年度のスローガンに掲げ、経費削減を実現したことが大きかったといえよう。ただ、経費削減は進んだとはいえ、マーチャンダイジング力はまだまだ低い状況であり、なお、一層の経費改善が課題といえよう。今後、本決算までわずかの期間であるが、今期は2期ぶりに、増収増益の好決算が期待できそうである。

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January 20, 2011

スーパーバリュー、2011年2月、第3四半期、増収減益!

   スーパーバリューが1/12、2011年2月期、第3四半期決算を公表した。結果は、売上高355.75億円(11.5%)、営業利益7.20億円(-6.5%)、経常利益6.01億円(-6.4%)、当期純利益2.73億円(-24.3%)と、増収とはなったが、減収となるやや厳しい決算となった。スーパーバリュー自身も、「食品スーパー業界及びホームセンター業界におきましては、企業間の低価格競争が引き続き激化する中、天候不順などの影響もあり、厳しい経営環境で推移いたしました。」と、コメントしており、経営環境、特に、低価格競争が厳しかったとの認識である。

   そこで、まずは、スーパーバリューが2桁の増収となった要因を見てみたい。今期のスーパーバリューの既存店は、101.2%であるので、その要因が新店にあることは明らかである。その新店動向であるが、スーパーバリューはここ数年、怒涛の出店を行い、急成長を遂げてきたといえる。直近の新店はSuper Value 等々力店(2010年12月:東京都世田谷区)であり、この決算に直接影響を与える新店は、これ以外に、Super Value 志茂店(2010年3月:東京都北区)である。現在、スーパーバリューは16店舗であるので、110%成長のためには年1.6店舗であるといえ、この2店舗の新店の影響が大きかったといえよう。

   また、それ以前もここ最近では、Super Value 大宮天沼店(2009年11月:さいたま市大宮区)、Super Value 荒川一丁目店(2009年10月:東京都荒川区)、Super Value 東所沢店(2009年7月:埼玉県所沢市)、Super Value 入間春日町店(2008年12月:埼玉県入間市)、Super Value 川口前川店(2008年11月:埼玉県川口市)と、合計5店舗、今期を含めると7店舗と、全店舗の約半分がここ数年である。しかも、2008年 2月にジャスダック証券取引所に上場しているので、この上場を機に一気に店舗数を拡大しており、現在もその勢いが続いているといえる。

   ただ、気になるのは、減益、この第3四半期決算が-6.5%の営業減益となったことである。これに対し、スーパーバリューは、「利益面では、仕入原価の引き下げや値下げ・廃棄ロスの削減への取り組みのほか、平成22年4月からのSM及びHC事業部の物流センター一本化、資材センター導入(包装・資材の発注を1社に集約)、チラシ用紙・配布エリア・部数の見直しなど、経費節減への取り組みが効果を見せつつありますが、低価格競争の継続やポイント値引き・換金による売上総利益率の伸び悩みに加え、今後の新店要員の早期確保並びに本格的な新卒採用活動開始に伴う正社員42名の増加(前連結会計年度末比)、簡便法から原則法への変更による退職給付費用8百万円の増加、3月26日に新規出店しました志茂店(東京都北区)の出店一時経費22百万円のほか、志茂店の出店予定が月末に変更となったことによる店舗損益の悪化などにより、・・」と、コメントしている。要は、ポイント値引き、新店へ向けての人件費増、退職給付費用の増加、新店の経費等、経費増が営業利益を圧迫したとのことである。
 
   そこで、改めて、スーパーバリューの原価、経費面から営業利益が減益になった要因を見てみたい。まずは、原価であるが、79.89%(昨年79.88%)と、原価は0.01ポイント上昇しているが、ほぼ昨年と同じ水準で推移している。激しい価格競争の中で、健闘しているといえる。結果、売上総利益は20.11%(昨年20.12%)となった。食品スーパーマーケット業界の決算公開企業約50社の前期決算平均の売上総利益が25.0%であるので、強力なディスカウント構造であるといえよう。

   一方、経費の方であるが、18.72%(昨年18.39%)と、スーパーバリューも先にコメントしているように、経費に関しては0.33ポイントの上昇が見られる。それにしても、経費比率18.72%は、これも食品スーパーマーケット業界の決算公開企業約50社の前期決算の中ではベスト5に入る低さであり、この経費比率の低さが、売上総利益20.11%のディスカウント戦略を支えているといえよう。結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は1.39%(昨年1.73%)となり、これが減益の要因となったといえる。これに、物流収入、不動産収入等のその他営業収入が0.64%(昨年0.69%)加わり、結果、営業利益は2.03%(昨年2.42%)となり、減益となった。こう見ると、原価はほぼ昨年通りの水準を維持できたが、経費が予想以上に上昇したため、減益を余儀なくされた構図であり、今後、経費コントロールをいかに図ってゆくかが課題といえよう。

   このように、スーパーバリューの2011年2月期の第3四半期決算は、経費増が利益を圧迫し、好調な売上増にも関わらず、減益となる決算となった。その経費増の要因は、スーパーバリューのコメントにもあるように、「ポイント値引き、新店へ向けての人件費増、退職給付費用の増加、新店の経費等」と限定されており、新店がらみの経費増が大きいといえる。これまで、積極的な新規出店により、急成長を遂げ、経費を相殺してきた感があるが、ここへ来て、やや出店ペースが鈍ったこともあり、その収支バランスが経費増に傾いた結果といえよう。したがって、来期、再度、成長戦略に舵を切るか、それとも既存店の活性化に注力するか、スーパーバリューがどちらの方針を打ち出すか注目である。

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January 19, 2011

大黒天物産、2011年5月期、中間決算、増収増益!

   大黒天物産が1/12、2011年5月期、中間決算を公表した。結果は売上高430.23億円(12.0%)、営業利益22.65億円(10.4%)、経常利益 22.60億円(10.2%)、当期純利益10.49億円(-2.6%)となり、増収増益の好決算となった。なお、当期純利益が伸び悩んだ要因は、「資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額として特別損失に2億5千9百万円を計上したことにより、・・」とのことである。それにしても、食品スーパーマーケット各社の直近の決算が利益は比較的好調であるが、売上高が伸び悩んでいる中、大黒天物産は売上高も好調であり、バランスのとれた増収増益であるといえる。

   そこで、まず、大黒天物産の売上高が好調に推移した要因を見てみると、「6月に旧生鮮市場ハッピィ中島店をディオ倉敷西店(岡山県倉敷市)に新築移転」、そして、「新規出店として9月にディオ久世店(岡山県真庭市)、10月にディオ妹尾店(岡山市南区)をオープンするとともに、既存店のリニューアルとして9月にディオ倉敷店(岡山県倉敷市)を増床しリニューアルオープン、・・」とのことであり、順調に新店開発、そして、リニューアルが進んでいることが大きいといえよう。現在大黒天物産は58店舗であるので、年間5から6店舗の安定的な新規出店ができれば2桁の成長が可能といえ、ほぼ、そのペースで推移しているといえる。

   一方、今期は利益も2桁の増益と好調に推移している。そこで、その好調な要因を原価、経費面から見てみたい。まずは原価であるが、77.46%(昨年77.18%)と0.28ポイント上昇している。大黒天物産自身も、「小売業界におきましては、雇用情勢の厳しさと所得環境の先行き不透明感を背景に値下げによる価格競争がさらに激化しており厳しい経営環境が続いております。」とコメントしており、厳しい価格競争が繰り広げられていることがわかる。このような状況の中、大黒天物産は、「購買頻度の高い商品約100品目以上を2割から5割値下げした「生活応援宣言セール」を引き続き実施するとともに、11月には岡山、倉敷、備後エリアの各店舗において、曜日替わりの超特価セール「大黒天感謝セール」を実施し、・・」と、価格競争を積極的に仕掛けており、これが、原価上昇要因となったものと思われる。結果、売上総利益は22.54%(昨年22.82%)となった。

   これに対し、経費の方であるが、17.26%(昨年17.47%)と0.21ポイント削減しており、原価とは一転、経費の削減が進んでいる。これに対し、大黒天物産は、「管理面におきましても、管理コストの一層の見直しと作業効率の改善による販売費及び一般管理費の圧縮と「ウィークリーマネジメント」による数値管理の徹底を図ってまいりました。」とのことで、これらの施策が経費削減につながったものといえよう。ただ、原価の上昇分0.28ポイントをカバーするまでには至っておらず、もう一段と経費改善を目指したいところであろう。ただ、この経費比率、17.26%は決算公開企業約50社の前期決算に当てはめるとベスト3に入る経費の低さであり、食品スーパーマーケットとしては、限界に近い数字といえよう。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は5.28%(昨年5.35%)となり、0.07ポイントとわずかであるが、下がった。大黒天物産の場合はその他営業収入が0であるので、イコール、営業利益となる。残念ながら、営業利益率は昨年よりも若干下がったが、売上高が2桁上昇したことにより、率でのマイナスを高でカバーし、営業利益高は昨対10.4%増となり、増益となった。
   
   それにしても、営業利益が5%を超える高収益を、今期のように原価が上昇する中でも達成しており、改めて、大黒天物産の経費コントロールの強さが鮮明になった決算といえよう。特に、経費に関しては、大黒天物産は通常、食品スーパーマーケットが出店に多額の資産を計上し、経費としての減価償却費が大きくなるところを、極力を資産を押さえての新規出店に取り組んでおり、出店段階から経費の削減を図っている。決算公開企業約50社の前期の1店舗当たりの出店にかかわる資産は約5億円弱であるが、大黒天物産は約2億円弱であり、半分以下で出店が可能である。したがって、これが出店ペースを引き上げ、同時に減価償却費を引き下げる源泉となっており、結果、営業利益増、売上増の同時追求ができる仕組みを実現しているといえ、今期のような厳しい経営環境の中でも高収益を生み出す秘訣といえよう。
   
   このように、2011年5月期の大黒天物産の中間決算は増収増益、しかも、いずれも2桁のアップであり、好調な決算結果となった。ただ、やや気になるのは経費の改善は進んでいるが、若干、原価の上昇が見られ、しかも経費の削減以上に上昇している点である。それだけ、ここへ来て、強力なディスカウント戦略を採用する大黒天物産においても、経営を取り巻く環境は、特に、価格競争が厳しい状況にあるといえ、その影響を受けたものといえよう。今後、原価の改善は厳しいものがあるといえ、大黒天物産としては、すでに限界に近い経費比率であるが、さらなる改善が課題となろう。次の第3四半期、そして、本決算へ向けて、どのように経費の改善をはかってゆくのか、その動向に注目である。

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January 18, 2011

ライフコーポレーション2011年、第3四半期、増収増益!

   ライフコーポレーションが1/13、2011年2月期、第3四半期決算を公表した。結果は、営業収益3,570.67億円(1.7%)、営業利益67.54億円(12.9%)、経常利益65.34億円(14.3%)、当期純利益35.65億円(16.5%)と、増収増益となる好決算となった。ライフコーポレーションは現在、首都圏95店舗、近畿圏121店舗、合計216店舗(1/13現在)を展開しており、日本の食品スーパーマーケットの中でもマルエツの256店舗につぎ、店舗数が多い。しかも、首都圏と近畿圏双方にバランス良く店舗展開をしており、食品スーパーマーケットとしては東西でのドミナント化をはかっている稀なケースである。

   この第3四半期決算における新店であるが、「3月に奥戸店(東京都)、4月に石津店(大阪府)、6月に神田和、泉町店(東京都)、8月に西天下茶屋店(大阪府)、9月に岸部店(大阪府)、10月に南千住店(東京都)・本山店(兵庫県)」の7店舗を新規出店しており、これら新店が営業収益の増収に寄与したといえよう。ただ、全体が216店舗であるので、105%の成長をはかるには10店舗以上欲しいところであり、後半、どこまで出店ペースを上げられるかが、さらなる増収を図ることができるかどうかのポイントとなろう。食品スーパーマーケットは一般に、既存店はトントン、新店により成長を維持してゆく業態であるので、新店の動向が成長戦略の鍵を握っているといえる。

   ちなみに、今期のライフコーポレーションの投資活動によるキャッシュフローであるが、-103.24億円(昨年-81.27億円)であり、その中身、特に、新店等にかかわる項目、有形固定資産の取得による支出であるが、-88.59億円(-68.27億円)である。ライフコーポレーションの1店舗当たりの出店にかかわる資産が、前期決算時で見ると約4.5億円であるので、約20店舗となるが、この中には物流センターへの投資、約20億円もあるといえ、実質約70億円、店舗数では約15店舗となり、出店意欲は極めて高いといえる。したがって、本来、もっと出店ペースを上げたいところであろうが、やや抑制気味の出店ペースといえる。今後も、おそらく新店開発は堅調なペースで続くものと予想され、今期はもちろん、来期も新店による増収確保は可能と思われ、いつ出店ペースを上げるか、気になるところである。

   一方、利益面であるが、営業収益に比べ、2桁の増益である。そこで、好調な増益を確保した要因を原価、経費面からみて見たい。まずは原価であるが、73.84%(昨年73.98%)となり、-0.14ポイント改善している。今期、ライフコーポレーションは、「平成21年10月の近畿圏に引き続き首都圏においても北部の新物流拠点として「松戸総合物流センター」を稼働いたしました。これにより、更なる物流機能の向上と店舗運営の効率化に努めてまいります。」と、首都圏において物流センターを稼働しており、今後、さらに、原価改善等につながってゆくものと思われる。結果、売上総利益は26.16%(昨年26.02%)となった。

   これに対し、経費の方であるが、27.17%(昨年26.93%)と0.24ポイント増加している。残念ながら、原価以上に経費の上昇が見られ、結果、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-1.01%(昨年-0.91%)と、依然としてマイナス、しかも、若干、下がっており、マーチャンダイジング力に関しては、経費の上昇が原価の改善を上回り、厳しい結果となった。

   したがって、マーチャンダイジング力は厳しい結果となったが、営業利益は2桁増であるので、その他営業収入、すなわち、物流収入、不動産収入等の増加が大きかったものと推測できる。そこで、その他営業収入を見ると、2.97%(昨年2.67%)と0.30ポイント上昇しており、結果、営業利益は1.96%(昨年1.76%)となり、増益となった。したがって、営業利益が2桁増となった要因は経費の上昇を原価の改善と、その他営業収入で補った構図であり、今後、経費をいかに引き下げるか、課題が残る決算といえよう。

   ちなみに、ライフコーポレーションは、今期を、「当社は更なる競争力の強化と生産性の向上を図るべく、平成20年度よりスタートした「第三次中期3カ年計画」の「12の課題」に引き続き取り組むとともに、3年目の当期を「耐える年」「立て直しの年」「準備の年」と位置づけ、お客様の視点に立ったスーパーマーケットとしての「基本事項の徹底」に努め、総合力で差別化を図り、お客様に信頼していただけるお店づくりに注力いたしております。」と位置付けており、今年は耐え、立て直し、準備の年であるとのことである。

   このように、ライフコーポレーションの2011年2月期、第3四半期決算の結果は増収増益、しかも利益は2桁の増益となる好決算となった。ただ、その中身は、特に利益面においては経費の増加が見られ、これを原価の改善と、その他営業収入でカバーしての増益であり、課題を残す決算となったといえよう。ライフコーポレーションとしては、今後、経費の改善をどうはかってゆくかが当面の課題といえ、来期からはじまる次の経営計画に経費削減をどのように反映してゆくのか注目である。

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January 17, 2011

ワインID-POS分析、Chain Store Age、2011年、01/15号!

  「ワインの顧客を熟成し、店格を上げよ!」の見出しで、Chain Store Age、2011年、01/15号にワインのID-POS分析を投稿した。これまでChain Store Ageには数多くの記事を投稿しているが、ID-POS分析ははじめてであり、しかも、1店舗であるが、丸1年間の全顧客、全ワインのID-POS分析である。これにより、ワインの全貌をつかむことがはじめて可能となった。特に、重視したのはワインのロイヤルカスマーの実態である。ワインのロイヤルカスタマーの分析に留まらず、ワインの購入顧客が店舗全体にいかに貢献しているのかまで明らかにし、結果、ワインの顧客が店舗への貢献度が極めて高いロイヤルofロイヤルであることが実証できたといえる。

   今回の分析には、通常のPOS分析ではTOPNAVI-NETを活用し、ID-POS分析に関しては、広島県の食品スーパーマーケット、フレスタ上天満店の協力を得た。何しろ、ID-POS分析は1店舗でも1年間、ワイン全商品、全顧客となると莫大なデータとなる。生データから基本帳票を作り上げ、分析帳票に落とし、解析をしていったので、これまでの通常のPOS分析とは質、量ともに比較にならない分析となった。基本が100万件単位となる分析であるので、結果を算出するにもかなり苦労したが、本誌に掲載したとおり、4ページに数表4つとコンパクトに何とかまとめきることができた。

   その骨子であるが、4つに分かれている。その4つとは、「ワインの顧客は店舗のロイヤルカスタマーである!」、「ワインのロイヤルofロイヤル顧客とは?」、「購入頻度、平均単価に着目!」、「金額PI値に着目せよ!」である。それぞれ、結論となる数表を掲げているので、わかりやすくワインのID-POS分析による実態を説明しえたのではないかと思う。

   ちなみに、ID-POS分析と通常のPOS分析との決定的な違いは、顧客IDが把握できるかどうかのみである。これ以外は技術的には大きな違いがない。ただ、この顧客IDが把握できるがゆえに、これまでのPOS分析では見えなかった顧客の購入実態が把握でき、それが新たなマーチャンダイジング戦略、そして、顧客IDに直接働きかけるマーケティング戦略の構築へとつながってゆく点がパラダイムシフトといえよう。

   本文は本誌を読んでいただくとして、ここでは、本誌に掲載した4つの図表について簡単に補足しておきたい。まず図1であるが、大分類(全92分類)別ID金額PI値ランキングトップ20である。ここでのID金額PI値はワインでなく、ワインの購入顧客の内、トライアル(一見さん)を除いた顧客がワインを含め全商品をどのくらい購入したかの総買上金額を示している。他の大分類も同様な分析をしており、結果、ワインは顧客ID当たり166,291円となり、トップクラスとなった。ただ興味深いことに、上位カテゴリーに果物が数多くランクインしており、ワインと果物はこの結果を見る限り、店舗全体のロイヤルカスタマーを共有しているといえ、クロスマーチャンダイジングを検討しても良いといえよう。

   次に図2であるが、ワインのロイヤルofロイヤルカスタマーベスト20である。これはワインの年間購入顧客4,106人の年間のワインと全商品双方の購入履歴をつぶさに分析し、どちらもロイヤルとなったロイヤルofロイヤル267人を抽出し、そのID金額PI値のベスト20の顧客を掲載したものである。これも、興味深いことに、ワインが店舗への来店動機となっている顧客がトップクラスには数多くいることが明らかになった。しかも、先の平均的なリピート(馴染み客)のID金額PI値166,291円を大きく上回り、318,356円と約2倍、ワインのみでも22,187円と平均の3,239円を圧倒する数字であり、まさに、ロイヤルofロイヤルと呼べよう。

   そして、図3はワインの顧客ID1人当たりの売上高ベスト30であり、いわゆる、ID-POS分析のワインの商品分析である。図1、図2が顧客分析であったが、この図3は商品に焦点を当てた典型的なID-POS分析である。注目はID-POS分析特有のID金額PI値はもちろんであるが、ID客数PI値であり、ここではじめて頻度分析が可能となる。なお、頻度に関しては、今回さらに月頻度を加え、年間継続的に購入しているかどうかも分析に加えた。こう見ると、ID金額PI値の高い商品はID客数PI値、平均単価が高いのが特徴といえよう。

   最後、図4は2010年6月15日号で掲載されたワインの重点商品である。これはID-POS分析のマーチャンダイジングのポイントはID金額PI値を引き上げることであるが、ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値であるので、金額PI値の高い商品を強化することが課題となる。そこで、自社の金額PI値が高い商品はもちろんであるが、さらに、世間で金額PI値の高い商品を強化することもポイントであると考え、敢えて、前回のワインの投稿記事から、金額PI値に着目して掲載したものである。

   このように、恐らくChain Store Ageでもはじめて、本格的なID-POS分析の実際のデータを用いてのMD特別レポートとなったと思うが、これまでのPOS分析にはない角度からのマーチャンダイジングの改善、そしてID-POS分析特有のマーケティング戦略の立案のヒントが数多く読み取れる内容となったといえよう。限られた紙面での掲載であるが、このID-POS分析の結果を自社のワイン売場の活性化につなげ、店格アップを目指して欲しい。

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January 16, 2011

Power Category、Chain Store Age、2011年、01/15号!

   Chain Store Age、2011年、01/15号で恒例のPower Category 2011の特集が組まれた。今回は、2010年度上半期のPOSデータであり、2010年4月から9月までの6ケ月間である。POSデータはRDS/POSデータを凸版印刷が独自に加工した「TOPNAVI-NET」であり、全国約100チェーン、約400店舗の食品スーパーマーケット等のPOSデータである。私も冒頭に、「Power Categoryで売場を活性化せよ!」というタイトルで解説しているので、参考にしていただければと思う。

   さて、その内容であるが、まずは、解説でもまとめたように、このPower Categoryを活用して実際の食品スーパーマーケットの活性化にいかすには、3つのポイントがある。今回のPower Categoryを参考にする際、是非、この視点をつけ加えたていただければと思う。1つ目は「重点商品を限界まで追求せよ!」、2つ目は「トレンドをつかみ、大胆な仮説をつくれ!」、そして、3つ目は「地域性を熟知せよ!」である。特に、記事の中では、それぞれ、典型的なPower Categoryについて、グラフを付け加えたので、その実態が鮮明であると思う。記事の内容については、Chain Store Ageを読んでいただくとして、ここでは、その3つのグラフについて、記事の補足として解説してみたい。

   まずは、1つ目のグラフであるが、Power Categoryに限らず、食品スーパーマーケットのカテゴリーは約300ぐらいあり、この約300のカテゴリーを商品部を中心に店舗の現場を巻き込んで活性化してゆき、店舗全体、そして、チェーン全体の活性化につなげてゆくという流れである。そこで、この約300のカテゴリーをつぶさに見ると、大きく2つのタイプに分けることができる。重点商品、ここでは、売上シェアベスト10が、概ね、売上げの50%を超えるカテゴリーとそれ以下のカテゴリーである。

   この2つは活性化の方向が正反対であり、同じやり方で活性化をしていっても、場合によっては正反対の結果がでる可能性がある。ただ、重点商品をしっかり強化することはどちらも第1ステップであり、変わらない。今回の記事では、ここに焦点を当て、第1ステップを中心に解説した。したがって、この第1ステップで特に効果のでるカテゴリーをピックアップし、グラフにしたものである。食品ではマヨネーズ(75.07%)、チルドカップコーヒー(74.43%)、ドリンク剤(65.13%)、風味調味料(56.18%)、中華調味料(54.46%)、卵(51.16%)、ルウカレー(50.67%)であり、酒、雑貨では、ビール(56.06%)、ウイスキー(54.75%)、発泡酒(53.23%)、除湿剤(78.64%)、ティシュペーパー(71.26%)、ローソク(54.17%)、防虫剤(56.05%)である。

   これらのカテゴリーは重点商品の強化如何で全体の売上げが大きく変わる可能性が高く、重点商品の活性化=カテゴリー全体の活性化といえるカテゴリーといえる。実際の単品については、Chain Store Age、2011年、01/15号で確認していただきたい。ちなみに、これ以外のカテゴリーは構成比が50%を切るので、重点商品も重要であるが、それ以上に品揃えが重要であり、ベスト10以外にも、11番目以降、さらには、ベスト50ぐらいまで目を配る必要があるカテゴリーもあるので、これらについては、活性化のウェートを変える必要がある。

   次に、2つ目のグラフであるが、ここでは、Power Categoryからトレンドをつかむことの重要性を解説したものである。グラフでは、猛暑の影響を7つのカテゴリーでグラフ化して比較した。この内、6つは明らかに猛暑の影響が大きかったカテゴリーであるが、7つ目の発泡酒は、意外に猛暑の影響がなく、むしろ、逆に昨対100%を大きく下回ったために、比較のために入れたカテゴリーである。これ以外の、キムチ、チルドカップコーヒー、ドリンク剤、ファミリーアイス、室内用芳香剤、ビールは、昨対100%を優に超え、明らかに猛暑の影響が大きいと思われるカゴゴリーといえよう。Power Categoryでは、このような分析もできるので、大いに活用して欲しいところである。

   そして、3つ目のグラフであるが、北海道と九州で特に強いカテゴリーのグラフである。前回のPower Categoryの解説の時、首都圏の比較を掲載したので、今回は敢えて、北海道、九州と両極端のグラフを作成してみた。結果、びっくりしたのは、平均に対して100%を超えたカテゴリーは1つも重ならなかった。特に、北海道ではワイン(果実酒)(167.6%)、ウイスキー(146.7%)、ビール(131.0%)と、酒類が極めて強いという結果となった。一方、九州では、身体洗い用品(144.9%)、ヘアカラー(144.0%)がNo.1、No.2であり、食品、酒、菓子よりも雑貨が強いという結果であり、意外である。また、ガムが122.9%と九州が強く、これも意外な結果であった。

   このように、Chain Store Age、2011年、01/15号では、ここにあげたPower Category以外でも、今、最も店舗の活性化にとって重要と思われるカテゴリーが単品レベルまで掲載され、昨年対比、地域間比較も試みられているので、食品スーパーマーケット、ドラックストア、ホームセンター等にとっては参考になる貴重なデータであるといえる。これを機会に、是非、これらのカテゴリーを見直し、改めて、各Power Categoryの重点商品を確認し、自社の売場の活性化につなげて欲しいところだ。

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January 15, 2011

流通システム開発センター、新春トップセミナーに参加!

   この時期は新春セミナーが多いが、1/13、(財)流通システム開発センター主催、第25回、新春トップセミナーに参加した。昨年、同センター主催のRDS/POSセミナーで講演させていただいた関係もあり、日程もうまく調整できたので、セミナーの最初から参加することができた。総武線信濃町駅からすぐ近くにある明治記念館で15:00から16:45までセミナー、その後、17:00から19:00まで懇親会というスケジュールである。セミナー会場は満杯、500人を超えたという。懇親会では経済産業省の来賓祝辞もあり、懇親会も満杯だった。

   セミナーは2部構成、第1部が国際流通研究所の代表、二神康郎氏による「グローバル小売業の世界戦略」、第2部が三菱商事株式会社の代表取締役社長、小林健氏による「構造変化と多様性の時代」であった。どちらも共通していたのは、中国、アセアンとの関係が今後の日本経済の成長の鍵を握っているとのことで、特に、小林氏の話は総合商社からの視点であり、興味深い内容だった。

   そこで、セミナーで印象に残っている点を改めてまとめてみたい。余談だが、セミナーに参加した時は原則、電子メモを取ることにしている。以前はレジュメやノートにメモをとったり、ICレコーダーを使ったりしていたが、この5年間はノートをもったことがなく、筆記用具ももたない生活が続いている。すべて、電子メモであり、シャープの少し古いタイプであるが、Zaurusである。小さなキーボードもついており、両方の親指でタッチし、ワープロ代わりに使っている。今回のセミナーの内容もすべて、電子メモのみである。

   まずは、国際流通研究所の代表、二神康郎氏の講演であるが、小売業のグローバル化がはじまったのは、1929年のアメリカのウールワースがイギリスへの出店したことからであるとのことである。1929年といえば、大恐慌の年であり、この時、アメリカからヨーロッパへと打って出たわけであり、新たな市場への活路を開いた動きであったものと思われる。ちなみに、日本の最初のグローバル化は、1960年の大丸百貨店の香港出店であるという。その後、日本では第1次の小売業の海外進出ブームが起こり、百貨店はもちろん、食品スーパーマーケットではサミット、いなげや等が海外へ出店していったという。

   ところがヤオハンの倒産を機に、いっきにブームがしぼみ、1995年頃から日本の流通業の撤退がはじまり、サミットもいなげやも2000年初頭には撤退したという。そして、いまが第2次の小売業の海外進出ブームが起こりつつあり、主役はコンビニ、イオン、セブン&アイHのGMS+SCであるという。

   では、これをグローバル化というかというと、二神氏はグローバル化には4つの定義があるという。まず、4大陸に出店していること、出店国が20カ国以上であること、シェアがベスト3に入っていること、そして、国際化比率が全売上高の40%以上であることであるという。こう見ると、日本の小売業はまだまだいずれの定義にも遠く及ばず、グローバル化にはまだまだ時間がかかるといえ、まずは、中国、アセアン等にどれだけ参入できるかが当面のアクションといえよう。

   次に、小売業にはない視点、総合商社からの視点で講演された三菱商事株式会社の代表取締役社長、小林健氏の講演であるが、興味深いものであった。冒頭に商社という日本独特の解説から入り、これまでは、ラーメンからミサイルまでといわれていたが、最近は、コンビニから鉱山会社までが商社の特徴であり、特に、商社も販売よりも投資が重要な役割になってきたとのことである。

   また、今回のテーマ、「構造変化と多様性の時代」の構造変化については、今後、5年で日本のGDPの約70%に匹敵する富が中国1国で生まれるとの認識であり、インド、アセアン等では、東京都のGDPに匹敵する富が生まれるということである。しかも、そのほとんどがインフラからはじまるという。したがって、この新たな富に日本がどうかかわってゆくかが、日本の成長そのものを左右することになるとのことである。この数年の間に、日本のあらゆる企業が国内か海外か、その戦略を判断せざるをえなくなり、覚悟が問われるとのことである。その意味で、日本は国づくりに参加し、国づくりを支援してゆくことになり、事業としても、意義深いことだと強調していた。

   このように、今回の(財)流通システム開発センター主催の新春セミナーに参加し、じっくり、講演を聞いたが、2人の方ともに共通しているのは中国、アセアンとの日本の今後のかかわり方である。国際流通研究所の二神氏は小売業の第2次海外進出ブームの到来となったことを解説し、三菱商事の小林氏は日本全体がどうこの構造変化に対応すべきかを説いていたことである。しかも、期限は、今後5年である。10年、20年先の話ではなく、わずか5年先の話であり、まったなしの状況である。これまでは10年ひと昔という言葉があったが、今後は、5年ひと未来という言葉が新たに必要な言葉であるといえ、この5年ひと未来をどう認識し、いま、どのような手を打つかが、小売業はもちろん、日本全体にとっても重要なことであると思った。

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January 14, 2011

アークス、2011年2月期、第3四半期決算、増収増益!

   アークスが2011年2月期、第3四半期決算を公表した。結果は、売上高2,247.90億円(16.3%)、営業利益65.26億円(7.0%)、経常利益71.23億円(7.8%)、当期純利益40.43億円(15.5%)と、増収増益の好決算となった。特に、東光ストアが連結されたことが大きく、アークス自身も、「東光ストアの業績が通年で寄与し、売上利益共に大きく伸長いたしました。」と、コメントしている。しかも、この結果、通期売上高予想は3,070.00億円(13.4%)となり、いよいよ、大台の3,000億円を突破することが確実となった。

   北海道は、「競合他社の相次ぐディスカウント業態への転換など低価格競争は依然として続いており、また、猛暑などの異常気象の影響で農作物や海産物が品不足になるなど、より迅速な環境変化への対応が求められてきております。」とのことで、厳しい経営環境の中、アークスは好調な経営を維持しており、今後、北海道の食品スーパーマーケット業界はアークスを主軸に動いてゆくことになろう。

   ただ、やや気になるのは売上高の伸びに対して、営業利益率の伸びが低いことである。そこで、その要因を原価、経費面から見てみたい。まずは原価であるが、77.15%(昨年77.37%)と、-0.22ポイント改善した。アークスも、「利益の安定的な確保を図るべく、値入ミックスや生鮮食品の適切な加工・品出しを行うなど、ロス対策にも取り組んでまいりました。」とのことで、これらの対策が功を奏したといえよう。結果、売上総利益は22.85%(昨年22.63%)となった。食品スーパーマーケット業界の前期決算公開企業約50社の平均が25.0%であるので、かなり低くい数字である。

   一方、経費の方であるが、19.93%(昨年19.46%)と、0.47ポイント上昇している。原価の改善は進んだが、それを上回る経費の上昇が見られる。経費関連では、「グループシナジーの更なる向上策として、来年度に稼働予定の次世代システムの構築や東光ストアのグループ入りに伴う人事給与システムのバージョンアップ、加えてアークスRARAカードについては、ポイント連携企業の拡大により利便性を高めた結果、会員数が155万人を超えるなど、顧客サービスの拡充にも引き続き取り組んでまいりました。」とのことで、今期は東光ストアを連結したことにより、様々な経費がかかったものと思われる。また、アークアスはここ最近ポイントカードにも力を入れており、その結果、固定客化が進む一方、経費の方も増加しており、今年度のポイント引当金繰入額は17.83億円(昨対28.18%増)となり、経費比率も0.79%と、経費項目の重点管理項目となったといえる。

    結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は2.92%(昨年3.17%)と、昨年よりも減少した。この第3四半期においては経費増が経営を圧迫した構図である。アークスの場合は、その他営業収入が0計上であるので、マーチャンダイジング力=営業利益となり、昨対の比率を見る限り、減益となった。ただ、今期は東光ストアの連結もあり、売上高が大きく増加したために、額ではこれらの比率を相殺し、増益となった。

   こう見ると、東光ストアの連結は経営的に見ると、売上高の大幅な増加をもたらしたが、それに伴う経費増が経営を圧迫し、利益面ではやや厳しい結果となったといえよう。今後、この経費をどう相殺してゆくかが、課題といえる。アークスも、グループのシナジー効果に積極的に取り組んでいるとのことで、来期以降、その効果が表れてくるものといえよう。

   さて、率ではやや厳しかったが、額では好調な増益決算を受けて、財務改善も進んでいる。特に、財務活動によるキャッシュフローを見ると、有利子負債の返済が43.28億円なされており、結果、負債面における有利子負債は160.77億円(前期決算時204.05億円)と、大きく減少しており、総資産1,191.03億円の13.49%となった。これに伴い、自己資本比率も55.1%(昨年52.5%)と、改善しており、好決算が財務改善につながったといえる。また、投資活動によるキャッシュフローでも有形固定資産の取得による支出-24.30億円(昨年-16.26億円)と増加しており、新店への投資、すなわち、攻めの姿勢が鮮明である。したがって、今期は「新規出店3店舗、移転新築3店舗、業態変更含む改装12店舗、閉店2店舗を実施」であったが、恐らく、今期以上の新規出店による成長が期待できよう。

   このように、アークスの2011年2月期の第3四半期決算は増収増益、特に東光ストアの連結により、大幅な増益となり、待望の年商3,000億円がほぼ確実となったといえよう。反面、それにともなう経費増が見られ、利益面では原価が改善したものの、経費増が大きく、率ではやや苦戦気味の決算となった。一方、財務面では、この好調な決算結果が財務改善、そして、積極的な投資へとキャッシュを振り向けることができ、自己資本比率を引き上げつつ、攻めの経営に踏み出すことができているといえる。来期はさらに、成長が期待できると同時に、財務の改善も一層進むものといえ、アークスがどのような経営戦略を打ち出すか、次の一手に注目である。

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January 13, 2011

ベルク、2011年2月期、第3四半期、増収増益!

   ベルクが1/5、2011年2月期、第3四半期決算を公表した。結果は、売上高810.81億円(6.3%)、営業利益37.13億円(22.0%)、経常利益38.71億円(19.8%)、当期純利益21.60億円(23.0%)となり、増収増益、特に、利益は2桁増益の好決算となった。今期、特に、ベルクが取り組んだポイントは、「消費者の生活防衛意識に応えるべく、購買頻度の高い商品群の価格強化を一層推進するとともに、商品力の強化及び売場づくりの活性化を図りました。」とのことであり、商品力の強化、売場づくりであるという。

   そこで、今期、特に、利益が大きく改善した要因を原価、経費面から改めて見てみたい。まずは、原価であるが、74.56%(昨年74.73%)となり、0.17ポイント改善している。原価改善について、ベルクは、「当企業集団では自社物流センターを保有しており、計画的な一括集中仕入、自動検品仕分システムの活用により、店舗作業の省力化及び効率化をバックアップする体制を構築しております。」とのことで、計画的な一括集中仕入れが原価の改善に寄与しているものといよう。

   ちなみに、物流センターは食品スーパーマーケットにとって3つの意義があり、ひとつ目は、原価低減、2つ目はその他営業収入の増大、そして、3つ目は店舗経費の削減である。したがって、この改善効果が物流センターへの投資及び経費を賄うだけの規模となれば、物流センターが直接、間接に利益をもたらすことになる。ベルクは現在店舗数で66店舗、今期売上高予想が1,058.07億円であるので、十分に効果を得られる規模であるといえよう。したがって、ベルクにとっては物流センターの活用は原価、経費の改善、そして、その他営業収入を確保する戦略的な経営資源であるといえる。

   また、ベルクはこの物流センターについて、経理上の改革を今期行っている。「従来、物流関連費用については、販売費及び一般管理費に計上しておりましたが、第1四半期連結会計期間より、営業収入に計上している「物流収入」(仕入取引先から当社物流センターへ納品される商品の店舗への配送業務に対して仕入取引先から受け取る収入等)より控除する方法に変更いたしました。」とのことで、物流センター関連の経理をその他営業収入に計上し、物流センターの戦略的位置づけを財務的にも明確にし、今後の経営戦略に物流センターが経営にとって重要な戦略拠点になると位置づけたといえる。

   その意味で、食品スーパーマーケットにとって、年商1,000億円は、物流体制を本格的に整え、物流センターが原価、経費の改善、そして、その他営業収入を生み出す分岐点となる規模であるといえ、新たな経営の次元に入る単なる数字の規模でなく、質が問われる転機となる規模であるといえよう。さらに、ベルクは、「なお、第1四半期連結会計期間より、取引先から受け取る仕入リベート契約の変更を行いました。これにより、前連結会計年度までは第2四半期及び第4四半期に集中しておりました仕入リベートは、商品の仕入に応じて四半期ごとに計上されます。」とのことであり、仕入れリベートの変更も同時に実施しており、キャッシュフローの平準化に取り組んでいる。これも、物流センターが経営戦略の要になったからこそできる仕組みの変更であるといえる。

   さて、原価であるが、結果、売上総利益は25.44%(昨年25.27%)となった。一方、経費の方であるが、22.38%(昨年25.39%)と、3.01ポイントと大きく改善しているが、これが先に上げた物流センター費用の影響によるところがあり、来年度の決算を見ないと正確には判断できないが、これを加味しても、経費削減は進んでいると思われる。結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は3.06%(昨年-0.12%)と、大きく改善した。これに、物流収入、不動産収入等のその他営業収入が1.53%(昨年4.12%)のり、営業利益は4.59%(昨年4.00%)と、大幅な増益となった。

   それにしても、物流関係の決算の変更が、経費、その他営業収入にこれだけ、大きな影響を与えているといえ、食品スーパーマーケットの年商規模が1,000億円を超えると、物流センター、すなわち、ロジスティックスがこれだけ経営に大きな影響を与えることが、ベルクのこの第3四半期決算を見ると鮮明である。今回、たまたまベルクが会計処理を変更したことにより、判明した事実であるが、改めて食品スーパーマーケットにとって、年商1,000億円が経営の質の変化を決定づける分岐点になるといえよう。

   このように、ベルクが2011年2月期の第3四半期の決算を公表したが、結果は増収大幅増益の好決算となり、特に経費の削減が物流センター費用を差し引いても、明らかに改善されたといえる。ベルクは年商1,000億円となり、食品スーパーマーケットとしての新たな経営の転換点に入ったといえ、今後、物流センターが重要な経営戦略の要となり、原価、経費の改善、そして、物流収入を生み出す拠点となるものといえよう。今期残された決算はもちろん、今後、中長期的にベルクがどのような経営体制を構築するか、その動向に注目である。

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January 12, 2011

ダイエー、2011年2月期、第3四半期、減収減益!

   ダイエーが1/7、2011年2月期、第3四半期の決算を公表した。その結果は営業収益6,835.65億円(-6.5%)、営業利益-5.22億円(前期-40.37億円)、経常利益-39.55億円(前期-69.14億円)、当期純利益-46.97億円(前期-66.73億円)となり、減収減益の厳しい決算となった。ただ、昨年と比べ、赤字幅は縮小しており、改善の兆しが見える第3四半期決算である。

   特に、営業利益が改善した要因は、「営業損益につきましては、営業収益が前年同期を下回ったものの、開発商品の販売拡大や原価低減施策を推し進めたことによる荒利益率の改善、・・」に加え、「省エネルギー設備の導入拡大等の取り組みにより販売費及び一般管理費の低減が実現し、前年同期に比べ35億円改善の5億円の営業損失となりました。」とのことで、原価、経費共に、改善傾向にあるとのことである。

   そこで、改めて、ダイエーの第3四半期決算の原価、経費の状況を見て見たい。まずは、原価であるが、69.95%(昨年70.32%)と0.37ポイント改善している。ダイエー自身も、「開発商品を中心とした原価低減や高値入商品の売上構成比拡大、在庫管理の強化による商品回転率の向上等に努めることで、荒利益率の改善にも取り組んでまいりました。」とのことである。結果、売上総利益は30.05%(昨年29.68%)となった。

   一方、経費の方であるが、37.57%(昨年38.17%)と、0.60ポイント改善しており、経費の削減も進んでいる。これについては、「第1四半期に全国4つの営業本部に新設した「業務改革推進チーム」を中心に、店舗における商品補充、清掃等の定型業務の横断化や集中化を推進することで人時生産性の改善を図ると共に効率的な売場運営の実現に取り組んでまいりました。」とのことで、業務改革が寄与しはじめていると思われる。

   結果、原価、経費双方が改善しており、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-7.52%(昨年-8.49%)と、マイナス幅が縮まっている。ただ、経費比率37.57%は、まだ高めであるといえ、今後、黒字化に向けては一層の経費削減が課題といえよう。そして、これに、物流収入、ダイエーグループ全国約2,500のテナント等の不動産収入等が7.44%(昨年7.90%)のり、結果、営業利益は-0.08%(昨年-0.59%)と、わずかではあるが、赤字となった。

   原価、経費双方が改善したにも関わらず、残念ながら赤字となった要因はその他営業収入が0.46ポイント減少したことが大きかったといえよう。ただ、営業収益が-6.5%であるので、当然、不動産収入は営業収益に比例すると考えられるので、営業収益をいかに確保するかが今後、大きな課題といえよう。特に、今期は、「新規出店につきましては、ビッグ・エーで2店舗実施いたしました。また、不採算店舗及び老朽化店舗の閉鎖につきましては、当社で9店舗、子会社で56店舗実施いたしました。」とのことで、ダイエーでの新規出店はなく、不採算店舗の閉鎖が優先されており、営業収益を引き上げる体制づくりにはもうしばらく時間が必要といえよう。

   ちなみに、ダイエーの自己資本比率であるが、36.1%(昨年35.6%)と昨年よりは若干上昇が見られるが、依然として、70%以上を負債に依存する財務構造であり、当面、攻めよりも、守り、財務改善が経営の最優先課題という状況である。その負債の中意であるが、有利子負債は662.30億円(前期決算時780.78億円)と118.48億円削減しており、総資産4,112.78億円に占める割合は16.10%であり、有利子負債はさほど大きな負担とはなっていない。では、何が負担となっているかであるが、負担の大きい項目順に見てみると、最大の負債は、支払手形及び買掛金681.39億円(総資産対比16.56%)、ついで、退職給付引当金277.38億円(6.74%)、長期預り保証金217.13億円(5.27%)、その他198.61億円(4.82%)、未払金174.34億円(4.23%)、閉鎖損失等引当金166.08億円(4.03%)等である。

   したがって、これらの負債の圧縮が当面の経営課題であるといえ、ここをいかに改善し、攻めに転じられるかが課題といえよう。ダイエーは、「当連結会計年度から平成24年度までの「ダイエーグループ中期経営計画-Brilliant Daiei55」(以下「BD55」)を策定いたしました。当連結会計年度につきましては、次連結会計年度以降の拡大再生産に向けた基盤確立の期間と位置付け、既存事業の損益分岐点の引き下げによる体質改善に取り組んでおります。」とのことであるので、このBD55がその鍵を握っているといえよう。

   このように、ダイエーが2011年2月期、第3四半期の決算を公表したが、昨年と比べ原価、経費の改善が見られ、依然として赤字決算とはなったが、その中身が改善されつつあるといえる。ただ、新店開発に踏み込めるだけの財務体質の改善は依然として課題となっており、当面、リストラが優先され、厳しい状況にある。ダイエーとしては、今後、一層の財務体質の強化をはかり、今年度から策定したBD55をどう軌道に乗せるかが、黒字化の鍵を握っているといえよう。今期決算まではあとわずかであるが、今期決算結果はもちろんであるが、今後、中長期的にダイエーの経営改革がどのように進んでゆくのか注目である。
    
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January 11, 2011

イオン、2011年2月、第3四半期決算、増収増益!

   イオンが1/7、2011年2月期、第3四半期決算を公表した。結果は、営業収益3兆7,323.02億円(0.1%)、営業利益933.58億円(66.7%)、経常利益1,011.28億円(86.9%)、当期純利益491.21億円(前期は-99.26億円)となり、営業収益は伸び悩んだが、利益はいずれの段階でも回復、好決算となった。特に、今期は、「グループの中核をなすGMS(総合スーパー)事業を中心に、引き続きグループ全体で販売費および一般管理費を見直し、コスト構造改革に努めることで利益改善が一層進みました。」とのことで、GMSへの取り組みに力を入れたとのことである。

   そこで、まず、イオンの事業ごとの状況を見てみたい。イオンは事業を大きく4つに分けており、それぞれの営業収益、営業利益を見ると、総合小売事業3兆105.54億円(101.39%、構成比80.66%)、営業利益297.38億円(昨年は赤字、構成比33.88%)、専門店事業3,801.97億円(97.72%、構成比10.18%)、営業利益25.17億円(昨年は赤字、構成比2.86%)、ディベロッパー事業876.52億円(103.99%、構成比2.34%)、営業利益279.08億円(104.33%、構成比31.79%)、そして、サービス事業2,538.98億円(91.89%、構成比6.80%)、営業利益276.01億円(88.74%、構成比31.44%)である。

   こう見ると、営業収益では80.66%の構成比の総合小売事業が全体を大きく牽引しており、一方、営業利益では総合小売事業、ディベロッパー事業、サービス事業にほぼ3分しているという構造である。今期、特に、利益が回復した要因は総合小売事業が昨年の赤字から回復したことが大きいといえよう。コメントにもあるように、GMSのコスト構造改革が寄与したものといえよう。ちなみに、イオンの海外事業、特に中国を含め、アジア事業であるが、営業収益2,033.20億円(96.06%、構成比5.44%)、営業利益111.01億円(118.07%、構成比12.78%)であり、営業収益では構成比が5%強とまだイオン全体の柱には育っていないといえるが、営業利益では構成比が10%を優に超え、利益では存在感を増しつつあるといえよう。

   次に、イオンの利益がこの第3四半期大きく改善した要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、73.04%(昨年72.19%)と、0.85ポイント、原価の上昇が見られる。今期、イオンは、「イオンのプライベートブランド「トップバリュ」の売上高は、当第3四半期連結累計期間で3,277 億円、対前年同期比101.0%となりました。展開商品をより一層お客さまにご支持いただける品質や機能、価格へ見直すことにより、競争力の強化に努めました。」とのことであるが、PBの改善効果以上に、PB以外の原価の上昇が大きく上回ったものと思われる。

   ちなみに、今期のPBでは、新ジャンルビール類「トップバリュバーリアル」が「10 月より500ml 缶を追加発売し、約半年間に350ml 缶換算でおよそ6,000 万缶(年間販売目標1億缶)を売り上げました。」とのことで、ヒット商品も生まれている。また、「小学校で使用される教材のサイズに対応し、A4クリアファイルの入る大きさとする等機能を充実させたことが奏功し、発売から約3ヶ月間の売上高が前年同期実績に比べ、約270%となりました。」とのことで、よくテレビCMでも見るが、ヒット商品となったという。

   結果、売上総利益は26.96%(昨年27.81%)となり、粗利は下がった。一方、経費の方であるが、36.06%(昨年37.53%)と、1.47ポイント削減しており、経費は大きく改善している。ただ、売上総利益と比べ、大きく乖離しており、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-9.10%(昨年-9.72%)と、改善したとはいえ、依然として大きくマイナスである。食品スーパーマーケットの営業構造とは全く違い、いかに、GMSは経費比率が高いかがわかる。

   そして、これに、GMS特有の不動産収入、物流収入等が11.91%(昨年11.40%)のり、結果、営業利益は2.81%(昨年1.68%)となり、増益となった。それにしても、このその他営業収入の大きさは尋常ではなく、食品スーパーマーケットではありあえない比率であり、これこそが、GMSをささえる利益の源泉であるといえる。したがって、本体は巨大な集客装置となり、その結果、商品の売上げを極限にまで引き上げ、物流収入を確保すると同時に、テナント等の誘致を積極的に行い、不動産収入等を通じて収益をあげるというビジネスモデルであるといえる。

   結果、この第3四半期は増収こそわずかであったが、昨年と比べ利益が回復、特に、経費の削減が進んだことが大きかったといえよう。昨年は構成比約80%の総合小売事業が赤字となったため、全体の利益も厳しい結果となったが、今期は、その総合小売事業が好転したことが、好決算、特に増益につながったといえよう。イオン自身も、「設備費、人件費を中心とするコスト構造の見直しに引き続き取り組み、既存店販管費は対前年同期比95.9%となる等、・・」とコメントしており、経費の削減が功を奏したようだ。

   このように、イオンの2011年2月期、第3四半期決算は総合小売事業の経費削減が進んだことにより、利益面での改善がはかられたといえる。イオンは総合小売り事業が全体の営業収入の約80%を占めるだけに、その改善効果の影響は大きいといえる。ただ、経費比率が改善したとはいえ、その数字は36.06%であり、売上総利益の26.96%と比べると、まだまだ高めであるといえ、今後、さらに、経費比率の改善が課題といえよう。通期見通しもほぼ、同様な予想であり、今期は前期と比べ、業績、特に利益の改善が期待できそうである。

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January 10, 2011

セブン&アイH、2011年2月、第3四半期、コンビニ?

   セブン&アイHが1/6、2011年2月期の第3四半期決算を公表した。結果は、営業収益3兆8,255.57億円(0.2%)、営業利益1,757.52億円(3.0%)、経常利益1,761.88億円(3.4%)、当期純利益902.20億円(30.1%)となり、増収増益とはなったが、営業収益は伸び悩み、営業利益、経常利益ともに堅調な伸びに留まり、厳しい決算となった。セブン&アイHも、「小売業を取り巻く環境は、企業収益の改善傾向を受けて個人消費に一部持ち直しの動きが見られたものの、頻度品を中心とした物価の緩やかな下落が続くなど、依然として弱含みのまま推移いたしました。」とのことで、デフレが影響しているとのことである。

   セブン&アイHは事業構造を大きく、その他を除き、5つに分けて管理している。その結果を見ると、営業収益はコンビニエンスストア事業104.2%(構成比40.65%)、スーパーストア事業97.8%(構成比38.35%)、百貨店事業98.7%(構成比17.25%)、フードサービス事業92.1%(構成比1.56%)、金融関連事業96.6%(構成比2.11%)という結果であり、全体の0.2%の増益はコンビニエンスストア事業の堅調な数字に支えられたといえる。そのコンビニエンスストア事業であるが、北米が1兆1,187.40億円(4.9%)、国内4,189.95億円(2.4%)であり、北米に支えられての増収であるといえ、営業収益全体は、特に、国内は厳しい状況であったといえよう。ちなみに、中国市場は営業収益の構成比が1.64%であり、昨対は110%で伸びているが、全体への影響はわずかである。

   一方、営業利益の方であるが、コンビニエンスストア事業106.5%(構成比89.14%)、スーパーストア事業40.4%(構成比0.64%)、百貨店事業-21.20億円、フードサービス事業-3.13億円、金融関連事業93.1%(構成比12.57%)であり、営業収益以上にコンビニエンスストア事業に依存しており、しかも、全体の営業利益の89.14%という状況であり、コンビニエンスストア事業中心の収益構造であるといえる。そのコンビニエンスストア事業の中身であるが、国内の営業利益は1,333.69億円(108.7%)、北米は285.15 億円(96.6%)であり、営業収益とは全く逆の構図となり、国内の営業利益が北米を大きく上回っている。セブン&アイHの全体の営業収益が3.0%となったのも、この国内のコンビニエンスストア事業の貢献が極めて大きいといえる。

   したがって、この第3四半期決算が増収増益となった要因はコンビニエンスストア事業の貢献によるところが大きく、特に、営業収益では北米、営業利益では国内の好調さがセブン&アイH全体を支えたといえよう。

   ここで、セブン&アイH全体を支えているコンビニエンスストア事業の構造をもう少し見てみたい。国内の総店舗数は12,985 店舗、北米は6,505 店舗であるにも関わらず、営業収益が国内4,189.95億円、北米が1兆1,187.40億円と北米が圧倒的に高くなる理由は国内は全店の売上高を計上しているのではなく、加盟店収入を計上しているためである。実際、今期の国内のチェーン全店売上高は2兆2,167.26億円であり、北米のほぼ2倍であり、国内が圧倒的に高い数字となる。また、営業利益が国内1,333.69億円、北米285.15 億円と、逆転するのも同じ理由であり、国内は本部経費等が差し引かれた数字となるが、北米は加盟店の原価等も差し引かれるためである。

   また、北米の場合は円換算のため為替相場に影響され、特に、ここ最近の円高は営業収益、営業利益を押し下げる要因となるが、今期も例外ではなく、「ドルベースの米国既存店商品売上高伸び率は前年を上回りました。なお、全体の売上高は為替の円高影響はあったものの、主にガソリン単価の伸長により、・・」とのことで、円高の影響をガソリンの価格上昇で補い、増収をもたらしといえる。

   さて、ここで、セブン&アイHの傘下にある食品スーパーマーケット、ヨークベニマルの状況であるが、営業収益2,544.97億円(98.6%)となり、減収となった。「ヨークベニマルでは「セブンプレミアム」の積極的な販売を継続するとともに、売場におけるメニュー提案を強化したものの、東北地方を中心とした経済環境の影響などから、売上は厳しいまま推移いたしました。」とのことで、特に、売上げが厳しかったとのことである。一方、利益の方であるが、56.09億円(92.3%)となり、減益となった。それだけ、東北地方は厳しい経営環境にあるといえ、減収減益の決算となった。

   これを受けて、通期予想であるが、営業収益5兆1,400.00億円(0.6%)、営業利益 2,400.00億円(5.9%)、経常利益2,370.00億円(4.4%)、当期純利益1,000.00億円(122.8%)であり、この第3四半期決算同様、増収増益ではあるが、営業収益が依然として厳しい予想である。

  このように、セブン&アイHの2011年2月期の第3四半期決算は増収増益とはなったものの、その中身はコンビニエンスストア事業に大きく依存していえるといえ、不安定な決算結果であるといえよう。特に、営業収益は北米のコンビニエンスストアのガソリンの値上げによるプラスの効果が大きかったといえ、その他事業はいずれも厳しい状況にある。本決算まで残りわずかであるが、通期予想も営業収益の伸び悩みが予想され、今期決算は特に、国内が厳しい決算となりそうである。

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January 09, 2011

マルエツ、2011年2月期、第3四半期、減収減益!

   マルエツが1/7、2011年2月期の第3四半期の決算を公表した。結果は、営業収益  2,487.99億円(-2.2%)、営業利益45.28億円(-19.4%)、経常利益42.08億円(-22.5%)、当期純利益9.04億円(-77.7%)と、減収減益となる厳しい決算となった。特に、当期純利益については、「特別損失として賃貸不動産の転貸損失引当金繰入額等を計上し、四半期純利益は9億4百万円(前年同期比77.7%減)となりました。」とのことで、特別損失が原因である。ただ、それを加味しても、売上げ、利益ともに厳しい結果であるが、その要因としては、今期は攻めよりも、内部体制の充実に経営資源を集中していることにあると思われる。

   現在、マルエツは、大きく2つの営業改革に取り組んでおり、ひとつは、現在の251店舗の業態確立であり、そして、もうひとつは物流センターを中心にした物流改革である。1つ目の251店舗の業態確立であるが、前期決算時には、マルエツは6つの業態を展開していた。マルエツ(177店舗)、マルエツプチ(4店舗)、リンコス(4店舗)、サンデーマート(20店舗)、フーデックスプレス(15店舗)、そして、ポロロッカ(26店舗)であり、合計246店舗であった。そして、この第3四半期、新店をマルエツ6店舗、マルエツプチ4店舗をオープンし、閉鎖5店舗となり、合計251店舗となったが、その中身はマルエツ203店舗、マルエツプチ44店舗、リンコス4店舗の3つの業態、事実上2つの業態に集約した。今後は、マルエツかマルエツプチでの展開となり、特に、マルエツプチを都心部中心に出店してゆく方針である。したがって、そのための経費が特に、この第3四半期決算時に発生したといえ、これが利益面へ影響したといえよう。

   そして、2つ目は、「SMのインフラをゼロベースで再構築し経営効率を高めるため、平成22年6月に横浜常温物流センター(神奈川県)、8月に八潮常温物流センター(埼玉県)、9月に川崎複合センター(神奈川県)の3センターを開設しました。」とのことで、物流改革に着手したことである。特に、SMのインフラをゼロベースで再構築とのことで、多額の投資を掛けての改革である。実際、前期決算時と比べ、有形固定資産が702.99億円(前期決算時648.78億円)と54.21億円増加しており、新店に加え、この物流センターへの投資が加わったものと思われる。

   そこで、これらの状況を加味し、営業利益が-19.4%となった要因を改めて、原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、71.57%(昨年71.69%)と、0.12ポイント改善している。原価に関しては、「商品施策面では、デフレの進行やお客様の低価格志向などに対応するため、「お手頃価格なのに、プラスワンの価値」がある新たなPB商品「maruetsu365」を開発し、低価格型のマルエツ限定販売商品と併せてご提供に努めました。」とのことで、PBに力を入れたとのことである。結果、売上総利益は28.43%(昨年28.31%)となった。

   一方、経費の方であるが、28.79%(昨年27.95%)と、0.84ポイント上昇しており、先にあげた内部体制固めの経費がかさんでいるものと思われる。ただ、それを加味しても、経費比率28.79%は、食品スーパーマーケットとしては高めである。前期の決算公開企業約50社の平均が25.6%であるので、もう一段、経費比率を下げたいところである。マルエツも、「人的生産性の改善を推進するために、平成22年9月に「ヒューマンパフォーマンス改革本部」を新設しオペレーション改革部を移管して機能強化を行い、生産性指標の目標を明確にし、オペレーションの標準化を図る「MOP(マルエツオペレーションプランニング)」に取り組んでいます。」とのことで、オペレーション改革部がどのような成果を出すか、期待されるところである。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-0.36%(昨年0.36%)と、プラスからマイナスに転じ、経費の上昇が重くのしかかったといえよう。これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が2.22%(昨年1.89%)加わり、営業利益は1.86%(昨年2.25%)となり、減益となった。したがって、減益となった要因は経費上昇にあるといえ、今後、内部体制を整えた後は、いかに、今期97.0%となった既存店の底上げをはかり、固定費を相対的に削減していくかが課題となろう。そして、そのためには、特に、都心型店舗では、経費削減よりも、坪効率を引き上げる戦略が有効となろう。

   このようにマルエツはここへ来て、経営戦略を大きく見直しつつあり、食品スーパーマーケット業界最大の店舗数251店舗の管理方法の見直しに着手する一方、その251店舗へ向けての新たな物流センターを創設しての商品供給体制の抜本的な見直しに入っており、攻めよりも内部体制の充実に経営資源を集中しているといえる。したがって、今期の本決算は、通期予想を見ても、この第3四半期決算同様厳しい決算予想であるが、来期、今期の成果がどこまで現れるかが期待されよう。マルエツが今後、さらなる改革、特に、経費改善をどのように取り組んでゆくのか、注目である。

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January 08, 2011

頻度と売れ筋について

   頻度という言葉は小売業界ではごく普通に使われている。たとえば、セブン&アイHの最新の決算では、「頻度品を中心とした物価の緩やかな下落が続くなど、・・」という使い方や、コンビニエンスストア事業の総括の中でも、「グループのプライベートブランド商品「セブンプレミアム」を中心とした頻度品の品揃えを強化いたしました。」というようにである。では、この頻度はどう数値化できるのであろうか、実はこれが中々難しい問題である。なぜなら、通常のPOS分析では頻度を正確に把握することが不可能だからだ。言葉としては頻度を使っていても、実際の小売業では頻度を正確に測定できないことがほとんどであるので、感覚的な使い方になってしまいかねないといえる。

   では、頻度とは何か、売れ筋と同じなのか、違うのかを改めて考えてみたい。一般に売れ筋とは売上高の高い商品である。売上高は販売数量×平均単価となるので、実はここで3つに分かれる。1つ目は販売数量が多い場合、2つ目は平均単価が高い場合、そして、3つ目は双方が大きい場合である。通常はこの内、1つ目と3つ目を指し、販売数量、すなわち、数が売れるものを売れ筋とする場合が多く、POS分析では、販売数量の高いもの順に並びかえ、いわゆるABC分析を行い、この中のA商品を売れ筋としている。ただ、単純な販売数量の分析では店舗の客数の大小により、客数の多い店の販売数量が当然多くなるので、これを平準化するため、レシート1枚当たりの販売数量、すなわち、PI値を算出し、PI値の高いものを売れ筋とするのが一般的である。したがって、売れ筋=PI値の高い商品となる。

   さて、ここで問題だが、この売れ筋、すなわち、PI値の高い商品は頻度が高いかどかであるが、一般にはこの2つは厳密に区別されず、何となく、売れ筋(PI値)=頻度と思われているように思える。ただ、感覚的には売れ筋とは違うと直感では思っているともいえ、頻度を意識して売れ筋と区別して使う場合も多い。その場合、数字としの違いを示すことはできなくても、直感でこれは売れ筋、これは頻度が高いと感覚的に判断して使っている場合が多いといえよう。

   そこで、頻度という言葉の意味であるが、文字通り解釈すれば、顧客が繰り返し購入する商品となろう。したがって、たとえ、売れ筋であっても、その商品が顧客から繰り返し購入されていなければ、頻度が高いとはいえない。また、極論すれば、死に筋であっても、頻度が高ければ、その商品は頻度が高いといえよう。こう見ると、頻度と売れ筋は同じではなく、むしろ全く反対となる場合もあり、相関性が低いといえよう。したがって、頻度という言葉を使う時には慎重さが必要であり、できれば、その数字的裏付けが欲しいところだ。

   では、頻度をPOS分析から正確に測定できるのかどうかであるが、通常のPOS分析では100%できないが、ID-POS分析では正確に測定できる。まず、頻度の定義であるが、顧客がある期間に複数回商品を購入した比率を頻度と定義することが、最も頻度の言葉のイメージに近いといえよう。技術的には、対象商品の購入レシートをすべてピックアップする。ここまでは通常のPOS分析で可能であるが、そのレシートに顧客番号を振る、これがID-POS分析であり、そのレシートを顧客番号ごとに並び変える。そして、そこから顧客ごとに対象商品のレシート枚数を数える。これが頻度である。商品全体の頻度の場合は総レシート枚数を顧客の総数で割れば良い。数式にすると、レシート枚数/顧客数となる。そして、これを全商品で実施すれば、商品の頻度が正確に測定できるといえる。

   本来、頻度という言葉を使うのであれば、この数字に基づいて判断するのが正解といえ、単純な売れ筋、PI値の延長では判断できず、このように頻度を数値化し、商品をじっくり見詰め直す必要がある。ちなみに、PI値とこの頻度の関係であるが、ID-POS分析では頻度のことをID客数PI値と呼んでいる。そして、この2つは、IDPI値=ID客数PI値×PI値で関係づけられる。IDPI値が販売数量/ID、ID客数PI値(頻度)がレシート/ID、PI値が販売数量/レシートであるので、ID客数PI値とPI値を掛けると、レシートが約分され、ID当たりの販売数量、すなわち、IDPI値となる。このIDPI値はある期間におけるID(レシートではない)の販売数量であり、PI値のように相対値ではなく、絶対値となり、ID-POS分析ではID金額PI値同様、重要な指標である。

   こう見ると、ID客数PI値(頻度)とPI値は掛け算で結ばれ、相関しているというよりも、反比例の関係にあるともいえ、ID客数PI値(頻度)が高く、PI値が低い、逆に、PI値が高く、ID客数PI値(頻度)が低い場合もあることがイメージできよう。また、双方が高い場合も、双方が低い場合もあるといえる。実際、POSデータを分析すると、その通りとなり、ID客数PI値(頻度)とPI値は必ずしも一致するわけではなく、頻度を使う場合はID客数PI値の数字を前提に使った方が正確である。今後、食品スーパーマーケット業界にはID-POS分析が急激に普及することになろうが、その第一歩は、この頻度を正確に算出し、これまでの売れ筋との違いを認識するところから始めて欲しいところだ。

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January 07, 2011

コマツ、日経が注目!

   日経新聞、1/5号、会社研究に建設機械大手のコマツが取り上げられた。興味深い内容である。この会社研究のコーナーは、日経が経営者20人に今年の有望銘柄を聞いたところ、コマツが上位に入ったとのことで、取り上げられたものである。そのタイトルは、「会社研究、経営者が選んだ注目銘柄①、コマツ」であり、見出しは、「正攻法でROE追求、情報武装、生産強さ磨く」である。記事構成は大きく、3つに分かれており、「世界の稼働状況把握」、「13年3月20%目標」、「新たなライバル登場」である。

   ちなみに、コマツの現在の株価であるが、1/6、現在、2,575円(+45円、+1.77%)であり、しかも、10月中旬以降、株価は右上がりで推移しており、まさに記事の通り、ここ最近の注目銘柄といえる。10月前半までは株価は1年以上1,500円前後で推移していたので、この10月中旬以降は株価急上昇という異常な動きであり、今後、どの辺で落ち着くのか、先が読みにくい状況といえる。

   では、なぜ、10月中旬が株価の転機となったかであるが、その最大の要因は、10/28のコマツの中間決算の公表にあるといえる。日経の記事ではこの返の事情はあまり触れられていなので、その概要を見てみたい。まず、ちょっと面食らうが、コマツは通常の決算とは違い、米国会計基準での公表である。したがって、経常利益がなく、営業利益の次が当期純利益となり、さらに、株主関係の利益が3つ続く。実際の中間決算の数字は、売上高8,597.63 億円(33.1%)、営業利益1,039.12億円(425.2%)、税引前四半期純利益1,001.11億円(442.5%)、当社株主に帰属する四半期純利益 637.64億円(677.8%)、1株当たり当社株主に帰属する四半期純利益65.89億円(前期8.47円)、潜在株式調整後1株当たり当社株主に帰属する四半期純利益65.85円(前期8.47円)である。通常の日本の決算とは、特に、利益の捉え方が大きく違うといえ、しかも、株主を重視していることがわかる。

   それにしても、売上高の33.1%はもちろんだが、それ以上に利益の昨対が異常であり、しかも、株価に直結するであろう、1株当たりの純利益が昨年と比べ桁違いに跳ね上がっており、びっくりである。それだけ、今期のコマツの決算が好調であったといえ、異常値であるといえよう。

   そこで、もう少し、決算内容を見てみると、コマツの好調さの最大の要因は世界、グローバル化戦略にある。この中間決算時の売上構成比、伸び率を国別に見ると、日本1,174.05億円(構成比15.3%、伸び率10.2%)、米州1,902.52億円(構成比24.9%、伸び率32.8%)、欧州・CIS 717.46億円(構成比9.4%、伸び率21.9%)、中国 1,528.06億円(構成比20.0%、伸び率46.1%)、アジア・オセアニア1,818.69億円(構成比23.8%、伸び率55.0%)、中近東・アフリカ495.67億円(構成比6.5%、伸び率26.9%)という結果である。

   何と、日本市場はわずか15.3%の構成比であり、伸び率も10.2%であり、いまやコマツはまさに、グローバル企業であるといえる。特に中国、アジア・オセアニアの存在感が大きく、今後、さらに伸びが期待できるといえ、来期以降もこの中間同様の好決算が期待できると思われる。

   さて、記事にもどると、全体が見出しの通り、「正攻法でROE追求」の内容であるが、それも、この米国会計基準から当然といえば当然の経営目標であるといえよう。米国会計基準は明確に株主に対しての利益を強く意識しており、ここから、自然、株主の利益を示すROE、すなわち自己資本利益率(株主資本利益率)が経営目標とならざるをえないといえよう。本来、経営全体から見れば、ROA、すなわち、総資産利益率が重視され、経営目標としても、ROA=ROE×自己資本比率であるので、ROAの方が、経営目標としては、理にかなっているといえる。

   ただ、記事を見ると、興味深いことに、ROE=純利益率×総資産回転率×負債依存度(自己資本比率の逆数)と分解している。これは実は、純利益率=純利益/売上高であり、総資産回転率=売上高/総資産であるので、掛けると売上高が約分され、純利益/総資産となり、ROA(総資産利益率)である。したがって、本来の式、ROA=ROE×自己資本比率を、ROE=ROA×自己資本比率の逆数としている。しかも、記事では、自己資本比率の逆数は据え置く、すなわち、固定であるというので、何のことはない事実上ROE=ROAであり、コマツはROEを経営目標にしていながら、事実上ROAをも経営目標としているということになる。

   これは日本的な発想といえ、本来ROE重視となると、負債依存度を引き上げ、自己資本比率を下げ、有利子負債を大きく増やし、レバレッジをかけ、積極投資を行い、売上げ、利益を極限まで追求する金融業のようなアクションとなるが、コマツは、そこに歯止めをかけ、ROAを引き上げつつ、ROEも引き上げるという独特な経営戦略を打ち出しているといえ、ユ二ークである。米国会計基準を採用しながら、日本の伝統的な経営哲学をも組み込んでいるといえ、これがのコマツの強さの源泉といえよう。

   このように、日経の会社研究では、コマツを最初の企業として取り上げたが、この中間期の業績が抜群に良く、ROE(実質ROA)を重視していることが背景にあるといえよう。特に、コマツは日本での売上構成比が15.3%と、極めて低く、もはや、アジア、オセアニア、さらには米国、欧州が主要な市場となっており、まさに、グローバル企業といえる。今後、この好調な決算がどこまで続くか、まずは、第3四半期、そして、その後の本決算の結果が気になるところである。

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January 06, 2011

ハローズ、2011年2月期、第3四半期、増収増益!

   ハローズが12/24、2011年2月期、第3四半期決算を公表した。結果は、売上高530.95 億円(4.2 %)、営業利益18.80億円(18.9%)、経常利益17.89 億円(17.7%)、当期純利益9.68億円(15.6%)と、増収増益、好調な決算となった。売上げがやや伸び悩んだ感もあるが、利益の方はいずれの段階でも2桁の増益であり、利益の改善が際だった決算となった。この第3四半期における経営環境をハローズは「長期的には、販売価格は低水準で推移しており、競合店の出店、異業種からの参入や業態転換によるディスカウント店の増加による価格競争が激化しております。」との認識であり、価格競争が激化しているとのことである。

   そこで、このような厳しい経営環境の中にもかかわらず、ハローズの利益が好調であった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、76.73%(昨年76.95%)と、0.22ポイント改善している。激しい価格競争にもかかわらず、原価を改善しており、それだけ、売価面よりも原価面に力を入れたものといえよう。ハローズ自身も「当社プライベート・ブランド商品の「ハローズセレクション」の開発を引き続き進め、「生活応援ブランド」として展開し、売上高構成比は前事業年度末の7.6%から8.1%に増加いたしました。」とのことで、PBの売上構成比を高めたことも寄与したものと思われる。結果、売上総利益は23.27%(昨年23.05%)と改善した。

   一方、経費の方であるが、22.66%(昨年22.70%)と、-0.04ポイントとわずかではあるが減少している。ハローズは、「経費面では、ローコストオペレーション確立の一環として生産性向上対策、引き続いての電気使用量の抑制、効果的な広告による販促費抑制などに取り組みました。」に取り組んだとのことであり、ローコストオペレーションの取り組みが寄与したといえよう。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、原価、経費双方が改善したことにより、0.61%(昨年0.35%)と上昇しており、この時点で、増益となった。これにその他営業収入が2.94%(昨年2.76%) 加わり、結果、営業利益は3.55%(昨年3.11%)と増益となった。こう見ると、この第3四半期決算は、営業利益が原価、経費、その他営業収入とトリプルで改善しており、これが好決算をもたらした要因であるといえる。ただ、気になるのは、営業利益の中身はその他営業収入、すなわち、不動産収入、物流収入等に負うところが極めて大きく、マーチャンダイジング力は改善してはいるが、まだまだ低いといえ、今後、原価、経費双方の改善がなお必要といえよう。

   この好決算を受けて、この第3四半期時点でのキャッシュフローを見てみたい。まずは、営業活動によるキャッシュフローであるが、-17.89億円(昨年-8.18億円)と、昨年もマイナスではあったが、今期はさらに大きくマイナスとなっている。当期純利益、減価償却費はいずれもプラスであるにも関わらずの全体がマイナスである。その要因は仕入債務の増減額が-26.95億円(-25.39億円)と大きく減少したことによる。実際、負債の買掛金が37.05億円(本決算時64.01億円) と、本決算時と比べ大きく減少しており、昨年と比べ、ここが最大のキャッシュフローの違いである。

   したがって、営業活動によるキャッシュフローはマイナスとなり、当然、投資を補うために財務活動によるキャッシュフローで賄う必要があり、実際、有利子負債が差し引き、26.85億円(昨年38.11億円)と昨年同様、増加している。実際、負債の有利子負債は138.81億円(本決算時110.68億円)と大きく増加しており、総資産369.71億円に占める割合は37.54%と経営に重くのしかかっているといえよう。結果、自己資本比率は31.7%(昨年30.9%)と、純資産が増加したことにより、昨年よりは若干改善しているが、それでも30%強と厳しい状況にある。この有利子負債調達により、財務活動によるキャッシュフローは24.83億円(昨年36.11億円)となった。

   そして、投資活動によるキャッシュフローであるが、42.52億円(昨年40.30億円)と、昨年を超える投資である。その中身は、新規出店関連と思われる有形固定資産の取得による支出であり、-36.94億円(昨年-39.68億円)である。したがって、差し引き、フリーキャッシュフローは-58.19億円(-50.70億円)と昨年も大きくマイナスとなったが、今期はそれを上回るマイナスであり、財務活動によるキャッシュフローでカバーできず、内部留保を大きく取り崩している。実際、資産の現金及び預金は27.57億円(本決算時60.94億円)であるので、厳しいキャッシュフローであるといえよう。

   この結果を見る限り、キャッシュフローは厳しい状況にあるが、「前事業年度末日金融機関休業の影響による買掛金の減少26億95百万円、短期借入金の増加15億円などにより、・・」とのことで、かなり財務の逼迫は緩和されるが、これを考慮しても、財務改善は急務といえ、今後、好調な営業結果をいかに財務改善につなげるかが課題といえよう。

   このようにハローズの2011年2月期、第3四半期決算は売上げこそやや伸び悩んだが、利益は大きく改善、特に、原価、経費、その他営業収入と、トリプルで改善しており、好調である。ただ、キャッシュフローは金融機関休業の影響もあったこともあるが、厳しい状況であり、結果、財務面では課題を残すことになったといえよう。今期は残りわずかであるが、本決算時、財務改善がどこまで進むかその結果に注目である。

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January 05, 2011

商業動態統計調査、2010年11月度、最新を見る!

   商業統計動態調査の最新の速報版が12/28、経済産業省から公表された。この商業統計動態調査は、昭和28年(1953年)から始まっており、その目的は「全国の商業を営む事業所及び企業の販売活動などの動向を明らかにする」ことにある。食品スーパーマーケット業界にとっても経営戦略を練る上において重要な基礎データのひとつであるが、調査の沿革を見ると、食品スーパーマーケットとしての統計は十分に確立されているとはいえず、今後、食品スーパーマーケット独自の分析を加えて欲しいところだ。

   その沿革であるが、百貨店が統計分類に採用されたのが昭和35年(1960年)であり、セルフ販売が登場するのが昭和46年(1971年)であり、その定義は、「特定大型小売店(従業者50人以上、売場面積300平方メートル以上のセルフ店)」であり、これを「大型小売店販売統計」として百貨店販売統計とは別途集計し始めた。その後、昭和53年(1978年)には、「大型小売店(百貨店、セルフ店、非セルフ店)の商品別(10品目)販売額の公表」が始まった。そして、平成3年(1991年)、ようやく、「セルフ店の定義範囲を「売場面積1,500平方メートル以上の商店」に変更するとともに、名称をスーパーに変更」し、GMSがここで確立される。ここでやっと、その一部として、食品スーパーマーケットが食料品スーパーとして統計に組み込まれることになる。その後、コンビニが平成10年(1998年)に登場し、現在に至る。

   統計上は食品スーパーマーケットも食料品スーパーとして、やっと商業統計の分析対象となったが、依然として伝統的な百貨店、GMS、そして、ごく最近登場したコンビニの方が統計上は中心的な扱いである。この商業動態統計の速報値、2010年11月度でも百貨店、スーパー、コンビニでのくくりとなり、GMSと食品スーパーマーケットがスーパーとして一緒になってしまっている。平成19年度の商業統計の確定値の数字をみると、食品スーパーは店舗数でGMSの約10倍、百貨店の約65倍、販売額でもGMSの約2倍、百貨店の約2倍であり、コンビニでは店舗数で約4倍、販売額で約2倍あるにも関わらず、独立して扱われることはなく、GMSの特殊業態のような位置づけである。今後、内容、規模ともに、小売業の柱となったといえる食品スーパーマーケットを商業統計の中でもしっかり位置づけるべきであろう。

   さて、その速報値、まずは、概要であるが、「平成22年11月の商業販売額は42兆7450億円、前年同月比5.1%の増加となった。これを卸売業、小売業別にみると、卸売業は31兆5670億円、同6.6%の増加となった。小売業は11兆1780億円、同1.3%の増加となった。なお、商業販売額の季節調整済前月比は、3.6%の増加となった。卸売業は同3.8%の増加、小売業は同1.9%の増加となった。」という状況であり、特に小売業は、昨対では微増という状況である。家計調査データも、相場、資源エネルギー等の影響により、総合指数が微増となったが、それを裏付ける動きであるといえよう。それにしても、小売業が卸売業の約1/3であり、いかに、日本の商業は卸売業が巨大であるかがわかる。

   ちなみに、この1年間の小売業の昨対を見ると、11月度1.3%、10月度-0.2%、9月度1.4%、8月度4.3%、7月度3.8%、6月度3.3%、5月度2.9%、4月度4.9%、3月度4.7%、2月度4.2%、1月度2.3%であるので、比較的堅調な動きであったといえる。ただ、この内、大型店は11月度0.7%、10月度1.3%を除き、1月度から9月度までマイナスであるので、苦戦しているといえよう。

   小売業の現況をさらに掘り下げると、「小売業を業種別にみると、機械器具小売業が前年同月比46.1%の増加、燃料小売業が同8.6%の増加、飲食料品小売業が同3.3%の増加、その他小売業が同2.5%の増加となった。一方、自動車小売業が同▲26.6%の減少、各種商品小売業(百貨店など)が同▲1.1%の減少、織物・衣服・身の回り品小売業が同▲1.1%の減少となった。」という状況であり、機械器具小売業が異常値、燃料小売業、飲食料品小売業(食品スーパーマーケット)が堅調な伸びである。それにしても、エコポイントの影響は大きいといえ、自動車小売業は大きくダウン、百貨店も依然として厳しい状況にあるといえる。

   ちなみに、コンビニであるが、「平成22年11月のコンビニエンスストアの商品販売額及びサービス売上高は、6620億円、前年同月比3.4%の増加となった。これを商品別にみると、ファーストフード及び日配食品が2284億円、同6.3%の増加、加工食品が2004億円、同5.4%の増加、非食品が2044億円、同▲1.5%の減少となったため、商品販売額は6333億円、同3.4%の増加となった。」ということで、ほぼ、社団法人、フランチャイズチェーン協会の公表数字と連動するといえよう。

   このように商業動態統計調査の2010年11月度の最新速報を見ると、意外にも卸売業の伸びが高く、全体を押し上げ、プラスの結果となった。残念ながら、小売業は家計調査データの結果とほぼ同じ微増という状況であり、その中身は、食料品、燃料関連以外は厳しい状況にあるといえる。次回、小売業最大の売上げとなる12月度、どのような結果となるか注目である。

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January 04, 2011

お客様は時間とともに変化する!

   前回のブログで「馴染み客」と「一見さん」をとりあげた。この言葉は古くから使われていた日本独特のお客様の別称であるが、これ以外にも、お客様の呼び方は数多くある。先のブログでも、「お得意さん」、「ご贔屓さん」などを取り上げたが、いずれもお客様の別称である。あるいは「顧客」という呼び方もあり、お客様には様々な別称が存在する。また、これ以外では、「常連さん」などという呼称もある。これらの言葉を実際の商売の中では使い分け、日本では同じお客様でも、その違いを明確に区別し、それぞれに応じた何らかの特別な対応をしてきたといえる。これが日本の商売の原点であり、いまでもその伝統は生きており、いたるところで垣間見ることができる。

   たとえば、飲食店でお客様から常連さんになると、裏メニューが登場し、特別な料理がお手頃価格で食べられる。場合にはよってはそれが無料サービスとなることもある。八百屋などでも、お得意さんになると、特別値引きがあったり、旬の商品などをいち早く教えてくれたりする。また、高級飲食店などでは一見さんお断りの店もあったりと、お客様をしっかり区別し、商売の中に取り入れている。その意味で、日本の商売の原点は、お客様を区別することにあり、一見さんと馴染み客を分けて対応することにあったといえる。そして、その馴染み客をさらに、常連さん、お得意さん、ご贔屓さん等でランク分けし、それぞれに対してきめ細かい対応をしてきたといえる。

   これが商売を永続させる秘訣であり、これを店のご主人、あるいは女将さんが一手に取り仕切り、お客様のランク付けを行い、独自の対応をしてきたといえる。本来商売とはこれが原点であるといえ、まず、何からの商品の販売から始まるが、その後は、お客様とともに永続してゆくものであり、これが10年、100年、1000年と長く続いてゆく秘訣であるといえよう。

   こう見ると、商いには悠久の時間が最初から組み込まれているといえ、いったんはじめた商売をいかに永続させるか、ここに主眼があるといえよう。そして、その商売を永続させるには一見さんからはじまるお客様をいかに、馴染み客にし、常連さん、お得意さん、ご贔屓さんへとランクアップさせてゆくかという仕組みが必要であり、この仕組みを商いにいかに組み込めるかが、商いの永続性を保証するものであるといえよう。また、商いの出発点となった商品も、お客様とともに変化し、お客様によって熟成され、珠玉の商品にしあがってゆくことになる。これが日本の商いであり、商品とお客様が二重螺旋構造のように絡み合いながら悠久の時間の中でどちらも熟成し、完成度を高めてゆくことになるといえる。

   ひるがえって、食品スーパーマーケットでは残念ながら、お客様を認識することができていない。そもそも、セルフサービスを採用した時点でご主人、女将さんは不在となり、そこには商品とお客様のみの関係が残り、ひたすら商品の品揃えに精力をつぎ込んできたといえる。しかも、店舗数を拡大することが売上を引き上げる最良の政策であるため、新規出店を積極的に行い、結果、全店への商品の供給体制を確保するため、大量の商品調達が必要となり、ますます、商品戦略へ経営資源を集中させることとなったといえる。

   したがって、商いの原点、お客様が不在の商売が長らく食品スーパーマーケットでは続いてきたといえ、お客様を充分に認識できていなかったといえる。情報システムもお客様を把握するための仕組みではなく、商品を管理するための仕組みであり、マーチャンダイジング戦略を中心に活用されてきたといえる。実際、通常のPOSシステムでは、お客様については、レシートまでは把握できるが、馴染み客であるかどうかはもちろん、常連さん、お得意さん、ご贔屓さんを把握することは不可能であり、そのための対応も出来ていないのが実態である。

   このまま食品スーパーマーケットがお客様不在で走っていっていいのか、本来、日本の商売の原点はお客様にあったことを考えると、そろそろ、食品スーパーマーケットもお客様を経営の根幹にすえた日本の商いの原点に回帰しても良いのではないかと思う。確かに、これまでの約50年間は欧米の最先端のビジネスを吸収することに必死であったとは思うが、そろそろ、日本の商いを再度見直し、お客様を基点に、ビジネスモデルそのものを見直す時期に来たのではないかと思う。

   ただ、明るい兆しもあり、その萌芽はすでに見え始めているといえ、ID-POS分析がその鍵を握っているといえよう。ID-POS分析はお客様をID、すなわち、個々の顧客ととらえ、しかも、お客様の購入頻度がきめ細かく分析できるため、お客様を購入頻度により馴染み客、常連さん、お得意さん、ご贔屓さんに分けることが可能である。店舗全体でも、商品群ごとでも、単品ごとでも可能であり、このように顧客を認識できることにより、顧客とともに商品の品揃え、売場づくり、販促等を見直すことが可能となる。まさに、日本古来の商いの原点にもとづく商売を行うことができる可能性があるといえ、大いに研究すべき課題といえよう。

   今後、食品スーパーマーケットとしては、まずは、ID-POS分析を実施し、お客様をしっかり認識し、お客様がどのようなお買い物をしているのかの購入履歴を素直にみつめ、お客様の購買頻度に基づいたマーチャンダイジングを実践してゆくことが求められよう。食品スーパーマーケットの次の50年は、再度、日本の商いの原点、お客様を原点にすえ、次世代型の食品スーパーマーケットづくりに挑戦して欲しいと思う。

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January 03, 2011

「馴染み客」と「一見さん」

   ID-POS分析はIDそのものがIdentification、直訳すると識別、すなわち、個人の識別を意味し、日本語に馴染みにくいものがある。したがって、実際に分析、活用する上においても、いまひとつ使いにくい。特に、ID-POS分析の極意ともいえる頻度を表現する言葉もリピート、トライアルという言葉が定着しつつあり、そのイメージが理解しにくいものがある。そこで、新たな試みとして、ID-POS分析の翻訳に取り組んでみたい。いずれ、基本理論、数式、数表、活用方法、用語集等にまとめてみたいと思うが、今回は、ID-POS分析の原点ともいえるリピートとトライアルについて翻訳を試みてみたい。

   実は、ID-POS分析でリピートとトライアルを区別するのは難しい。なぜなら、ID-POS分析は時間が極めて重要な概念であり、分析対象が1日なのか、1週間なのか、1ケ月なのか、さらには1年、10年、100年なのかが問われるからだ。すべてを1週間単位に換算することもあるが、通常は、分析期間がまちまちである。通常のPOS分析でも期間があるが、その検証指標である金額PI値は期間が変化しても大きく変化することはあまりない。ところが、ID-POS分析の検証指標であるID金額PI値は時間とともに大きく変化し、時間を特定しないと差異を論じることができない。したがって、時間が極めて重要な概念であり、リピート、トライアルもどう定義するかは慎重に判断することが必要となる。

   たとえば、1週間で1回の購入をトライアルとするか、1ケ月で1回をトライアルとするか、1年、10年、100年で1回をトライアルとするか、同じ1回でも価値が全く違い、トライアルを正確に定義することは難しい。同様に、リピートもトライアル以外とすれば、すべて2回目以降がリピートとなり、これもそれぞれの価値が違い、定義が難しい。したがって、単純な回数で定義することが難しく、ID-POS分析においては、リピート、トライアルをどう定義するかは工夫が必要であるといえる。

   そこで、どう工夫するかであるが、ポイントは時間に応じて価値の変わらない定義が必要であるといえ、絶対的な定義ではなく、相対的な定義が必要であるといえよう。たとえば、1週間であれば1日、1ケ月であれば1週間、1年であれば1ケ月、10年であれば1年、100年であれば、10年のようにトライアルを定義し、それ以上をリピートと定義するということが一案である。これ以外にも様々な定義方法はあると思うが、ポイントは相対的な定義がID-POS分析には必要であるということである。

   したがって、これを前提にリピートとトライアルを日本語に翻訳すると、相対的な曖昧さも加味し、リピートを「馴染み客」、トライアルを「一見さん」とすると、しっくりくるのではないかと思う。リピートに関しては、これ以外にも、「お得意さん」、「ご贔屓さん」も候補である。「一見さん」に関しては、中々ぴったりくる言葉が見つからないが、これ以外では、それこそ「お客さん」が意外にフィットしているともいえる。しかも、これらの言葉はいずれも日本の商いの中で、古くは江戸時代から使われていた言葉でもあり、商いの復権にもつながり、イメージ的にもズレがないように思える。

   思えば、戦後、チェーンストア理論がアメリカから輸入されて以来、戦前の商いは否定され、それまで日常的に使われていた商いの言葉がすべてといっていいほど英語化され、カタカナで商売が語られるようになった。これに拍車をかけたのがPOSシステムであり、このPOSシステムが普及したことにより、「客」という概念が消えてしまい、無味乾燥な「レシート」が「客」にとって変わった。

   レシートからは頻度が算出できないため、瞬間瞬間の数字がブツ切れ的に把握できるのみであり、そこには「客」という継続性のある数字の把握ができず、「客」そのものの概念が存在しなくなった。「馴染み客」を把握することも、「お得意さん」をつかむことも、ましてや「ご贔屓さま」を知ることもPOSシステムからは不可能である。

   それが、時代がめぐり、POSシステムからID-POS分析の時代が訪れるようになると、はじめてレシートから、ID、すなわち、顧客の把握、個々の顧客の継続した買い物履歴の把握(頻度)が把握できるようになり、顧客がはじめて見えるようになった。したがって、頻度の高いリピート顧客を「馴染み客」、頻度の低いトライアル顧客を「一見さん」と呼んでも違和感はないといえ、むしろ、イメージ的にも、概念としてもふさわしい呼称であるといえよう。

   このように、これまでID-POS分析は日本の商売とかけ離れた分析ではないかと思われていたが、実は、日本の商いの原点に迫った分析であるといえ、日本古来の商いの復権につながるともいえる。したがって、これまで慣れ親しんできた日本の商いの言葉をむしろ積極的にID-POS分析にて活用すべきであるといえ、これにより、逆に日本古来の商いの原点へ迫ると同時に、商いで培われた秘伝、口伝を検証し、取捨選択しながら、日本独自の、しかも、世界に通用する次世代の商いを作り上げる時が来たのではないかと思う。その意味で、ID-POS分析はカタカナ英語よりも、日本語を大いに活用し、可能な限り日本語で概念化し、理論構築を試み、実践に活かしてゆくべきであろう。

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January 02, 2011

しまむら、2011年2月期、第3四半期、増収増益!

   しまむらが、12/28、2011年2月期、第3四半期の決算を公表した。しまむらはファッションが専門のチェーンストアであるが、経営戦略、特に、マーチャンダイジング戦略においては、食品スーパーマーケットに通じるものがある。そこで、ここでは食品スーパーマーケットの経営にとっても参考になるマーチャンダイジング力を中心に、その最新の決算内容を取り上げてみたい。まずは、結果であるが、売上高3,276.63億円(2.1%)、営業利益305.87億円(7.6%)、経常利益312.90億円(7.3%)、当期純利益180.49億円(9.4%)となり、増収増益の好決算となった。ただ、売上高は2.1%とやや伸び悩んでおり、気になるところだ。

   しまむらは、12月現在、1,199店舗を全国に展開しており、今期新規出店38店舗、閉店1店舗という状況であり順調に店舗数を拡大している。12月現在の全体の売上高は100.5%、その中身は客数100.8%、客単価99.7%であり、既存店は96.9%と伸び悩んでいる。それにも関わらず、しまむら全体の売上高が2.1%と堅調であった要因は、その他の業態が伸びたことによる。しまむらは、しまむら事業以外にアベイル事業、バースデイ事業、シャンブル事業、ディバロ事業、そして、海外、台湾の思夢樂事業があり、これらの事業が好調に推移したことが全体を押し上げたといえる。

   そこで、これらの事業の結果を見てみると、若者向けの感度の高いファッションを扱うアベイル事業は334.92億円(4.7%、243店舗)、ベビー・トドラー用品を扱うバースデイ事業は125.66億円(15.9%、120店舗)、女性のファッション雑貨を扱うシャンブル事業は62.18億円(9.6%、69店舗)、10~20代の女性を主たる顧客層としたカジュアル・シューズを扱う専門店のディバロ事業は3.58億円(19.2%、2店舗)、そして、台湾で事業展開する思夢樂は19.85億円(15.3%、30店舗)という状況である。いずれも、順調に店舗数を増やし、数字が伸びており、本業、しまむら事業を大きく支えたといえる。

   一方、売上高に比べ、特に好調であった利益の方であるが、その要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、経費の方であるが、67.07%(昨年67.96%)と、0.89ポイントと大きく改善している。これについて、しまむらは、「当第3四半期連結累計期間のプライベート・ブランドの販売額は前年同期比31.1%増となり、売上全体に占める割合は40.1%となりました。」とコメントしており、PBの影響が大きかったといえよう。このPBは「「ファッション性」・「高品質」・「低価格」を併せ持つプライベート・ブランド」であり、まさに、しまむらのマーチャンダイジング戦略の根幹をなしているといえ、それが、31.1%増となり、しかも、食品スーパーマーケットでは考えられない40.1%の売上構成比であり、まさに、しまむらの強さの源泉といえよう。

   結果、売上総利益は32.93%(昨年32.04%)となった。食品スーパーマーケット業界の粗利が約25%であるので、しまむらは7%近い粗利の高さであり、その要因が強力なPB戦略にあるといえよう。一方、経費の方であるが、23.80%(昨年23.41%)と0.39ポイント上昇しており、経費削減にはいたらなかったようだ。この経費比率は食品スーパーマーケット業界の平均よりもやや低いが、ほぼ近い数字である。したがって、食品スーパーマーケットとの営業構造上の最大の違いは原価にあるといえ、この原価率67.07%を達成できることが、しまむらのマーチャンダイジングの強さといえよう。そして、その要因が売上構成比40.1%の強力なPB戦略にあるといえ、しまむらにとっては、このPB戦略が利益の源泉であるといえる。

   ここから、差し引き、商品売買から得られる利益、すなわち、マーチャンダイジング力を算出すると、9.13%(昨年8.63%)となり、何と9%を超えるマーチャンダイジング力であり、極めて高い数字である。ちなみに、上場食品スーパーマーケットでは大黒天物産の5.2%がトップであるので、9.13%がいかに高い数字であるかがわかる。そして、これに、その他営業収入が0.22%(昨年0.22%)のり、結果、営業利益は9.35%(昨年8.85%)となり、好調な決算となった。

   ちなみに、しまむらは、営業面が好調であることに加え、財務面でも自己資本比率が67.9%(昨年76.4%)と、昨年よりは下がったとはいえ、極めて高い数字であり、安定している。結果、負債は約30%強であるが、その内、有利子負債は178.00億円であり、総資産2,443.43億円の7.28%と、経営に対する影響度は低い。特に、現金が265.58億円であるので、実質、無借金であるといえる。

   このように、しまむらの2011年2月期の第3四半期決算は増収増益の好決算となった。ただ増益幅に比べ、増収幅が小さく、やや気になるところであるが、それを充分に補う原価の改善が強力なPB戦略により、カバーできている。しかも、財務内容も安定しており、この厳しい経営環境の中、しまむらの強さが発揮された結果となった。食品スーパーマーケット業界では、原価よりも経費削減による増益決算が多いが、しまむらは逆に原価改善による増益を達成しており、原価改善の重要性が改めてクローズアップされた結果といえ、小売業にとって、この厳しい経営環境の中で、今期の収益確保の方向性を示しているといえよう。
  
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January 01, 2011

相乗積とは何か、決定版!

   あけましておめでとうございます。今年も食品スーパーマーケット最新情報をよろしくお願いします。
   
   食品スーパーマーケット最新情報を始めて丸5年が過ぎ、6年目となりました。この5年間、毎日、食品スーパーマーケットの最新情報に関するブログを書き続けてきました。その数、1,891本となり、累計アクセスも290万件を超えました。今年前半にはブログ本数2,000本、累計アクセス300万件を超えるものと思います。今年もさらに内容の充実をはかり、様々な角度から食品スーパーマーケットの最新情報を発信してゆきたいと思います。

   さて、今年、2011年1月1日、はじめのブログは、「相乗積とは何か、決定版!」というタイトルを選びました。このタイトルを選んだ理由は、これまでの食品スーパーマーケット最新情報のすべてのブログ(1,891件)の中で「January 01, 2008、相乗積とは何か、その活用方法、粗利率を改善せよ!」がNo.1のアクセスであることがわかったためです。これほど、相乗積に関心が高いとは思っていなかったので、びっくりです。ためしに、Googleで相乗積を検索してみると、約 67,300 件中、第2位となります。また、yahoo!でも66,100件中、第2位となり、相乗積をインターネット検索でチェックするにはなくてならないブログとなっており、食品スーパーマーケット最新情報のNo.1ブログとなったことが頷けます。

   ちなみに、Googleの相乗積ベスト5ですが、No.1相乗積について勉強するページです。・・(http://ecokagaku.web.fc2.com/kouri/soujyouseki.htm)、No.2食品スーパーマーケット最新情報: 相乗積とは何か、その活用方法・・(https://pipi.cocolog-nifty.com/pi/2008/01/post_9db2.html)、No.3満足回答には100P差し上げます!1 相乗積に関する質問で・・(http://q.hatena.ne.jp/1146993198)、No.4相乗積 とは - コトバンク・・(http://kotobank.jp/word/%E7%9B%B8%E4%B9%97%E7%A9%8D)、No.5相乗積 - UR都市機構・・(http://www.ur-net.go.jp/tenant/knowhow/senryaku/senryaku_8.html)となります。同様に、Yahoo!の相乗積ベスト5ですが、No.1からNo.5までgoogleと全く同じものとなります。

   現在、イネターネットで相乗積を知るには、まずは、この5つを見ることが基本となっているといえ、ここまで、「January 01, 2008、相乗積とは何か、その活用方法、粗利率を改善せよ!」の検索順位が高くなっていたとは驚きです。しかも、奇しくも3年前の1月1日のブログであり、今日、2011年の1月1日に取り上げるブログとしても、相乗積はふさわしい内容ではないかと思います。

   そこで、改めて相乗積とは何かですが、前回はチェーンストアの計数管理に焦点を当てた内容でしたので、今回は、相乗積そのもの、その本質にダイレクトに迫ってみたいと思います。

   まずは相乗積とは何かですが、先にあげたGoogle、Yahoo!のNo.4を見ると、辞典での定義がありますが、それによると、「二つ以上の数を掛け合わせて得られる値」のこととなります。直訳すると、これが正しい定義であるといえ、2つ以上の数字を掛け合わせた結果の値のことですので、小売業特有の、独特の言葉ではないといえます。ただ、これが小売業で独自に発展して、魔法のように使われたために一気に、小売業界ではメジャーな言葉となり、独特な計数管理の技術として確立していったといえます。

   どこが独特かですが、2つの数を売上構成比と粗利率に限定した点、しかも、その値を足し合わせて複数の商品あるいは部門、さらには店舗に応用した点であるといえます。なぜ、これがここまで小売業界でメジャーになったかですが、この小売業界独特な粗利計算方法を知らないと目の前の商品の粗利、店舗の部門間の粗利、そして、店舗間の粗利の算出ができず、利益管理ができなくなるからです。

   さらに、この技術は覚えてしまえば極めて簡単で、電卓なしでも紙の上で掛算、足し算のみできてしまい、慣れてくれば暗算でもできるからです。たとえば、まぐろの柵の粗利率、刺身盛り合わせの粗利率、チョコレート売場の重点商品10品の粗利率、鮮魚部門と菓子部門の合計の粗利率、チェーンストア10店舗の粗利率などです。いずれも、一筋縄では粗利率を計算することは難しいのですが、それぞれの売上構成比と粗利率がわかれば、単純に掛けて足せばよく、簡単にそれぞれの粗利率が算出できるのが相乗積の最大の特徴です。

   この掛けて、足すというのが「みそ」であり、これが独特な計算方法であるといえ、小売業で独自に発展してきた複雑な粗利計算に対し、相乗積を応用し、簡単に算出できるようにした類稀な事例といえます。ただ残念なことに、その技術面のみがクローズアップされ、その本質が何であるかを理解しきれていないケースが多く、そこで技術が止まってしまっており、残念であるといえます。

   では、小売業独特のこの粗利計算を導く相乗積の本質とは何かですが、その答えは、「粗利構成比」であるといえます。本来、相乗積という言葉を使う必要性はなく、売上構成比と粗利率を掛けて足しているので、これをもとの要素にもどすと、売上構成比=対象商品(部門、店舗)の売上高/全体の売上高であり、粗利率は対象商品(部門、店舗)の粗利高/対象商品(部門、店舗)の売上高ですので、掛けると対象商品(部門、店舗)の売上高が約分されますので、対象商品(部門、店舗)の粗利高/全体の売上高となり、何のことはない粗利構成比となるわけです。したがって、これが複数あっても、分母は常に同じですので、分子の足し算で良く、複数の商品(部門、店舗)の粗利計算が簡単にできることになるわけです。

   このように、相乗積は魔法のような粗利計算の独特な技術のように思われていますが、その本質は何のことはない、単純な粗利構成比のことであり、粗利構成比=売上構成比×粗利率の粗利構成比を相乗積と呼んだことにより、その言葉のもつ神秘性と独特な計算技術とがあいまって分かりにくく、あたかも小売業界にとっての秘伝のように発展していったものといえます。これを機会に、この相乗積を本質から理解し、現場で実践活用し、粗利改善をどんどん図って欲しいと思います。

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