コマツ、日経が注目!
日経新聞、1/5号、会社研究に建設機械大手のコマツが取り上げられた。興味深い内容である。この会社研究のコーナーは、日経が経営者20人に今年の有望銘柄を聞いたところ、コマツが上位に入ったとのことで、取り上げられたものである。そのタイトルは、「会社研究、経営者が選んだ注目銘柄①、コマツ」であり、見出しは、「正攻法でROE追求、情報武装、生産強さ磨く」である。記事構成は大きく、3つに分かれており、「世界の稼働状況把握」、「13年3月20%目標」、「新たなライバル登場」である。
ちなみに、コマツの現在の株価であるが、1/6、現在、2,575円(+45円、+1.77%)であり、しかも、10月中旬以降、株価は右上がりで推移しており、まさに記事の通り、ここ最近の注目銘柄といえる。10月前半までは株価は1年以上1,500円前後で推移していたので、この10月中旬以降は株価急上昇という異常な動きであり、今後、どの辺で落ち着くのか、先が読みにくい状況といえる。
では、なぜ、10月中旬が株価の転機となったかであるが、その最大の要因は、10/28のコマツの中間決算の公表にあるといえる。日経の記事ではこの返の事情はあまり触れられていなので、その概要を見てみたい。まず、ちょっと面食らうが、コマツは通常の決算とは違い、米国会計基準での公表である。したがって、経常利益がなく、営業利益の次が当期純利益となり、さらに、株主関係の利益が3つ続く。実際の中間決算の数字は、売上高8,597.63 億円(33.1%)、営業利益1,039.12億円(425.2%)、税引前四半期純利益1,001.11億円(442.5%)、当社株主に帰属する四半期純利益 637.64億円(677.8%)、1株当たり当社株主に帰属する四半期純利益65.89億円(前期8.47円)、潜在株式調整後1株当たり当社株主に帰属する四半期純利益65.85円(前期8.47円)である。通常の日本の決算とは、特に、利益の捉え方が大きく違うといえ、しかも、株主を重視していることがわかる。
それにしても、売上高の33.1%はもちろんだが、それ以上に利益の昨対が異常であり、しかも、株価に直結するであろう、1株当たりの純利益が昨年と比べ桁違いに跳ね上がっており、びっくりである。それだけ、今期のコマツの決算が好調であったといえ、異常値であるといえよう。
そこで、もう少し、決算内容を見てみると、コマツの好調さの最大の要因は世界、グローバル化戦略にある。この中間決算時の売上構成比、伸び率を国別に見ると、日本1,174.05億円(構成比15.3%、伸び率10.2%)、米州1,902.52億円(構成比24.9%、伸び率32.8%)、欧州・CIS 717.46億円(構成比9.4%、伸び率21.9%)、中国 1,528.06億円(構成比20.0%、伸び率46.1%)、アジア・オセアニア1,818.69億円(構成比23.8%、伸び率55.0%)、中近東・アフリカ495.67億円(構成比6.5%、伸び率26.9%)という結果である。
何と、日本市場はわずか15.3%の構成比であり、伸び率も10.2%であり、いまやコマツはまさに、グローバル企業であるといえる。特に中国、アジア・オセアニアの存在感が大きく、今後、さらに伸びが期待できるといえ、来期以降もこの中間同様の好決算が期待できると思われる。
さて、記事にもどると、全体が見出しの通り、「正攻法でROE追求」の内容であるが、それも、この米国会計基準から当然といえば当然の経営目標であるといえよう。米国会計基準は明確に株主に対しての利益を強く意識しており、ここから、自然、株主の利益を示すROE、すなわち自己資本利益率(株主資本利益率)が経営目標とならざるをえないといえよう。本来、経営全体から見れば、ROA、すなわち、総資産利益率が重視され、経営目標としても、ROA=ROE×自己資本比率であるので、ROAの方が、経営目標としては、理にかなっているといえる。
ただ、記事を見ると、興味深いことに、ROE=純利益率×総資産回転率×負債依存度(自己資本比率の逆数)と分解している。これは実は、純利益率=純利益/売上高であり、総資産回転率=売上高/総資産であるので、掛けると売上高が約分され、純利益/総資産となり、ROA(総資産利益率)である。したがって、本来の式、ROA=ROE×自己資本比率を、ROE=ROA×自己資本比率の逆数としている。しかも、記事では、自己資本比率の逆数は据え置く、すなわち、固定であるというので、何のことはない事実上ROE=ROAであり、コマツはROEを経営目標にしていながら、事実上ROAをも経営目標としているということになる。
これは日本的な発想といえ、本来ROE重視となると、負債依存度を引き上げ、自己資本比率を下げ、有利子負債を大きく増やし、レバレッジをかけ、積極投資を行い、売上げ、利益を極限まで追求する金融業のようなアクションとなるが、コマツは、そこに歯止めをかけ、ROAを引き上げつつ、ROEも引き上げるという独特な経営戦略を打ち出しているといえ、ユ二ークである。米国会計基準を採用しながら、日本の伝統的な経営哲学をも組み込んでいるといえ、これがのコマツの強さの源泉といえよう。
このように、日経の会社研究では、コマツを最初の企業として取り上げたが、この中間期の業績が抜群に良く、ROE(実質ROA)を重視していることが背景にあるといえよう。特に、コマツは日本での売上構成比が15.3%と、極めて低く、もはや、アジア、オセアニア、さらには米国、欧州が主要な市場となっており、まさに、グローバル企業といえる。今後、この好調な決算がどこまで続くか、まずは、第3四半期、そして、その後の本決算の結果が気になるところである。
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