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January 04, 2011

お客様は時間とともに変化する!

   前回のブログで「馴染み客」と「一見さん」をとりあげた。この言葉は古くから使われていた日本独特のお客様の別称であるが、これ以外にも、お客様の呼び方は数多くある。先のブログでも、「お得意さん」、「ご贔屓さん」などを取り上げたが、いずれもお客様の別称である。あるいは「顧客」という呼び方もあり、お客様には様々な別称が存在する。また、これ以外では、「常連さん」などという呼称もある。これらの言葉を実際の商売の中では使い分け、日本では同じお客様でも、その違いを明確に区別し、それぞれに応じた何らかの特別な対応をしてきたといえる。これが日本の商売の原点であり、いまでもその伝統は生きており、いたるところで垣間見ることができる。

   たとえば、飲食店でお客様から常連さんになると、裏メニューが登場し、特別な料理がお手頃価格で食べられる。場合にはよってはそれが無料サービスとなることもある。八百屋などでも、お得意さんになると、特別値引きがあったり、旬の商品などをいち早く教えてくれたりする。また、高級飲食店などでは一見さんお断りの店もあったりと、お客様をしっかり区別し、商売の中に取り入れている。その意味で、日本の商売の原点は、お客様を区別することにあり、一見さんと馴染み客を分けて対応することにあったといえる。そして、その馴染み客をさらに、常連さん、お得意さん、ご贔屓さん等でランク分けし、それぞれに対してきめ細かい対応をしてきたといえる。

   これが商売を永続させる秘訣であり、これを店のご主人、あるいは女将さんが一手に取り仕切り、お客様のランク付けを行い、独自の対応をしてきたといえる。本来商売とはこれが原点であるといえ、まず、何からの商品の販売から始まるが、その後は、お客様とともに永続してゆくものであり、これが10年、100年、1000年と長く続いてゆく秘訣であるといえよう。

   こう見ると、商いには悠久の時間が最初から組み込まれているといえ、いったんはじめた商売をいかに永続させるか、ここに主眼があるといえよう。そして、その商売を永続させるには一見さんからはじまるお客様をいかに、馴染み客にし、常連さん、お得意さん、ご贔屓さんへとランクアップさせてゆくかという仕組みが必要であり、この仕組みを商いにいかに組み込めるかが、商いの永続性を保証するものであるといえよう。また、商いの出発点となった商品も、お客様とともに変化し、お客様によって熟成され、珠玉の商品にしあがってゆくことになる。これが日本の商いであり、商品とお客様が二重螺旋構造のように絡み合いながら悠久の時間の中でどちらも熟成し、完成度を高めてゆくことになるといえる。

   ひるがえって、食品スーパーマーケットでは残念ながら、お客様を認識することができていない。そもそも、セルフサービスを採用した時点でご主人、女将さんは不在となり、そこには商品とお客様のみの関係が残り、ひたすら商品の品揃えに精力をつぎ込んできたといえる。しかも、店舗数を拡大することが売上を引き上げる最良の政策であるため、新規出店を積極的に行い、結果、全店への商品の供給体制を確保するため、大量の商品調達が必要となり、ますます、商品戦略へ経営資源を集中させることとなったといえる。

   したがって、商いの原点、お客様が不在の商売が長らく食品スーパーマーケットでは続いてきたといえ、お客様を充分に認識できていなかったといえる。情報システムもお客様を把握するための仕組みではなく、商品を管理するための仕組みであり、マーチャンダイジング戦略を中心に活用されてきたといえる。実際、通常のPOSシステムでは、お客様については、レシートまでは把握できるが、馴染み客であるかどうかはもちろん、常連さん、お得意さん、ご贔屓さんを把握することは不可能であり、そのための対応も出来ていないのが実態である。

   このまま食品スーパーマーケットがお客様不在で走っていっていいのか、本来、日本の商売の原点はお客様にあったことを考えると、そろそろ、食品スーパーマーケットもお客様を経営の根幹にすえた日本の商いの原点に回帰しても良いのではないかと思う。確かに、これまでの約50年間は欧米の最先端のビジネスを吸収することに必死であったとは思うが、そろそろ、日本の商いを再度見直し、お客様を基点に、ビジネスモデルそのものを見直す時期に来たのではないかと思う。

   ただ、明るい兆しもあり、その萌芽はすでに見え始めているといえ、ID-POS分析がその鍵を握っているといえよう。ID-POS分析はお客様をID、すなわち、個々の顧客ととらえ、しかも、お客様の購入頻度がきめ細かく分析できるため、お客様を購入頻度により馴染み客、常連さん、お得意さん、ご贔屓さんに分けることが可能である。店舗全体でも、商品群ごとでも、単品ごとでも可能であり、このように顧客を認識できることにより、顧客とともに商品の品揃え、売場づくり、販促等を見直すことが可能となる。まさに、日本古来の商いの原点にもとづく商売を行うことができる可能性があるといえ、大いに研究すべき課題といえよう。

   今後、食品スーパーマーケットとしては、まずは、ID-POS分析を実施し、お客様をしっかり認識し、お客様がどのようなお買い物をしているのかの購入履歴を素直にみつめ、お客様の購買頻度に基づいたマーチャンダイジングを実践してゆくことが求められよう。食品スーパーマーケットの次の50年は、再度、日本の商いの原点、お客様を原点にすえ、次世代型の食品スーパーマーケットづくりに挑戦して欲しいと思う。

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