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February 12, 2011

いなげや、2011年3月、第3四半期、減収営業増益!

   いなげやが2/1、2011年3月期、第3四半期決算を公表した。結果は営業収益1,669.37億円(-3.2%)、営業利益24.93億円(20.7%)、経常利益27.03億円(19.3%)、当期純利益0.70億円(-92.6%)となり、減収営業増益、当期純利益は大幅な減益となる厳しい決算となった。当期純利益が大幅な減益となった要因は、「資産除去債務に関する会計基準の適用に伴う影響額15億46百万円ならびに減損損失3億64百万円など特別損失20億82百万円を計上した結果、・・」であり、資産除去債務に関する会計基準の適用が当期純利利益を相殺した構図である。

   いなげやの今回の資産除去債務に関する会計基準の特別損失は15.46億円であるが、これは営業収益の0.92%、売上高の0.96%に当たる。したがって、当期純利益が1%前後の食品スーパーマーケットの大半は赤字決算に陥る可能性が高いといえ、来期から2月期決算の食品スーパーマーケットにおいても、この会計基準は経営に重くのしかかることが予想され、のきなみ、当期純利益が悪化する懸念があるといえよう。

   しかも、いなげやは負債においても、資産除去債務が26.30億円計上しており、これは総資産885.62億円の2.96%に当たり、当然、自己資本比率にも影響が生じる。実際、今期のいなげやの自己資本比率は48.4%(昨年57.1%)と、下がっており、この会計基準の適用もその一因といえる。その意味で、食品スーパーマーケット業界としては、当期純利益において、約1%、負債において約3%の改善が経営数値を悪化させないための必須の数字といえ、今後、いかに、経営体質の改善をはかるかが大きな経営課題となろう。

   ちなみに、投資家はいなげやのこの決算をどう見たかであるが、この第3四半期決算の発表があった2/1の数日前からの株価を追ってみると、1/26(888円)、1/27(888円)、1/28(888円)、1/31(881円)、そして、2/1(878円)、2/2(878円)、2/3(887円)、2/4(895円)、2/7(895円)、2/8(889円)であり、大きな変動はなく、投資家は冷静に株価を見ているといえよう。ただ、当期純利益はPER、PBR等に影響を与える指標であり、本決算時の最終の数字がどの辺で落ち着くか、それを投資家がどう読むかが気になるところだ。

   さて、いなげやの今期の営業利益であるが、結果は20.7%と2桁の大幅増益となった。そこで、なぜ、営業利益が大幅な増益となったか、その要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが73.08%(昨年73.43%)と、0.35ポイント改善している。結果、売上総利益は26.92%(昨年26.57%)となり、この厳しい経営環境の中において、原価の改善が見られる。ただ、売上高が3.29%減少したため、売上総利益は432.85億円(昨年441.89億円)と減少しており、率での改善を高では補えなかったといえる。

   これに対して、経費の方であるが、29.15%(昨年29.05%)と、残念ながら、経費の方は0.10ポイントの上昇が見られる。現在、いなげやは経費比率の低いディスカウント戦略に力を入れており、「第3四半期連結会計期間末時点での店舗数は125店舗(うち「ina(い~な)21」は19店舗)となりました。」とのことで、ina21の店舗数が増えているが、まだ、経営全体への貢献は弱いといえよう。それにしても、経費比率29.15%はかなり高い数字である。食品スーパーマーケットの決算公開企業約50社の前期決算の平均が25.6%であるので、この数字は高い企業から数えて5番目前後となり、日本の食品スーパーマーケットの中でも、経費比率がかなり高い水準にあるといえる。

   したがって、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-2.23%(昨年-2.48%)と改善したとはいえ、依然として大きなマイナスであり、今後、経費比率をいかに改善するかがまったなしの経営課題といえよう。そして、これに、物流収入、不動産収入等のその他営業収入が3.79%(昨年3.73%)のり、営業利益は1.56%(昨年1.25%)と増益となった。原価の改善が経費の上昇を補い、マーチャンダイジング力が依然としてマイナスではあるが、改善しており、これが営業利益を押し上げた構図である。

   いなげやとしては、今後、この経費比率をいかに引き下げるかが課題といえ、その鍵を握っているのがina21であるといえるが、現在19店舗、全125店舗の内、15.2%であり、まだ全体への影響はわずかである。相乗積をとってみても、30%ぐらいからインパクトが表れ、最終的には50%ぐらいまでina21の構成比を引き上げないと経費比率を劇的に改善することは難しいのではないかと思われる。

   このように、いなげやの2011年3月期の第3四半期決算が公表されたが、結果は営業利益は原価の改善が寄与し、大きく増益となったが、売上げは依然として厳しい状況にあるといえる。また、今期から適用がはじまった資産除去債務に関する会計基準が経営を直撃しており、当期純利益が極めて厳しい状況にあり、自己資本比率にも影響が見られ、今後、いかに、利益を改善するかが課題といえ、そのためにも高めの経費比率をいかに引き下げられるかが当面の経営課題といえよう。残さされた本決算までの期間はわずかであるが、今期決算、そして、来期、いなげやがどのような経営改善を打ち出すか気になるところである。

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