ARPU(ID金額PI値)で見る携帯電話会社の経営!
ARPUという指標がある。Average Revenue Per Userの略であり、携帯電話会社では普通に使われている経営指標の1つである。直訳すると、1契約者当たりの平均収入ということであり、実はID金額PI値のことである。食品スーパーマーケット業界ではID金額PI値を用いることは稀であり、専ら金額PI値を用いており、その意味で新鮮な感じをうける。しかも、携帯電話会社では、ARPUを大きく2つに分けて使用するのが一般的である。ひとつは基本使用料+音声のARPU、そしてもうひとつはデータのARPUである。そして、双方を合計したものが統合ARPUとして区別している。
ちなみに、ID金額PI値と金額PI値の違いであるが、どちらも売上げを分子にしているが、分母がIDであるか、回数(レシート)であるかにより違う。食品スーパーマーケットの場合はID-POS分析がまだ普及していないため、IDを正確に把握することができず、レシート枚数を分母にし、1回の購入回数当たりの売上金額、すなわち、金額PI値を経営指標に活用するのが一般的である。これに対して、携帯電話会社は契約者、すなわち、IDが把握できるため、通話回数よりも、契約者を重視、売上金額をIDで割ったARPU、すなわち、ID金額PI値をごく普通に使っている。
この2つの指標の関係は、ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値となり、ID金額PI値はダイレクトに顧客に働きかけるマーケティングが実践できるが、金額PI値はIDが絡まないため商品に対してのマーチャンダイジングが中心となり、顧客対応がダイレクトにできないという面が課題となる。食品スーパーマーケットとしては、その意味で、将来、ID-POS分析を導入した場合、すでに、ID金額PI値(ARPU)での経営戦略にたけている携帯電話会社の開発してきたノウハウが大いに参考になるといえよう。
ただ、やや残念なことに、携帯電話会社もID客数PI値、金額PI値への落とし込みが十分でなく、マーチャンダイジングの評価がいまひとつ明確でない面がある。たとえば、契約者の通話回数、平均単価、データの使用回数まで落とし込み、ID金額PI値(ARPU)=ID客数PI値(携帯使用頻度)×金額PI値(携帯1回使用当たりの使用金額)、さらには、金額PI値(携帯1回使用当たりの使用金額)=PI値(携帯使用回数当たりの購入点数)×平均単価(購入単価)などに、分解してゆけば、携帯電話のマーチャンダイジング戦略が構築できよう。
話をもとにもどし、たとえば、ソフトバンクでARPUを見ると、2006年頃は5,510円のARPUであったが、2009年度は4,079円と約1,500円落ちている。その原因は各社の競争激化により、基本使用料+音声のARPUが4,320円から2,160円と激減したのが原因である。逆にデータARPUは1,380円から1,990円と伸びており、恐らく数年以内に逆転、データARPUがソフトバンクの経営にとって生命線になることが予想される。この傾向は各社も同様に下がっているが、ソフトバンクは2008年に反転が起こっているのに対し、NTTドコモ、KDDIは、伸び率がほぼ一直線に下がっている点が違う。その要因が先に見たデータARPUにあり、各社がこの数年漸増であるところを、ソフトバンクがiphoneの投入により、一気に引き離したところが大きいといえよう。ただ、まだ絶対金額のARPUではドコモに負けており、ドコモは1,000円以上高い5,000円を優に超えており、この点ではドコモがまだ上回っている。同様にデータARPUでも、ソフトバンクは伸び率では上回っているが、金額ではドコモの方が依然として高い状況である。
こう見ると、ID-POS分析は携帯電話会社では、ARPUという指標として、ID金額PI値がごく普通に使われており、サービス内容を比較したり、さらには、経営規模の違う携帯会社同士を比較したりし、経営分析に活用しているのが実態である。その意味で、食品スーパーマーケット業界としては、すでに、ID-POS分析の経営分析へ活用している先行事例が存在するといえ、この経営分析を参考にし、ID-POS分析を通じた経営改善を図ってゆくべきであろう。
ただ、携帯電話会社においても残念なことは、ID金額PI値、すなわち、ARPUの戦略的な活用がメインであり、マーチャンダイジングへの活用が十分でない点である。また、次世代の経営指標となるであろう時間という概念がまだ十分に組みこまれていないようであり、この点も残念である。時間は携帯電話にとって最も重要な指標であり、ARPUと組み合わせることで、マーケティングにも、マーチャンダイジングにも活用できる可能性が高いといえ、今後の課題といえよう。
このように、携帯電話会社がID-POS分析を当たり前のように実施し、ID金額PI値、すなわちARPUを戦略的に活用し、経営分析に活かしていたとは驚きである。食品スーパーマーケット業界ではまだこれからID-POS分析が本格し、マーチャンダイジングへの活用に踏み込むことになると思われるが、この携帯電話会社の先行事例をよく研究し、参考にしてゆくことが必要といえよう。その意味で、特に、伸び率では優位性があるが、絶対金額ではまだ劣勢にあるソフトバンクが、今後、ID金額PI値、すなわち、ARPUを駆使し、どのような戦略を打ち出すか、興味深いところである。
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