N012:インショップと食品スーパーマーケット!
ここ最近、インショップという形態での農産物の産直売場を食品スーパーマーケット、GMS等でよくみかける。青果売場の店頭に1坪か2坪、大きくてもせいぜい3坪ぐらいの産直売場であるが、品揃えが豊富、中々珍しい商品もあり、魅力的な売場が多い。パッケージのラベルには、原則、生産者の名前、場合によっては、顔写真があるものもあり、誰がつくった野菜、果物なのかがわかるようになっている。なぜ、このようなインショップが最近増えてきたのか、その背景を生産者、食品スーパーマーケット双方の側から探ってみたい。
まず、生産者側からみた場合であるが、多くの場合、JAが仲介しているのが実態といえ、東京都心部の売場でいえば、首都圏周辺のJAが産地から直接農産物を毎日配送しているケースが多い。JAでは毎朝、近隣の農家が収穫した農産物を集荷場に集め、そこで、生産者の名前と商品名、そして、価格が組みこまれたバーコードを付け、店舗別に仕分けを行い、コンテナに積み込み、8時頃には、4トン車のトラックで出発するのが通常のオペレーションである。
そして、約1時間、高速で東京の都心部に向かい、店舗の開店前にはトラックが到着し、農産物がの満杯となったコンテナが売場に置かれ、売場では従業員がそれを陳列する。産直商品は商品分類よりも、生産者分類が重視されるため、通常の青果売場の陳列のように商品別陳列ではなく、どちらかというと生産者別陳列が優先されることが多い。消費者も商品を買うというよりも、生産者を選んで買っている場合が多く、産直商品は商品よりも、生産者、誰が作った農産物であるかが重要といえる。
これが、1日のオペレーションであるが、ここに至るまでには、特に、生産者側では詰めなければならない課題が数多くある。原則、週1回は店舗と生産者は翌週の売場づくりのためのミーティングを実施しているのが実態といえる。これは、産直という形態をとるため、生産物は原則、店舗側が買取ることになり、店舗側からの要望が特に強いためである。直売であれば、生産者が在庫を引き取ることになるが、インショップは通常は産直であり、店舗側がすべての商品を買い取る、すなわち、仕入れをしているのが実態である。したがって、価格の決定権も店舗側に主導権があり、消費者に受け入れられない価格はありえず、自然、店内の他の農産物を意識した価格となるのが実態である。
さらに、売れ残りの在庫が発生した場合は、店舗側がそのロスをもつことになるので、販売数量はシビアに決定される。逆に、欠品もチャンスロスとなるため、できるだけ出したくない心理が働き、さらに、販売数量の読みはシビアになり、この2点が事前ミーティングでは激しい攻防戦になるといえる。何をいくらで、何個、来週仕入れるかである。また、当然のことであるが、生産者側が決まった生産物を決まった価格で、決まった量、手配しなければならず、それを守れるかどうかが、重要なポイントであり、かなりのプレッシャーであるといえる。
したがって、直売と比べると、より、栽培技術も、日々のオペレーションも要求されるため、インショップはそれなりに、しっかり対応できる生産者でないと務まらないといえる。ただ、単品量販という場合は少なく、少量多品目がどちらかというと求められるため、プロ農家というよりも、高齢者、女性、新規就農者にこそ、価値が高い仕組みといえよう。しかも、大都市中心部の店舗は客数も多く、地元の産地直売所よりも、販売額は格段に多いといえ、手数料に加え、物流費等の経費を差引いても、所得向上効果は高いのが通常である。生産者にとってはメリットが高い仕組みであるといえよう。
では、食品スーパーマーケット側からみたらどうか。当然、通常の市場経由の青果よりも産直は鮮度、安心、安全性が高いと消費者から評価されていることが多く、集客効果が大きいといえ、メリットが高いといえる。ただ、やや厳しくその数字を見積もってみると、青果の売上げは、食品スーパーマーケットの約10%である。インショップの売上げは多くの事例を分析すると、青果の売上の約10%ぐらいであるのが実態である。したがって、インショップは食品スーパーマーケットの全売上げの約1%となる。
これはちょうどポイント還元が売上げの1%前後であるので、ポイント還元が2%になったようなイメージであり、インショップを入れることによって、1%の販促をしているのと実態は変わらないといえる。したがって、食品スーパーマーケットにとってインショップは儲かる商品というよりも、インショップという販促手法をポイントと同じようにひとつ追加したという位置づけといえ、経営全体に影響を与えるところまでは、残念ながらいっていないといえる。インショップはその意味で生産者の方のメリットの方が食品スーパーマーケット側よりもどちらかというと大きいといえ、今後、さらに、インショップが定着するためには、食品スーパーマーケットにとって、少なくともポイント還元を超えるか、本当に儲かるか、さらにインパクトのある進化が必要といえよう。
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