売上げを商品から見るか、顧客から見るか?
ここ最近、ID-POS分析をもとに研修する機会が多い。そこでよく問題になるのが売上げを上げるためにどのような仮説を立てるかであるが、ID-POS分析に慣れていないと、通常のPOS分析の考え方を前提に仮説を立て、その仮説の中にIDという視点が全く入らない仮説を立ててしまうことが多い。せっかく、ID-POS分析をしているのに、IDという視点が入らない仮説は意味がないが、これまで通常のPOS分析に慣れてしまっているため、思考そのものが通常のPOS分析になってしまっているためであると思われる。
たとえば、バナナの売上げを上げるには、どのような仮説をたてるかという場合、通常のPOS分析からは、販売数量と平均単価に着目し、仮説作りに入る。販売数量はPI値としてもよく、PI値が算出されている場合は、金額PI値=PI値×平均単価となるため、PI値と平均単価に着目することになる。そして、この数字をもとに、チェーンストアの場合は、店舗ごとのバナナの比較を行い、PI値の低い店舗の課題、あるいは平均単価の低い店舗の課題を現場で確認し、PI値改善の仮説、ないしは、平均単価改善の仮説を考えることになる。
そして、PI値が低い場合は欠品が最初の着眼点となることが多く、バナナが毎日しっかり、売場に出ているかどうかを日別のPOSデータで確認したり、現場のバナナの発注、品出し、在庫の確認をしたりし、そこに問題があれば、その改善仮説をつくることになる。あるいは、販促に問題があれば、POPの見直し、フェイスの見直し、場所の見直し、ちらしの見直しなどを詰めてゆくことになる。
平均単価に問題がある場合は、値引き、見切りの問題、そこから在庫管理の問題に発展し、発注改善という仮説づくりにつながってゆく。また、バナナ全体の平均単価が低い場合は、バナナの品揃えに問題がある場合が多く、平均単価の高いバナナ、ひとつは大容量のバナナの品揃え、もうひとつは付加価値の高いバナナの品揃えに問題がないかどうかをチェックすることになる。
さらに、バイヤーとしては、バナナそのものに問題がないとはいえないので、バナナの産地の見直し、仕入れ先の見直し等を検討することもある。あるいは店内作業を最小限にするために、バナナのカットを物流センターで対応する体制をつくるなど、商品づくりに踏み込んだ仮説づくりを考えることになる。
このように、通常のPOS分析から仮説をつくることに慣れてしまっている場合はID-POS分析をしても、その数字改善の仮説を作る場合、同様に、商品にかかわる課題を徹底的に見直してゆくという観点からの仮説づくりを、ついつい考えてしまう場合が多い。特に、ID-POS分析が可能となり、そのデータが見られるようになった初期の頃にはこのような仮説づくりとなり、せっかく、IDでの分析ができているにも関わらず、IDという視点からの見方ができない場合が多い。もちろん、ID-POS分析は、IDの視点もあるが、同時に、商品の視点も組みこまれているので、これまでの商品からの視点も重要であるが、大前提がIDを基点にした分析であるので、まずは、商品ではなく、IDからの視点がポイントとなる。
では、IDからの視点を考え、どのように仮説づくりを行っていったら良いかであるが、その第1歩は、バナナでいえば、バナナを購入している顧客構造を把握し、そのイメージを鮮明に描くことからはじまるといえる。ID-POS分析の数字は無味乾燥なものであるが、その数字からイメージ、この場合はバナナのイメージを作り上げることが最初の課題である。イメージができるまで、バナナのID-POS分析を様々な角度から分析する、ここが最大のポイントである。
ID-POS分析はひとつの見方を追っかけてゆくのではなく、様々な角度からバナナを眺め、バナナの購入顧客の全体像を掴む、ここからスタートすることが課題といえる。したがって、そのイメージができるまでは、ID-POS分析をやめない、とことん続ける、これがポイントである。逆にいえば、バナナのイメージができないようであれば、ID-POS分析が十分でないと判断して良い。
そこで、そのバナナのイメージであるが、このバナナは誰が買っているか、まず、その全ID(顧客)を掴む。次に、その顧客がどのような頻度で購入し、いくら購入しているか、さらには、1回当たり、何個購入し、その価格はいくらかを掴む。まずはこれが基本である。次に、この顧客を頻度ごとに分けてみる。その結果、高頻度の顧客はどのくらいいるか、中頻度の顧客、低頻度の顧客はどのくらいいるか。そして、この状況を月ごとに1年間見た場合、どのような流れになっているかを掴む。これでバナナの顧客構造がほぼ掴めるはずである。そして、このイメージをもとに、どのように顧客構造を変えれば、バナナの売上げが上がるかを考える。これがID-POS分析の仮説である。
このように、ID-POS分析で仮説をつくる場合は、あらゆる角度から顧客の購入状況を把握し、顧客の購入イメージを鮮明に描ききるまで分析をし続けることがポイントである。そして、そのイメージを描くことができれば、自然、ID-POS分析からの仮説作りは、イメージとして浮かび上がるものである。これが見えれば、あとは、そのイメージをもとに、仮説イメージを固め、そこに改善数字を入れれば良いといえる。
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