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February 06, 2011

N011:直売所の本質とは?

   約1年に渡って取り組んできた大都市における直売所関係の調査事業であるが、いよいよ、実施調査がほぼ終了し、報告書の作成段階に入った。今回は特に、産地直売所と違い、大都市における直売所の実態を調査するということがメインであったため、文字通り、大都市、東京、大阪、名古屋はもちろん、札幌、仙台、福岡をも調査対象とし、その実態調査を実施した。その中で改めて感じたことは、大都市の直売所は産地直売所とは異質なものであり、似て非なるものであることが鮮明になった。

   そもそも、直売所とは農業生産者が自らの畑で採れた野菜、果物を庭先で販売したことがはじめといえ、これが発展し、生産者同士が集まり、直売所へと発展していったといえる。これが産地直売所の原型といえ、直売所の発祥といえよう。それが、ここ数年、安心、安全をもとめる消費者から絶大な支持をあつめ、八百屋、食品スーパーマーケットとの差別化につながり、結果、農業生産者、特に、小規模農家の所得向上をもたらしはじめ、経済活動としても認知されるようになったといえる。特に、TPP等、農業にとっても重要な課題が控えていることもあり、農業生産者の所得の確保、向上はまったなしの状況にあるといえ、直売所はいまや、農業、特に小規模農家にとっては、切っても切り離せない重要な位置づけとなりつつある。

   ちなみに、直売所の市場規模であるが、本調査事業では、少なく見積もっても、全国で約5,000億円を超えると見ている。残念ながら、直売所の市場規模が商業統計には当然掲載されていないし、そもそも、このブログのテーマでもあるが、商業、特に、小売業なのかどうかが、微妙な問題であり、しかも、ここ数年で急成長してきたのが実態であり、商業的な位置付けがはっきりしないというのが現状である。

   ただ、青果を扱っているという点においては、八百屋、食品スーパーマーケット、GMS等と見た目は変わらず、この範疇で論じても良いとはいえるが、現時点ではまだ確固たる位置づけができていないといえる。参考に、それぞれの業態の商業統計から見た青果のみの市場規模の推定であるが、八百屋は約1兆円、食品スーパーマーケットは約2兆円、GMSは約3,000億円である。これは中央卸売市場、地方卸売市場の青果の販売統計から見ても、近い数字であり、マクロに見れば、だいたい、このような数字と判断して良いといえよう。

   さて、直売所の本質であるが、結論からいえば、直売所を小売業と捉えるのは間違いであるといえよう。なぜなら、小売業の基本原則は、商品を生産者から仕入れ、在庫を確保し、自ら価格を付け(値入れ)、消費者に販売し、売れ残った場合は在庫を自ら処分するという一連の流れがあるからである。これに対して、直売所は商品を仕入れることも、価格をつけることも、在庫を処分することもなく、これらはすべて生産者に委ねており、この点に関しては何の権利、そして、決定権をもたないからである。したがって、これを商売、少なくとも小売業とは呼ぶことできず、直売所を小売業に位置づけるには無理があるといえる。

   では、直売所とは何かであるが、既存の商業でもっとも近いのが不動産業であるといえよう。その中でも、商業不動産、これが直売所の本質であるといえよう。具体的には、ショッピングセンター、商店街、あるいは、百貨店に最も近いといえる。大都市でいえば、パルコ、109、ルミネ、そして、各都市の商店街などがイメージできよう。

   これらの商業不動産は原則、商品の買取りはない。出店者を募るだけである。当然、商品の価格設定にも関与しないし、その決定権ももたない。在庫も所有せず、在庫は出店者がもってきて、残れば、自ら引き取るだけである。では、商業不動産は何をやっているかであるが、その主な業務は不動産価値を高めるためのあらゆる施策である。集客力の高い建物のデザインや内装づくり、出店者が使いやすいような仕組みづくり、そして、最も重要なのが出店者の評価である。商業施設に出店できる出店者は限られており、限られた出店者をどう選定するかである。

   こう見ると、直売所も全く同じ仕組みであるといえ、直売所を小売業としてではなく、商業不動産として改めて位置づけることが、特に、不動産価値が極端に高くなる大都市においては重要といえよう。大都市でのあらゆる商業は不動産の価値と切り離して考えることはできず、その価値に見合うだけの付加価値の高い商業だけが、大都市では成り立ってゆくといえる。したがって、大都市における直売所は大都市における商業不動産ビジネスであるという位置づけの中で改めて考える必要があり、ここが、比較的不動産価値の低い産地直売所と同じ商業不動産ビジネスであるにも関わらず、決定的な違いであるといえよう。

   このように直売所は小売業と見ると、その本質は理解できないといえ、商業不動産として改めて捉えなして見ると、直売所の本質が見えてくるといえる。特に、大都市においては、この観点は決定的な問題であるといえ、大都市における不動産価値に匹敵するだけのパワーがないと、直売所そのものが成立しえないといえる。残念ながら、現在の直売所はまだ、そこまでパワーのある直売所は少ないといえ、すでに、大都市で成功した既存の商業不動産に出店するか、大都市周辺でパワーをつけた直売所が次の展開として打ってでるかしかないといえよう。今後、大都市において、どのように直売所が展開されてゆくのか、興味深いところである。

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