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March 03, 2011

ウォルマート、2011年1月期決算、売上高3.4%、微増!

   ウォルマートが2/22、2011年1月期の本決算を公表した。結果は売上高が4,189.52億ドル(約34兆円)となり、昨対では3.4%増となった。現在、円高であり、1ドル80円強であるので、円換算では約34兆円となるが、仮に1ドル100円であれば、円換算では40兆円を超えるので、為替相場がいかに海外との関係ではインパクトがあるかがわかる。気になるのはウォルマートの株価であるが、2/22の前営業日である2/18(55.38ドル)、そして、2/22(53.67ドル)、2/23(53.03ドル)、2/24(52.09ドル)、2/25(51.75ドル)と決算発表以降、株価を下げている。チャートを見ても2月までは順調に株価を上げていたが、2月に入り株価は反転、下がりはじめ、決算発表後もほぼ右下がりになっており、投資家はウォルマートの決算を厳しく見ているといえよう。

   それにしても、ウォルマートの決算公表資料を見ると、冒頭に、1株当たりの利益 EPS(earnings per share)が示され、いかに、上場企業は投資家を配慮しているかがわかる。EPSは1株当たりの利益であるので、ウォルマートは決算において、この投資家の1株の価値を最も重視している指標としているということであり、日本の決算発表ではみられない光景である。そのEPSであるが、「Walmart reports fourth quarter EPS from continuing operations of $1.41、・・」とのことであり、1.41ドル、これは公約の1.34ドルを上回ったとのことで、投資家に対して、1株の価値を下げてはいないという点が冒頭の決算発表で示されている。

   日本の上場企業では、増収増益かどうかが、とにかく先に示され、決算発表の場でもこの点を強調するが、ウォルマートのこの本決算の公表の仕方を見ていると、全く発想が違い、for the投資家であり、びっくりである。ただ、このEPSがプラスになった結果を強調しても、株価は事実上下げており、投資家は、ウォルマートの今回の決算に不満をいだいているといえ、シビアな反応である。

   そこで、改めて、ウォルマートの本決算のP/Lを見てみたい。まずは、売上高は先に見た通りであり、3.4%の増加である。これに、サムズクラブの会員収入が28.97億ドル(売上対比0.69%、昨対-1.9%)加わり、営業収入は4,218.49億ドルとなり、伸び率は売上高と同様3.4%増である。そして、ここからcostが引かれるが、日本の食品スーパーマーケットの決算とはかなり内容が違い、まずはCost of salesというcostが差し引かれる。その数字は3,152.87億ドル(売上対比75.25%、昨対3.6%)である。Cost of salesは経費のように思えるが、この売上対比を見る限り、あきらかに原価である。ここでも日本の会計基準とは違い、とまどうところであるが、結果は昨対3.6%であり、原価の上昇が見られる。

   一方経費であるが、この経費が原価と同じ場所に表示されており、これもとまどうところである。Operating, selling, general and administrative expensesであるが、結果は、810.20億ドル(売上対比19.3%、昨対1.7%)である。ここでも上昇が見られ、原価、経費ともに上昇しており、この数字を単純に評価すると、売上高は3.4%増となったが、原価、経費は上昇しており、厳しい結果となっているといえる。でも、EPSは増加しており、解釈が難しい決算である。日本ではこれで、営業利益となるが、そうならないところがアメリカである。

   それにしても、日本でいう原価と経費は全く同じ範疇となっており、これを足して、Costs and expensesでくくる。日本では原価と経費はきっちり分けで計算するが、ウォルマートの決算書では、一緒であり、双方合わせて、コスト(Cost of sales)と経費(Operating, selling, general and administrative expenses)に分かれており、足して、Costs and expensesとなる。単純に、日本流に評価すると、原価、経費の上昇が見られるので、問題ではないかと思われるが、この時点では利益はまだ確定されない。営業利益がないともいえる。

   さらに、P/Lは続き、なぜかOperating incomeが加わる。これは、Interestとして、Debt 19.28億ドル、Capital leases 2.77億ドルのプラス、Interest income -2.01億ドルが加わり、結果、Interest, net 20.04 億ドルがプラスとなり、さらに、ここから税金関連が続き、最終的にはIncome from continuing operations attributable to Walmartとして、153.55億ドル(6.3%)の増益となる。実にわかりにくいP/Lであり、結果、増収増益となり、EPSはプラスということであろうが、原価、経費、双方が上昇しており、日本流に見れば、増収減益であり、厳しい決算であるといえよう。

   また、全体が3.4%の売上高になった要因も、その中身を見ると、ウォルマート本体は0.1%の増加であり、海外が12.1%、サムズクラブが3.5%と、海外事業に支えられた増収であるので、アメリカ国内は厳しかったといえる。

   こうみると、EPSは確かに上昇しているが、売上高もアメリカ国内は厳しい状況であり、海外事業に支えられての好調さといえる。また、利益の方も、原価、経費、双方の上昇が見られ、マーチャンダイジングの観点から見ると、極めて厳しい結果であったといえよう。したがって、EPSが上昇したのは、その他収入が押し上げたといえ、ウォルマート本来の営業状況はどう見ても好調であるとはいえず、株価が下がるのは納得がゆく評価であるといえる。この本決算を見る限り、ウォルマートの今後が実に気になる結果であり、今後、ウォルマートがどのような経営方針を打ち出すか、その動向に注目である。

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