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March 07, 2011

ドコモ、第3四半期決算を見る、米国会計基準?

   ここ最近、ARPU(アープ)を研究しており、その関係でドコモの最新の決算書をチェックしていて興味深い事実を見つけた。決算書が米国会計基準で公表されていることである。3/3の本ブログでも、ウォルマートの本決算を取り上げたが、その決算書が日本の食品スーパーマーケットと大きく違う点を指摘したが、それが米国会計基準の決算書であり、まさか、それがそのまま日本の企業の通常の決算でも用いられ、公表されているとは思っていなかったので、このドコモの決算書は実に興味深い内容である。

   特に、ウォルマートの決算書を見ていて、正式な日本語訳が分かりにくいものもあったが、このドコモの決算書を見ると、まさにその分かりにくい項目が翻訳されており、ウォルマートの決算書そのものも、ドコモと比較するとよくわかる。そこで、このドコモの決算書を見ながら、あらためて米国会計基準での決算書は、どこがポイントなのかを見てみたい。今後、本ブログで取り上げるウォルマートの決算情報に関しても、ドコモの決算書と比較することによって、さらに分かりやすく解説できるようになると思う。

   ここでは、ドコモの最新の決算、2011年3月期、第3四半期の決算をもとに、米国会計基準は日本の決算とどのように違うのかを見てみたい。まず、冒頭の決算結果であるが、ウォルマートはいきなり、1株当たりの利益 、すなわちEPS(earnings per share)を示していたが、ドコモの決算書でも冒頭ではないが、「基本的1株当たり当社株主に帰属する四半期純利益」という項目があり、これがEPSである。その数字であるが、10,671.42円(昨年10,046.99円)であり、6.2%のアップであり、ドコモもEPSを高めており、株主の1株の価値が上昇していることがわかる。ちなみに、その横に、実に分かりにくい翻訳用語、「希薄化後当社株主に帰属する四半期純利益」とあるが、これは数字がない空白となっている。要は株式分割などにより、株価の価値が薄まるという意味であるが、いかに、米国会計基準が既存株主の1株当たりの価値を重視しているかがわかる。

   米国会計基準では、このEPSがウォルマートの決算に見るように極めて重視されているが、これは日本の決算書でも1株当たり四半期純利益という項目で、同様に表示されているが、実にあっさり表示されており、米国会計基準のものものしい表現と比べ対象的である。

   ついで、そのすぐ上に営業成績が示されるが、これがまた興味深い内容である。すぐに気付くのは、経常利益がない点である。いきなり営業利益から、純利益となり、しかも、その純利益が2つに分かれ、税引前四半期純利益と当社株主に帰属する四半期純利益に分かれることである。ここが最大の日本の決算書との違いといえよう。キャッシュ、特に、株主が得るべきキャッシュを重視しているといえ、論理的に株主のキャッシュへストレートにつながっており、実にすっきりした順序である。そして、先に示した「基本的1株当たり当社株主に帰属する四半期純利益」へとつながってゆく。

   これは経常利益を単に省いたという問題ではなく、利益構造そのもののとらえ方が違うといえる。この表面的な面だけでは、利益構造のとらえ方がわからないが、これをP/Lにまで踏み込むとその違いが一目瞭然となる。ドコモのP/Lを見ると、当たり前といえば、当たり前であるが、ウォルマートの決算書と同じ流れで利益が計算されている。日本のP/Lでは売上高から原価を引き、売上総利益を算出し、いわゆる粗利を明確にする。そして、ここから経費を差し引き、営業利益を算出するが、米国会計基準では売上高から、いっきに原価と経費を差し引き、ストレートに営業利益を算出する。したがって、売上総利益、すなわち、粗利という概念も経費という概念もないといえる。要は、インとアウトに着目しており、その差が営業利益であるというストレートな営業利益の解釈である。

   ドコモも同様な決算となっており、インが3兆2,091.29億円であり、アウトが2兆4,506.28億円であり、営業利益が7,585.01億円であるという流れである。原価と経費はアウトとして、一緒にされており、日本のように売上総利益を算出することがないのが最大の特徴といえる。要は、キャッシュはなんぼというストレートな決算である。そして、ここから税金を引いて、純利益が4,456.42億円となり、これが株主に帰属するキャッシュであるという結果となる。ウォルマートの決算書がわかりにくかったのは、このような流れになっているからであり、粗利、経費がいちいち示されず、どちらもアウトで括られていたためである。

   このように、ドコモは米国会計基準で決算書が公表されており、ウォルマートの決算書と当たり前であるが、全く同じ構造である。これまでウォルマートの決算書がやや解釈しづらい面があったが、このドコモの決算書にその答えがあり、よくよく見ると、論理的には首尾一貫して、株主のもつべきキャッシュ、そして、その価値に重きをおいている計算方式であるといえる。株式会社の株式という、その本質を見ごとに表現しているといえよう。改めて、米国会計基準は、資本の論理、その冷徹さがストレートに伝わってくる会計の仕組みであるといえよう。

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