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April 2011

April 30, 2011

カスミ、2011年2月期決算、増収増益!

   カスミが4/11、2011年2月期決算を公表した。結果は、営業収益2,186.01億円(0.8%)、営業利益 67.94億円(22.4%)、経常利益 73.84億円(21.1%)、当期純利益 32.21億円(16.7%)と、増収幅はわずかではあったが、増収増益となる好決算となった。特に、利益はいずれの段階でも2桁の伸びとなった。

   そこで、まずは、カスミの利益が好調な結果となった要因を原価、経費面から見てみたい。今期、カスミの原価であるが、74.24%(昨年73.76%)なり、0.48ポイント上昇した。結果、売上総利益は25.76%(昨年26.24%)と下がった。これについて、カスミは、「営業面では「なっとくの品質を1円でもお安く」をテーマに、定番商品の価格を見直すと共に、曜日毎に特定の品目をお買得価格で提供する「曜日市」の充実、鮮度と価格面からその日一番お買得な青果物を提供する「一番野菜」「一番果実」の展開など、販促企画の強化を行いました。」とのことで、価格訴求を徹底したことが、原価を下げた要因のひとつといえよう。また、「平成23年6月に創立50周年を迎えるにあたり、これまで当社を支えて下さったお客様への感謝の気持ちを込めた記念セールやプレゼント企画、イベントなどを開催しました。」とのことで、50周年企画の販促を強めたこともその一因といえよう。

   一方、経費の方であるが、26.05%(昨年26.96%)と、0.91ポイントと大きく改善した。これについて、カスミは、「ローコスト化の取り組みでは、店内作業において時間帯毎の作業量に応じた適正な人員配置を行うことで、売場のサービスレベル向上と総労働時間のコントロールに取り組みました。また、業務の見直しによるコスト削減を継続強化しました。

   さらに、管理者のマネジメント能力向上を目的とした実践教育を継続強化し、その対象を営業現場の第一線を担うチーフ職にまで拡大しました。」とコメントしており、特に、人件費の見直しに取り組んだとのことである。実際、今期のカスミの経費の状況を見てみると、人件費が259.53億円(昨年265.13億円、-2.1%)と5.60億円下がっている。また、それ以上に、設備費が180.83億円(昨年191.72億円、-5.7%)と、10.89億円下がっており、設備の削減も大きかったといえる。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-0.29%(昨年-0.72%)と、依然としてマイナスではあるが、その幅は大きく改善しており、経費削減の効果が鮮明であるといえる。ただ、経費比率26.05%は、昨年の決算公開企業約50社の平均が25.6%であるので、依然として高めの水準であるといえ、今後、さらに、経費比率を改善し、マーチャンダイジング力をいかにプラスにもっていけるかが課題といえよう。そして、これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が3.52%(昨年3.38%)加わり、結果、営業利益は3.23%(昨年2.66%)と、利益が大きく改善した。

   こう見ると、今期、営業利益が大きく改善した要因は、経費改善の効果が極めて大きく、原価の上昇をカバーしており、経費削減がカスミにとっては利益の源泉であったといえよう。気になるのは、原価の上昇であるが、カスミはイオングループであるため、当然、原価改善のためにイオンのプライベートブランド、トップバリューを導入している。今期の状況を見ると、95.42億円(昨年104.41億円、91.4%)であり、その構成比は4.6%となった。したがって、トップバリューの比率が下がっており、これも原価を下げる要因となったといえよう。特に、今期は先に見たように価格訴求を重視しており、結果、構成比の上がったナショナルブランド(NB)の原価が下がったものと思われる。

   さて、結果、利益は大きく上昇したことにより、キャッシュフローは実質増加しているが、今期は法人税の支払いが増加し、営業活動によるキャッシュフローは72.84億円(昨年95.18億円)と減少した。ただ、投資活動によるキャッシュフローも-21.96億円(昨年-48.16億円)と半減しており、結果、フリーキャッシュフローは50.88億円(昨年47.02億円)と若干増加している。これは、新規出店等の成長戦略への投資を削減したことによる。実際、今期の新店を含む設備投資は昨年の72.14億円から37.30億円へと大きく削減しており、結果、営業収益も0.8%の増加に留まっている。そこで、財務活動によるキャッシュフローであるが、-40.82億円(昨年-29.17億円)とフリーキャッシュフローをめいっぱいあている。その中身であるが、-31.76億円(昨年-20.08億円)を有利子負債へあてており、財務改善にキャッシュを振り向けていることがわかる。

   このように、カスミの2011年2月期の決算は増収増益、特に利益は原価の上昇を大幅な経費削減によりカバーし、2桁の上昇となった。そして、その改善した利益を財務改善にあてており、今期は成長よりも、財務改善を含む内部体制の充実に経営資源を配分したといえる。そして、来期はさらに、投資を抑制し、有利子負債の削減を目指しており、当面、カスミの経営戦略は経費削減によりキャッシュを生み出し、生み出されたキャッシュを成長戦略よりも財務改善に充てる方針といえよう。特に、来期は3/11の東日本大震災の影響も不透明であることから、成長戦略を打ち出しにくい経営環境にあるといえる。今後、カスミが、財務体質を改善し、いつ成長戦略を打ち出すか、その反転に注目である。

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April 29, 2011

食品スーパー、売上速報、2011年3月度、103.6%!

   4/28、オール日本スーパーマーケット協会、日本スーパーマーケット協会、社団法人新日本スーパーマーケット協会、3社合同による2011年3月度の食品スーパーマーケットの売上速報が公表された。結果は売上高が7,513億5,133万円となり、昨対では103.6%となった。店舗数は7,120店舗、主要食品スーパーマーケットをほぼ網羅しており、現時点での食品スーパーマーケット業界の現状を表しているといえよう。特に、この3月度は、3/11の東日本大震災の影響がどのような結果となったかが注目されたが、103.6%となり、コンビニ同様、堅調な結果となった。

   ただ、これを地域別にみると、北海道・東北エリアは93.7%と、唯一昨対を割っており、厳しい状況であったことがわかる。食品スーパーマーケットの復旧は急ピッチで進んでいるが、3月度時点では、被災店舗も多く、商品も十分に供給できない状況といえ、厳しい結果となった。次回、4月度、どこまで、この数字が回復するか、その結果を期待したところである。

   ついで、関東エリアであるが、106.0%と、全エリアの中で最も数字が高い結果となった。特に、このエリアの大半は東京電力の管内であり、計画停電等の影響もあり、消費者のまとめ買い需要、停電関連商品の特需等も加わり、これらが通常の売上げを押し上げたといえよう。実際、3月度の東京の食品スーパーマーケットの売場は、ローソク、電池、紙製品、水、米、パン、カップ麺、菓子、納豆、ヨーグルト等、入荷してもすぐに欠品となる商品が続出していた時期であり、異常な消費が続いていたといえる。したがって、これらを含め、計画停電関連の商品群が特に売上げを押し上げたといえよう。

   そして、東海・北陸エリア104.7%、関西エリア104.9%、中国・四国エリア102.2%、九州・沖縄エリア103.0%という結果となった。こう見ると、東日本大震災の被災地、東北に近いほど売上げが高い傾向にあったといえ、東海・北陸エリア、関西エリアは、この3月度はやや低い売上げであったといえる。

   では、これを商品別で見ると、どのような結果となったかであるが、最も伸びた部は107.4%の一般食品・その他(構成比45.7%)である。ここには、日配も含まれているが、加工食品の伸びが特に大きかったといえる。先の計画停電関連の商品としても、水、米、パン、カップ麺、菓子、納豆、ヨーグルト等を含んでおり、これらの商品が全体の数字を押し上げたといえよう。やや意外だったのは、一般食品・その他同様に計画停電関連の商品を多く含む非食品(構成比15.2%)であるが、99.7%と昨対を下回ったことである。

   これについで堅調な伸びを示した部門は、畜産(構成比9.7%)であり、104.3%である。当然、生鮮3品の中でも最も伸び率が高かったといえ、特に、畜産は保存もきくことも数字を引き上げた要因といえよう。畜産についで、堅調な数字となったのは青果(構成比12.5%)であり、昨対104.2%であり、畜産の104.3%と比べると、0.1ポイントの差であり、ほぼ同率といえよう。

   一方、残念ながら、水産(構成比8.7%)は、98.6%と、非食品の99.7%よりも、厳しい結果であり、生鮮3品を含め、全部門の中でも水産が最も厳しい結果であったといえる。特に水産は、この統計がはじまった昨年の4月以降、今年の1月度まで昨対を割り続けており、1月度からやっと昨対を上回り、2月度も堅調な結果であっただけに、3/11以降、水産部門はまた厳しい局面に入ったといえよう。さらに、ここへ来て、放射能の海洋汚染による実際の影響だけでなく、風評被害もではじめており、水産は当面、厳しい状況が続くものといえよう。

   そして、惣菜(構成比8.7%)であるが、101.8%と、青果、畜産等の高い数字と比べるとやや厳しい結果となった。この3月度は外食の売上げが激減しており、これが食品スーパーマーケットの惣菜を活気づけてはいないようで、むしろ、青果と精肉が伸びていることから、生鮮食品を購入し、自宅で調理する家庭が増えたのではないかと推測できる。

   さて、この調査は売上速報に加え、スーパーマーケット景況感調査(4月調査)も公表している。それを見ると、今後2から3ケ月後の見通しであるが、4月度は、3月度と比べ、売上判断DI-8.9、収益率判断DI-7.2、客単価DI-6.7、景気判断DI-10.6と、いずれも厳しい判断である。特に、景気判断DIが最も低く、食品スーパーマーケットの経営者は今後景気が停滞局面に入ると見ているといえよう。

   このように、3/11の東日本大震災の影響がダイレクトに表れた3月度の食品スーパーマーケットの売上速報であるが、全体としては、103.6%という堅調な結果となった。ただ、北海道・東北は93.7%と厳しい結果であり、今後、急ピッチで進む復旧により、どこまで回復するかが期待される。また、部門別にみると、一般食品、青果、畜産が好調であり、非食品、水産が厳しい状況であった。さらに、惣菜も伸び悩んだといえる。今後、DIを見ても、当面、この傾向は続くものといえ、食品スーパーマーケットとしては、消費動向をしっかり見極め、マーチャンダイジング戦略を大胆に見直して行くことが課題といえよう。次回、4月度、さらなる回復、特に東北エリアの回復を期待したいところである。

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April 28, 2011

日経MJで外食主要35社の大震災後の売上速報を公表!

   日経MJ、4/25で外食産業主要35社の3月度の売上速報が公表された。見出しは、「外食主要35社3月」、「震災で13社、2ケタ減収」、「4月「回復の勢い鈍い」多く」、であり、それぞれの外食の全店売上高、既存店売上高、客数、客単価を集計したものである。その結果を見ると、見出しの通り、2桁減収があいついでおり、厳しい結果となった。先日、公表されたコンビニの堅調さとは対照的な結果といえ、3/11の東日本大震災が外食産業へ与えた影響が甚大な結果であったことが改めて鮮明になったといえる。

   日経MJでは、これら35社の一覧表が掲げられているが、それを見ると、全体が大きく売上げが減少する中、牛丼関連の企業が他の外食企業と対照的に好調な数字となっているのが目につく。吉野家96.9%(既存店100.8%)、松屋フーズ112.6%(既存店107.5%)、ゼンショー(すき家)114.6%(既存店107.0%)であり、いずれも既存店が100%を超えた。この3社以外で既存店の売上げが100%を超えたのは、あきんどスシロー81.1%(既存店104.9%)のみである。ただ、あきんどスシローは西日本に店舗数が多いとのことで、これを除けば、この3月度は、牛丼関連企業の1人勝ちといえる結果である。

   その牛丼関連企業3社の中身を客数、客単価でみてみると、吉野家(客数110.7%、客単価91.2%)、松屋フーズ(客数109.0%、客単価98.6%)、ゼンショー(すき家)(客数108.9%、客単価98.2%)であり、いずれも客数が2桁近い伸びであり、客数が大きく伸びたことが売上げを押し上げた要因である。したがって、3/11の東日本大震災以降、牛丼関連企業が外食では大きく客数を吸引したといえる。ただ、この中にはテイクアウトも含まれているといえ、計画停電等でのテイクアウト需要も大きかったのではないかと思われる。

   この牛丼関連企業を除くと、ほぼ全業種が軒並み厳しい結果となったが、その中でも最も深刻な結果となったのは居酒屋である。大庄77.5%(既存店79.3%、客数83.8%、客単価94.6%)、ワタミ82.1%(既存店82.6%、客数80.6%、客単価102.5%)、コロワイド79.0%(既存店86.2%、客数90.8%、客単価95.0%)、テンアライド85.9%(既存店84.3%、客数85.9%、客単価98.2%)、ダイナック72.8%(既存店71.5%、客数76.1%、客単価94.0%)と、特に客数が20%前後落ち込むという厳しい結果である。

   ついで、この3月度、厳しい売上げであったのがファミリーレストアランである。すかいらーく89.2%(既存店91.4%、客数91.4%、客単価100.0%)、ロイヤルホールディングス既存店93.3%(客数90.0%、客単価103.6%)、ジョイフル98.2%(既存店98.3%、客数98.5%、客単価99.8%)、サイゼリア92.6%(既存店89.8%、客単価98.9%)、ジョナサン既存店92.0%(客数93.0%、客単価98.9%)、セブン&アイ・フードシステムズ既存店85.9%(客数84.5%、客単価101.7%)という結果である。いずれも、既存店が10%前後の落ち込みである。

   ただ、居酒屋も同様であるが、客数と客単価を比べると、客数の落ち込みが大きく、客単価については、100%を超える企業が多い。これは、この3月度の外食企業全体の傾向でもあり、震災の影響は客数の下げによるものといえ、客単価はいずれの外食企業も健闘しているといえる。むしろ、客単価が100%を超える企業が多く、集計企業全35社の内19社の客単価が昨対を超えており、半数を超えているのが実情である。

   特に、客単価が好調な業種は焼肉であり、レインズインターナショナル91.0%(既存店95.4%、客数92.2%、客単価103.4%)、安楽亭92.7%(既存店92.7%、客数92.0%、客単価100.7%)、さかい(焼肉屋さかい)96.2%(既存店99.0%、客数91.6%、客単価108.0%)である。いずれも客単価は昨対を超えており、客数の下げが全体の売上げを引き下げた要因といえる。

   これに対して客数が比較的好調であったのは、ファストフードであり、各外食企業が10%前後落ち込む中、5%前後でとどめているのが特徴である。日本マクドナルド87.2%(既存店92.7%、客数93.1%、客単価99.5%)、モスフードサービス96.3%(既存店97.3%、客数96.9%、客単価100.5%)、日本ケンタッキーフライドチキン100.4%(既存店99.1%、客数98.1%、客単価101.0%)であり、いずれも、客単価も堅調であるが、客数が5%前後の下げにとどめており、これが他の外食企業と比べ、比較的売上げが堅調な結果となっていることがわかる。

   日経MJの記事ではこの結果を受けて、4月以降の動向を取材しているが、その中で、節電策の動向、ゴールデンウィークの旅行状況がどのようになるかにより、大きく変化するとのことである。また、これ以外にも変動要因が多く、見通しを立てにくいという経営者が多いとのことである。

   このように、ここへきて、3/11の東日本大震災の影響を加味した統計数字が次々に明らかになりつつあるが、この外食企業の結果を見ると、牛丼関連企業を除き、全体の外食が10%前後の落ち込みであるといえ、業種によっては2割以上落ち込んでいる企業もあり、深刻な状況であったことがわかる。特に、客数の落ち込みが大きく、逆に、客単価は比較的堅調な結果であり、いかに客数を増やすか課題として浮かびあがったといえる。今後、停電、自粛ムードの継続と外食を取り巻く環境は不透明さが続くことが予想される中、テイクアウトを含め、客数をいかに増やす仕組み、商品づくりが外食企業にとっては当面の課題となろう。次回、4月の数字がどこまで回復する、その結果に注目である。

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April 27, 2011

ARPUとID金額PI値について

   ARPU(Average Revenue Per User)は携帯電話会社ではごく普通に活用されているマーケティング指標であるが、食品スーパーマーケットではまだ一般化しているとはいえない。ただ、その指標自体はすでに確立さており、今後、携帯電話会社等のARPUの先行事例を研究することで、食品スーパーマーケットにおいても、ARPUをマーケティングの根幹指標として、活用してゆくことが期待される。

   実際、食品スーパーマーケットではARPUという指標はまだなじみが薄いが、指標としてはID金額PI値として活用されつつある。ID金額PI値は売上高をIDで割った指標であるが、これはARPUそのものである。したがって、携帯電話会社ですでに実戦投入されているARPUを活用することは、食品スーパーマーケットではID金額PI値を活用することと同値であり、このID金額PI値をどうマーケティング指標として確立し、経営に活かすかが課題となる。

   そこで、ID金額PI値とは何かであるが、その基本方程式は売上高=ID×ID金額PI値から生まれた指標であり、その目的は売上高をあげるための根幹指標である。従来、食品スーパーマーケットでは売上高=レシート枚数(客数)×金額PI値(客単価)と定義していたが、このレシートがIDに置き換わったことにより、生まれた新たな指標がID金額PI値である。

   ID金額PI値も金額PI値も一見、IDがついているかいないかの違いであり、大きな違いがないように思えるが、ここには、決定的な違いがある。結論からいえば、金額PI値が一瞬、すなわち、瞬間の指標であるのに対し、ID金額PI値は積み上げ、すなわち、永遠の指標である点である。したがって、金額PI値は1日でも、1ケ月でも、1年でも、さほど大きくは違わない指標であるが、ID金額PI値は積み上げであるため、数字が時間とともに無限に拡大してゆくことになる。

   その理由は、ID金額PI値を分解すると、ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値となり、金額PI値のID客数PI値の分、ID金額PI値が増加するからである。ID客数PI値はレシート/IDであるので、IDの来店頻度を表す指標であり、1日当たりではレシートは1枚かもしれないが、週間では数枚、月間ではその数倍、年間ではその数10倍となり、ID金額PI値は倍増してゆくことなる。そして、そのいきつく先は永遠であり、生涯の来店回数が金額PI値にかかり、結果、顧客から生涯に渡っていただける総キャッシュとなる。

   ここから、金額PI値とID金額PI値の最終目標の違いが明らかになる。金額PI値は瞬間の売上げを最大にすることが、その目的であるが、ID金額PI値は永遠の売上げを最大にすることがその目的となる。しかも、ここから手段にも違いが表れる。金額PI値は瞬間の売上げをあがることが目標となることから、どれだけたくさん、しかも、付加価値の高い商品を購入していただけるかという商品戦略、すなわち、マーチャンダイジング戦略が課題となる。

   これに対してID金額PI値はどれだけ末永く来店していただけるかが目標となるため、たとえ、その瞬間の売上げはわずかでも、また来店いただけるような、商品戦略を含む広い意味での顧客サービスが問われることになり、マーチャンダイジングよりもマーケティングが重視される課題となる。そして、このような永遠に来店いただける顧客、すなわち、ロイヤルカスタマーをいかに大切にし、また、一方で、増やしてゆけるかが課題となる。

   携帯電話会社のここ最近の動きを見るとARPUを引き上げるために、いま何を最重点戦略として取り組んでいるかであるが、その答えは、スマートフォン戦略であるといえる。これは携帯電話のARPUを分析した結果、世界の歴史上初めて、日本の携帯電話会社のデータ(パケット)ARPUが音声ARPUを今期上回るという逆転現象が起こり、そのデータ(パケット)ARPUを加速度的に引き上げる戦略商品として、スマートフォンが位置づけられたためである。したがって、今後のスマートフォンの開発競争はデータ(パケット)ARPUの増加に貢献度が高い機種の開発競争になることは必至であり、ハード、ソフト両面からの激しい開発競争、販促が繰り広げられてゆくことになろう。

   食品スーパーマーケットとしては、ARPU、すなわち、ID金額PI値を分析することによって、ID、すなわち、顧客が支持しているものは何か、その伸び率はどのような勢いがあるのか、逆に、いま伸び悩んでいるものは何か、その状況はどのようになっているのか、その実態をつぶさにつかみ、ID金額PI値を引き上げる戦略商品を明確にし、そこに経営資源を投入し、顧客戦略、商品戦略を再構築することが課題であるといえよう。

   このようにARPUは企業の経営戦略を決定するめの重要な判断指標と位置づけることがポイントである。食品スーパーマーケットとしては、ID金額PI値をもとに、まずは、現在、どのような変化が起こり、その変化の中で、今後の経営戦略を立てる上において、どのような方向に進んでゆけば良いか見極めることが課題といえよう。携帯電話会社の戦略商品となったスマートフォンにつながるデータ(パケット)ARPUのような決定的な変化要因を、食品スーパーマーケットとしてもID金額PI値を通じて、つかみ取って欲しいところである。

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April 26, 2011

ハローズ、2011年2月期決算、増収増益!

   ハローズが4/11、2011年2月期の決算を公表した。結果は売上高714.84億円(5.0%)、営業利益24.15億円(5.3%)、経常利益23.14億円(4.9%)、当期純利益9.70億円(-19.9%)と、営業、経常段階では増収増益となった。ただ、当期純利益は、「旧物流センター及び旧本部を閉鎖したことによる「物流センター本部閉鎖損失」3億18百万円と、「固定資産の減損に係る会計基準」の適用に伴い、「減損損失」24百万円を計上しております。」とのことで、減益となった。

   そこで、まずは、営業、経常段階で増収増益になった要因を増収面から見てみたい。売上高が5.0%となった要因であるが、「店舗開発面では、いずれも24時間営業の店舗として、平成22年10月に栗林公園店(香川県高松市、450坪型)、12月に観音寺店(同観音寺市、600坪型)、平成23年2月に高松春日店(同高松市、600坪型)を開店し、店舗数は広島県19店舗、岡山県22店舗、香川県7店舗の合計48店舗となりました。」とのことで、3店舗の新店をオープンしたことが大きいといえる。ハローズは現在48店舗であるの、3店舗は6.25%に当たるが、いずれの店舗も決算期後半でのオープンであるため、新店効果としては、今期も貢献したといえるが、来期の方がより、大きく貢献するものといえよう。

   一方、営業利益が増益となった要因であるが、原価は76.62%(昨年76.75%)と、0.13ポイント改善しており、結果、売上総利益は23.38%(昨年23.25%)となった。これについてハローズは、「当社プライベート・ブランド商品の「ハローズセレクション」の開発にも注力し、売上高構成比は前事業年度末の7.6%から8.0%に増加いたしました。」とのことであり、原価改善につながるPB戦略を強化したことが大きかったといえよう。

   これに対して、経費の方であるが、22.99%(昨年22.70%)と0.29ポイント上昇している。ハローズ自身は、「経費面では、ローコストオペレーション確立の一環として生産性向上対策、電気使用量の抑制策の継続、効果的な広告による販促費抑制などに取り組みました。」とのことであるが、残念ながら、原価の改善を上回る経費の上昇が見られる。結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は0.39%(昨年0.55%)と、プラスではあるが、昨年を下回った。そして、これに、賃貸収入等のその他営業収入が2.99%(昨年2.82%)加わり、結果、営業利益は3.38%(昨年3.37%)と、増益となった。ただ、増益率はわずかであり、特に、経費増が気になるところである。

   以上がハローズの2011年2月期の営業結果であるが、ここでハローズの財務面における経営目標について見てみたい。その経営目標数値であるが、ROA(総資産経常利益率)10%である。今期のハローズの経常利益は23.14億円(昨年22.05億円)であり、率では3.23%(昨年3.23%)と、奇しくも昨年同様の数字となった。一方、総資産は378.03億円(昨年354.03億円)であるので、結果、ROAは6.12%(昨年6.22%)と、若干下がっており、目標の10%までは、まだ差があるといえる。

   では、ハローズはどのように、この目標のROA10%の達成を目ざしているかを見てみたい。ハローズは、ROA=経常利益率×総資産回転率という数式をもとに、経常利益率4.0%、総資産回転率2.5回転を目指すとのことである。この数式は(経常利益高/売上高)×(売上高/総資産)となるので、売上高が約分され、結果、経常利益/総資産となり、ROAとなる。また、その具体策は、経常利益率4.0%達成のために、「高収益商品の開発、情報システム及び物流システムの改革並びに固定費の削減等に取り組み、・・」とのことであり、総資産回転率2.5回転を達成するために、「用地の取得形態を賃借物件3に対し、取得物件1の割合を基準とし、主に事業用定期借地契約を行うことにより、新規出店に伴う設備投資額を抑え、・・」とのことである。

   ただ、一方で、ROA=純資産比率×ROEでもある。したがって、ハローズの今期の純資産比率は30.96%、ROEは19.76%であるので、ROEは食品スーパーマーケット業界の中ではトップクラスであるが、純資産比率が低く、負債に大きく依存する経営構造となっているといえる。したがって、この数式から見る限り、負債を削減し、純資産比率を引き上げることがROA10%を達成するための最優先課題といえよう。そのためにも、有利子負債157.28億円、総資産の41.60%の削減を今後どのように図ってゆくかが経営目標の鍵を握っているともいえる。

   このように、ハローズの2011年2月期の決算は営業、経常段階では堅調な決算となったが、今期は先行投資としての物流センターへの投資等がかさみ、当期純利益は減益となった。また、ハローズの経営目標であるROA10%を達成するためには、もう一歩、純資産比率を引きあげる必要があるといえるが、現段階では負債、特に、有利子負債が重く経営にのしかかっているといえる。ただ、今後、最新の物流センターがこの3月から本格稼働し、さらに、今期は、その物流センターに支えられた新店3店舗をはじめ、既存の店舗が本格的に寄与するため、経営効率が格段と改善するものといえよう。今後、この物流センターをもとに、ハローズの経営がどこまで改善するか、その結果に注目である。

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April 25, 2011

日経で2月期決算、食品スーパーマーケット、PBRの記事!

    4/23の日経新聞で食品スーパーマーケットのPBRの記事が掲載された。見出しは、「好業績で割安な2月期決算企業」、「中堅スーパーが上位に、アパレルも目立つ」であり、記事の中ではPBRランキングベスト30も掲載されており、PBRを真正面から取り上げた記事である。特に、3/11の東日本大震災以降の各社の株価が反映されたPBRであるので、投資家がどう企業価値を評価しているかを盛り込んだ結果であり、興味深い内容である。

    PBRとはPrice Book-value Ratio(株価純資産倍率)の略であり、数式は株価を一株当たり純資産(株主資本)で割って算出するが、別の数式では時価総額を純資産で割って算出することもできる指標である。実際、計算してみると、株価/(純資産/株数)=株価×株数(時価総額)/純資産となるからである。この指標が注目されるのは、時価総額と純資産との関係を表し、PBRが1.0を下回った場合、純資産の方が時価総額よりも高くなるため、株式を所有しているよりも、会社そのものを解散し、純資産を株主に分配した方が有利になることがわかる指標であるからである。したがって、PBRが1.0を下回る場合は、経営者は何とか、会社が解散されては困るので、1.0以上を目指し、時価総額を引き上げようと必死になり、結果、株価が上昇するのではないかと期待がもたれるため、PBR 1.0を下回り、業績の良い会社が投資家に注目されることになる。
 
   ただ、一方で、PBRはPER(株価収益率)、ROE(株主資本利益率)とも関係が深い指標であり、 PBR=ROE×PERで関係づけることができる。ROEが純利益/純資産、PERが時価総額/純利益であるので、純利益が約分され、時価総額/純資産となり、すなわち、PBRとなるためである。したがって、PBRを高めるためには、ROEを高めるか、PERを高めるか、あるいは、双方を高めることも必要であり、そのバランンスで決まる指標でもある。

   さて、日経の記事にもどると、PBRの低い企業、年商500億円以上のベスト30が一覧表で掲載されているが、単純なPBRの順ではなく、これに今期の経常増益率を加え、経常利益が上昇している企業をランクづけし、ベスト30を掲載している。したがって、先の数式、PBR=ROE×PERでいえば、PBRが低くて、ROEが高い企業ということになろう。また、さらに、参考に、今期の経常利益額の見通しも掲載しており、経常利益の伸び率だけでなく、今期、どのくらいのキャッシュが見込めるかも参考数字として算出している。いわば、お買い得の株価であり、なおかつ、配当も望めそうな株価の企業ベスト30というところといえよう。

   その結果、No.1となったのは、エコスPBR 0.80(経常利益率194.8%、経常利益見通し9億円)である。そして、No.2ポプラPBR 0.53(42.0%、5億円)、No.3オリンピックPBR 0.47(35.9%、12億円)、No.4タキヒヨーPBR 0.65(34.8%、15億円)、No.5PBR 0.29(32.6%、34億円)である。以上がベスト5であるが、5社中4社がコンビニ、食品スーパーマーケットであり、記事の通り、食品スーパーマーケットが上位を占めているといえる。

   さらに、ベスト10まで見てみると、No.6東武ストアPBR 0.75(31.2%、14億円)、No.7米久PBR 0.47(25.1%、25億円)、No.8キリン堂PBR 0.46(20.4%、18億円)、No.9西松屋チェーンPBR 0.95(15.2%、96億円)、そして、No.10プレナスPBR 0.98(14.3%、69億円)である。ここでは食品スーパーマーケットは東武ストアの1社のみであるが、ドラックストアのキリン堂、西松屋チェーンと、小売業では合計3社が入っている。

   そして、No.11以下で食品スーパーマーケット及び関連企業のみを見てみると、No.12CFS個オーポレーションPBR 0.62(9.6%、25億円)、No.15天満屋ストアPBR 0.56(6.7%、16億円)、No.16オークワPBR 0.48(6.5%、72億円)、No.18タイヨーPBR 0.40(4.3%、24億円)、No.19アークランドサカモトPBR 0.66(4.0%、68億円)、No.20イオン北海道PBR 0.62(3.9%、44億円)、No.21平和堂PBR 0.54(3.9%、113億円)、No.22マルエツPBR 0.63(3.8%、60億円)、No.23マックスバリュ西日本PBR 0.79(3.6%、80億円)、No.24アークスPBR0.77(3.4%、104億円)、No.25マックスバリュ東海PBR 0.47(1.5%、43億円)、No.26サンエーPBR 0.82(1.4%、100億円)、No.27ベルクPBR 0.65(1.3%、53億円)、そして、No.30イオンPBR 0.87(0.5%、1,830億円)である。

   合計14社であり、ベスト10の4社と合わせ、18社、ちょうど60%となる。食品スーパーマーケットがいかに、3/11以降、PBRが下がる一方、経常利益がそれなりに増益率が高いかが鮮明になったといえよう。記事の中でも「消費者心理が悪化しており、投資家は個人消費関連銘柄を買い控えている」とのことであるが、心理的な要因も大きいといえよう。

   このように、3/11の東日本大震災以降、食品スーパーマーケットの株価は厳しい状況が続いているといえる。今後、3月決算企業の決算発表が行われるが、その数字がどのような結果となるか、そして、2月期決算企業の次の第1四半期決算の結果がどのような結果となるか、この数字が確定するまでは、心理的な影響が色濃く反映される株価が続くといえ、結果、時価総額が株価の低迷により下がり、結果、PBRが低くなる傾向となろう。その意味で、食品スーパーマーケット業界の3月期決算の結果、そして、2月期決算の第1四半期決算の結果に注目である。

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April 24, 2011

ライフコーポレーション、2011年2月期、増収営業増益!

   ライフコーポレーションが4/12、2011年2月期決算を公表した。結果は、営業収益4,808.22億円(2.6%)、営業利益100.46億円(15.8%)、経常利益98.50億円(16.7%)、当期純利益33.89億円(-16.6%)となり、営業、経常段階では増収増益の好決算となった。なお、当期純利益については、減損損失31.30億円を計上したため、減益となった。小売業は今後、この減損損失、2月期決算企業は、来期からは資産除去債務に関する会計基準の適用が実施されるために、来期以降も当面、当期純利益の増益は厳しい経営環境が続くことが予想される。結果、今期のEPS(1株当たりの当期純利益)は65.86円(昨年78.92円)となり、減少した。

   この当期純利益に減益をもたらしたライフコーポレーションの要因であるが、ライフコーポレーションは、「当社はキャッシュ・フローを生み出す最小単位として主に店舗を基本単位とし、資産のグルーピングをしております。営業活動から生じる損益が継続してマイナスとなっている店舗や土地の時価の下落が著しい店舗等を対象とし、回収可能価額が帳簿価額を下回るものについて帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少金額を減損損失として特別損失に計上しております。」とのことで、結果、奈良県の2店が最も大きく23.17億円、また、その中身では建物 は25.62億円と最大であり、合計31.30億円の減損となった。

   余談だが、ライフコーポレーションに限らず、小売業のキャッシュフローの最小単位は店舗が基本であり、店舗からあがるキャッシュを最大化することが経営の根幹であるといえる。したがって、店舗におけるキャッシュインである売上げを増大させ、キャッシュアウトである減価償却費を含む経費を最小化することが本部、店舗の従業員の最大の業務となる。経営陣はそれぞれの現場責任者を任命し、そのマネジメントを行い、キャッシュインとアウトの差、トータルキャッシュの最大化をはかることが使命となる。

   ここで、ここ最近にわかに注目を集めつつあるID-POS分析であるが、これはこの一連の小売業のキャッシュフロー管理にどのような変革をもたらすかであるが、その戦略的な意義は、キャッシュフローの最小単位が店舗から顧客に移るということである。したがって、ID-POS分析が進んでゆくと、キャッシュフローをもたらす顧客IDを明確にし、その顧客に対して最大限のフォローをする体制をつくると同時に、一旦、お買い物をいただいた顧客からは最大限のキャッシュをいただける仕組みをつくることがポイントとなる。ID-POS分析はその意味で、今後、食品スーパーマーケットのキャッシュフローの管理に変革をもたらすものとなろう。

   さて、ここで、ライフコーポレーションの営業利益が2桁、15.8%となった要因を見てみたい。まずは、原価であるが、73.56%(昨年73.80%)と、0.24ポイント改善している。特に、今期は、「更なる物流機能の向上と店舗運営の効率化に資するため、前事業年度に実行した近畿圏に続いて首都圏におきましても、10月に北部の物流拠点として「松戸総合物流センター」を新設稼働させました。また、安全・安心を追求した効率的集中加工センター(プロセスセンター)として、近畿圏で9月に水産棟を新築、本年2月に農産・畜産棟を増改築いたしました。」とのことで、物流センター関連の充実に力を入れており、これも原価低減につながったものと思われる。ちなみに、物流センター手数料収入であるが、今期は117.92億円(売上対比2.5%9:昨年103.65億円)と13.7%増加しており、いまや、ライフコーポレーションの利益の源泉となっている。結果、売上総利益は26.44%(昨年26.20%)となった。

   一方、経費の方であるが、27.26%(昨年26.99%)と、0.27ポイント増加している。したがって、改善の0.24ポイントを上回っており、厳しい状況といえる。ライフコーポレーションは、「当事業年度を「耐える年」「立て直しの年」「準備の年」と位置づけ、平成20年度よりスタートした「第三次中期3カ年計画」の「12の課題」に引き続き取り組むとともに、・・」と、経営改善に取り組んだが、残念ながら、経費の改善が結果としては進まなかったようである。

   したがって、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-0.82%(昨年-0.79%)とマイナス幅が広がっており、経費の上昇が課題として残ったといえよう。そして、これに、先に上げた物流収入、不動産収入等のその他営業収入が2.98%(昨年2.70%)となり、合計、営業利益は2.16%(昨年1.91%)と増益となった。ただ、増益の要因は原価改善以上にその他営業収入によるところが大きく、今後、一層の利益構造、特に、経費の削減が大きな課題といえよう。

   このように、ライフコーポレーションの2011年2月期の決算は営業、経常段階では増収増益の好決算となり、特に、営業利益、経常利益とにも2桁の増益となったが、その中身は経費の上昇を原価改善、その他営業収入、特に、物流収入に依存する収益改善効果が大きかったといえる。今後、ライフコーポレーショオンとしては、いかに経費削減、そのための構造改革が最大の経営課題となったといえる。来期、どのような経営改善を目指した経営改革に踏み込むのか、その動向に注目である。

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April 23, 2011

あやかりの原理!

   ID-POS分析の最大の特徴はIDを基点に商品の分析をしてゆくことであるが、その分析を進める上で、ID-POS分析特有の独特な分析手法が開発されつつある。そのひとつが前回のブログで取り上げた「だるまの原理」であるが、もうひとつが今回取り上げる「あやかりの原理」である。実は歴史的にはこの「あやかりの原理」の方が古く、しかも、ID-POS分析の一歩手前のレシート分析では、特にアメリカを中心に盛んにマーチャンダイジングに活用されていた原理である。しかも、その指標もすでに開発済みであり、アメリカではリフト値として、ID-POS分析特有の分析手法として実績がある。ただ、ID-POS分析というよりも、レシート分析(バスケット分析)が基本であるため、本来このリフト値もID-POS分析に基づいて分析すべき手法である。ここでは、敢えてID-POS分析にもとづくリフト値を活用したものを「あやかりの原理」とした。

   ちなみに、ID-POS分析はほとんど未開拓の分野、特に、日本ではそういっても過言ではなく、この分野は誰でも、現時点では、様々な新たな原理を開発することができる。基本方程式も決定版が確立されている訳ではなく、この数式についても、新たに開発してゆくことが可能である。本ブログでも今後、様々な原理、そして、新たに開発した数式を公開してゆきたいと思う。また、それらは名前がないので、とりあえず、勝手に命名し、実戦投入してゆく予定である。とりあえず、現時点で、ID-POS分析で確立されたものは、基本方程式、すなわち、新マーチャンダイジング方程式(新MD方程式)と「だるまの原理」、それに、この「あやかりの原理」である。

   さて、「あやかりの原理」であるが、これはある商品の売上げをあげるために、どの商品といっしょに売れば良いか、すなわち、どの商品にあやかれば良いかを見極める原理である。従来は、リフト値として、指標化し、レシート分析(バスケット分析)で盛んに活用され、実戦ではクロスマーチャンダイジングに応用されていた原理であるが、ここでは、これをID-POS分析から新たに導き、売上げの根拠をより明確にした。

   従来のクロスマーチャンダイジングと、どこが違うかであるが、根本的な違いは売上げがあがる根拠が違う。従来のリフト値は基本がレシート分析に依拠してリフト値を算出していた。すなわち、売上高=レシート枚数×金額PI値であり、このレシートに着目することになる。したがって、対象商品Aのレシート枚数を算出し、次に、クロスマーチャンダイジング対象の商品Bの中での商品Aのレシート枚数を算出する。そして、まずは、商品Aのレシート枚数を全体のレシート枚数で割った指数、商品Aの客数PI値を算出する。次に、商品Bの中の商品Aのレシート枚数の割合、商品Bの中の商品Aの客数PI値を算出する。この時、商品Aの客数PI値よりも、商品Bの中の商品Aの客数PI値の方が高い場合は、商品Aを商品Bがリフトする可能性が高いと判断する。これがリフト値である。

   ここから、商品Aは普通に販売するよりも、商品Bとクロスマーチャンダイジングを掛けた方が客数PI値があがり、結果、商品Aのレシート枚数が増え、売上高=レシート枚数×金額PI値であるので、金額PI値が下がらない限り、レシート枚数が増え、売上高があがるというからくりである。これが従来のリフト値を活用したクロスマーチャンダイジングである。

   そこで、「あやかりの原理」であるが、どこが違うか、その根本的な違いは、レシートではなく、顧客IDを基点にしたことである。したがって、売上げのとらえ方も、売上高=ID×ID金額PI値となる。しかも、ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値と分解できるので、特に、ID客数PI値にも踏み込む点である。リフト値の算出の仕方は、レシートがIDに置き換わり、先の事例では商品Aのレシートではなく、商品Aの顧客IDとなり、同様に商品Bも商品Bのレシートの中の商品Aのレシートではなく、商品Bの顧客IDの中の、商品Aの顧客IDとなる。したがって、仮に、商品Aのレシートが2枚あり、2枚とも同じ顧客であった場合には、レシートでは2枚であるが、顧客IDでは1人となる。

   したがって、リフト値も分母はすべてレシートではなく、顧客IDとなり、クロスマーチャンダイジングはまさに、商品Bの顧客にあやかり、顧客を増やし売上げをあげてゆくためのひとつの方法となる。また、さらに、ID客数PI値にまで踏み込むため、単にIDの数だけを見るのではなく、ID客数PI値も加味し、顧客が高頻度で購入されているかどうかも重要な指標として取り入れ、本当に、商品Aは商品Bにあやかれるかどうかを判断することになる。

   これが「あやかりの原理」であり、すべての基点を顧客IDをもとに考え、顧客IDを増やすことを第1義の目的とし、従来のレシートの客数PI値もID客数PI値を活用することによって組み込んでしまうことになる。さらに、金額PI値は同じ概念であるので、そのままである。したがって、本当に、対象商品の売上げを上げるために、どの商品にあやかれば良いかがわかり、しかも、結果、顧客IDが増加し、その顧客の頻度もあがり、さらに1回当たりの売上げ(金額PI値)をも引き上げる可能性の高い商品を見つけ出せるのが、この「あやかりの原理」の実践的活用方法となる。

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April 22, 2011

だるまの原理

   いまから約10年前、ID-POS分析に取り組んでいた当時、だるまの原理を発見した。PI値に取り組んでいるといろいろなものを発見することが多いが、このだるまの原理もその発見の中のひとつである。ただ、当時のID-POS分析はいまから思うと、本格的なID-POS分析ではなかった。その一歩手前の分析、レシート分析とID-POS分析の中間的な分析であったといえる。POS分析には、大きく3つの段階がある。1つ目は、単純な売上数量と売上金額のみの分析である。2つ目はレシートを活用した分析である。これがPI値分析である。そして3つ目がIDを活用した分析であり、これがID-POS分析である。

   この3つのPOS分析は無関係に存在しているのではなく、すべてつながっている。ただ、延長ではなく、パラダイム変換であり、それぞれ世界が違い、1つ目から2つ目、3つ目へと段階的に発展してゆく訳ではない。むしろ流れは逆であり、2つ目が1つ目を包み込み、3つ目が2つ目を包み込み、結果、1つ目をも包み込む形である。したがって、3つ目から2つ目、1つ目は良く見え、2つ目から1つ目も良く見えるが、逆に、1つ目から2つ目は見えない世界であり、いわんや3つ目は全く見えない世界である。同様に、2つ目から3つ目も見えない世界である。

   このような関係でPOS分析は発展してきたといえ、それぞれの独特な世界が形成されているといえる。したがって、マーチャンダイジングも1つ目の世界のマーチャンダイジング、2つ目の世界のマーチャンダイジング、そして、3つ目の世界のマーチャンダイジングがあり、それぞれの独特な世界観をもっている。ただ、実に興味深いことに、どの世界でもその到達点、最終目標は売上のアップである点は共通している。したがって、目標はいずれの世界でも共通に売上であり、その手段が、それぞれの世界で独自の視点にもとづいて新たに形成されるといえる。まさに、売上を科学するという世界である。

   さて、10年前の話にもどるが、当時は2つ目から3つ目への移行期であったといえ、その移行期の過程で、顧客IDを2つに分けて売上を科学していた。2つとはリピート顧客と初回購買顧客(トライアル)である。この顧客とはまさに、IDのことであり、レシートではない。レシート分析にはリピートも初回購買(トライアル)も存在しない。あるのは、全体を商品分類、あるいは単品ごとに分けるまでであり、リピートというIDを前提とした分割はレシート分析からは不可能である。リピートはID-POS分析ではじめて登場するID-POS分析特有の概念であり、先の1つ目、2つ目のPOS分析では見ることができない世界である。

   当時はIDの活用はこのように、IDを2つに分ける、すなわち、リピート顧客と初回購買顧客(トライアル)に分けるというところまでで留まっており、そこからさらに、ID-POS分析の本質ともいえるID金額PI値(ARPU)、ID客数PI値等へと理論的な発展を遂げることができなかった。ただIDを2つに分けることによって、新たな原理、だるまの原理を発見することができたことは、その後の本格的なID-POS分析につながる大きな収穫だったといえる。ただ、その後、10年もかかってしまい、もっと早く、本格的なID-POS分析に発展できなかったことは悔やまれるところでもある。

   さて、だるまの原理であるが、IDを単純に2つに分けることによって、リピートをだるまの頭としてとらえ、初回購買(トライアル)をだるまの胴体としてとらえれば、すべての商品はこの2つの関係で見ることができるという原理である。実際、ID-POS分析を実施してゆくと、すべての商品はこのようなだるまでイメージ化でき、頭の小さいだるま、あたまの大きいだるま、そして、時間とともに急激に胴体が大きくなるだるま、逆に、頭が大きくなるだるまがあり、ひとつとして同じだるまが存在しないという事実が見出される。

   しかも、その頭はID-POS分析すると、IDの人数だけでなく、ID金額PI値の違いもあり、頭の中身、胴体の中身まで見ることができる。ID-POS分析の基本数式は売上高=ID×ID金額PI値であり、さらに、ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値、金額PI値=PI値×平均単価、さらには、レシート変換、商品変換、そして、ID変換も可能であり、だるまの頭も胴体も様々なID-POS分析特有の指標での分析が可能となり、その中身が商品により違い、時間により刻々と変化してゆく。

   したがって、だるまの原理は単にIDを2つに分けるだけでなく、分けたIDの中身にまで踏み込み、その違いを明確にすることであるといえる。そして、最終的には、限界までだるまの頭を可能な限り大きくし、さらに、その中身をバランスよく改善してゆくことであり、これが、マーチャンダイジングの本質、商売の原点に通じるものであることを発見したことである。

   このように、約10年前に発見したID-POS分析の究極の原理ともいえるだるまの原理であるが、ここへきて、ID-POS分析の理論もほぼ完成し、やっと本ものの原理が確立できたのではないかと思う。次の10年は、このだるまの原理をもとに、これまでのマーチャンダイジング戦略を見なおし、新たなマーチャンダイジング体系の構築へとつなげてゆければと思う。

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April 21, 2011

コンビニ売上速報、2011年3月度、9.2%増!

   3/11の東日本大震災後となる注目のコンビニの2011年3月度の売上速報が4/20、(社)日本フランチャイズチェーン協会から公表された。結果は、加盟店、全43,492店舗の売上高が7,046.83億円となり、昨年対比9.2%となる大幅な伸びとなった。2月度が8.7%、1月度が7.2%であるので、3月度はこの3ケ月の中でも最も高い伸びとなった。また、既存店も3月度は7.7%、2月度は6.5%、1月度は5.1%であるので、特に、既存店が好調に推移したことが、全体の売上を押し上げた要因といえる。ただし、この統計数値は、「3月11日に発生した東日本大震災により営業停止等の店舗があり、それらのデータは含まれておりませんので、参考数値として発表いたします。」とのことであるので、営業停止店舗を除いての数値である。

   それにしても、営業停止店舗を除いていたとしても、既存店が7.7%の伸びは大きな伸びといえ、いかに、東日本大震災後、全国の消費者がコンビニに生活物資を求めたかがわかる。そこで、特に、伸びた要因を客数、客単価、そして、商品群から見てみたい。まずは、客数であるが、全体の数字は昨対0.5%のプラスであるが、既存店は昨対-0.6%と下がっており、客数の上昇はみられなかった。2月度が全体の客数、昨対3.6%、既存店2.0%、1月度が全体2.3%、既存店0.7%であったことと比べても、大きく下がってはいないが、ほぼ昨年並みの客数であったといえる。したがって、伸びた要因は客単価である。

   その客単価であるが、この3月度は、全体が8.7%、既存店も8.3%であり、客単価が大きく伸びていることがわかる。特に既存店の客単価が8.3%、客数は-0.6%であるので、通常の購入よりも購入金額を明らかに増加しているといえ、まとめ買いが発生したといえよう。ちなみに、客単価の数字であるが、既存店は昨年の566.8円がこの3月度は614.1円と47.3円アップの600円を超えており、大幅なアップである。

   ここで、客単価1円を考えてみたい。この3月度の全体の客数は11億3,118.2万人、店舗数は43,492店舗であり、営業日数は31日として、1日当たりを計算すると、1日当たりの平均客数は838.9人となる。したがって、客単価1円は、この3月度の平均的なコンビニで838.9円の売上が上がることになる。一方、コンビニの1品当たりの価格を200円とすると、客単価1円はPI値×平均単価となるので、1=PI値×200円、PI値=1円/200円=0.5%となる。0.5%は平均客数838.9人であるので、掛けると4.2個となる。

   整理すると、この3月度の数字で見ると、客単価1円のアップは1店舗当たりの平均的なコンビニでは金額ベースで838.9円、数量ベースで4.2個のアップとなる。したがって、この3月度は、客単価が47.3円アップしたので、1店舗当たり、金額ベースで、39,679.97円、数量ベースで198.66個、約4万円、約200個の増加である。これが、この3月度の昨年と比べての上乗せ分といえ、それだけ、3/11の東日本大震災後、コンビニの需要が増加したといえ、これが3月度、好調に売上が推移した要因である。

   そこで、この数字が伸びた要因をさらに商品面から見てみたい。コンビニは商品群を大きく4つに分けている。コンビニの中核商品ファストフードが含まれる日配食品、加工食品、たばこの含まれる非食品、そして、コピー、電気代、ガス代などのサービスの4つである。この中で、この3月度最大の伸びを示したのは、いまや売上構成比36.4%と、No.1部門となった非食品の23.8%であり、驚異的な伸びである。たばこが大きく貢献していることはもちろんであるが、2月度16.8%、1月度13.2%であるので、たばこ以外が10%近く、この3月度はプラスとなっている。ちなみに、たばこ以外に貢献した主な商品であるが、乾電池、電球・蛍光灯、燃料、医薬品、医薬部外品栄養ドリンク、紙製品等であるといえ、これらが、プラスアルファとなったと思われる。

   これについで伸びた部門は構成比28.3%の加工食品であるが、3.7%である。非食品とは大きな差であり、平均の9.2%と比べてもかなり下回る数字である。1月度は2.6%、2月度2.0%であるので、若干伸びているとはいえるが、わずかである。ついで、構成比31.4%の日配食品であるが、わずか1.0%である。1月度5.3%、2月度6.8%と比べると、明らかに鈍化しており、3月度の日配食品は厳しい状況にあったといえよう。最後に、構成比3.9%のサービスであるが、-2.4%とマイナスとなった。1月度5.3%、2月度2.6%と比べてもマイナスは大きな落ち込みであるといえる。したがって、商品面から見た3月度の好調な要因は非食品にあったといえる

   このように、2011年3月度のコンビニの売上速報は全体が9.2%、既存店が7.7%と好調な数字となり、客数よりも客単価が47.3円、8.7%アップしたことがその要因である。しかも、その中身は、コンビニの中核商品であるファストフードを含む日配食品が伸びたことではなく、たばこを含む非食品のみが伸びたことによる売上増であるといえ、まさに、3/11の東日本大震災による非食品の買いだめによる効果であったといえよう。したがって、これは一時的な特需ともいえる動きであるといえ、来月以降はその反動が発生しかねない状況にあるといえる。次回4月度も同様な傾向が続くとは思えず、しばらくは消費者の動向をしっかりつかみ、慎重に対応してゆくことが必要といえよう。

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April 20, 2011

イオンの、2011年2月期決算のキャッシュフローを見る!

   前回のイオンの2011年2月期決算のブログに引き続き、今回は、さらに踏み込み、今後のイオンの経営戦略が強く表れているキャッシュフローについて見てみたい。特に、今期は前期の厳しい決算から一転、増収増益、特に営業利益が32.4%増、キャッシュフローに直結する当期純利益に関しては91.8%増、ほぼ2倍となり、キャッシュフローがどのように変化し、さらに、そのキャッシュをどのように配分したか、その結果が気になるところである。

   そこで、まずは、キャッシュイン、営業活動によるキャッシュフローであるが、意外なことに、2,611.32億円(昨年3,610.96億円)と、約1,000億円減少している。営業活動によるキャッシュフローの内、当期純利益に当たるキャッシュは1,551.66億円(昨年1,062.40億円)と約500億円増加しているが、売上債権の増減額(-は増加)-1,188.92億円(昨年-191.39億円)となったためである。これは、「金融子会社の割賦売掛金の増加等により売上債権の増減額が997 億53 百万円増加したこと等によるものです。」のことで、金融関連の売上債権の関係によるものである。

   したがって、増収増益、特に、当期純利益が91.8%増と大幅に増益になったものの、残念ながら、営業活動によるキャッシュフローは約1,000億円の減少となった。そこで、キャッシュアウト、投資活動によるキャッシュフローであるが、-1,055.17億円(昨年-3,245.73億円)と約2,000億円の削減となった。本来であれば、業績が回復した今期、投資活動によるキャッシュフローを増やしたいところであろうが、結果は、昨年の厳しい決算時の方が投資活動によるキャッシュフローをむしろ増やしており、業績とキャッシュフローは対照的な動きとなった。

   では、その約2,000億円の投資の差はどこにあるかであるが、最大の違いは、固定資産の取得による支出-1,770.06億円(昨年-3,073.90億円)であり、ほぼ、投資活動によるキャッシュフローの全額を固定資産の取得による支出に配分し、しかも、昨年よりも半減している。この投資の大半は新規出店に充てられるといえ、この結果を見る限り、来期の新店戦略は今期よりも大きく抑制されるよう。実際、イオンリテールの新店投資 (先行投資分含む)を見ると、311億円(昨年1,108億円)であり、今期は約1/4であり、成長戦略への投資を抑制しているといえる。今期の営業収益が0.8%増であった点、来期の予想が0.1%増である点を見ても、今後の投資戦略は成長戦略を抑制し、内部体制を固めてゆく方向に経営の舵を切ったといえよう。

   結果、フリーキャッシュフローであるが、1,556.15億円(昨年365.23億円)となり、今期は営業活動によるキャッシュフローも約1,000億円少なかったが、投資活動によるキャッシュフローを約2,000億円削減し、成長戦略を抑制し、フリーキャッシュフローを約1,500億円確保したといえる。

   そこで、このフリーキャッシュフロー約1,500億円を財務活動によるキャッシュフローでどのように配分したかであるが、-1,218.47億円(昨年111.79億円)と、昨年とは対照的にそのほとんどを財務改善に配分している。実際、今期の有利子負債の状況を見ると、1兆1,618.54億円(昨年1兆2,507.35億円)と約1,000億円弱削減しており、有利子負債の圧縮を図っていることがわかる。ただ、それでも、優に1兆円を超える有利子負債であるといえ、今後、一層の財務改善が必須である。

   ちなみに、イオンの今期の自己資本比率であるが、23.5%(昨年22.2%)と、若干改善しているが、依然として20%台であり、約80%弱を負債に依存する経営構造にあり、成長戦略よりも、財務改善を優先せざるをえない状況にあるといえる。総資産は3兆7,746.28億円(昨年3兆7,852.88億円)と大きな変化はないが、純資産は1兆2,192.36億円(昨年1兆1,444.34億円)と好決算を受けて増加しており、さらに、有利子負債の削減が加わり、これが自己資本比率を若干引き上げた要因といえる。

   結果、トータルのキャッシュフローは-74.68億円(昨年18.47億円)と若干のマイナスとなり、現金及び現金同等物の期末残高は3,068.20億円となった。これは総資産の8.12%に当たるが、有利子負債が1兆円を優に越えている現状を考えると、キャッシュをさらに積み上げたいところであろう。

  参考に、今期のイオンの新店であるが、全業態合計では91店舗であり、その内訳はGMS 4店舗、SM49店舗、DS9店舗、HC2店舗、その他27店舗である。また、海外では全業態で18店舗であり、GMS 8店舗、SM7店舗、その他3店舗である。GMSはイオンの中核業態であるが、主戦場は海外に移りつつあるといえよう。

   このように、イオンの今期、2011年2月期の決算におけるキャッシュフローを見ると、キャッシュの配分を成長戦略から財務改善に大きくシフトしているといえ、成長よりも財務基盤の確立を最優先で取り組んでいる実態が鮮明である。ただ、それでも、有利子負債は1兆円を優に超え、総資産の30.78%であり、当面、この圧縮にキャッシュを優先的に配分せざるをえない状況にあるといえる。来期は3/11の東日本大震災の影響が読めない中、成長戦略を打ち出すには難しい経営環境である点も考慮すると、イオンとしては、内部体制を充実し、今期同様、財務改善にキャッシュを配分せざるを得ない年となろう。

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April 19, 2011

イオン、2011年2月期決算、増収増益、GMS復調!

   イオンが2011年2月期決算を4/14、公表した。結果は、営業収益5兆965.69 億円(0.8%)、営業利益1,723.60億円(32.4%)、経常利益1,820.80億円(39.8%)、当期純利益596.88億円(91.8%)となり、増収幅はわずかであったが、増収増益、特に、利益は昨年の厳しい状況から一転、大幅な増益となる好決算となった。特に、今期はイオンの中核、GMSの収益が改善したことが大きかったといえよう。

   イオンは事業構造を大きく4つに分けており、その結果を見ると、中核のGMSを含む総合小売事業4兆1,358.86億円(101.2%:構成比81.1%)、営業利益804.67億円(182.1%:構成比46.7%)と回復したことが大きいといえる。それにしても、GMSを含む総合小売事業の営業収益の構成比が80%を超えるといえ、いかに、イオンがGMSにより支えられているかがわかる。

   今期、イオンはこのGMSへの取り組みに関しては、「当社は、GMS(総合スーパー)事業改革をグループの重要課題と位置付け、同事業のさらなる成長と収益性向上に取り組んでまいりました。この改革を一層加速させ、新しいGMS事業へ進化させることを目的に、イオンリテール株式会社を存続会社とし、同社はイオンマルシェ株式会社と2010 年12 月1日に、株式会社マイカルと2011 年3月1日に合併しました。これにより誕生した新生イオンリテール株式会社は、営業収益2兆円を超えるスケールメリットを最大化するとともに、既存の店舗ブランド「ジャスコ」「サティ」を「イオン」に統一し、イオンブランドの認知度向上に努めます。」とのことで、イオン=GMSと名実ともに一致したといえ、今後とも、このGMS改革を推進してゆくとのことである。

   そして、この総合小売事業に次ぐ事業は、サービス等事業であり、営業収益1兆1,112.11億円(103.8%:構成比21.8%)、営業利益421.87億円(96.3%:構成比24.5%)である。営業収益の構成比がすでに、2つの事業で100%を超えるが、これは、単純に営業収益を集計しているためであり、事業構造の重なる領域が2重に計算されているためである。ついで、専門店事業であり、営業収益5,328.84 億円(98.0%:構成比10.4%)、営業利益57.46億円(昨年は赤字:構成比%)である。最後がディベロッパー事業であり、営業収益1,710.08億円(103.3%:構成比3.4%)、営業利益384.51億円(101.1%:構成比22.3%)である。したがって、今期は中核のGMSを含む総合小売事業が昨対を特に営業利益において大きく上回ったことが全体の数字を押し上げたといえよう。

   そこで、営業利益が昨対32.4%アップとなった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、72.83%(昨年71.96%)と0.87ポイント上昇している。これについてイオンは、「イオンのブランド「トップバリュ」の開発強化、商品原価の低減、サプライチェーンの効率化等を進め、お客さまにご支持いただける品質や機能、価格を追求した新商品の開発や商品のリニューアルを積極的に実施しました。」とのことで、特にトップバリュに力を入れたとのことであるが、今期に関しては、まだ数字には跳ね返っていないといえよう。結果、売上総利益は27.17%(昨年28.04%)となった。

   一方、経費の方であるが、35.10%(昨年36.43%)と、1.33ポイントと大きく改善している。それにしても、食品スーパーマーケットの経費比率と比べると、35.10%は約10%高いといえ、昨年対比では大きく改善したとはいえ、今後、いかに、この経費比率を下げられるかが依然として、大きな課題といえよう。これに対して、イオンは、「新しい成長戦略を支える強い収益基盤の構築を目指し、当期は、グループ横断的かつ構造的なコスト削減を推進するための専任組織を設置し、グループ全社でコスト構造改革を推進しました。その結果、期首の目標額を大きく上回る販売費および一般管理費の削減を達成しました。」とのことで、今期はグループ全体でコスト削減に取り組んだとのことである。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-7.93%(昨年-8.39%)と、マイナス幅が縮まっており、コスト削減の効果が表れているといえよう。そして、これに、GMS特有の不動産収入、物流収入等のその他営業収入が11.72%(昨年11.26%)のり、営業利益は3.79%(昨年2.87%)と、大きく改善した。したがって、今期、イオンの営業利益が大きく改善した要因は原価の上昇を経費の削減とその他営業収益の増加で補った結果であるといえる。それにしても、その他営業収入が11.72%とは驚きであり、さらに、昨年を大きく上回ったこともすごいといえよう。いかに、GMSはこのその他営業収入が利益の源泉であるかがわかる。

   このように、2011年2月期のイオンの決算は増収増益、特に、営業利益が32.4%増と大幅なアップとなる好決算となった。その要因はイオンの営業収入の約80%を占めるGMSの業績が向上した結果であり、特に、経費の削減、GMS特有のその他営業収入が大きく伸びたことが要因といえる。ただ、さすがに、来期は、営業収益5兆1,000.00億円(0.1%)、営業利益1,750.00億円(1.5%)、経常利益1,830.00億円(0.5%)、当期純利益400.00億円(-33.0%)と、微増の予想である。東日本大震災の影響が読めないこともあるといえるが、今期以上に経費の削減を進められるかどうか課題といえよう。イオンが今後、GMSの構造改革を一層進め、特に、その最大の課題である経費削減にどこまで踏み込めるのか、その具体策に注目である。

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April 18, 2011

マルエツ、2011年2月期、本決算、減収減益!

   マルエツが4/15、2011年2月期、本決算を公表した。結果は、営業収益3,322.27億円(-1.4%)、営業利益62.99億円(-19.8%)、経常利益57.80億円(-23.8%)、当期純利益27.64億円(-60.3%)となり、減収減益の厳しい決算となった。結果、EPS(1株当たり当期純利益)も22.15円(昨年55.80円)と大きく減少、株主にとっても厳しい結果である。

   このような厳しい結果ではあったが、今期マルエツは、「SMのインフラをゼロベースで再構築し経営効率を高めるため、平成22年6月に横浜常温物流センター(神奈川県)、8月に八潮常温物流センター(埼玉県)、9月に川崎複合センター(神奈川県)の3センターを開設しました。」とのことで、インフラを整え、次期への向けての成長戦略の布石を打ち、今後の成長へ向けての投資を行っている。実際、その成果として、「従来の小型店と異なり店舗に作業場を設けずセンターから商品を供給する40坪タイプの小型店の実験を開始しました。」とのことで、都心部の小型店戦略の準備が着々と進みつつあるといえる。

   そこで、今期、マルエツがこの物流センターを含めどのような投資を実施したかであるが、総額では142.39億円(昨年120.55億円)であり、その内訳は新店投資40.86億円(昨年51.57億円)、改装投資24.08億円、センター29.43億円(昨年0)、システム24.61億円(昨年23.53億円)、その他投資17.99億円(昨年10.61億円)である。また、これを裏付けるキャッシュフローを見ると、投資活動によるキャッシュフローは108.70億円(昨年53.47億円)と倍増しており、積極的にインフラに投資したことがわかる。

   さらに、これに伴い、店舗戦略もマルエツ屋号店舗とマルエツプチ屋号店舗に明確に分離し、これまでの様々な業態を2つに整理している。そのマルエツ屋号店舗であるが、新店は、「中野若宮店(東京都)、岩槻駅前店(埼玉県)、元住吉店(神奈川県)、成増南口店(東京都)、戸田氷川町店(埼玉県)、西大宮駅前店(埼玉県)、豊春店(埼玉県)の7店舗」である。そして、マルエツプチ屋号店舗は「人形町駅前店(東京都)、西新宿六丁目店(東京都)、神田司町店(東京都)、南荻窪二丁目店(東京都)、東日本橋三丁目店(東京都)、翁町二丁目店(神奈川県)、東池袋駅前店(東京都)の7店舗」の14店舗を出店している。これに、マルエツのはじめてのディスカウント業態、スーパーマーケット魚悦川間店(千葉県)を加え、今期は合計15店舗を新規出店している。結果、閉鎖6店舗があり、総店舗数は255店舗と、食品スーパーマーケット業界では最大の店舗数である。

   ただ、やや気になるのは、これだけの投資の結果、有利子負債が321.04億円(昨年299.80億円)と約20億円強増加し、総資産1,330.59億円の24.12%とやや重くなり、自己資本比率も45.7%(昨年46.6%)と若干下がっていることである。ちなみに、前期、決算公開企業約50社の有利子負債の総資産に占める割合の平均は27.3%であるので、平均よりも下回ってはいるが、増加したことが気になる点である。

   そこで、今期のキャッシュフローを見ると、営業活動によるキャッシュフローは87.03億円(昨年79.47億円)と増加しているが、先に見たように投資活動によるキャッシュフローが108.70億円(昨年53.47億円)と倍増したため、結果、フリーキャッシュフローが-21.67億円(昨年33.56億円)とプラスからマイナスとなった。結果、財務活動によるキャッシュフローは13.73億円(昨年-21.37億円)となり、有利子負債を調達せざるをえなくなったといえる。ちなみに、現金及び預金であるが81.35億円(昨年89.29億円)であり、ほぼ昨年同様の数字である。このキャッシュフローを見る限り、今期は投資、特に、成長戦略を見越した投資戦略を優先するという強い意思が感じられる内容である。

   そして、もう1点気になる点は営業利益が-19.8%と大きく減少した点である。その要因であるが、原価は71.49%(昨年71.69%)と、0.20ポイント改善している。結果、売上総利益は28.51%(昨年28.31%)となった。一方、経費の方であるが、28.78%(昨年27.81%)と、0.97ポイント上昇しており、結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-0.27%(昨年0.50%)と、一転、プラスからマイナスへ転じた。これにその他営業収入が2.22%(昨年1.88%)加わり、結果、営業利益は1.95%(昨年2.38%)と減益となった。原価は改善したが、経費増が重く営業利益にのしかかった構図である。

   このように、2011年2月期のマルエツの本決算は減収減益という厳しい決算となったが、今期は成長戦略を優先した先行投資に加え、これまでの様々な業態をマルエツとマルエツプチ業態に整理しており、来期以降の成長を期した体制づくりへの投資を優先したといえよう。ただ、キャッシュを生み出す営業利益の減益要因は経費増によるものであり、この改善が進んでいない点は気になるところである。来期以降、今回の投資戦略がどこまで成長戦略につながってゆくのか、また、どのように上昇しつつある経費の削減を目指してゆくのか、マルエツの次の具体策に注目である。

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April 17, 2011

東京電力の決算書を見る!

   福島原発、そして、計画停電の問題をかかえる東京電力の企業の存続そのものが危ぶまれているが、東京電力の財務状況はどのような現状にあるのか、最新の決算書、2011年3月期、第3四半期決算をもとに見てみたい。現時点の最新の決算書はこの第3四半期であり、2010年4月から2010年12月までの期間であるため、今回の東日本大震災の影響は含まれてはいない。現時点では、震災前の財務状況ということにはなるが、今後公表されるであろう、震災後の財務状況と比較する意味でも、現状の状況を確認しておく意義はあるといえよう。

   まずは、営業状況であるが、第3四半期、すなわち、2010年12月末時では、売上高3兆9,599.30億円(8.3%)、営業利益3,269.80億円(13.8%:営業利益率8.25%)、経常利益2,786.40億円(19.3%)、当期純利益1,398.96億円(-11.3%)と、当期純利益は、資産除去債務会計基準に伴う影響額が571.89億円発生したため、昨対を割ったが、この影響を除けば、増収増益の好決算となった。また、通期予想は、売上高5兆1,650.00億円(7.5%)、営業利益2,850.00億円(14.0%)、経常利益2,000.00億円(19.3%)、当期純利益900.00億円(-12.0%)である。単純に規模から見ると、小売業で比較すると、セブン&アイH、イオンとほぼ同じであるといえる。

   また、財務状況であるが、総資産は13兆7,951.34億円、純資産は2兆9,821.50億円であり、自己資本比率は21.3%である。ちなみに、セブン&アイHの2011年2月期の本決算の数字は総資産3兆7,321.111億円、純資産1兆7,765.12億円、自己資本比率45.6%であるので、いかに、莫大な資産の上に成り立っている経営であるかがわかる。ここが小売業と決定的に違う構造であるといえよう。通常小売業は商品の製造までは大きくは踏み込まないが、東京電力は電気を販売するだけでなく、電気を製造するところまで踏み込む事業構造であるため、いわゆるSPA、製造小売業といえる。したがって、今回、製造の中の原発に問題が起きたため、即、小売の電気の販売に直結し、計画停電になるという構造的な問題が表面化したといえる。製造小売業は利益が確保できるというメリットは大きいが、反面、製造段階に何か問題が起きた時には即、小売段階に影響が生じ、事業構造そのものがぐらつくというデメリットもあるといえる。

   次に、営業構造を見てみたい。小売業と違い、営業構造は決算書を見る限り、シンプルであり、仕入れ原価が存在しない。したがって、ダイレクトに営業収益、営業経費、営業利益という構造になっている。その実際の数字であるが、営業収益は3兆9,599.30億円(昨対8.3%)、営業費用は3兆6,330.21億円(昨対7.8%)であり、結果、差し引き、営業利益3,269.80億円(昨対13.8%)となる。今期は営業収益の伸びに対し、営業費用の伸びを抑えられたことが、営業利益を大きく増大させた要因といえる。

   そして、財務構造であるが、まずは、総資産は13兆7,951.34億円の中身であるが、小売業とは全く構造が違い、小売業では流動資産が上に来るが、東京電力の資産は固定資産が上に来ており、その数字は12兆4,135.40億円と総資産の90.0%であり、いかに、固定資産が巨大な数字であるかがわかる。その主な内訳であるが、最も大きいのは設備関連であり、配電設備が2兆1,563.06億円、ついで、送電設備2兆999.76億円と配電、送電関連が極端に大きい固定資産である。そして、水力発電設備6,878.93億円、汽力発電設備9,726.52億円、原子力発電設備8,524.49億円、変電設備8,394.25億円、業務設備1,528.49億円となる。ちなみに、原発の核燃料は9,272.27億円であり、原子力関連は先の原子力発電設備と合わせると、1兆7,796.76億円となる。

   以上が固定資産関連の主な資産であるが、一方、流動資産は1兆3,815.94億円であり、この内、現金及び預金は3,664.94億円、総資産のわずか2.7%である。今後、福島原発関連の終息に向けて様々な投資が必要な上に、巨額の損害賠償等の発生が見込まれるが、厳しい現金及び預金の状況であり、負債、資本の大幅な増強が必須であるといえよう。その資本であるが、純資産は2兆9,821.50億円と、総資産の21.6%であるが、先に見たように、現金及び預金は3,664.94億円で、わずかである。したがって、資産の大半は負債で補っており、その最大の負債は社債4兆5,046.33億円、長期借入金1兆5,666.77億円、1年以内に期限到来の固定負債1兆151.58億円、短期借入金3,846.45億円と合計7兆4,711.13億円と、総資産の54.2%であり、資産の半分は、これらの負債で賄っている財務構造である。したがって、今回の原発関連の終息へ向けての費用、及び巨額の損害賠償を賄うには資本を数兆円単位で増強するか、さらに、負債を数兆円単位で調達するしかなく、極めて厳しい経営判断が要求されることになろう。

   このように東京電力の営業状況、財務状況を見る限り、今回の福島原発事故に伴う終息へ向けての費用、今後予想される巨額の損害賠償を賄うには、厳しい財務状況にあるといえ、現時点で東京電力1社のみでこれらの費用を賄うのは無理があるといえる。インフラ事業は巨額な富を生み出すビジネスでもあるが、今回のような大事故が起こると、1社では賄いきれない巨額な損失をともなうビジネスでもあることが改めて浮き彫りになったといえる。今後は、すでに、財務的に見ても東京電力1社で解決できる範囲を超えることが予想され、日本政府が、今回の福島原発の事故が終息し、巨額の損害賠償が終了するまで指揮をとってゆかないと、原発の終息も巨額の損害賠償も十分に対応できないのではかと思われる。

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April 16, 2011

マックスバリュ東海、2011年2月決算、増収増益!

   マックスバリュ東海が4/14、2011年2月期の本決算を公表した。結果は、売上高1,534.64億円(8.9%)、営業利益42.82億円(18.8%)、経常利益42.64億円(19.7%)、当期純利益16.53億円(12.0%)となり、増収増益、特に、利益が20%近い伸びとなり、好決算となった。2010年5月に就任した寺嶋晋社長体制化での初めての決算であり、また、同年にはじまった第3次中期3ヵ年経営計画の初年度にもあたり、その結果が注目されていたが、結果は増収増益と幸先の良いスタートとなった。なお、第3次中期3ヵ年経営計画の目標数字は、「売上規模1,900億円、営業利益率3.5%、100店舗体制」の構築であるので、今期決算段階での達成率は、売上規模80.7%、営業利益率79.7%、店舗数90%という状況である。今後、計画通りに目標数値に達成できるかどうか、来期が重要な年となろう。

   そこで、まずは、マックスバリュ東海の営業利益が好調に推移した要因を原価、経費面から見てみたい。その原価であるが74.89%(昨年74.44%)であり、0.45ポイント上昇している。これは、特に、今期、マックスバリュ東海は、「プライスリーダーシップを合言葉に各商品部門ごとに、地域一番のお買得商品を選定し、単品大量陳列を基本としつつ、お客さまに対し、商品や価格へのこだわりが伝わる売場づくりに取り組みました。」とのことで、プライスリーダーを意識した価格にこだわった政策を推し進めたためといえよう。

   具体的には、「青果・鮮魚・精肉の生鮮部門では、青果部門を集客の核となる部門として位置づけ、低価格での商品提供を継続して展開、・・」、「デイリー(日配品)・グロッサリー(加工食品)・ノンフーズ(非食品)部門では、プライスリーダーシップを発揮する部門として、価格政策を強化すべくイオングループの需要集約機能を活用した仕入を拡大するとともに、確かな品質でお買得なトップバリュ商品を集めたコーナーを拡充させ、安さの伝わる売場づくり、・・」などである。結果、粗利率は、青果18.5%(昨対-0.9ポイント)、鮮魚24.0%(昨対-0.1ポイント)、精肉29.6%(昨対-1.5ポイント)、生鮮計23.1%(昨対-0.9ポイント)、デイリー26.3%(昨対-0.3ポイント)と、いずれも粗利が下がり、全体の売上総利益は25.11%(昨年25.56%)と、厳しい数字となった。

   一方、経費の方であるが、24.23%(昨年24.92%)と、0.69ポイントと大きく改善した。特に、コストに関しては、「当社は、「高コスト体質からの決別 オペレーション改革元年!!」をスローガンに掲げ、スーパーマーケットの原点に立ち返り、ゼロベースでの改革を進めてまいりました。」とのことで、今期の重要な経営課題であったといえる。具体的には、「作業の棚卸しによるムダ・ムラの排除や販促チラシ回数の削減などにより作業軽減を図るとともに、適正な人員配置による人時効率の改善に取り組みました。また販促チラシについては、一部の店舗を除き、土曜日を新聞折込日とし、1週間単位の企画に変更することにより、火曜・水曜日の強化に加え、週末の販売強化も図りました。」とのことで、作業改善とちらしの見直しが大きかったといえよう。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は0.88%(昨年0.64%)と改善した。ただ、経費比率24.23%は、前期決算公開企業約50社も平均25.6%よりは低いが、トップクラスの20%前後と比べるとまだ改善の余地はあるといえ、今後、3カ年計画の中で、どこまで経費比率を改善できるかが課題といえよう。そして、これに、不動産賃貸収入、施設利用料等のその他営業収入が1.91%(昨年1.93%)加わり、営業利益は2.79%(昨年2.57%)と、増益となった。したがって、原価の上昇、その他営業収入の減少を、経費削減でカバーしたことにより、営業利益が大きく改善しており、経費削減効果が好業績に寄与した決算結果といえよう。

   これを受けて、キャッシュフローであるが、やや気になるのは、投資活動によるキャッシュフローである。この中の新店に関する項目、有形固定資産の取得による支出が-38.15億円(-114.45億円)と大きく減少していることである。ただ、それでも、マックスバリュ東海の1店舗当たりの出店にかかわる資産は約4億円弱であるので、10店舗近い新規出店が可能であるといえ、出店意欲は依然として高い水準であり、今期は前期に比べ、低く投資を抑えているといえるが、前期を含め、2年間で見れば、成長戦略を強く意識した投資キャッシュフローであるといえよう。

   このように、2011年2月期のマックスバリュ東海の決算は増収増益の好決算となった。特に、利益が20%近い伸びとなり、収益性が増したが、その中身は、経費が大きく改善したことが大きかったといえる。ただ、今後、今期からはじまった第3次中期3ヵ年経営計画の営業利益率の目標3.5%を達成するには、0.7ポイント以上の改善が必要といえ、一層の経費削減に加え、原価の改善も課題といえよう。今期の好決算を踏まえ、寺嶋社長の新体制となり、来期、マックスバリュ東海が経営目標を達成するために、特にどのように経費削減に取り組んでゆくのか、その動向に注目である。

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April 15, 2011

大黒天物産、2011年5月期、第3四半期決算、増収増益!

   大黒天物産が4/5、2011年5月期、第3四半期決算を公表した。結果は売上高655.07億円(11.4%)、営業利益36.55億円(6.9%)、経常利益36.47億円(6.8%)、当期純利益18.00億円(-0.8%)となり、当期純利益は「資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額として特別損失に2億5千9百万円を計上、・・」とのことで、減益となったが、営業、経常段階では増収増益となり、好決算となった。ただ、売上高の伸び率に対して、営業利益の伸び率が低い点がやや気になるところである。

   そこで、営業利益が増益になった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、77.47%(昨年77.14%)となり、0.33ポイントの上昇が見られる。大黒天物産自身も「当社グループでは平成20年4月より実施しております購買頻度の高い商品約100品目以上を2割から5割値下げした「生活応援宣言セール」を引き続き実施するとともに、平成22年12月には「お客様の生活を豊かにしていきたい」という念い(おもい)から店頭売価よりも更に減額するというかたちで「総額2億円利益還元セール」を実施いたしました。」とのことで、今期は価格訴求を強力に推し進めており、これが原価に少なからぬ影響を与えたものと思われる。結果、売上総利益は22.53%(昨年22.86%)となった。

   一方、経費の方であるが、16.94%(昨年17.03%)となり、0.09ポイント改善している。それにしても、この経費比率16.94%は、前期の決算公開企業約50社の中では、オーケー15.0%、トライアルカンパニー15.5%につぐ低さであり、トップクラスの比率である。特に、今期は、「管理コストの一層の見直しと作業効率の改善による販売費及び一般管理費の圧縮にも努めてまいりました。」とのことで、経費削減の効果が表れているといえよう。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は5.59%(昨年5.83%)と、原価の上昇が大きく、カバーできない結果となり、率では減少した。ただ、高では、売上高が11.4%伸びたために、カバーしており、金額ベースでは増益となった。大黒天物産はその他営業収入が計上されていないため、マーチャンダイジング力=営業利益となり、結果、営業利益も率では減少、高では増加という決算結果となった。

   したがって、増益要因は売上高の上昇、11.4%増が大きかったといえる。その増収要因であるが、今期は、「当第3四半期累計期間4店舗目(うち1店舗は移転出店)となるディオ防府南店を新たな商圏である山口県防府市に出店いたしました。」とのことで、新規出店効果が大きいといえよう。ただ、大黒天物産の総店舗数は前期56店舗であるので、59店舗となったことになるが、11.4%の売上増は恐らく、既存店も好調に推移したと思われ、新店、既存店がバランスよく成長に寄与し、結果、経費削減にもつながったものといえよう。

   ここで、大黒天物産の出店余力を見てみると、純資産比率は60.0%であり、新規出店関連の資産、土地、建物、敷金保証金の合計は101.10億円であり、総資産241.31億円の41.89%であり、差し引き、18.11%、十分な出店余力である。前期の決算公開企業約50社の平均が-22.3%であり、トップがヨークベニマルの24.4%、それに次ぐ高い数字であり、成長戦略を積極的に推し進められる財務基盤が確立されているといえる。しかも、出店にかかわる資産101.10億円は全59店舗で割るとわずか1.71億円であり、これも前期の決算公開企業約50社の平均が4.73億円と、極めて低い出店に関わる資産であり、独特な新規出店戦略をとっていることがわかる。

   また、今期の財務活動によるキャッシュフローを見ると、有利子負債を7.49億円圧縮しており、結果、有利子負債は12.00億円、総資産の4.97%、現金及び預金は65.13億円(総資産の26.99%)と強固な財務基盤であり、恐らく来期には無借金経営となるものと予想される。

   さらに、今期の投資活動によるキャッシュフローを見ると、新規出店関連への投資が17.37億円(昨年3.97億円)と4倍に跳ね上がっており、1.71億円の出店にかかわる資産で割ると約10店舗分となり、総店舗数59店舗で割った出店意欲は16.9%となる。この財務状況を見る限り、次の第4四半期を含め、今後も積極的に成長戦略を押し進めてゆくものと思われる。実際、大黒天物産の残り四半期を含めた通期決算予想であるが、売上高880.00億円(9.7%)、営業利益43.72億円(4.8%)、経常利益44.00億円(5.6%)、当期純利益22.30億円(0.4%)と、この第3四半期よりもやや下回る予想ではあるが、当期純利益は改善し、増収増益の好決算を予想している。

   このように、2011年5月期の大黒天物産の第3四半期決算は増収増益、特に、売上高が好調に推移し、原価上昇による営業利益率の減少を、利益高でカバーし、好決算となった。また、この第3四半期では有利子負債が削減され、財務基盤が一層強化され、同時に新規出店関連への投資も積極的に行い、出店意欲は旺盛、今後の成長が期待されるキャッシュの配分である。次の第4四半期はもちろん、来期、さらに成長が期待されるが、大黒天物産の今後の新規出店戦略に注目である。

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April 14, 2011

アークス、2011年2月期、本決算、3,000億円突破!

   アークスが4/12、2011年2月期の本決算を公表した。結果は、売上高3,036.08億円(12.1%)、営業利益92.72億円(4.9%)、経常利益100.61億円(5.2%)、当期純利益54.49億円(7.9%)となり、増収増益、売上高は3,000億円を超えた。決算公開企業約50社の食品スーパーマーケットの中で年商3,000億円を超えるのは7社である。その7社ととは、前期決算の売上高で見ると、イズミ4,687.42億円、ライフコーポレーション4,565.22億円、平和堂3,612.37億円、イズミヤ3,585.79億円、ヨークベニマル 3,375.06億円、バロー3,319.93億円、マルエツ3,307.17億円である。今期決算では、8社目となるものといえ、アークスは食品スーパーマーケット業界の中でもトップクラスの売上規模の食品スーパーマーケットとなる。

   そこで、アークスが、今期12.1%の成長を遂げ、年商3,000億円を超えた最大の要因は、「当期におきましては、東光ストアの業績が通年で寄与したため、売上高・利益共に大きく伸長いたしました。」とのことで、2009年10月にグループ入りした東光ストアがフルに貢献したことが大きい。そこで、この東光ストアの業績を除いた場合を見てみると、「当期の連結業績から(株)東光ストアの業績を除いた対前年増減率は、売上高1.2%増、営業利益3.9%増、経常利益3.2%増、当期純利益8.3%増となっております。」とのことで、増収増益基調ではあるが、その貢献度は極めて大きかったことがわかる。

   アークス自身は、今期新店を新規出店4店舗、移転新築2店舗、業態変更含む改装12店舗、閉店2店舗を実施しており、総店舗数は203店舗となった。ちなみに、食品スーパーマーケットで200店舗を超えているのは、前期の決算時ではマルエツ249店舗、ライフコーポレーション208店舗のみであり、日本において、200店舗の食品スーパーマーケットを展開することが極めて高いハードルであるかがわかる。

   これに対して、利益の方であるが、いずれの段階でも堅調な結果となった。そこで、営業利益が4.9%増となった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価の方であるが、77.06%(昨年77.21%)と0.15ポイント下がっている。これに対して、アークス自身は、「利益の安定確保を図るべく、当社グループの共同仕入れを更に強化し、店舗においては生鮮食品の適切な加工・品出しを行うなど、廃棄ロスの対策にも取り組んでまいりました。」とのことで、仕入れとロス対策等が寄与したものといえよう。しかも、「競合他社の相次ぐディスカウント業態への転換などを含め、低価格競争が依然として続いております。」とのことで、価格政策が厳しかった中での原価改善といえる。結果、売上総利益は22.94%(昨年22.79%)となった。

   一方、経費の方であるが、19.88%(昨年19.52%)と、0.36ポイント上昇している。ただ、上昇しているとはいえ、19%台であり、これも、前期決算公開企業約50社の数字を見ると、20%を切る食品スーパーマーケットは、オーケー15.0%、トライアルカンパニー15.5%、大黒天物産17.2%、アオキスーパー17.2%、スーパーバリュー18.4%、マルミヤストア18.8%の6社であり、アークスの経費比率がいかに低い数字であるかがわかる。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、3.06%(昨年3.27%)と0.21ポイント下がった。アークスの場合はその他営業収入が計上されていないため、マーチャンダイジング力=営業利益となり、結果、営業利益は率では昨年を下まわったが、売上高が12.1%となったため、営業利益高では4.9%の増益となった。

   これを受けて、アークスの経営の意思がダイレクトに表れるキャッシュフローであるが、営業活動によるキャッシュフローは72.52億円(昨年79.21億円)と若干減少したが、その要因は、当期純利益は増加したが、その他の流動負債の増減額(-は減少)が-10.93億円(昨年2.98億円)となったためである。これに対して、新店戦略がダイレクトに反映される投資活動によるキャッシュフローであるが、-26.99億円(昨年-56.44億円)となり、一見、投資を控えているように見えるが、昨年は連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出、すなわち、東光ストアのグループ化に-43.82億円投資したためである。したがって、新店に直接かかわる投資は、有形固定資産の取得による支出-35.37億円(-18.08億円)と倍増しており、積極的な投資である。

   結果、フリーキャッシュフローは、45.53億円(昨年22.77億円)と倍増している。そして、このキャッシュを財務活動によるキャッシュフローに充てることになるが、結果は、-56.12億円(昨年1.51億円)と、全額を超えるキャッシュ当てている。その中身であるが、-40.77億円を有利子負債の削減に充てている。こう見ると、今期は、昨年のM&A、今期は新店と財務基盤の改善にキャッシュを振り向けており、一段と企業価値の増大を図っていることがわかる。

   このように、2011年2月期のアークスは、売上高3,000億円を達成し、増収増益という好決算となった。やや気になるのは経費増がマーチャンダイジング力をやや下げたことであるが、東光ストアのグループが大きく寄与し、営業利益高は増益となった。そして、その増益となったキャッシュを成長戦略と財務改善の双方にバランスよく振り向けており、企業価値をより高める流れを作ったといえよう。今後、パワーを増したアークスが北海道商圏の中で、どこまでシェアを拡大してゆくか、次の成長戦略に注目である。

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April 13, 2011

ベルク、2011年2月期決算、増収増益、好調!

   ベルクが4/11、2011年2月期の本決算を公表した。結果は、売上高1,095.19億円(6.9%)、営業利益50.32億円(14.6%)、経常利益52.43億円(13.2%)、当期純利益26.66億円(9.2%)となり、増収増益、特に、利益は2桁増の好決算となった。また、今期決算では、各社の売上高が伸び悩んでいるが、ベルクは6.9%増と堅調な数字であり、バランスのよい好調な決算となった。さらに、財務面では、EPS(1株当たり当期純利益)も当期純利益が増加したことにより、127.79円(昨年117.05円)、自己資本比率も54.8%(昨年53.7%)、キャッシュフローもフリーキャッシュフローはプラス、現金及び現金同等物期末残高も38.58億円(昨年33.81億円)と、堅調な伸びを示しており、営業数値に加え、経営数値も好調な決算となった。

   そこで、まずは、売上高が6.9%となった要因であるが、既存店が「競争力の強化及び当社が目指す標準化の推進のため既存店12店舗の改装を実施」したことにより、101.5%と昨対を上回ったことに加え、新規出店として、高崎大八木店(2010年3月、群馬県高崎市)、佐野田沼店(2010年8月、栃木県佐野市)、行田城西店(2010年9月、埼玉県行田市)、東松山新郷店(2011年11月、埼玉県東松山市)と、4店舗出店したことが大きいといえる。結果、ベルクの店舗数は66店舗となった。

   一般に食品スーパーマーケットの成長は既存店の活性化よりも、新規出店で決まるといえ、ベスクも4店舗は全66店舗の106.06%に当たり、新店が今期の売上高を押し上げたといえ、これが好調な決算をもたらしたといえる。ちなみに、今期の設備投資であるが、新店に関しては今期16.96億円(昨対58.9%)、来季へ向けては18.56億円(昨対275.4%)であり、合計35.42億円となり、これは、ベルクの投資活動におけるキャッシュフローの中の有形固定資産の取得による支出-45.50億円の約80%弱となり、積極的な新店への投資である。しかも、今期よりも、来期の方に重点を置いており、来期も、今期同様の堅調な成長が期待できるといえよう。

   一方、今期は売上高もさることながら、利益はさらに好調な結果である。そこで、特に営業利益について、14.6%増となった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、74.23%(昨年74.18%)となり、0.05ポイントと、やや原価が上昇しているが、ほぼ、昨年並みの水準を維持したといえよう。原価改善に関しては、「イオングループのプライベートブランド商品である「トップバリュ」を積極的に拡販いたしました。」とのことであるが、「競合各社の積極的な出店及び販売施策を実施する中、不透明な所得や雇用環境、消費税増税論議等による将来的な不安感から個人消費の持ち直しが遅れ、厳しい経営環境が続いております。」とのことで、経営環境が厳しかったとのことである。結果、売上総利益は25.77%(昨年25.82%)となった。

   これに対して、経費の方であるが、22.60%(昨年25.65%)と、大きく下がっている。ただ、これは、今期からベルクの「物流費用の計上区分の変更」があったため、前期との比較は、この段階ではなく、営業利益段階で評価しないと、今期に関しては、経費削減がなされたのかどうかは難しい判断となる。ちなみに、変更のポイントであるが「従来、物流関連費用については、販売費及び一般管理費に計上しておりましたが、当連結会計年度より、営業収入に計上している「物流収入」(仕入取引先から当社物流センターへ納品される商品の店舗への配送業務に対して仕入取引先から受け取る収入等)より控除する方法に変更いたしました。」とのことであり、その他営業収入とのかねあいとなる。

   その、その他営業収入であるが、1.95%(4.12%)と、大きく減少しており、昨年と違いその他営業収入、すなわち、物流収入の経費がその他営業収入、一般管理比双方から引かれているのがわかる。したがって、その結果である営業利益は、4.59%(昨年4.28%)と増加しているので、恐らく、原価が横ばいであるので、経費が削減されたものと思われる。来期からは、この数字の比較が正確に判断できるようになるため、原価、経費の差、マーチャンダイジング力も判別できるが、今期は、この営業利益で判断せざるをえないが、マーチャンダイジング力も経費の削減により、改善されているといえよう。

   さて、来期であるが、売上高1,149.90億円(5.0%)、営業利益51.01億円(1.4%)、経常利益53.12億円(1.3%)、当期純利益27.92億円(4.7%)の予想であり、今期と比べ、3/11の東日本大震災の影響が不透明であり、利益面がやや厳しい予想である。

   このように、2011年2月期のベルクの本決算は増収増益、特に、利益が好調な決算となり、営業数値だけでなく、財務面でも、EPS、自己資本比率、そして、キャッシュフローも安定した堅調な結果となった。これまで公表された各食品スーパーマーケットの決算は利益は好調な企業もあるが、売上高は厳しい結果の企業が多かったが、ベルクは双方バランスのよい結果であり、しかも財務も堅調な結果となり、食品スーパーマーケット業界の中でも、屈指の好調な決算となったといえる。来期は震災の影響等、不透明感が漂うが、今期の好調な決算結果を踏まえ、ベルクが今期のように好調な経営を維持できるか注目である。

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April 12, 2011

ヨークベニマル、2011年2月期決算、減収減益!

   ヨークベニマルの2011年2月期の本決算が、4/7、親会社のセブン&アイHの本決算とともに公表された。結果は営業収益3,433.79億円(98.46%)、営業利益88.77億円(94.41%)、経常利益102.76億円(94.50%)、当期純利益50.93億円(83.70%)となり、減収減益となる厳しい決算となった。この決算数字には3/11の東日本大震災の影響は全く含まれておらず、昨年の3/1から、今年の2/28までの1年間の決算結果であり、ヨークベニマルにとっては、厳しい1年であったといえる。

   ちなみに、4/12現在、ヨークベニマルの休業店舗は10店舗、福島県(富岡店、大熊店、夜の森店、浪江店、原町店、原町西店)、宮城県(湊鹿妻店、中浦店、塩釜店、多賀城店)であり、被災1週間後は71店舗が休業という、深刻な状況であったが、この1ケ月で順調に被災店舗が再開している。特に、山形県15店舗、栃木県20店舗、茨城県26店舗はすべて営業再開しており、今期、第1四半期は厳しい状況といえるが、第2四半期以降は営業面に関しては回復が見込まれるものと思われる。

   さて、2011年2月期の決算にもどると、気になるのは、営業収益よりも、営業利益、経常利益、当期純利益と、すべての利益段階で減益となったことである。そこで、ここでは、営業利益が減益となった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、75.88%(昨年75.84%)と、0.04ポイントと上昇が見られる。ただ、その上昇幅はわずかであり、ほぼ、昨年と同じ原価率であったといえる。価格競争はかなり厳しい1年であったと思われるが、原価の上昇を抑えた展開ができたといえよう。恐らく、セブンプレミアムなど、PB商品の貢献も大きかったものと推測される。結果、売上総利益は24.12%(昨年24.16%)となった。

   一方、経費の方であるが、23.15%(昨年24.69%)と、1.54ポイントと、大きく改善している。したがって、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は0.97%(昨年-0.53%)と、一転、マイナスからプラスへと転じ、経費削減の効果が原価以上に大きく貢献したといえる。これに、その他営業収入が加わり、営業利益となるが、今期は、この、その他営業収入に大きな変化がある。

   ヨークベニマルのその他営業収入は大きく2つに分かれる。ひとつは、物流収入等の受取手数料収入であり、もうひとつは不動産賃貸収入である。この2つの結果であるが、受取手数料収入は0.63%(昨年2.42%)、不動産賃貸収入は1.03%(昨年0.90%)であり、受取手数料収入が激減していることである。経費も大きく減少しているので、計上方法が変わった可能性もあるが、この差が大きく、結果、営業利益は2.63%(昨年2.79%)となり、減益となった。原価、経費、双方が改善したにも関わらず、その他営業収入が減少したことが、営業利益が減益となった要因である。

   これを踏まえて、ヨークベニマルの2012年2月期の決算予想であるが、3/11の影響をどう見るかが最大のポイントとなるが、現時点での予想は、営業収益3,225.00億円(93.9%)、その他営業収入を抜いた売上高は3,170.00億円(93.9%)、営業利益10億円(11.3%)と、売上高よりも、営業利益が極めて深刻な減益となる予想である。特に、営業利益については、震災前の営業利益の当初の予想が95億円(昨対107.0%)であったので、震災の影響を85億円と見込んでいるといえる。

   ちなみに、セブン&アイHの他の主要企業は、セブン-イレブン・ジャパン-40億円、イトーヨーカ堂-90億円、そごう・西武-88億円、その他-78億円であり、合計、セブン&アイH全体では381億円の震災の影響額を現時点では見込んでいる。さらに、震災に伴う特別損失も見込まれているが、ヨークベニマルがセブン&アイHの中では最も大きく150億円であり、全体の57.69%、約60%となる。それだけ、ヨークベニマルの震災の影響は大きかったといえる。

   そこで、今期のヨークベニマルの純資産であるが、1,178.14億円、総資産1,474.54億円の79.89%であり、この純資産比率は、前期決算、2010年度の決算公開企業約50社の食品スーパーマーケットの中でも断トツのトップであり、堅固な財務基盤である。現預金も148.05億円あり、流動資産も413.99億円であり、150億円の予想される特別損失も財務的には吸収できるものと思われるが、重い負担となることは必至である。

   このように、ヨークベニマルの2011年2月期、3/11の震災前の本決算が公表されたが、減収減益と厳しい結果となった。ただ、マーチャンダイジング力は増しており、原価、経費が改善されたことが大きいといえる。問題は、来期であるが、来期は3/11の東日本大震災の影響が大きくヨークベニマルにのしかかることになり、現時点で、営業利益-85億円、特別損失150億円が予想される影響であり、厳しい年となるといえよう。ただ、ヨークベニマルの財務基盤は食品スーパーマーケット業界では屈指の堅固さであり、現時点で震災時の休業店舗も急ピッチで営業再開されている。したがって、今期、ヨークベニマルが、この厳しい経営環境の中で、どのような経営戦略を打ち出し、どのように経営改善をはかってゆくのか、その動向に注目である。

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April 11, 2011

セブン&アイH、3/11東日本大震災の影響!

   4/7、セブン&アイHが2011年2月期の本決算を公表したが、その中で、2012年2月期の本決算予想を公表した。この予想には3/11の東日本大震災の影響が組み込まれており、今期の増収増益から一転、減収、営業利益、経常利益は今期をわずかに上回る予想であるが、当期純利益は大震災関連の特別損失が発生し、78.2%となる厳しい予想である。ただし、来期から2月度決算企業は、資産除去債務に関する会計基準が適用されるため、その影響も加わるため、2重の当期純利益への影響となり、これも大幅な減益を余儀なくされる大きな要因である。

   そこで、まずは、今期決算結果と来期の予想であるが、営業収益来期予想4兆6,000.00億円(今期5兆1,197.39億円:89.8%)、営業利益来期予想2,480.00億円(今期2,433.46億円:101.9%)、経常利益来期予想2,453.00億円(今期2,429.07億円:101.0%)、当期純利益来期予想875.00億円(今期1,119.61億円78.2%)である。それにしても、これだけの大震災であるにもかかわらず、営業利益は昨対をクリアーするとのことであり、セブン&アイHの強い復興の意志が感じられる来期の決算予想であるといえよう。

   その事業部ごとの内訳であるが、営業収益予想が89.8%となる最大の要因はセブン&アイHの構成比約40%を占めるコンビニエンスストア事業が76.2%となる予想となるためである。これ以外の事業はスーパーストア事業98.4%(構成比約40%弱)、百貨店事業96.2%(構成比約15%強)、フードサービス事業98.5%(構成比約1.5%強)、金融関連事業121.5%(構成比約2%)、その他の事業146.0%(構成比0.7%)であり、大きな落ち込みはなく、ほぼ、今期並みか、今期よりも上向く予想である。ただし、コンビニエンスストア事業の76.2%の予想は、来期から、北米の営業収益の計上方法に変更があるためであり、震災の影響ではない。今期と同様に計算すると、103.0%となり、昨対をクリアーする。

   一方、営業利益が101.9%となる要因も、同じくコンビニエンスストア事業に負うところが大きく、営業利益の予想は、コンビニエンスストア事業103.7%(構成比約80%)、スーパーストア事業76.4%(構成比約6.5%)、百貨店事業74.7%(構成比約2%強)、フードサービス事業(赤字)、金融関連事業95.3%(構成比11%強)、その他の事業(赤字)という結果であり、対照的な内容である。この予想を見ても、いかに、コンビニエンスストア事業がセブン&アイHの柱と、特に営業利益については、なっているかがわかる。

   そこで、4/7に、この本決算と同時に公開された東日本大震災がもたらしたセブン&アイHへの現時点での影響を見てみたい。まずは、セブンイレブンであるが、「セブン-イレブンでは、地震発生当初、停電や、商品・備品の落下および建物の損傷等による休業が東北地方および茨城県を中心に約600店舗ございました。」とのことである。そして、4/7時点では、「4月7日現在での 営業店舗は95%以上となり、休業店舗は60店舗となっております。」となり、現時点では大半が営業再開となった。ちなみに、東北地区での店舗の内訳であるが、岩手県68店舗(休業0店舗)、宮城県331店舗(休業34店舗)、山形県140店舗(休業店舗0店舗)、福島県379店舗(休業24店舗)、茨城県534店舗(休業2店舗)の合計1,452店舗(休業60店舗)である。

   次に、イトーヨーカ堂であるが、東北地区には10店舗が展開されているが、店舗は数店舗が被災したものの、営業は翌日には再開しており、4/7時点でもすべての店舗が営業再開している。再開にあたっては、3/11の14時46分に地震が発生してから、4分後の14時50分には 対策本部を設置しており、すばやい対応がなされている。イトーヨーカ堂は店舗よりも物流網が仙台中心であったため、この問題の方が影響が大きかったといえ、すぐに、北海道、関東から東北への物流網を再構築し、営業再開を果たしている。

   そして、その他のセブン&アイHの状況であるが、ヨークベニマルは被災時は約100店舗が営業停止となったが、4/7現在では10店舗のみとなっており、大半が営業再開を果たしている。百貨店はすべての店舗が営業をしており、4/7現在、茨城県等の一部の店舗での部分営業があるが、全店営業している。

   以上がセブン&アイHの東日本大震災の被災状況と4/7現在の営業状況であるが、予想以上に復旧が進んでおり、グループ各社の大半の店舗が営業し、寸断された物流網も再構築され、商品供給体制も整いつつあるといえる。

   なお、イトーヨーカ堂の全店ベースの3/28から4/3までのお客様の需要と商品供給の対応状況を見ると、このような大災害の時、何が重点商品となるかがわかる。その結果であるが、飲料水大型、通常時の800%(供給200%)、カセットコンロ600%(供給600%)、乾電池350%(供給80%)、懐中電灯300%(供給200%)、ヨーグルト200%(供給80%)、牛乳200%(供給120%)、子ども用紙おむつ120%(供給90%)、トイレットペーパー90%(供給110%)、カップラーメン80%(供給80%)、米70%(供給60%)である。

   このように、セブン&アイHは3/11の震災4分後には対策本部を立ち上げ、いち早く、被災地、東北への支援体制を構築し、各グループの被災状況の把握、必要な支援体制を構築し、店舗の再開を果たし、4/7現在では、セブンイレブンの60店舗、ヨークベニマルの10店舗のみが休業状況であり、残りのすべての店舗が営業再開しており、復旧が急ピッチで進んでいる。来期は当期純利益が厳しい結果となると予想されるが、どこまで、収益を改善できるか、今後のセブン&アイHの動向に注目である。

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April 10, 2011

セブン&アイH、2011年2月期、増収増益!

   セブン&アイHが2011年2月期の本決算を、4/7、公表した。結果は、営業収益5兆1,197.39億円(0.2%)、営業利益2,433.46億円(7.4%)、経常利益2,429.07億円(7.0%)、当期純利益1,119.61億円(149.5%)となり、増収はわずかであったが、増収増益となる堅調な決算となった。結果、EPS(1株当たり当期純利益)は126.21円(昨年49.67円)と大幅に増加し、株主への貢献を示す株価の価値が大きく増加した。

   そこで、まずは、セブン&アイHの増収増益となった要因を事業部門別に見てみたい。まず、営業収益が伸びた事業であるが、約40%の構成比のコンビニエンスストア事業であり、3.4%増であり、これ以外の事業では、構成比0.7%のその他の事業が5.8%増のみであり、残りの事業はすべて昨対を割り、厳しい結果となった。そのコンビニエンスストア事業であるが、国内チェーン全店売上高は2兆9,476.06億円(昨対105.8%)であり、北米も売上高は1兆4,455.71億円(昨対103.6%)と堅調な数字となり、セブン&アイH全体を大きく牽引したといえる。ただ、国内の営業収益への貢献は売上高ではなく、加盟店収入であるので、コンビニエンスストア事業の約20%強となり、4,411.86億円(昨対108.18%)であった。

   一方、営業利益の方であるが、コンビニエンスストア事業がセブン&アイHの80.02%を締めるが、その結果は1,954.77億円(昨対106.3%)となり、全体の営業利益を押し上げたといえる。ただ、今期決算については、営業利益は7.4%増であるので、他の事業も全体を押し上げたといえる。そこで、その他の事業の営業収益と営業利益を見てみると、スーパーストア事業(営業収益-1.7%、営業利益10.8%)、百貨店事業(営業収益-0.8%、営業利益311.4%)、フードサービス事業(営業収益-7.2%、営業利益赤字)、金融関連事業(営業収益-3.2%、営業利益-6.0%)、その他の事業(営業収益5.8%、営業利益赤字)という結果である。したがって、スーパーストア事業、百貨店事業の営業利益への貢献度が今期は大きかったといえよう。

   では、昨年と比べ、収益性が回復されたことにより、経営の意思が強く反映されるキャッシュフローがどのようになったのかを見てみたい。まずは、営業活動によるキャッシュフローであるが、3,105.27億円(昨年3,222.02億円)と、ほぼ昨年と同じ数字となった。一方、投資活動によるキャッシュフローであるが、-3,120.81億円(昨年-1,151.58億円)と、投資を大きく増加させている。これは、「店舗の新規出店や改装などに伴う有形固定資産の取得による支出や、セブン&アイ・アセットマネジメントにおける西武池袋本店の土地建物等の取得に伴う支出があったことなどにより3,120 億8 千1 百万円の支出となりました。」とのことで、昨年以上の有形固定資産への投資が増したためである。

   したがって、財務活動によるキャッシュフローで賄うか、キャッシュを取り崩すことになるが、財務活動によるキャッシュフローは、-562.58億円(昨年-1,567.08億円)と減少してはいるが、マイナスであり、キャッシュを取り崩しての投資活動によるキャッシュフローへの配分となった。結果、現金及び現金同等物の増減額(△は減少)は -605.73億円(昨年543.97億円)となり、現金及び現金同等物の期末残高は6,567.47億円(昨年7,173.20億円)となった。ちなみに、セブン&アイHの有利子負債は7,209.92億円であり、ほぼ同等なキャッシュであるといえ、いかに、手厚いキャッシュを確保しているかがわかる。

   そして、営業利益が増加した要因を事業構造外の別の角度、原価、経費面から見てみたい。まずは原価であるが、74.25%(昨年73.75%)となり、0.50ポイント上昇しており、原価は厳しい状況であった。結果、売上総利益は25.75%(昨年26.25%)と減少した。一方、経費の方であるが、33.37%(昨年33.60%)と、-0.23ポイント減少しており、経費の改善は進んだといえる。ただ、原価の上昇をカバーするまでにはいたっておらず、結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-7.62%(昨年-7.35%)とマイナス幅が広がっており、厳しい結果であったといえる。

   これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が13.00%(昨年12.33%)加わり、営業利益は5.38%(昨年4.98%)となり、増益となった。こう見ると、今期の増益はその他営業収入によるところが大きいといえ、先に見たように、スーパーストア、すなわち、GMS、そして、百貨店特有のその他営業収入が増加したことが、利益を押し上げた大きな要因といえよう。

   このように、2011年2月期のセブン&アイHの本決算は増収増益となったが、増収幅はわずかであり、セブンイレブンに依存した売上増の構造であり、今後、いかに、その他の事業をバランスよく成長させてゆくかが課題といえよう。また、利益は堅調な増益となったが、その要因は営業利益の約80%の構成比を占めるセブンイレブンが堅調であったことに加え、スーパーストア、百貨店のその他営業収入に負うところが大きかったといえ、課題を残す結果といえよう。そして、来期であるが、すでに、セブン&アイHは減益予想を公表しているが、3/11の東日本大震災の影響は避けられず、厳しい結果が予想される。震災後、営業状況は日々好転しているが、どこまで減益予想を縮められるか、今後のセブン&アイHの経営戦略に注目である。

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April 09, 2011

東京都中央卸売市場、4月第1週の青果の相場!

   東京都中央卸売市場が4/1から4/7までの、4月度、第1週の青果物の週間市況を公表した。結果は、「今週の1日の平均入荷量は、4,909トンで、前週比は2%減で前年同期比は4%減となった。今週も出荷制限要請等から野菜の入荷は少なかった前週より微減した、前年比は異常低温・日照不足等で前年も少なかったが今年は更に少ないため減少となった。」とのことで、昨年も入荷が少なかったことを考慮する必要もあるが、量的には微減という結果となった。また、相場に関しては、「相場は量販店の茨城応援セール等もあり葉物野菜中心に安値から反発したが、前年同期比を見れば分かるとおり安値基調は変わらず。」とのことで、前年同期比は半値を下回る野菜も続出しており、厳しい相場となった。

   そこで、まずは、主要品目の入荷状況、そして相場について見てみたい。「「だいこん」は神奈川県産後半で千葉県産は内陸の東葛飾物が本格化している、入荷は減少し価格は産地変わり強含んだが平年並みかやや下回っている。」とのことで、入荷は千葉産を中心に前年比111%と増加しているが、相場は前年比残念ながらせり62%、相対65%と厳しい状況で推移している。「「にんじん」は前週と同じで春物の徳島県産が増えてきたがやや小振り傾向、入荷は増加したが価格は産地変わり強含んだ。」とのことで、徳島県産が中心となっており、入荷は前年比75%と少なく、相場は相対131%と高値であり、大根とは対照的な動きである。ちなみに、今週の相場では、このにんじんが最も高く、入荷不足が大きいといえる。

   ついで、「「たけのこ」も前週と同じで全般には裏年で寒の戻りもあり大幅に遅れている、引き続き少なくて高い状況で自粛ムードから売れ行きは良くない。」とのことで、今年のたけのこは厳しい状況である。入荷は福岡県産が中心で前年比23%と極端に少なく、相場は前年比が出ていない状況である。「「キャベツ」は春物が中心で愛知県産は終盤を迎えた、入荷は前週並みで価格は産地変わり強含んだ。」とのことで、春物が神奈川県産を中心に入荷しているが、前年比は94%とほぼ昨年並みの入荷であるが、相場はせり63%、相対60%と、だいこん同様、厳しい状況である。

   さて、レタスであるが、「「レタス」は量的に中心の茨城県産が前週は風評被害で低迷した、入荷は減少し価格は安値から大幅に反発した。」とのことで、入荷は茨城県産を中心に前年比99%とほぼ昨年並みであるが、何といっても相場がせり34%、相対39%と、値がつかない状況であり、今週の全野菜の中でも最も低い相場となった。それでも、前週比はせり202%、相対178%であり、大きく反発しており、今後の動向が最も注目される野菜である。また、ほうれんそうであるが、「「ほうれんそう」は主力産地が抜けて鹿児島県産が例年の4倍以上入荷している、入荷は激減した前週より更に減少し価格は安値から徐々に上昇している。」とのことで、関東産の主力産地が抜けるという異変が起こっており、今週は鹿児島産を中心に、各地のほうれんそうが入荷している。入荷量は前年比45%であり、相場は前年比が算出されていない状況である。

   ちなみに、前週、3/25から3/31の東京中央卸売市場のほうれんそうであるが、「「ほうれんそう」の入荷は市場の6割を占める茨城・群馬・栃木県産が出荷停止となり入荷は激減した、価格は大幅な品薄にもかかわらず他県産も上昇しなかった。」とのことで、入荷は、群馬県産を中心に前年比59%、相場は前年比がやはり算出されない状況であった。この週は、レタスも厳しい状況であり、茨木県産を中心に入荷は前年比124%となったが、相場はせり19%、相対23%と値がつかない状況であり、まさに、「福島原子力発電所の事故による計画停電や自粛ムードから買い控えられ、・・」という厳しい結果となった。

   これ以外の主要野菜では、「「ねぎ」は埼玉県産の不作が目立っている、業務需要の不振から4月上旬までは動きが悪かった、入荷は増加し価格はまちまちだが学校も始まり徐々に上向こう。」、「「きゅうり」は茨城県産回復し作柄は全国的に良好となっている、入荷は増加し価格は産地変わったが今週も弱含んだ。」、「「トマト」は不作だった前年より多めの入荷が続いている、入荷は増加し価格は産地変わり春物セールも始まり後半強含んだ。」 そして、その他では、「「アスパラガス」は九州産がピークを過ぎ本来なら東北や長野県産が本格化するところだがやや遅れている、引き続き入荷少なめで価格も高め推移となっており平年比もやや高い。」という状況であり、いずれも、厳しい相場となった。

   このように、東京中央卸売市場の野菜の相場は、この数週間、入荷は昨年並の入荷があるが、相場が異常な状況であり、半値、八掛、あるいは、それ以下となる野菜が続出しており、極めて厳しい相場状況にあるといえる。主力産地も大きくかわりつつあり、各地から野菜が入荷し、何とか絶対量を確保している状況といえよう。当面、この状況は続くと思われ、来週以降も不安定な入荷、そして、相場が続くと予想され、野菜の相場動向を注視する必要がある。

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April 08, 2011

イズミヤ、2011年2月期本決算、減収増益!

   イズミヤが4/5、2011年2月期の本決算を公表した。結果は、営業収益3,572.74億円(-3.1%)、営業利益37.94億円(74.9%)、経常利益25.65億円(174.7%)、当期純利益7.53億円(昨年は赤字)と、減収とはなったが、利益はいずれの段階でも、昨年の厳しい状況からは一転、大幅な黒字となった。ただ、営業利益の営業収益比は1.06%であり、昨対では、大幅な増益であるが、もう一段と収益性を高めたいところであろう。

   そこで、まずは、今期、イズミヤが-3.1%の減収となった要因を新店面、商品面、客数、客単価面から見てみたい。まずは、新店であるが、今期は、2010年4月に、スーパセンター広稜店(奈良県)をオープンしたが、1店舗を閉店しており、総店舗数は87店舗と昨年同様の店舗数であり、店舗の増加は見られなかった。一般に、食品スーパーマーケットの売上は新店で決まるといえ、新店が閉店を上回った時、売上増がもたらされるが、今期のイズミヤはプラスマイナス0であり、営業収益が厳しい結果となったといえる。

   気になるのは、財務面であるが、今期のキャッシュフローを見ると、営業活動によるキャッシュフローがわずか3.22億円(昨年72.29億円)と、極めて厳しい状況である。昨年は当期純利益が赤字であり、今年は、黒字になったにも関わらず、営業キャッシュフローが好転していない。その要因は、店舗閉鎖損失引当金の増減額(-は減少)が-35.95億円(昨年36.10億円)と、差し引き、約70億円のマイナスとなったことが大きく、さらに、仕入債務の増減額(-は減少)も-34.24億円(昨年-18.36億円)となったことも加わり、結果、当期純利益の22.29億円( 昨年-79.43億円)、減価償却費の67.72億円(昨年68.13億円)を相殺してしまったことである。

   ただ、それでも、新店関連の投資活動によるキャッシュフローは、有形固定資産の取得による支出-53.13億円(昨年-40.42億円)と増加しており、結果、財務活動によるキャッシュフローでは賄い切れず、キャッシュを25.40億円取り崩し、今期の現金及び預金は66.43億円(昨年91.68億円)と、大きく減少した。イズミヤの本決算時点での有利子負債は911.10億円(昨年872.83億円)と、総資産2,437.31億円の37.38 %にあたり、純資産比率40.12%とほぼ同じといえ、純資産比率から見ても、現金及び預金から見ても厳しい財務環境にあるといえる。

   また、今期の新店にかかわる資産、土地、建物、敷金保証金の合計は1,711.97億円であり、総資産の70.24%である。差し引き、純資産でカバーできる出店余力は-30.12%と、負債に大きく依存する出店構造となっている。したがって、今期の投資活動によるキャッシュフローを、営業キャッシュフロー、さらに、財務キャッシュフローに頼ることができない以上、現金及び預金を取り崩して賄わざるをえなかったものと思われる。

   結果、新規出店が1店舗に留まり、これが、売上げが伸び並んだ最大の要因といえよう。また、商品面から見てみると、構成比61.1%の食品が97.9%、構成比20.4%の住関連品が98.5%、そして、構成比15.3%の衣料品が95.5%と厳しい結果となったことも、そのひとつである。さらに、客数98.1%、客単価99.5%と双方昨対を下回っており、これもその要因のひとつといえる。ただ、客数については、「客数増を狙いとしたクラブカード会員への販促強化にも積極的に取り組んだ結果、第3四半期以降の既存店客数は前年比99.6%まで改善し、既存店売上高も99.9%と前年水準まで回復いたしました。」とのことで、第3四半期以降は客数が回復しはじめたとのことで、良い兆候も見られ、今後、客数がどこまで回復するかが期待される。

   一方、営業利益が大きく改善した要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、70.41%(昨年70.73%)と0.32ポイント改善している。これについて、イズミヤは、「平成21年8月よりイズミヤ、ユニー、フジと3社で共同開発した新ブランド「Style ONE」を発売いたしました。平成23年2月末までに1,439品目を導入し、順調に販売を拡大しております。既存のプライベートブランド「good-i」も含めた開発商品の売上高は304億円(前年同期比97.3%)となり、当社の売上高に占める構成比は10.9%(前年構成比10.9%)となりました。」とのことで、PBの貢献が大きかったといえよう。結果、売上総利益は29.59%(昨年29.27%)となった。

   これに対して、経費の方であるが、31.30%(昨年31.45%)と、0.15ポイント改善している。したがって、原価、経費双方が改善し、結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-1.71%(昨年-2.18%)と、依然として、マイナスではあるが数字が改善している。原価、経費双方の改善が大きいといえよう。そして、これに、その他営業収入が2.81%(昨年2.79%)加わり、結果、営業利益は1.10%(昨年0.61%)と、大きく改善した。

   このように、2011年2月期のイズミヤの本決算は減収増益と、利益の回復は見えるが、新店が展開できず、さらに、商品面、客数、客単価ともにマイナスとなり、厳しい結果であったといえよう。ただ、第3四半期以降は客数の伸びが見られるとのことで、売上も回復傾向が見られる。今後、厳しい財務環境ではあるが、来期は、「平成23年9月末には中国蘇州に海外第1号店を出店する予定でございます。」とのことで、新たに海外戦略が加わり、今後、イズミヤ全体にどのような貢献があるかが、ポイントといええよう。来期は、3/11の東日本大震災による影響が読めないところであるが、イズミヤが海外を含め、どのような成長戦略を打ち出すか、注目である。

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April 07, 2011

丸和、継続企業の前提に関する重要事象等の記載解消!

   丸和が3/23、「「継続企業の前提に関する重要事象等」の記載解消に関するお知らせ及び(訂正)「平成23 年1月期 決算短信」の一部訂正に関するお知らせ」を公表した。これにより、3/11に公表した決算短信に修正が入ることになり、継続企業の前提に関する重要事象等の記載が解消されることになる。3/23、この日に、この内容が公表された理由は、丸和が臨時株主総会において、親会社、ユアーズとの合併契約の承認を受けたためであり、これにより、債務超過が解消されることが確実となり、今後、5/1からユアーズに丸和の経営が継承されるためである。

   丸和が3/11に公表した決算短信によれば、「2期連続して営業損失の計上となったことに加えて、当連結会計年度(平成23 年1月期)においても、経常損失270,669 千円および当期純損失2,593,286 千円を計上しており、当連結会計年度における純資産はマイナスとなっております。営業キャッシュ・フローは前連結会計年度には959,392 千円の支出となり、当連結会計年度においても1,812,598 千円の支出となっておりました。」という状況であり、極めて厳しい経営状況にあったといえる。まさに、この時点では、「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象」であったといえる。

   この厳しい経営状況が、3/23、先にも触れたが、「本日開催の当社の臨時株主総会の決議及びユアーズの臨時株主総会の決議によって本合併に係る吸収合併契約の承認を受け、平成23 年5月1日を効力発生日として予定されております。本合併によりまして、当社はユアーズとの一体による事業再建及び経営効率のさらなる向上を目指し、事業再生計画を促進させるとともに、当該事業再構築をより効率的に進めるために、本部機能の一体化による管理コストの削減及び経営の一元化によるガバナンス体制の強化を図ってまいります。」と、丸和、ユアーズ双方の臨時株主総会で合併が承認された。

   そして、その結果、「当社グループは、この度の臨時株主総会における合併契約の承認を受けまして、これらの各種施策の実施及び事業再生計画の具体的な展開を図るに対応できる体制の構築ができる見込みとなったことにより、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況は解消されたと判断し、「継続企業の前提に関する重要事象等」の記載を行わないことといたしました。」とのことである。

   そこで、丸和が今期、特に取り組んだ事業再生の成果をもとに、その結果の決算結果を見てみたい。まず、2/21時点での、「事業構造改革の完了についてのお知らせ」にて公表された事業再生の内容であるが、「経営資源の選択と集中による全社の利益構造極大化を推進するため、エリアドミナント戦略の見直しを行い、自社競合による影響の回避、物流網、管理コスト等の効率化の観点より、複数のエリアで店舗統廃合の検討を行いました結果、スーパーマーケット事業において25 店舗の閉鎖を完了し、子会社である株式会社リテイル・アドバンテージにて運営しておりました持帰り寿司事業においても、平成23 年1月31 日付けにて事業譲渡を完了し、事業構造改革による食品スーパーマーケットへの事業集中を完了いたしました。」とのことで、食品スーパーマーケットへの事業集中が完了したとのことである。

   その決算数字であるが、3/11公表の決算短信では、売上高336.59億円(-10.9%)、営業利益0.27億円(昨年は赤字)、経常利益-2.70億円、当期純利益-25.93億円となり、営業利益段階では黒字を確保した。したがって、経営的には極めて厳しい状況にあるが、営業利益はプラスとなり、リストラ後に食品スーパーマーケットへの事業集中を図れたことが、営業利益に黒字をもたらしたといえる。

   では、営業利益が黒字になった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは原価であるが、73.76%(昨年74.05%)と、0.29ポイント改善しており、厳しい価格競争の中、原価を改善している。結果、売上総利益は26.24%(昨年25.95%)となった。一方、経費の方は、27.20%(昨年27.27%)と、0.07ポイント改善している。したがって、原価、経費双方が改善されており、結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-0.96%(昨年-1.32%)と、依然として、マイナスではあるが、その幅は1.0%を切り、縮まっている。そして、これにその他営業収入が1.05%(昨年1.03%)のり、結果、営業利益は、0.09%(昨年-0.29%)と、黒字転換した。

   このように、3/11時点の決算短信では財務的には債務超過という厳しい状況にあったが、この1年でのリストラにより、営業利益は黒字転換しており、再生の兆しが見えていたといえる。今後、5/1以降、ユアーズと合併し、債務超過の解消が為されれば、営業利益のさらなる増加をはかり、食品スーパーマーケットとしての事業がまさに再生されるといえよう。ただ、気になるのは経費比率がかなり高めであり、営業利益を高めるためにも、この比率をいかに引き下げられるか、ここが当面の経営課題といえる。今後、丸和がユアーズと合併後、どのように、この経費比率を引き下げ、営業黒字の幅を拡大するか、その具体策に注目である。

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April 06, 2011

オークワ、2011年2月期、本決算、増収増益!

   オークワが4/4、2011年2月期の本決算を公表した。結果は営業収益2,899.60億円(0.2%)、営業利益65.39億円(12.0%)、経常利益67.58億円(13.2%)、当期純利益31.06億円(31.6%)となり、営業収益は微増にとどまったが、増収増益、特に、利益は2桁増の好決算となった。オークワ自身は、「消費者の生活防衛意識の高まりから低価格志向はさらに顕著になり、業態を超えた価格競争が相俟って、非常に厳しい経営環境が続きました。」と、コメントしており、特に価格競争が厳しい状況であったとのことである。

   そこで、まずは、今期本決算の営業収益が微増となった要因であるが、コメントにもあったように、価格競争の厳しさが反映したといえ、既存店が97.9%となったことが大きいといえよう。特に、「業態別の販売状況は、豊富な品揃えと低価格を実現した「スーパーセンター」業態とこだわりの商品を取り揃えた高質スーパーの「メッサ」業態は消費者ニーズにマッチし順調に推移しましたが、その他の業態は景気の低迷に加え、小売業の低価格競争が激化した影響を受け、前期を下回りました。」とのことで、SSM、GMS等が厳しい結果であったとのことである。

   また、新規出店に関しても「岐阜県下にスーパーセンター業態の「美濃インター店」とSSM業態の「美濃加茂店」、兵庫県下にSSM業態の「加古川野口店」と出店エリアの拡大に取り組み、また、奈良県下にスーパーセンター業態の「桜井店」、和歌山県下にSSM業態の「海南野上店」の合計5店舗を新設した一方で、経営効率化のため2店舗を閉鎖いたしました。」とのことである。オークワは現在149店舗であるので、差し引き、店舗数が3店舗増にとどまったことも営業収益が伸び悩んだ要因といえよう。

   ちなみに、オークワの投資活動によるキャッシュフローを見ると、新規出店に関する項目である固定資産の取得による支出は46.45億円(昨年70.84億円)であり、今期は約65%と削減しており、新規出店を昨年と比べ控えたといえ、これも営業収益が伸び悩んだ要因のひとつといえよう。ただ、その分、財務体質の改善にキャッシュを振り向けており、財務活動によるキャッシュフローを見ると、今期は長短借入金の返済が26.04億円(昨年21.37億円)と、昨年以上に増加しており、有利子負債も224.59億円(昨年242.92億円)と着実に減少し、総資産1,386.83億円の16.19%となった。

   一方、2桁増と好調な営業利益であるが、その要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、74.85%(昨年74.97%)となり、0.12ポイント下がっており、原価の改善が進んだ。コメントにあるように、価格競争が厳しい中、原価の改善が進んでいる。これについてオークワは「お客様の節約志向にお応えするために、生活応援セールの「ストップ・ザ・プライス」の継続、低価格・良品質商品として開発している「くらしモア」商品や、「オーエコノミー」及び「オークオリティ」の自社プライベートブランド商品ならびに自社食品工場の販売拡大に取り組みました。」等に取り組んでおり、これらが激しい価格競争の中、原価を改善できた要因といえよう。結果、売上総利益は25.15%(昨年25.03%)となった。

   これに対し、経費の方であるが、26.32%(昨年26.55%)と、0.23ポイント改善している。特に、既存店が97.9%と厳しい状況の中、経費の削減が進んでおり、原価、経費、ダブルでの営業利益改善となった。この経費改善について、オークワは、「業務改革につきましては、「業務改革室」を設置し、全社ベースで業務の見直しを行っております。」と、業務改革が本格的に動きだしたことが大きいといえよう。また「IT戦略を引き続き進め、セルフレジは48店舗・258台に拡大し、新たに画像認識レジを日本ではじめて導入いたしました。」とのことで、セルフレジの貢献も大きいといえよう。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-1.17%(昨年-1.52%)と、依然としてマイナスではあるが、マイナス幅は縮まっており、マーチャンダイジング力が増しているといえる。これに、不動産収入等のその他営業収入が3.51%(昨年3.62%)加わり、営業利益は2.34%(昨年2.10%)と、増益となった。こう見ると、増益の要因は、その他営業収入は伸び悩んだが、原価、経費の改善が図られ、マーチャンダイジング力がダブルで改善したことが大きいといえる。

   このように、2011年2月期のオークワの本決算は増収増益、特に、営業利益が2桁増の好決算となったが、やや気になるのは増収幅がわずかであったことである。特に、今期は、成長性よりも財務の健全化にキャッシュを振りむけ、内部体制の充実をはかったことにより、新店が十分に展開できていないことである。来期も、3/11の東日本大震災の影響が不透明であり、成長性よりも、内部体制の充実が基本戦略となるものといえ、さらに、来期からは「資産除去債務に関する会計基準」も適用されるため、当期純利益は厳しい数字が予想され、一層、営業利益の改善が課題となろう。その意味で、今期設置した業務改革室が来期、どのように原価、経費の改善に取り組んでゆくか注目である。

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April 05, 2011

マックスバリュ北海道、2011年1月期決算、増収増益!

   マックスバリュ北海道が3/16、2011年1月期の本決算を公表した。結果は、営業収益775.18 億円(1.2%)、営業利益4.82億円(17.3%)、経常利益4.77億円(9.5%)、当期純利益1.92億円(前期は赤字)となり、増収増益の好決算となった。マックスバリュ北海道自身も、「食品部門の動向は、昨年に引き続き100円を切る2桁売価の商品を豊富に品揃えする等、集客部門と位置づけた野菜部門(農産グループ)や簡便性と品揃えに対する支持が得られた惣菜部門(デリカグループ)、さらには6月中旬以降、気温の高い日が続いたことに対応できたアイスクリーム部門(デイリーグループ)等が好調に推移しました。」とコメントしており、食品の好調な部門が好業績に貢献したとのことである。

   そこで、マックスバリュ北海道の営業収益が堅調な結果となった要因であるが、新店として4月にマックスバリュ新花園店(苫小牧市)をオープンしたことに加え、既存店の業態転換、改装を積極的に実施したことが大きいといえよう。マックスバリュ北海道としては、「当社の属するスーパーマーケット業界では、引き続きお客さまの節約志向が強く、一点単価は依然として下落傾向にあり、業種・業態を越えた競争が一段と激化しており、・・」との厳しい認識をもっている。これに対し、マックスバリュ北海道は、価格競争に対抗すべく、今期は「「店舗競争力の強化」の取り組みとして、価格競争力を高めた新業態(ザ・ビッグ及びザ・ビッグ エクスプレス)への業態転換を5店舗で実施いたしました。また、既存店舗においても12店舗のミニ改装を行い、引き続き立地特性に合わせた品揃えや売場づくりの見直しを行いました。」と、ディスカウントストア、ザ.ビックへのシフトを鮮明にしたといえ、これが、営業収益を押し上げたといえよう。

   結果、各部門の数字であるが、農産(構成比11.8%、昨対5.9%)、水産(構成比8.3%、昨対1.1%)、畜産(構成比8.0%、昨対5.8%)、デリカ(構成比7.8%、昨対5.4%)、デイリー(構成比22.0%、昨対2.4%)、グロサリー(構成比35.8%、昨対-1.3%)インストアベーカリー(構成比1.3%、昨対-3.5%)となり、食品合計では昨対1.7%と堅調な結果となった。

   次に、営業利益であるが、率の面ではまだまだ厳しい面はあるが、昨対で見ると、結果は2桁増という好結果となった。そこで、その要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが76.36%(昨年76.46%)と、0.10ポイント改善している。特に、今期は、「イオンのプライベートプランドのトップバリュやイオングループの需要集約商品の仕入強化に努めてまいりました。」等に取り組んだことが、その要因といえよう。結果、売上総利益は23.64%(昨年23.54%)となった。

   一方、経費の方であるが、24.80%(昨年24.92%)と0.12ポイント削減している。これについて、マックスバリュ北海道は、「「ローコスト運営」については、取り組みの途上であり、新たにプロジェクトを発足させ来期の重点課題としてオペレーション業務改革や人事制度改革に取り組んでまいります。」とのことであり、今期よりも、来期の重点課題となるとのことである。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-1.16%(昨年-1.38%)となり、依然としてマイナスではあるが、その幅が縮まっており、マーチャンダイジング力が原価、経費双方から改善されているといえる。そして、これにその他営業収入として、1.79%(昨年1.93%)の不動産賃貸収入、その他の営業収入が加わり、結果、営業利益は0.63%(昨年0.55%)と、増益となった。原価、経費は改善できたが、その他営業収入がやや伸び悩み、営業利益としては、もうワンランク押し上げたいところであったとは思うが、増益となり、率では、営業収益の1.2%のプラスもあいまって、17.3%の営業利益の増加となった。

   これを踏まえ、来期の決算予想であるが、3/11の東日本大震災の影響が現時点では不確定要素ではあるが、営業収益800.00 億円(3.2%)、営業利益4.90億円(1.6%)、経常利益4.80億円(0.5%)、当期純利益0.20億円(-89.6%)と、増収とはなるが、利益は厳しい状況を予想している。特に、当期純利益は、来期から「資産除去債務に関する会計基準」が適用されるため、マックスバリュ北海道のみならず、すべての上場食品スーパーマーケットに適用されるため、厳しい予想となっている。

   このように、マックスバリュ北海道の2011年1月期の本決算は増収増益の好決算となった。特に、営業利益が原価、経費双方の改善が図られ、マーチャンダイジング力が改善したことが大きく、2桁増となった。ただ、その他営業収入が伸び悩んでおり、また、営業利益高では2桁の伸びであるが、営業利益率ではもうワンランク底上げを図りたいところであろう。来期から「資産除去債務に関する会計基準」も適用されるため、当期純利益への影響は必至であり、今後、営業利益率をいかに改善できるか、そのためには、さらに、マーチャンダイジング力、原価、経費の改善が当面の課題となろう。マックスバリュ北海道が今後、どのようにマーチャンダイジング力を改善してゆくかに注目である。

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April 04, 2011

家計調査データ最新、2011年2月度、食品99.9%!

   総務省統計局から、3/29、家計調査データ、最新、2011年2月度が公表された。結果は、外食を除く食品が1日当たり、1世帯当たりの消費額が1,913.86円、昨対99.9%とほぼ昨年と同様の数字となった。外食を含む食料は100.0%、すべの消費額は99.9%であり、この2月度は全体、食品、外食を含む食料ともにほぼ昨年と同様の数字となったといえ、やや消費がプラスに転じる兆候も見える。ただ、3/11に発生した東日本大震災の影響は今後の動向が読めないといえ、3月以降、家計の消費がどのような結果となるか、予断を許さない状況が続くといえよう。

   そこで、まずは、この2月度の全体の動向であるが、大分類でプラスになった項目は、外食412.79円(昨対100.4%)、住居586.32円(昨対112.6%)、光熱・水道1,018.57円(昨対107.2%)、保健医療436.11円(昨対103.2%)の5項目である。特に、住居が2桁増であり、消費が好調である。その要因であるが、全体の60%強を占める家賃地代が375.43円(108.7%)と大きく、さらに、設備修繕・維持が210.89円(120.2%)と120%消費が伸びたことが大きい。その中でも、植木・庭手入れ代10.25円(昨対410.0%)、設備器具58.46円(昨対131.9%)と、異常な伸びを示しているものもあり、これらが住居を大きく押し上げたといえる。

   一方、伸び悩んだ項目であるが、食品1,913.86円(昨対99.9%)、家具・家事用品287.11円(昨対99.2%)、被服及び履物331.68円(昨対93.4%)、交通・通信1,239.18円(昨対97.9%)、教育358.89円(昨対85.7%)、教養娯楽1,019.11円(昨対98.4%)、その他の消費支出1,710.39円(昨対98.2%)である。この中で気になる項目であるが、落ち込みが最も大きい教育は高校授業料の無償化が大きく、国公立高校9.68円(昨対27.5%)、私立高校36.43円(昨対83.3%)という結果である。この項目は消費者物価指数(CPI)にも大きな影響を与えているが、家計調査データでも、同様に影響が大きいといえる。

   また、値上げ後のたばこの動向であるが、たばこ29.96円(昨対84.1%)、消費世帯のみ252.65円(昨対116.1%)、消費世帯の割合11.9%(昨対72.4%)という結果である。たばこを続けている世帯は消費額が増加しているが、たばこをやめた世帯が30%弱いると見られ、これがたばこの消費額を15%強下げた要因といえる。

   そこで、食品スーパーマーケットに最も関係の深い食品であるが、全体は先に見たように、1,913.86円(昨対99.9%)と、ほぼ、昨年と同じ数字となったが、個々に見ると、伸びた項目、伸び悩んだ項目があるので、その結果を見てみたい。まずは、伸びた項目であるが、野菜・海藻275.57円(昨対101.6%)、果物92.25円(昨対101.6%)、油脂・調味料109.96円(昨対102.8%)、主食的調理食品122.29円(昨年104.2%)、飲料117.61円(昨年107.9%)である。

   これまで好調であった生鮮食品、特に、野菜・海藻、果物の伸びが止まったといえる。これに代わり、この2月度は飲料が107.9%と最も伸びた項となった。その要因であるが、コーヒー18.25円(昨対133.4%)、ミネラルウォーター6.86円(昨対128.9%)、紅茶2.86円(昨対114.3%)等が大きく貢献しているといえる。

   これ以外の項目で、特に伸びたものは、冷凍調理食品15.96円(昨対110.4%)、風味調味料5.89円(昨対111.5%)、砂糖4.07円(昨対122.6%)、グレープフルーツ1.14円(昨対118.5%)、オレンジ1.29円(昨対116.1%)、ぶどう0.18円(昨対125.0%)、かき(果物)0.61円(昨対170.0%)、キャベツ8.36円(昨対113.6%)、はくさい4.32円(昨対114.2%)、じゃがいも8.71円(昨対111.9%)、にんじん6.89円(昨対122.9%)、たまねぎ10.96円(昨対112.0%)、れんこん3.11円(昨対113.0%)、きゅうり7.50円(昨対110.5%)、なす2.82円(昨対114.5%)、ピーマン4.57円(昨対110.3%)、だいこん漬3.32円(昨対110.7%)である。こう見ると、依然として野菜、果物等の相場の高い項目の消費が高い傾向はあるが、全体としては落ち着いてきているといえよう。

   一方、伸び悩んだ項目であるが、穀類199.75円(昨対95.6%)、魚介類209.89円(昨対95.2%)、生鮮肉165.64円(昨対99.4%)、乳卵類 107.29円(昨対99.0%)、菓子類223.29円(昨対97.9%)、酒類98.82円(昨対96.4%)である。特に、穀類、魚介類、酒類が95%強と厳しい状況といえる。

   そこで、特に昨対を大きく下回った項目を見てみると、かつお2.43円(昨対87.2%)、たい2.57円(昨対83.7%)、たこ2.86円(昨対80.8%)、かに2.50円(昨対75.3%)、しじみ1.18円(昨対86.8%)、ほたて貝3.32円(昨対72.7%)、しらす干し3.39円(昨対87.2%)、煮干し0.86円(昨対82.8%)、まんじゅう3.50円(昨対80.3%)、ビール23.82円(昨対88.9%)、ウイスキー2.86円(昨対84.2%)となる。これらが、90%を下回った項目であり、この2月度、消費を押し下げた要因といえよう。

   このように、2011年2月度の家計調査データは、食品だけでなく、外食を含めた食料、そして、全体の消費もほぼ昨年同様の数字、100%前後となり、ここ数ケ月の数字が1月度98.0%、昨年12月度99.2%、11月度98.1%、10月度99.5%、9月度98.5%、8月度98.6%と比べても、若干消費が上向いきはじめた感があり、堅調な結果といえよう。特に、これまで相場高の影響で生鮮食品の野菜、果物の消費額が高かったが、この2月度は、高い項目もあるが、全体としては落ち着いており、食品全体への影響度は下がったといえる。それでも、上向きになりつつあるのは、それ以外の消費も活発になりはじめたからであるといえる。ただ、この3/11の東日本大震災の今後への影響は予想できない状況であり、この2月度、やや上向きはじめた消費額が、来月、3月度、どのような結果となるか、その動向に注目である。

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April 03, 2011

アオキスーパー、2011年2月期本決算、減収減益!

   アオキスーパーが4/1、2011年2月期本決算を公表した。結果は営業収益885.69億円(-0.9%)、営業利益12.89億円(-31.1%)、経常利益13.68億円(-29.3%)、当期純利益6.08億円(-44.2%)となり、減収減益の厳しい決算となった。アオキスーパー自身も、「低価格販売の実施や、店舗の新設や改装を行い販売促進に努めましたが、物価下落や個人消費の低迷等により厳しい経営環境となり、・・」とのことで、厳しい経営環境の中の1年であったとのことである。

   そこで、まずは、アオキスーパーの営業収益が-0.9%と、減収となった要因であるが、「新設店として10月に名東よもぎ台店をオープンし、3月に高浜店・4月に朝宮店・5月に清城店・9月に乙川店をリニューアルオープンいたしました。また、8月に中村店を仮店舗にてオープンいたしました。」とのことで、新店が1店舗のみであったことが、その要因である。一般に食品スーパーマーケットの成長戦略は新店によって決まるが、アオキスーパーの場合、46店舗であるので、105%の成長をはかるためには、3店舗、110%で5店舗以上の新店が欲しいとところであるが、今期は1店舗であるので、結果、-0.9%となったものといえる。

   では、出店余力はどうかを見てみると、まず気になる投資活動によるキャッシュフローであるが、出店関連の投資、すなわち、有形固定資産の取得による支出は14.86億円(昨年24.83億円)、差入保証金の差入による支出は5.45億円(昨年4.81億円)であり、合計20.31億円(昨年29.64億円)と、約10億円下がっており、今期、新規出店関連への投資を控えたことがわかる。アオキスーパーの2010年度の1店舗当たりの出店関連の資産は2.79億円となるので、今期は下がったとはいえ、6店舗前後出店可能であり、出店意欲は高かったが、戦略上、出店を抑制したと思われる。

   そこで、出店余力であるが、純資産比率は53.12%、出店に関わる資産、土地、建物、差入保証金の合計は132.56億円、総資産が284.70億円であるので、結果、46.56%となり、差し引き、6.56%とプラスである。昨年が9.34%であるで、やや下がったが、2010年度の決算公開企業約50社の平均が-31.02%であるので、アオキスーパーの出店余力はトップクラスといえる。したがって、今期は新規出店を抑制し、既存店の活性化、内部体制の充実を優先したといえよう。

   一方、気になるのは、営業利益が-31.1%と大幅にマイナスとなったことである。アオキスーパー自身も、「当流通業界におきましては、業種・業態を超えた値下げ等による店舗間競争がさらに激化しており、厳しい経営環境が続いております。」とコメントしているように、値下げ競争の激化が響いたものと思われる。そこで、その要因を、原価、経費面から見てみたい。

   まずは、原価であるが、84.38%(昨年83.92%)と、0.46ポイント原価が上昇している。結果、売上総利益は15.62%(昨年16.08%)となり、何と、15%台となった。2010年度の決算公開企業約50社と比較しても、最も低い売上総利益であり、厳しい価格競争であったことがわかる。一方、経費の方であるが、17.35%(昨年17.20%)と0.15ポイント上昇している。この17.35%も上昇したとはいえ、食品スーパーマーケット業界では極めて低い経費比率であり、トップクラスである。ただ、原価、経費、双方が上昇したことにより、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-1.73%(昨年-1.12%)と、マイナス幅が広がっており、厳しい利益構造となったといえる。それにしても、経費比率が17.35%でマーチャンダイジング力がマイナスとなるのは、通常の食品スーパーマーケットではありあえない構造であるといえ、アオキスーパーのマーチャンダイジング戦略の特異性を表しているといえる。

   そして、これに、アオキスーパーの利益の源泉、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が加わるが、結果は、3.24%(昨年3.28%)と、若干下がり、トータル、営業利益は1.51%(昨年2.16%)と、大きく下がり、減益となった。したがって、今期の営業利益が大きく減益となった要因は原価、経費双方が上昇したことに加え、新店の開発が抑制されたために、営業収入が伸び悩み、その結果、その他営業収入が伸び悩んだためであるといえ、トリプルのマイナスとなったことがその要因といえる。

   このように、2011年2月期のアオキスーパーの決算は減収減益という厳しい決算となった。その要因は、出店余力は十分といえる中、経営環境の悪化により、新規出店を抑制し、内部体制の充実をはかったが、予想以上に、競合状況が厳しく、原価、経費の上昇が進み、その他営業収入も伸び悩んだことにあるといえよう。今後、経営環境は、3/11の東日本大震災の影響も加わり、より厳しい状況が予想され、新規出店に関しても、競合状況に関しても、より厳しさが増すと思われる。アオキスーパー自身は、営業収入910.40億円(3.7%)、営業利益12.50億円(3.9%)、経常利益13.50億円(5.5%)、当期純利益6.20億円(11.6%)と、増収増益を見込んでいるが、まずは、2012年2月期の直近、第1四半期決算がどのような数字で落ち着くか、気になるところである。

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April 02, 2011

マックスバリュ中部、2011年1月期本決算、増収増益!

   マックスバリュ中部が3/16、2011年1月期の本決算を公表した。結果は営業収益1,183.97億円(1.2%)、営業利益21.59億円(8.9%)、経常利益22.94億円(13.6%)、当期純利益4.47億円(8.1%)となり、増収増益となる好決算となった。特に、営業収益よりも、利益がいずれの段階でも大きく伸びているといえる。したがって、ウォルマートが最も重要な指標としているEPS(Earnings Per Share:一株当たり利益)は、17.61円(昨年16.27円)と1.34円(8.23%)上昇し、株主にとって、貢献度が高い決算となった。

   マックスバリュ中部自身も、「当社は年度スローガンを「お客さまのお役に立つを具現化しよう!」として、経営理念の原点に立ち返り、お客さま満足の最大化を図りつつ、簡素でより効率的なローコスト経営の構築により、経営資源の効率的活用と収益性の確保に努めました。」とのことで、ローコスト経営に徹したことが利益を押し上げたといえよう。そこで、営業利益が8.9%増となった要因を原価、経費面から見てみたい。

   まずは、原価であるが、75.36%(昨年75.36%)と、昨年と同じ比率となった。今期は特に原価改善としては、「イオンのグループ力を活かした商品調達やトップバリュ商品の更なる販売拡大により、競争に打ち勝つ価格の実現に取り組みました。」とのことで、PBの積極投入が価格競争の厳しい中、原価を維持できた要因のひとつといえよう。結果、売上総利益は、24.64%(昨年24.64%)となった。

   一方、経費の方であるが、25.27%(昨年25.45%)と、0.18ポイント改善した。これについて、マックスバリュ中部自身は、「ローコスト経営の取り組みとしては、既存店舗の活性化により設備の標準化を推進するとともに、エリアSVによる店舗への作業手順の指導等により、効率的な店舗運営の浸透を図りました。同時に、省エネ設備の導入も進め、エネルギーコストの削減にも努めました。」とのことである。実際、既存店の売上高は100.3%と昨年をわずかではあるが上回っている。一般に既存店の数宇が堅調である場合には固定費が相対的に下がるために、利益増になる傾向が強く、その意味で、食品スーパーマーケットにとっては既存店の活性化は重要な経営課題のひとつである。

   ちなみに、今期のマックスバリュ中部の既存店の客数、客単価の結果であるが、客数が103.5%、客単価が97.0%であり、客数が増加しているのが特徴である。また、客単価の中身、PI値と平均単価であるが、PI値は940%で昨年同様の数字であるが、平均単価が178円から174円へと下がっており、価格競争が厳しかったといえよう。ただ、その客単価の落ち込みを客数でカバーしており、顧客の来店頻度が上がったものと思われる。実際、マックスバリュ自身も、「イオンの電子マネー「WAON(ワオン)」が新規のお客さまの来店を促したことなどにより、・・」とコメントしており、新規のお客さまとしているが、恐らく、既存のお客さまの来店頻度も向上しているものと思われる。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、-0.63%(昨年-0.81%)と、依然としてマイナスではあるが、マイナス幅は縮まっており、マーチャンダイジング力が増していることがわかる。そして、これに不動産収入、物流収入等のその他の営業収入が2.50%(昨年2.55%)加わり、営業利益は1.87%(昨年1.74%)と増益となった。したがって、増益の要因は原価よりも経費削減の効果が大きく、特に、既存店の活性化により、相対的に固定費が下がったことに加え、省エネへの取りくみ、店舗の標準化の推進等が経費削減に寄与したものと思われる。

   一方、気になるのは営業収益、成長性である。今期は4月にマックスバリュ津城山店(三重県津市)、11月にマックスバリュ若葉通店(愛知県名古屋市)の2店舗のみであり、閉店が2店舗あったので、店舗数が88店舗と伸び悩んでいることである。来期に関しても、現時点では、2011年8月にマックスバリュ青葉町店(滋賀県)、9月にマックスバリュ米野木店(愛知県)の2店舗であり、これに、さらに2店舗が計画中とのことであるが、閉店も考慮すると、営業収益は今期よりも増加するとは思われるが、微増にとどまるものと予想される。

   実際、来期の本決算予想は、営業収益1,232.00億円(4.1%)、営業利益21.70億円(0.5%)、経常利益23.00億円(0.3%)、当期純利益2.10億円(-53.1%)と、営業収益は微増にとどまり、さらに、利益がいずれの段階でも厳しい予想であり、それをカバーするためにも、営業収益を押し上げたいところといえよう。特に、来期から2月度決算企業は資産除去債務に関する会計基準の適用がなされ、特別損失を計上せざるをえなくなるため、当期純利益が厳しい状況が予想されるからである。

   このように、マックスバリュ中部の2011年2月期の本決算は増収増益、特に、利益が経費削減の効果が寄与し、大きく増加しており、堅調な決算となった。気になるのは営業収益、すなわち、成長性であり、今期は微増、来期も4.1%の伸びの予想である。特に、来期は利益が厳しい状況が予想される中、もう1ランク成長性を引き上げたいところかと思われる。来期は、3/11の大震災の影響が不透明な中、マックスバリュ中部がどのような収益の確保に動くか、その動向に注目である。

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April 01, 2011

平和堂、2011年2月期本決算、減収増益!

   3/29、平和堂が2011年2月期の本決算を公表した。結果は、営業収益3,829.55億円(-0.7%)、営業利益107.83億円(11.6%)、経常利益108.80億円(12.8%)、当期純利益45.20億円(-30.0%)となり、減収増益(営業)となった。営業収益は厳しい結果となったが、利益は営業、経常ともに2桁の増益となった。ただ、当期純利益は、土地、建物等の減損損失が17.11億円発生し、-30.0%の減益となった。これについて、平和堂は、「当小売業界におきましても、業種・業態を超えた競合の激化や衣料品の販売低迷が継続するなど、経営環境は引き続き厳しい状況となりました。」とのことで、経営環境の厳しい年度であったとのことである。

   そこで、営業収益が-0.7%となった要因を様々な角度から見てみたい。まずは、客数、客単価、特に既存店の状況であるが、売上高は97.4%と伸び悩んでおり、その中身の客数が98.1%、客単価が99.2%となり、客単価よりも、客数が厳しかったといえる。また、客単価の中身、PI値は101.4%、平均単価は97.8%であり、PI値よりも、平均単価が下がっているといえる。それだけ、価格競争が厳しかったものといえよう。

   さらに商品面、業態面から見てみると、まずは、商品面であるが、衣料品(構成比14.6%)が92.8%、既存店は89.5%と厳しい結果であり、コメントにもあるように、衣料品の販売低迷が継続した結果を受けているといえよう。一方、食料品(構成比65.8%)は104.6%と堅調に伸びおり、衣料品とは対照的な結果である。そして、住居関連品(構成比14.9%)は100.3%であるので、ほぼ、昨年並みの結果となった。したがって、食品は好調であったが、衣料品が厳しい状況であったといえ、衣料品の落ち込みが大きかったといえよう。

   ついで、業態面では、どうであったかであるが、まずは、平和堂の中で最も構成比の高いSCであるアルプラザ(構成比62.4%、39店舗)は99.1%と、昨対を割っており、厳しい結果となった。次に、食品スーパーマーケット、フレンドマート(構成比21.8%、59店舗)は109.1%と好調であった。そして、GMS(構成比158%、29店舗)は103.9%と、堅調な結果であった。

   こう見うると、営業収益が伸び悩んだ要因は、客数、衣料品、SCということになり、今期の平和堂のSCの衣料品が不振となり、客数を落としたことが、その主な要因であったといえよう。一方、食品スーパーマーケットは好調であり、平均単価は下がったと思われるが、PI値を伸ばし、客単価を維持できたことが109.1%と、好結果をもたらしたといえよう。ただ、その構成比がまだ21.8%と約2割であり、今後、いかに、この好調な食品スーパーマーケットを強化できるかが平和堂の今後の課題といえよう。

   では、営業収益とは対照的な結果となった2桁の営業利益増となった要因であるが、原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、70.45%(昨年70.68%)と、0.23ポイント原価が改善されている。平均単価が下がっているにもかかわらず、原価の改善がなされており、結果、売上総利益は29.55%(昨年29.32%)となった。一方、経費の方であるが、33.24%(昨年33.42%)と、0.18ポイント改善している。したがって、原価、経費、双方が改善されており、これが営業利益を押し上げた要因といえよう。結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、-3.69%(昨年-4.10%)と、マイナスではあるが、改善している。平和堂は、SC、GMS業態の構成比が78.2%と高いために、減価償却費、家賃等が食品スーパーマーケットよりも多めになり、経費増となる傾向が強く、マーチャンダイジング力がマイナスとなるきらいがあるが、そのマイナス幅が削減されており、これが営業利益を押し上げたといえる。

   そして、これも、SC、GMS特有の不動産収入、物流収入等の営業収入であるが、6.70%(昨年6.78%)となった。昨年よりも0.08ポイント下がったことがやや気になるが、結果、営業利益は3.01%(昨年2.68%)と、増益となり、営業収益の-0.7%のマイナスをカバーし、営業利益は2桁の増益、11.6%増となった。こう見ると、厳しい経営環境ではあったと思うが、原価、経費双方が改善したことが大きく、今期好調な食品の貢献が大きかったものと推測される。

   さて、これを受けて、2012年度2月期の予想であるが、3/11の東日本大震災の影響も懸念されるが、営業収益3,890.00億円(1.6%)、営業利益113.00億円(4.8%)、経常利益113.00億円(3.9%)、当期純利益46.00億円(1.7%)であり、増収増益である。今期のように営業利益2桁増ではないが、堅調な決算予想であるといえよう。

   このように、2011年2月期の平和堂の本決算は、SCの衣料品が厳しかったといえ、結果、客数の減につながり、営業収益が伸び悩んだが、一方、食品スーパーマーケットは好調であり、原価、経費の改善につながったといえ、営業利益の2桁増をもたらしたといえよう。こう見うると、今後、平和堂としては、構成比が21.8%の食品スーパーマーケット、フレンドマートをいかに強化してゆくかが、増収増益の鍵を握っているといえ、来期、どのような新店開発を含め、食品スーパーマーケットの活性化に取り組んでゆくかが課題といえよう。平和堂の来期、2012年度の出店戦略に注目である。

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