ARPUとID金額PI値について
ARPU(Average Revenue Per User)は携帯電話会社ではごく普通に活用されているマーケティング指標であるが、食品スーパーマーケットではまだ一般化しているとはいえない。ただ、その指標自体はすでに確立さており、今後、携帯電話会社等のARPUの先行事例を研究することで、食品スーパーマーケットにおいても、ARPUをマーケティングの根幹指標として、活用してゆくことが期待される。
実際、食品スーパーマーケットではARPUという指標はまだなじみが薄いが、指標としてはID金額PI値として活用されつつある。ID金額PI値は売上高をIDで割った指標であるが、これはARPUそのものである。したがって、携帯電話会社ですでに実戦投入されているARPUを活用することは、食品スーパーマーケットではID金額PI値を活用することと同値であり、このID金額PI値をどうマーケティング指標として確立し、経営に活かすかが課題となる。
そこで、ID金額PI値とは何かであるが、その基本方程式は売上高=ID×ID金額PI値から生まれた指標であり、その目的は売上高をあげるための根幹指標である。従来、食品スーパーマーケットでは売上高=レシート枚数(客数)×金額PI値(客単価)と定義していたが、このレシートがIDに置き換わったことにより、生まれた新たな指標がID金額PI値である。
ID金額PI値も金額PI値も一見、IDがついているかいないかの違いであり、大きな違いがないように思えるが、ここには、決定的な違いがある。結論からいえば、金額PI値が一瞬、すなわち、瞬間の指標であるのに対し、ID金額PI値は積み上げ、すなわち、永遠の指標である点である。したがって、金額PI値は1日でも、1ケ月でも、1年でも、さほど大きくは違わない指標であるが、ID金額PI値は積み上げであるため、数字が時間とともに無限に拡大してゆくことになる。
その理由は、ID金額PI値を分解すると、ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値となり、金額PI値のID客数PI値の分、ID金額PI値が増加するからである。ID客数PI値はレシート/IDであるので、IDの来店頻度を表す指標であり、1日当たりではレシートは1枚かもしれないが、週間では数枚、月間ではその数倍、年間ではその数10倍となり、ID金額PI値は倍増してゆくことなる。そして、そのいきつく先は永遠であり、生涯の来店回数が金額PI値にかかり、結果、顧客から生涯に渡っていただける総キャッシュとなる。
ここから、金額PI値とID金額PI値の最終目標の違いが明らかになる。金額PI値は瞬間の売上げを最大にすることが、その目的であるが、ID金額PI値は永遠の売上げを最大にすることがその目的となる。しかも、ここから手段にも違いが表れる。金額PI値は瞬間の売上げをあがることが目標となることから、どれだけたくさん、しかも、付加価値の高い商品を購入していただけるかという商品戦略、すなわち、マーチャンダイジング戦略が課題となる。
これに対してID金額PI値はどれだけ末永く来店していただけるかが目標となるため、たとえ、その瞬間の売上げはわずかでも、また来店いただけるような、商品戦略を含む広い意味での顧客サービスが問われることになり、マーチャンダイジングよりもマーケティングが重視される課題となる。そして、このような永遠に来店いただける顧客、すなわち、ロイヤルカスタマーをいかに大切にし、また、一方で、増やしてゆけるかが課題となる。
携帯電話会社のここ最近の動きを見るとARPUを引き上げるために、いま何を最重点戦略として取り組んでいるかであるが、その答えは、スマートフォン戦略であるといえる。これは携帯電話のARPUを分析した結果、世界の歴史上初めて、日本の携帯電話会社のデータ(パケット)ARPUが音声ARPUを今期上回るという逆転現象が起こり、そのデータ(パケット)ARPUを加速度的に引き上げる戦略商品として、スマートフォンが位置づけられたためである。したがって、今後のスマートフォンの開発競争はデータ(パケット)ARPUの増加に貢献度が高い機種の開発競争になることは必至であり、ハード、ソフト両面からの激しい開発競争、販促が繰り広げられてゆくことになろう。
食品スーパーマーケットとしては、ARPU、すなわち、ID金額PI値を分析することによって、ID、すなわち、顧客が支持しているものは何か、その伸び率はどのような勢いがあるのか、逆に、いま伸び悩んでいるものは何か、その状況はどのようになっているのか、その実態をつぶさにつかみ、ID金額PI値を引き上げる戦略商品を明確にし、そこに経営資源を投入し、顧客戦略、商品戦略を再構築することが課題であるといえよう。
このようにARPUは企業の経営戦略を決定するめの重要な判断指標と位置づけることがポイントである。食品スーパーマーケットとしては、ID金額PI値をもとに、まずは、現在、どのような変化が起こり、その変化の中で、今後の経営戦略を立てる上において、どのような方向に進んでゆけば良いか見極めることが課題といえよう。携帯電話会社の戦略商品となったスマートフォンにつながるデータ(パケット)ARPUのような決定的な変化要因を、食品スーパーマーケットとしてもID金額PI値を通じて、つかみ取って欲しいところである。
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