東京電力の決算書を見る!
福島原発、そして、計画停電の問題をかかえる東京電力の企業の存続そのものが危ぶまれているが、東京電力の財務状況はどのような現状にあるのか、最新の決算書、2011年3月期、第3四半期決算をもとに見てみたい。現時点の最新の決算書はこの第3四半期であり、2010年4月から2010年12月までの期間であるため、今回の東日本大震災の影響は含まれてはいない。現時点では、震災前の財務状況ということにはなるが、今後公表されるであろう、震災後の財務状況と比較する意味でも、現状の状況を確認しておく意義はあるといえよう。
まずは、営業状況であるが、第3四半期、すなわち、2010年12月末時では、売上高3兆9,599.30億円(8.3%)、営業利益3,269.80億円(13.8%:営業利益率8.25%)、経常利益2,786.40億円(19.3%)、当期純利益1,398.96億円(-11.3%)と、当期純利益は、資産除去債務会計基準に伴う影響額が571.89億円発生したため、昨対を割ったが、この影響を除けば、増収増益の好決算となった。また、通期予想は、売上高5兆1,650.00億円(7.5%)、営業利益2,850.00億円(14.0%)、経常利益2,000.00億円(19.3%)、当期純利益900.00億円(-12.0%)である。単純に規模から見ると、小売業で比較すると、セブン&アイH、イオンとほぼ同じであるといえる。
また、財務状況であるが、総資産は13兆7,951.34億円、純資産は2兆9,821.50億円であり、自己資本比率は21.3%である。ちなみに、セブン&アイHの2011年2月期の本決算の数字は総資産3兆7,321.111億円、純資産1兆7,765.12億円、自己資本比率45.6%であるので、いかに、莫大な資産の上に成り立っている経営であるかがわかる。ここが小売業と決定的に違う構造であるといえよう。通常小売業は商品の製造までは大きくは踏み込まないが、東京電力は電気を販売するだけでなく、電気を製造するところまで踏み込む事業構造であるため、いわゆるSPA、製造小売業といえる。したがって、今回、製造の中の原発に問題が起きたため、即、小売の電気の販売に直結し、計画停電になるという構造的な問題が表面化したといえる。製造小売業は利益が確保できるというメリットは大きいが、反面、製造段階に何か問題が起きた時には即、小売段階に影響が生じ、事業構造そのものがぐらつくというデメリットもあるといえる。
次に、営業構造を見てみたい。小売業と違い、営業構造は決算書を見る限り、シンプルであり、仕入れ原価が存在しない。したがって、ダイレクトに営業収益、営業経費、営業利益という構造になっている。その実際の数字であるが、営業収益は3兆9,599.30億円(昨対8.3%)、営業費用は3兆6,330.21億円(昨対7.8%)であり、結果、差し引き、営業利益3,269.80億円(昨対13.8%)となる。今期は営業収益の伸びに対し、営業費用の伸びを抑えられたことが、営業利益を大きく増大させた要因といえる。
そして、財務構造であるが、まずは、総資産は13兆7,951.34億円の中身であるが、小売業とは全く構造が違い、小売業では流動資産が上に来るが、東京電力の資産は固定資産が上に来ており、その数字は12兆4,135.40億円と総資産の90.0%であり、いかに、固定資産が巨大な数字であるかがわかる。その主な内訳であるが、最も大きいのは設備関連であり、配電設備が2兆1,563.06億円、ついで、送電設備2兆999.76億円と配電、送電関連が極端に大きい固定資産である。そして、水力発電設備6,878.93億円、汽力発電設備9,726.52億円、原子力発電設備8,524.49億円、変電設備8,394.25億円、業務設備1,528.49億円となる。ちなみに、原発の核燃料は9,272.27億円であり、原子力関連は先の原子力発電設備と合わせると、1兆7,796.76億円となる。
以上が固定資産関連の主な資産であるが、一方、流動資産は1兆3,815.94億円であり、この内、現金及び預金は3,664.94億円、総資産のわずか2.7%である。今後、福島原発関連の終息に向けて様々な投資が必要な上に、巨額の損害賠償等の発生が見込まれるが、厳しい現金及び預金の状況であり、負債、資本の大幅な増強が必須であるといえよう。その資本であるが、純資産は2兆9,821.50億円と、総資産の21.6%であるが、先に見たように、現金及び預金は3,664.94億円で、わずかである。したがって、資産の大半は負債で補っており、その最大の負債は社債4兆5,046.33億円、長期借入金1兆5,666.77億円、1年以内に期限到来の固定負債1兆151.58億円、短期借入金3,846.45億円と合計7兆4,711.13億円と、総資産の54.2%であり、資産の半分は、これらの負債で賄っている財務構造である。したがって、今回の原発関連の終息へ向けての費用、及び巨額の損害賠償を賄うには資本を数兆円単位で増強するか、さらに、負債を数兆円単位で調達するしかなく、極めて厳しい経営判断が要求されることになろう。
このように東京電力の営業状況、財務状況を見る限り、今回の福島原発事故に伴う終息へ向けての費用、今後予想される巨額の損害賠償を賄うには、厳しい財務状況にあるといえ、現時点で東京電力1社のみでこれらの費用を賄うのは無理があるといえる。インフラ事業は巨額な富を生み出すビジネスでもあるが、今回のような大事故が起こると、1社では賄いきれない巨額な損失をともなうビジネスでもあることが改めて浮き彫りになったといえる。今後は、すでに、財務的に見ても東京電力1社で解決できる範囲を超えることが予想され、日本政府が、今回の福島原発の事故が終息し、巨額の損害賠償が終了するまで指揮をとってゆかないと、原発の終息も巨額の損害賠償も十分に対応できないのではかと思われる。
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