だるまの原理
いまから約10年前、ID-POS分析に取り組んでいた当時、だるまの原理を発見した。PI値に取り組んでいるといろいろなものを発見することが多いが、このだるまの原理もその発見の中のひとつである。ただ、当時のID-POS分析はいまから思うと、本格的なID-POS分析ではなかった。その一歩手前の分析、レシート分析とID-POS分析の中間的な分析であったといえる。POS分析には、大きく3つの段階がある。1つ目は、単純な売上数量と売上金額のみの分析である。2つ目はレシートを活用した分析である。これがPI値分析である。そして3つ目がIDを活用した分析であり、これがID-POS分析である。
この3つのPOS分析は無関係に存在しているのではなく、すべてつながっている。ただ、延長ではなく、パラダイム変換であり、それぞれ世界が違い、1つ目から2つ目、3つ目へと段階的に発展してゆく訳ではない。むしろ流れは逆であり、2つ目が1つ目を包み込み、3つ目が2つ目を包み込み、結果、1つ目をも包み込む形である。したがって、3つ目から2つ目、1つ目は良く見え、2つ目から1つ目も良く見えるが、逆に、1つ目から2つ目は見えない世界であり、いわんや3つ目は全く見えない世界である。同様に、2つ目から3つ目も見えない世界である。
このような関係でPOS分析は発展してきたといえ、それぞれの独特な世界が形成されているといえる。したがって、マーチャンダイジングも1つ目の世界のマーチャンダイジング、2つ目の世界のマーチャンダイジング、そして、3つ目の世界のマーチャンダイジングがあり、それぞれの独特な世界観をもっている。ただ、実に興味深いことに、どの世界でもその到達点、最終目標は売上のアップである点は共通している。したがって、目標はいずれの世界でも共通に売上であり、その手段が、それぞれの世界で独自の視点にもとづいて新たに形成されるといえる。まさに、売上を科学するという世界である。
さて、10年前の話にもどるが、当時は2つ目から3つ目への移行期であったといえ、その移行期の過程で、顧客IDを2つに分けて売上を科学していた。2つとはリピート顧客と初回購買顧客(トライアル)である。この顧客とはまさに、IDのことであり、レシートではない。レシート分析にはリピートも初回購買(トライアル)も存在しない。あるのは、全体を商品分類、あるいは単品ごとに分けるまでであり、リピートというIDを前提とした分割はレシート分析からは不可能である。リピートはID-POS分析ではじめて登場するID-POS分析特有の概念であり、先の1つ目、2つ目のPOS分析では見ることができない世界である。
当時はIDの活用はこのように、IDを2つに分ける、すなわち、リピート顧客と初回購買顧客(トライアル)に分けるというところまでで留まっており、そこからさらに、ID-POS分析の本質ともいえるID金額PI値(ARPU)、ID客数PI値等へと理論的な発展を遂げることができなかった。ただIDを2つに分けることによって、新たな原理、だるまの原理を発見することができたことは、その後の本格的なID-POS分析につながる大きな収穫だったといえる。ただ、その後、10年もかかってしまい、もっと早く、本格的なID-POS分析に発展できなかったことは悔やまれるところでもある。
さて、だるまの原理であるが、IDを単純に2つに分けることによって、リピートをだるまの頭としてとらえ、初回購買(トライアル)をだるまの胴体としてとらえれば、すべての商品はこの2つの関係で見ることができるという原理である。実際、ID-POS分析を実施してゆくと、すべての商品はこのようなだるまでイメージ化でき、頭の小さいだるま、あたまの大きいだるま、そして、時間とともに急激に胴体が大きくなるだるま、逆に、頭が大きくなるだるまがあり、ひとつとして同じだるまが存在しないという事実が見出される。
しかも、その頭はID-POS分析すると、IDの人数だけでなく、ID金額PI値の違いもあり、頭の中身、胴体の中身まで見ることができる。ID-POS分析の基本数式は売上高=ID×ID金額PI値であり、さらに、ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値、金額PI値=PI値×平均単価、さらには、レシート変換、商品変換、そして、ID変換も可能であり、だるまの頭も胴体も様々なID-POS分析特有の指標での分析が可能となり、その中身が商品により違い、時間により刻々と変化してゆく。
したがって、だるまの原理は単にIDを2つに分けるだけでなく、分けたIDの中身にまで踏み込み、その違いを明確にすることであるといえる。そして、最終的には、限界までだるまの頭を可能な限り大きくし、さらに、その中身をバランスよく改善してゆくことであり、これが、マーチャンダイジングの本質、商売の原点に通じるものであることを発見したことである。
このように、約10年前に発見したID-POS分析の究極の原理ともいえるだるまの原理であるが、ここへきて、ID-POS分析の理論もほぼ完成し、やっと本ものの原理が確立できたのではないかと思う。次の10年は、このだるまの原理をもとに、これまでのマーチャンダイジング戦略を見なおし、新たなマーチャンダイジング体系の構築へとつなげてゆければと思う。
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