ヤマナカ、2011年3月期決算、減収増益!
ヤマナカが2011年3月期決算を5/2、公表した。結果は、営業収益1,052.48億円(-2.2%)、営業利益6.03億円(61.4%)、経常利益 8.18億円(66.9%)、当期純利益3.13億円(昨年は赤字)となり、減収増益の決算となった。ただ、営業利益率は昨対61.44%と大幅な増益とはなったが、その比率は、営業収益対比0.57%であり、依然として厳しい状況で推移している。ヤマナカ自身も、「当社グループが属する小売業界では、お客様の低価格・節約志向が継続し、業種業態を超えた競争激化によるデフレの進行もあり、経営環境はますます厳しさを増しました。」とのことで、厳しい経営環境の中にあったとのことである。
そこで、まずは、営業収益が-2.2%と伸び悩んだ要因を見てみたい。一般に食品スーパーマーケットの成長は新店によるといえ、新店が安定的、継続的に出店できる財務基盤に支えられた計画的な成長戦略が必須である。ヤマナカの今期の新規出店であるが、「営業基盤の強化に向けた取り組みでは、新しい都市型店舗の基幹店として4月に則武店(名古屋市中村区)を新規出店、・・」とのことで1店舗のみである。したがって、新店戦略による成長は厳しい面があったといえ、既存店の活性化が今期の主な営業政策であったといえる。
実際、既存店に対しては、「既存店舗においては、当社の中核業態であるフランテ館の再構築を図るべく7月に一宮フランテ館(愛知県一宮市)を改装いたしました。」とのことであり、さらに、「低価格志向の高まりに対応し、9月に共栄店(愛知県瀬戸市)、10月に三郷店(愛知県尾張旭市)と味美店(愛知県春日井市)をエブリデー・ロー・プライスの「ザ・チャレンジハウス」に業態変更を行ないました。」とのことで、既存店の改装だけではなく、ディスカウント店への業態変更も実施している。
本来ヤマナカは、食品スーパーマーケットの中では付加価値を追求したワンランク上の食品スーパーマーケットの業態確立を重視した経営志向であったが、今期は、対極的なディスカウント業態への転換も一部行っており、それだけ、中部地区の食品スーパーマーケットを取り巻く経営環境が厳しさを増しているといえよう。この地区ではアオキスーパーを筆頭に、カネスエ等、社運をかけたディスカウント戦略を志向する激しい価格競争が繰り広げられており、中部地区は極めて厳しい経営環境の中にあるといえる
一方、財務の方であるが、今期のヤマナカの自己資本比率は31.9%(昨年32.0%)であり、約70%が負債に依存する状況であり、財務基盤はかなり厳しい状況にあるといえる。特に、ヤナナカの出店にかかわる資産、土地、建物、差入保証金の合計は280.25億円であり、総資産455.66億円の61.50%であり、1店舗当たりでは、現在70店舗であるので、約4億円となる。したがって、差し引き、自己資本で賄える出店に関わる資産の比率、すなわち、出店余力は-29.6%と極めて新規出店が厳しい財務状況にあるといえる。当然、負債に依存する新規出店構造となるが、その負債の中でも、有利子負債が、193.57億円であり、総資産の42.48%と重く経営にのしかかっており、厳しい財務状況である。
したがって、キャッシュフローにおいても、財務活動によるキャッシュフロー、すなわち、有利子負債の返済を優先せざるをえず、今期は-9.30億円返済し、結果、-11.74億円となり、本来、成長戦略への投資、投資活動によるキャッシュフローが-3.65億円に留まるという、財務基盤の強化を優先せざるをえない状況であったといえる。来期も今期の投資活動によるキャッシュフローの中の新規出店にかかわる投資、有形固定資産の取得による支出を見ると、-6.35億円であり、成長戦略よりも財務基盤の強化が優先される経営方針といえよう。
さて、これに対して、今期、営業利益が増益となった要因であるが、原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、74.90%(75.01%)と0.11ポイント改善した。これに対して、ヤマナカは、「4月に冷凍物流センター(名古屋市港区)、平成23年2月に精肉・鮮魚を一括して店舗に供給する「しおなぎ生鮮センター(生鮮加工センター)」(名古屋市港区)をそれぞれ開設するとともに、物流拠点の構築により配送と店舗オペレーションの効率化を図り、・・」とのことで、先のディスカウント戦略に加え、物流改善等が寄与したものといえよう。結果、売上総利益は25.10%(昨年24.99%)となった。
一方、経費の方であるが、29.47%(昨年29.40%)と0.07ポイント上昇している。結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-4.37%(昨年-4.41%)と、若干マイナス幅は縮まったが、まだかなりのマイナスである。そして、これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が4.99%(昨年4.78%)のり、営業利益は0.62%(昨年0.37%)の増益となった。
このように、今期のヤマナカを取り巻く経営環境は激しい価格競争の中にあったといえ、自らディスカウント業態へのシフトも余儀なくされることになったといえる。特に、ヤマナカの経費比率は29.47%と、一般的なディスカウント業態の経費率15%強と比べると約2倍であり、ヤマナカにとってはまさに、対極的な経営構造にあるといえる。また、依然として、財務状況も厳しい中、成長戦略を、今後、どのように打ちだすかが難しい状況にあるといえよう。今後、ヤマナカが、このような厳しい経営環境の中、どのような改革を打ち出すのか、その動向に注目である。
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