いなげや、2011年3月期決算、減収営業増益!
いなげやが5/10、2011年3月期の本決算を公表した。結果は、営業収益2,199.42億円(-1.7%)、営業利益37.84億円(11.2%)、経常利益 40.71億円(10.9%)、当期純利益 7.73億円(-41.0%)と、当期純利益は、資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額が-15.46億円発生し、減収となったが、営業、経常段階では、増益となった。仮に、-15.46円が発生しなければ、当期純利益も増益であり、いかに、いなげやにとって、資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額が大きかったかがわかる。ちなみに、来期は、2月期決算企業にも適用されるので、今期の3月期決算企業同様、当期純利益は厳しいものとなろう。
さて、まずは、営業収益が伸び悩んだ要因であるが、既存店売上高が前期比3.3%減となったことに加え、「平成22年6月に新狭山駅前店(埼玉県狭山市)をはじめ、「価格に頼らない、楽しい、美味しそうな、鮮度感あふれる商品づくり・売場づくり」の具現化を目指したニューSSMタイプとして平成23年2月に志木柏町店(埼玉県志木市/スクラップ&ビルド)、同年3月に保谷駅南店(東京都練馬区)ならびに同年同月に川崎下小田中店(川崎市中原区)の合計4店舗を新規開設いたしました。」と4店舗の新店を出店したが、「スクラップ&ビルドにともない1店舗、契約満了などにより3店舗を閉鎖いたしました、・・」とのことで、結果、総店舗数が125店舗と、昨年同様の店舗数であったことが大きかったといえよう。
一般に、食品スーパーマーケットの成長戦略は既存店ではなく、新規出店で決まるといえ、成長を維持するには、毎年、一定の店舗を新規出店する必要がある。いなげやの場合は、総店舗数が125店舗であるので、5%の成長を目指すのであれば、6店舗以上の新規出店が欲しいといえる。10%であれば、12店舗以上は欲しいところである。したがって、この店舗数を新規出店するための立地、設備、従業員の確保に加え、財務基盤の安定も必要といえる。特に、食品スーパーマーケットの場合は新規出店にかかる投資は莫大であり、財務基盤の確立は成長戦略を支える上での最大の経営課題であるといえる。
そこで、いなげやの財務基盤を見てみたい。まずは、今期の自己資本比率であるが、53.7%(昨年57.1%)と、当期純利益が減益となったことなどにより、昨年よりは若干下がっているが、前期の決算公開企業約50社の平均が41.3%であるので、高い数字である。一方、出店に関わる資産である、土地、建物、差入保証金の合計であるが、408.66億円(昨年388.81億円)であり、総資産811.60億円の50.35%である。また、1舗当たりでは、3.26億円となる。したがって、差し引き、自己資本比率との差、すなわち、自己資本でどこまで出店にかかわる資産をカバーできるのかを示す出店余力は3.35%であり、プラスである。したがって、負債に大きく依存することなく、新規出店が可能であり、しかも、1店舗当たりの出店にかかわる資産は3.26億円と、これも前期の決算公開企業約50社の平均が4.73億円であるので、低い数字である。
この財務状況を見る限りでは、安定的、継続的な新規出店を前提とした成長戦略は可能であるといえるが、残念ながら、今期は4増4減となったため、減収を余儀なくされた結果となった。ちなみに、投資活動によるキャッシュフローであるが、有形固定資産の取得による支出-41.73億円(昨年-41.68億円)であるので、約10店舗分にあたる投資を昨年も、今期も行っており、もう数店舗、新規出店が可能であれば、今期も、増収は可能であったのではないかと思われる。ただし、この中には、食品スーパーマーケット以外に、ドラック等への投資もあるので、食品スーパーマーケットだけで見ると、もう少し店舗数は少ないといえよう。
ちなみに、来期の通期は、営業収益2,245.00億円(2.1%)、 営業利益39.00億円(3.1%)、経常利益 42.00億円(3.2%)、当期純利益 14.00億円(81.0%)と増収増益、特に、当期純利益は大幅な増益となり、堅調な予想であり、今期とは一転、成長性も回復する見通しである。
さて、一方、営業利益が増益となった要因であるが、原価は72.68%(昨年72.78%)と、0.10ポイント減少した。結果、売上総利益は27.32%(昨年27.22%)となった。これに対して、経費の方であるが、29.29%(昨年29.39%)と、0.10ポイント減少している。結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、-1.97%(昨年-2.17%)と、依然として、マイナスではあるが、その幅が縮まっている。そして、これに、不動産収入、物流収入などの、その他営業収入が3.76%(昨年3.75%)加わり、営業利益は1.79%(昨年1.58%)と大きく改善し、増益となった。原価、軽費、そして、その他営業収入と、トリプルで改善したことが、増益となった要因といえる。
このように、いなげやの2011年3月期の決算は、3月度の決算企業から適用された資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額が大きく、当期純利益が減益となったが、営業、経常段階では原価、軽費、そして、その他収入がトリプルで改善されたため、増益となった。ただ、依然として、マーチャンダイジング力のマイナス幅は大きく、営業利益がプラスの要因は、その他営業収入の貢献が大きいといえ、引き続き、経費削減が経営課題といえよう。今後、いなげやが、さらに、収益の改善に向け、特に、課題ともいえる経費削減をどのように進めてゆくのか、その動向に注目である。
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