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May 27, 2011

農業者所得向上流通調査事業、終了!

   平成22年度の農林水産省補助金事業、「農業者所得向上流通調査事業」が無事終了した。この調査事業はサブタイトルが、「6次産業化の販売拠点に向けた大都市直売システムの実態と生産者所得向上の関係」であり、特に、大都市中心部における様々な直売システムが農業所得者の所得向上にどのように寄与しているのかの実態を調査し、公表することが目的であった。

   調査地域は、全国の主要都市、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡であり、それぞれの主要都市において、直売システムの実態を調査するとともに、実際に直売に携わっている数多くの農業者の方にヒアリングを行い、特に、所得との関係を中心に、その実態をまとめた。また、大都市の直売システムの特徴をより、明確にするために、大都市周辺の直売所の実態も調査し、特に、首都圏1都6県の直売所1,115件の実態分析も行った。

   その結果、大都市を中心に、特に首都圏にいては、距離別に直売所の分布を見てみると、20km件内、特に中心部には、全国各地に見られるような直売所が極めて少なく、20km以降に、直売所が扇形に広がっている実態が明らかになった。特に、20km圏から40km圏には、大都市からの消費者の需要を見込んだ大型直売所が数多く生まれており、規模においても、年商10億円を超える直売所が存在している実態が明らかになった。首都圏1,115件の直売所の1件当たりの平均売上高が8,294万円であるので、年商10億円が如何に巨大な売上規模であるかがわかる。

   ちなみに、首都圏、20km圏内では農産物の流通実態はどうなっているかであるが、ここには2,000件を優に超える八百屋、1,000件を超える食品スーパーマーケットがひしめきあっており、直売よりも、卸売市場を通じた農産物流通がまだまだ主流である。これは、他の主要都市でも、その実態は同様であり、大都市では大都市ならではの農産物の流通実態が厳然として存在しており、郊外、産地のような直売所が農産物流通の一角を占めるような状況にはいたっていないといえる。

   大都市の農産物流通は現時点ではこのように卸売流通を主体とした八百屋、食品スーパーマーケット等が大きなシェアを占めているのが実態であるが、このような中でも、直売システムの萌芽がみられ、今後、確実に大都市中心部においても、農産物流通の一定のシェアを占める可能性が高い直売システムの動きが存在する。今回の調査事業は、まさに、ここに焦点を当て、その実態と、その直売システムにおいて農業者がどのように所得向上をはかっているかをまとめたものである。

   まず、大都市中心部の直売システムの中で、本調査事業において、今後、最も有望と判断した直売システムは、商店街のアンテナショップの直売化の動きである。各都市にその事例が見られ、東京においては、板橋区の大山商店街のとれたて村の動きが顕著である。また、同じく東京都では、武蔵野市の麦わら帽子も同様に商店街におけるアンテナショップが直売化を目指した動きであり、特に、全国の自治体との連携により、各地の農産物が直接店頭で販売され、売上の柱となっている。また、地元商店街との連携も図られ、農産物関連の様々なイベントが実施され、商店街の活性化にも、寄与している。この流れを受けて、最新のまさに大都市中心部の直売システムとして確立されたのが北海道、札幌のHUGであるが、地元消費者からも圧倒的な支持を受けており、今後、大都市中心部の新たな直売システムとなってゆくものといえよう。

   ついで、何といっても大都市中心部において、今後、有望な直売システムはマルシェジャポンの動きである。発祥は農林水産省の補助金事業としてスタートしたが、いまや完全民営化となり、全国主要都市にて毎週開催されており、特に、新規就農者、小規模農家の方にとっては、大都市における農産物の有望な販路となっており、今回の調査事業の中でも直接、間接の所得向上に大きく寄与している実態が明らかになった。

   そして、もうひとつの直売システムの動きは、今後、20km圏から、さらには、それ以降の地区の直売所の大都市中心部への参入である。特に、首都圏よりも、名古屋、大阪、福岡等でその動きが見られ、地元の農産物直売所が大都市中心部へ支店を出す動きである。食品スーパーマーケットとは違い、農産物に絞った極めてローコストな物流体制、運営体制を前提としており、今後、有望な動きのひとつといえる。さらに、直売というよりは、産直といえる動きであるが、食品スーパーマーケット、GMSのインショップ、近年、各小売業が取り組み始めたネットスーパー等のネット事業の動きも大都市中心部の農産物流通としては、見逃すことはできないといえる。

   このように、大都市における直売システムは、実際に全国各地を調査してみたが、現実の農産物の流通実態は厳然として、卸売市場を経由した小売業、八百屋、食品スーパーマーケット等が、主力業態として存在している。ただ、先に上げたような商店街のアンテナショップの直売化、マルシェの展開、産地直売所の大都市中心部への参入、インショップ、ネットビジネスの進展等が確実に動きはじめており、農業所得者にとっては、大都市中心部を新たな販路として、所得向上に寄与する販売拠点ができつつあるといえる。本調査事業はこれで一旦終了となるが、今後とも大都市の農産物流通、特に、直売システムの動向については、その実態を継続して追ってゆきたいと思う。

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