トライアルカンパニー、2011年3月期本決算、増収増益!
トライアルカンパニーが2011年3月期の本決算を公表した。結果は、売上高2,384.15億円(13.7%)、営業利益39.80億円(10.4%)、経常利益39.47億円(7.0%)、当期純利益71.77億円(154.1%)となり、増収増益の好決算となった。この決算は昨年4/1から今年3/31までの決算であるので、3/11の東日本大震災の影響も加わっての数字であるにも関わらず、大幅な増収増益であり、ディスカウントをマーチャンダイジング戦略とし、スーパーセンターを主力業態とするトライアルカンパニーが消費者から強い支持を受けた結果であるといえよう。
そこで、この好調な要因であるが、各社、ここ最近、各食品スーパーマーケットは新店が抑制気味であるが、トライアルカンパニーは、積極的な新規出店を行っている。ここ最近の動きを見ても別保店(6/15、北海道)、益浦店(6/1、北海道)、騎西店(5/25、埼玉県)、清水店(4/27、熊本県)と、すでに、今期4店舗の新規出店である。現在、トライアルカンパニーの店舗数は136店舗であり、積極的な新規出店が増収へ大きく寄与したといえる。ちなみに、現時点のトライアルカンパニーの出店地域であるが、北海道14店舗、東北6店舗、関東29店舗、甲信越3店舗、近畿5店舗、中国11店舗、九州63店舗、韓国5店舗であり、ほぼ全国へ展開しており、ここ最近は、北海道のカウボーイを傘下に治め、北海道での新規出店を積極的に進めている。また、この全国展開を支えるのが、各地の物流センターであるが、現在、北海道1ケ所、関東4ケ所、関西1ケ所、九州4ケ所と合計10か所の物流センターがあり、全国的規模での自社物流の体制を構築しつつあるといえる。
一方、トラアイルカンパニーが2桁の増益となった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、82.78%(昨年83.92%)となり、-1.14ポイントと大幅に下がった。結果、売上総利益は17.22%(昨年16.08%)となった。それにしても、売上総利益、すなわち、粗利が昨年よりは上昇したとはいえ、17%前半であり、極めて低い数字であり、まさに、ディスカウントであるといえる。通常の食品スーパーマーケットの粗利は25%前後であるので、同一価格であれば、平均10%弱の違いとなり、しかも、トライアルカンパニーはEDLPを目指し、地域で最も安い価格を目指しているので、その差はさらに大きくなる。ちなみに、トライアルカンパニーの戦略商品であるが、コーラ350ml 29円、サイダー350ml 29円、カップラーメン59円、ケース30個入り1,770円、韓国キムチ1個400g 228円等であり、PBであるが価格の極致であるといえる。
これに対して、経費の方であるが、16.48%(昨年15.53%)と、0.95ポイント上昇している。やや気になる上昇であるが、それでも16.48%は、食品スーパーマーケット業界では極限に近い低さであり、これがトライアルカンパニーのディスカウント戦略を支える秘訣といえよう。ちなみに、食品スーパーマーケット業界の平均は25%前後であるので、ここでも約10%弱低い数字である。結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は0.74%(昨年0.55%)となり、プラスとなった。そして、これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が0.94%(昨年1.18%)加わり、結果、営業利益は1.68%(昨年1.73%)となり、残念ながら、率では減益となったが、高では、積極的な新店による大幅な増収があり、10.4%の増益となった。
こう見ると、マーチャンダイジング力は経費の上昇を原価の削減で補い、プラスとなったが、その他営業収入が落ち込み、結果、営業利益率で減益となったといえる。ただ、新店効果により、高では営業増益を達成したという構図であり、今決算時のトライアルカンパニーとしては、ディスカウント戦略を支える経費比率の改善が課題となる決算であったといえよう。
さて、今期、好調な増収を支えた新店戦略であるが、何といっても、トライアルカンパニーの新店戦略は通常の食品スーパーマーケットと大きく違い、資産をほとんど所有しない居抜き物件を中心とした出店戦略であることが特徴である。通常の食品スーパーマーケットは1店舗当たり土地、建物、敷金保証金等で約5億円の資産が必要となるが、トライアルカンパニーの今期の全136店舗の平均数字は1.87億円であり、半分以下である。したがって、通常の食品スーパーマーケットよりも2倍以上のスピードで新規出店が可能であり、これが新店の原動力となっているといえる。ただ、総資産当たりの新規出店関連の資産は38.1%、純資産比率は24.2%と、差し引き出店余力は-13.9%であり、ここ最近、資本の増強をはかり、純資産の改善をはかっているが、今後、さらに、安定成長をはかるには、もう一段と財務改善が課題といえよう。
このように、トライアルカンパニーの2011年3月期の本決算が公表され、大幅な増収増益の好決算となったが、やや気になるのはマーチャンダイジング力がプラスとはなったが、経費比率が上昇していることである。また、急成長を支える財務は、ここ数年大きく改善されてきているが、それでも出店余力は、新規出店にかかわる資産が極めて低いにも関わらず、マイナスであり、依然として、課題が残されている点である。今期決算結果が好調であるがゆえに、この課題にどうような改善を図って行くか、今後のトライアルカンパニーの動向に注目である。
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