マックスバリュ中部、2012年1月、第1四半期決算!
食品スーパーマーケット業界の2011年度決算がほぼ終了し、今期、2012年度決算の公表がはじまった。食品スーパーマーケット業界の上場企業は1月度決算企業が数社あるが、その1社、マックスバリュ中部が6/10、2012年1月期の第1四半期決算を公表した。今期、食品スーパーマーケット業界の2012年度決算は2つの点で注目点がある。ひとつは、3/11の東日本大震災の影響度合いである。そして、もうひとつは、1月、2月度決算企業に新たに適用される資産除去債務会計基準の適用に伴う影響度合いである。この会計基準は昨年の3月度以降の決算企業ではすでに適用され、その詳細について、すでに本ブログでも触れたが、少なからぬ決算への影響が生じているのが現状である。
そこで、マックスバリュ中部のこの第1四半期決算へのこれらの影響を見てみたい。まずは、決算概要であるが、営業収益289.17億円(4.3%)、営業利益5.35億円(56.8%)、経常利益5.36億円(24.4%)、当期純利益-1.41億円となり、営業、経常段階では増収増益となったが、当期純利益は赤字決算という厳しい結果となった。この当期純利益の赤字はまさに、資産除去債務会計基準の適用に伴う影響といえ、今期、特別損失として、5.71億円計上している。これは、この第1四半期分の営業利益のほぼ総額にあたり、極めて大きな金額といえる。この数字は今期ほぼ確定数字であるため、最終決算時では、その影響度は下がるが、現時点で年間対売上では0.46%、対総資産では1.42%にあたり、かなりのインパクトである。
それにしても、営業利益が56.8%増とったにもかかわらず、当期純利益が赤字となるので、少なくとも、年間売上対比の0.50%は営業利益段階で増益の余裕をもっておかないと減益となりかねず、新たな会計基準、資産除去債務会計基準の適用による食品スーパーマーケットの経営への影響はけっして小さくないといえよう。ちなみに、マックスバリュ中部の次の中間決算の当期純利益予想は-4.00億円、通期予想は2.10億円の黒字であるので、徐々に相殺され、今期は黒字決算とる予想である。
さて、もう一方の影響、東日本大震災であるが、マックスバリュ自身も、「当社は東日本大震災の直接的な被害はありませんでしたが、震災直後から防災関連商品の需要増加や物流網の乱れ等による商品不足、原発事故に伴い発生した風評被害等、様々な影響が生じました。」とのことである。そこで、その影響が原価、経費面にどのような結果をもたらしたかを見てみたい。
まずは原価であるが、74.88%(昨年75.23%)と、0.35ポイント削減している。一般に原価が下がる要因は仕入れ面と販売面があるが、今回の震災の影響としては、マックスバリュ自身もコメントしているように商品不足が起こり、価格競争が抑制され、売価が相対的に上昇したこともあると思われる。また、仕入れ面では、「イオンのグループ力を活かした商品調達や生鮮トップバリュをはじめとするプライベートブランド商品の更なる拡大により、競争に打ち勝つ価格の実現に取り組みました。」とのことで、PB強化による原価改善が進んだことも大きいといえよう。結果、売上総利益は25.12%(昨年24.77%)と粗利が改善した。一方、経費の方であるが、25.72%(昨年26.22%)と、0.50ポイント下がっており、大きく改善している。これについても、今回の震災を機に、食品スーパーマーケット業界は節電などの経費削減に取り組む一方、先にあげたように、商品不足から価格訴求がかけられず、ちらし等の販売促進費用を削減さざるをえなかったことも大きいといえよう。
したがって、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-0.60%(昨年-1.45%)と、依然としてマイナスではあるが、その差は、原価、経費双方の改善により、大きく縮小している。これに、不動産収入、物流収入等のその他収入が2.51%(昨年2.72%)加わり、結果、営業利益は1.91%(昨年1.27%)と、増益となった。その他営業収入はやや減少したが、原価、経費、特に経費削減効果が大きく、大幅な営業増益となったといえる。
こう見ると、東日本大震災の影響は、マックスバリュ中部のこの第1四半期決算を見るかぎり、原価、経費双方にプラスの影響をもたらしているといえ、特に、経費改善効果が大きいといえよう。原価、経費双方に共通するテーマは価格であるといえ、食品スーパーマーケットにとって、価格は原価、経費双方に大きなインパクトを与える要素であることが改めて浮かび上がったといえよう。
このように、マックスバリュ中部の2012年度1月期の第1四半期決算が公表されたが、2/1から4/30までの決算期間であり、3/11の東日本大震災の影響がダイレクトに反映される決算となったが、結果は原価、経費、特に経費の改善が大きく営業段階では大幅な増益となった。ただ、残念ながら資産除去債務会計基準の適用がなされ、当期純利益は赤字となったが、経営改善は大きく進んでいるといえよう。その意味で、この未曽有の大震災は食品スーパーマーケット業界にとって、経営をスリム化し、経営体質を改革するチャンスでもあるといえる。これを機会に、本格的な経営戦略の見直しに取り組んでゆくべきであろう。
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