食品スーパーマーケットの震災後の現預金を見る!
6/17に日銀が「資金循環統計(速報)(1~3月期)」を公表したが、企業の現預金が過去最高の200兆円を超えたことがわかった。各報道機関でも取り上げられており、ロイターでは、「企業の現預金保有が過去最高=1─3月日銀資金循環統計」との見出しで、解説記事をホームページで公表している。そこで、食品スーパーマーケット業界の現預金の状況はどうかを3月度決算企業および1月度の決算企業の第1四半期決算の結果をもとに見てみたい。ロイターの報道内容でも、「日銀によると、「震災の影響で、流動性の高い資産を積み上げる動き」とみられている。」と解説しており、震災の影響が強く関係しているとのことで、当然、食品スーパーマーケットにもその動きは見られるのではないかと思われる。
まずは、ロイターの報道内容をもとに、実際に日銀が6/17に公表した「資金循環統計(速報)(1~3月期)」をもとに、その数字を確認してみたい。「資金循環統計(速報)(1~3月期)」はエクセルで公開されており、24項目からなる。その17番目と18番目のタグが民間非金融法人企業、すなわち、企業と家計の資金循環を集計したものである。この内、現金・預金は、現金、日銀預け金、政府預金、流動性預金、定期性預金、譲渡性預金、外貨預金の7つに分かれている。また、これ以外では、財政融資資金預託金、貸出、株式以外の証券、株式・出資金、金融派生商品、保険・年金準備金、預け金、企業間・貿易信用、未収・未払金、対外直接投資、対外証券投資、その他対外債権債務、その他、金融資産・負債差額と14項目と多岐に渡って資金の流れが集計されている。
そこで、ロイターの記事の内容であるが、「これまでの慎重な運用姿勢の継続に東日本大震災が加わり、企業の現預金の保有が3月末に211兆円と過去最高を更新するなど、流動性預金を中心に安全な資産を積み上げる動きが顕著となった。」とのことで、企業の現預金は過去最高となったとのことである。実際、日銀の数字では、211.12兆円であり、内、流動性預金が123.27兆円となった。また、家計の方は、「3月末の家計の金融資産残高は1476兆円で、前年比0.5%減となった。現預金は前年比1.5%増の816兆円で、このうち流動性預金が296兆円。それぞれ2010年12月末に次ぐ過去第2位の高水準。」とのことである。これも実際に日銀の数字を見てみると、合計は1476.40兆円であり、現預金は816.38兆円、流動性預金は295.95兆円である。ちなみに、定期預金は462.09億円である。
こう見ると、企業と家計の現預金は211.12兆円対816.38兆円であり、約4倍の差があり、家計の現預金がいかに巨額であるかがわかる。また、合計は企業が797.85兆円、家計が1,476.40兆円であり、約2倍の差である。よく、新聞、テレビ等で家計の金融資産が1,400兆円といっているが、それはまさに、この数字のことであり、現時点での正確な数字は、1,476.40兆円である。
では、これらの結果を踏まえて、食品スーパーマーケット業界はどのような状況であるかを、2011年3月期決算、4月期決算、そして、2012年1月期の第1四半期決算の現預金の結果をもとに見てみたい。
3月度の決算企業は、関西スーパーマーケット37.52億円(98.1%:総資産対比7.2%)、ヤマナカ62.65億円(105.8%:総資産対比13.7%)、原信ナルスH62.29億円(135.1%:総資産対比11.5%)、ヤオコー58.33億円(133.1%:総資産対比6.4%)、バロー138.00億円(140.2%:総資産対比7.3%)、いなげや107.93億円(204.3%:総資産対比13.3%)、スーパー大栄9.2億円(17.5%:総資産対比8.8%)、ヤマザワ64.85億円(162.9%:総資産対比15.4%)である。ついで、4月度の決算企業は、ユニバース85.55億円(131.0%:総資産対比21.2%)である。そして、2012年1月期の第1四半期決算企業は、マックススバリュ北海道33.47億円(前期本決算対比186.6%:総資産対比12.6%)、マックスバリュ中部18.01億円(前期本決算対比148.0%:総資産対比4.5%)である。
こう見ると、現預金が昨年を下回ったのは関西スーパーマーケットのみであり、その他の食品スーパーマーケットはすべて昨対を上回っており、しかも、昨対200%を超える企業もあり、いずれも大きく増加しているという結果である。まさに、日銀の全体の傾向を食品スーパーマーケットも強く反映している結果である。食品スーパーマーケット業界にとっても、この震災はそれだけ経営へのインパクトがあったといえ、震災後の経営心理、その不安が、まさに、キャッシュ、現預金に強く表れたといえよう。
このように6/17に日銀から公表された最新の「資金循環統計(速報)(1~3月期)」を見ると、特に、企業の現預金の保有高が過去最高の200兆円を超えたが、この傾向は、先に見たように、食品スーパーマーケット業界の実際の決算でも裏付けられたといえる。企業経営においては、有事の際は、キャッシュがいかに重要な要素であるかが、改めて浮き彫りになったといえよう。その意味で、今期、2012年度の食品スーパーマーケットの経営状況を判断するには、この現預金はもちろん、キャッシュフロー全体の流れをしっかり押さえることが、より重要な判断要素となろう。
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