資産除去債務会計基準の適用に伴う影響は?
食品スーパーマーケット業界では、昨年の4/1以降の上場企業の決算に資産除去債務会計基準の適用がなされ、3月期決算以降の食品スーパーマーケットの業績に影響が生じたが、食品スーパーマーケット業界の上場企業は圧倒的に2月期決算が多いため、業界全体への影響は、今期、2012年度の決算からとなる。そこで、今期、その損失がどのような影響となるかを、3月度、4月度の決算企業の前期決算結果から推測してみたい。
まず、資産除去債務の資産除去の算定であるが、会計基準委員会が出した「企業会計基準適用指針第21 号、資産除去債務に関する会計基準の適用指針」によれば、(1) 対象となる有形固定資産の除去に必要な平均的な処理作業に対する価格の見積り、(2) 対象となる有形固定資産を取得した際に、取引価額から控除された当該資産に係る除,去費用の算定の基礎となった数値,(3)過去において類似の資産について発生した除去費用の実績,(4)当該有形固定資産への投資の意思決定を行う際に見積られた除去費用,(5)有形固定資産の除去に係る用役(除去サービス)を行う業者など第三者からの情報の5つである。
食品スーパーマーケットの資産は多額に上ることから、その影響も大きいといえる。そこで、3月度決算企業の実際の数字を見てみたい。まずは、関西スーパーマーケットであるが、2011年3月期決算を見ると、資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額は0.36億円であり、売上高1,146.14億円の0.03%、総資産522.17億円の0.06%である。この比率を見る限り、損益への影響は小さいといえる。次に、ヤマナカであるが、固定資産除却損として、0.33億円であり、売上高1,002.44億円の0.03%、総資産455.66億円の0.07%であり、ほぼ、関西スーパーマーケットと同じ影響度といえよう。
さらに、3月度決算の食品スーパーマーケットであるが、原信ナルスHの資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額は13.61億円、売上高1233.60億円の1.10%、総資産541.25億円の1.10%である。先の2社とは大きく違い、経営へのインパクトが大きいといえる。ヤオコーの資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額は4.42億円であり、売上高2116.24億円の0.20%、総資産913.07億円の0.48%である。先の2社よりはかなり大きな数字であるが、原信ナルスHと比べると、影響は低いといえる。
食品スーパーマーケットの3月度決算の上場企業は上記4社以外にも4社あるので、その4社を一気に見てみる。バローの資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額14.83億円であり、売上高3,652.06億円の0.40%、総資産1,901.05億円の0.78%である。いなげやの資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額は15.46億円であり、売上高2,119.66億円の0.72%、総資産811.60億円の1.90%である。スーパー大栄の資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額は0.02億円であり、売上高272.70億円の0.007%、総資産105.30億円の0.02%である。そして、ヤマザワの資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額は4.51億円であり、売上高909.72億円の0.49%、総資産419.78億円の1.07%である。また、4月度決算となるが、ユニバースの資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額は2.26億円であり、売上高1015.91億円の0.22%、総資産403.40億円の0.56%である。
したがって、以上の結果をまとめると、関西スーパーマーケット0.03%(対売上高)、0.06%(対総資産)、ヤマナカ0.03%、0.07%、バロー0.40%、0.78%、いなげや0.72%、1.90%、スーパー大栄0.007%、0.02%、ヤマザワ0.49%、1.07%、ユニバース0.22%、0.56%であり、最大のいなげや、最小のスーパー大栄を除く、単純平均は対売上高0.23%、対総資産0.50%となる。
ここから、今期、2012年度の2月期決算企業を含め、今期の食品スーパーマーケット業界の資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額を推定すると、売上高の0.20%前後、最大0.72%、総資産の0.50%前後、最大1.90%の影響がでるものといえよう。P/Lでみれば、少なくとも0.20%以上の増収が見込めないと減益となる可能性が高く、その意味で、今期はいかに利益率を引き上げることができるかどうかが課題となろう。
ちなみに、上記、食品スーパーマーケットの当期純利益であるが、関西スーパーマーケット増益、ヤマナカ増益、ヤオコー増益、バロー増益、いなげや減益、スーパー大栄減益、ヤマザワ減益、ユニバース増益である。8社中5社が増益、3社が減益であり、資産除去債務会計基準の適用による決算への影響はあるといえるが、営業強化によって、改善できる範囲内でもあるといえよう。
このように、食品スーパーマーケット業界は大部分の食品スーパーマーケットが2月期決算であるため、前期は資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額が計上されなかったが、今期、2012年度は計上されることになる。ただ、実際に適用された3月度、そして、4月度決算の食品スーパーマーケットの結果を見ると、売上高対比0.20%前後、総資産対比0.50%前後であるといえ、収益率の厳しい食品スーパーマーケットは減益となる可能性もあるが、営業利益率の改善に取り組むことにより、増益を確保することは可能といえよう。まずは、この資産除去債務会計基準が適用される次の第1四半期決算がどのような結果となるか、2月期決算企業の結果に注目である。
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