食品スーパーマーケットの経営指標、ROA、ROE!
食品スーパーマーケットの経営指標は何が望ましいか、前回のブログで主要な上場食品スーパーマーケットの「目標とする経営指標」を集計してみたが、大きくP/Lに重点を置く企業、B/Sに重点を置く企業とに分かれた。その中でも、特に、ROAを「目標とする経営指標」とする食品スーパーマーケットが比較的多かったといえる。そこで、ここでは、ROAを高めるためには、どのような観点から取り組んでいったら良いかを考えてみたい。
まずは、ROAを「目標とする経営指標」にあげている食品スーパーマーケットの中で、その具体的な手段を明確に明示しているのが、前回のブログでも取り上げたハローズである。再度、その内容を見ると、「当社の経営上の目標指標は、総資産経常利益率(ROA)であります。当社は、この指標を達成するため、売上高経常利益率及び総資産回転率の向上を目指しております。売上高経常利益率におきましては、高収益商品の開発、情報システム及び物流システムの改革並びに固定費の削減等に取り組み、売上高経常利益率4.0%を目指しております。また、総資産回転率におきましては、用地の取得形態を賃借物件3に対し、取得物件1の割合を基準とし、主に事業用定期借地契約を行うことにより、新規出店に伴う設備投資額を抑え、総資産回転率2.5回を目指しております。以上の取り組みにより、当社は、当業界内で高い水準である売上高経常利益率を確保しつつ、資産を有効活用したうえで、総資産経常利益率10%以上を目指してまいります。」となる。
これは、ROA=売上高経常利益率×総資産回転率ととらえ、それぞれを引き上げ、ROAの向上を目指そうとするものである。ただ、この数式が示すように、ROAは売上高経常利益率と総資産回転率の掛け算となっているため、双方を引き上げるのは難しく、本来、どちらか一方を優先して引き上げることがポイントであり、双方を引き上げることは現実的には無理がある。実際、昨年の決算公開企業約50社の実態を見ると、ROAの平均は2.3%であるが(この場合のROAは当期純利益率)、売上高経常利益率、総資産回転率、双方が高い食品スーパーマーケットはわずかである。そのほとんどが、xyグラフで見ると、右下か左上に集まる傾向があり、実際の経営実態はどちらかを重視せざるをえないといえる。
ちなみに、数は少ないが、双方高い食品スーパーマーケットは、大黒天物産、オーケー、丸久、ヤオコーであり、この4社は比較的、右上、すなわち、売上高経常利益率も総資産回転率も高い数値であり、双方バランスよく数値を引き上げているといえる。したがって、「目標とする経営指標」にROAを掲げた場合は、双方を同時に引き上げることは極めて難しいといえ、まずは、どちらかを優先せざるをえないといえる。その意味で、P/Lを重視し、「目標とする経営指標」に掲げた食品スーパーマーケットは、最終的にはROAを引き上げることにつながり、まずは、優先度として、売上高経常利益率を掲げているともいえよう。そして、その次の課題として、総資産回転率を引き上げれば、結果、ROAが向上することになり、最終目的はROAの向上と見ることもできる。
ところで、ROAは総資産利益率のことであるが、今期の「目標とする経営指標」について、ROAではなく、ROE、すなわち、株主資本利益率を掲げている食品スーパーマーケットもある。これは一見、ROAとは関係が薄い経営指標のように見えるが、実は、ROAとROEとの関係は密接な関係があり、ROA=自己資本比率×ROEであり、ROEはROAの一構成指標であり、先のROA=売上高経常利益率×総資産回転率の売上高経常利益率と同じような関係にある。
したがって、この数式が成り立つことは、ROAを引き上げるためには、自己資本比率かROEのどちらかを優先する必要があり、同時に引き上げると、どちらかが下がることになりかねない。実際、これも、昨年の決算公開企業約50社の実態を見てみると、双方高い食品スーパーマーケットはオーケー、大黒天物産のみであるといえ、それ以外の食品スーパーマーケットは自己資本比率のみが高いか、ROEのみが高いという結果となり、xyグラフをつくると、右下、左上に多くの食品スーパーマーケットが並ぶのが実態である。
このように、上場食品スーパーマーケットは決算時に「目標とする経営指標」を公開しているが、最終的には結果として、ROAの向上を目指しているといえ、その優先順位として、P/Lを重視する企業はROA=売上高経常利益率×総資産回転率の売上高経常利益率を、B/Sを重視する企業はROA=自己資本比率×ROEのROEを優先して掲げているといえよう。どちらの指標を高めても、結果、ROAの向上につながるといえる。その意味で、食品スーパーマーケットの最終的な経営目標はROAをいかに高めるか、そのために、売上高経常利益率、ROE、あるいは、総資産回転率、自己資本比率をいかにひきあげるかにあるといえよう。経営の要諦はバランス、そして、優先順位をいかに明確にするかであるといえる。
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