ウォルマート、小型店、Walmart Expressにシフトか?
ウォルマートが6/8、地元、アーカンソー州に今後の戦略店舗となる小型店、Walmart Expressをオープンした。13年ぶりの新業態であり、ネバーフッドマーケット以来となる。6/10の日経新聞でも、「米ウォルマート、小型店、年内に15~20店」、「新業態、まずアーカンソー州」という見出しで報道しており、これまでスーパーセンターを主力業態として取り組んできたウォルマートが、特に、アメリカ国内市場においては、今後の新たな成長を目指した戦略業態となる可能性が高いといえよう。
ウォルマートにとって、Walmart Expressは13年ぶりの新業態ということもさることながら、その第1号店を株主総会に合わせオープンしたこと、本社のあるアーカンソー州にオープンしたこと、すなわち、この時間と空間を一致させたことは並々ならぬ経営の強い意欲を感じさせるといえる。特に、ウォルマートの株主総会には、西友をはじめ海外のウォルマート関係企業が参加しており、これに合わせてWalmart Express1号店を、株主総会の会場の近くにオープンしたことは、今後、世界中で次のウォルマートの新業態はWalmart Expressになることを示唆したともいえ、内外に与えるインパクトを計算した上でのWalmart Express1号店のオープンといえる。
しかも、ウォルマートのCEO、マイク・ジューク氏は、6/3、この株主総会で、「The Next Generation Customer」というキーワードを掲げ、この次世代の消費者の心をつかむために、ウォルマートは5つの戦略的な展開を行ってゆくことを宣言している。その5つとは、Growth(成長)、EDLP(Everyday Low Price) and EDLC(Everyday Low Costs)、E-Commerce、Talent(能力)、“Live Better”である。このすべてが、まさに、今回の新業態、Walmart Expressに集約されているといえ、特に、ネット通販を組み込んでいることも大きな特徴である。
The Next Generation Customerの特徴のひとつは、スマートフォンとソーシャルメディアを通じて世界とつながっているのが特徴であるとのことで、結果、ウォルマートの得意としているEDLP(Everyday Low Price)の商品がスマートフォンとソーシャルメディアを通じて探し求められ、最も価格の安い商品にたどりつくことになるとのことで、まさに、EDLP(Everyday Low Price)がこれまで以上に重視されるとの認識である。
実際に、このE-Commerceがどのように、Walmart Express1号店に取り入れられているかであるが、日経の記事によれば、ウォルマート幹部の発言として、Walmart Express1号店の特徴を大きく3つ上げている。ひとつは薬局、2つ目は銀行、そして、3つ目がネット通販であり、この3つが基軸になっているとのことである。そして、この3つ目のネット通販であるが、最寄りの店舗まで商品を無料配送し、店舗で受け入れることが可能になるという。いわば、ウォルマートのE-Commerceの受け取り拠点としての機能を果たし、しかも、送料無料とのことである。
では、このWalmart Express1号店のイメージであるが、店舗面積は1,400平米(約400坪強)であり、日本の食品スーパーマーケットの平均的な店舗に近いといえる。しかも、日経の記事によれば、「各国の傘下企業が小型店舗で実戦する在庫管理のノウハウを取り入れた。バックヤードのスペースを抑えるため、納品後、商品を即座に陳列棚に並べるなど米国では新しい手法を取り入れる。」とのことであり、まさに、日本の食品スーパーマーケットそのものといえよう。記事では言及されていないが、この数年、西友で検証されたノウハウがふんだんに取り入れられたものと思われる。要は、現在、活性化を終え、仮説検証された西友でのノウハウはがアメリカで本格的に実戦投入され、やがては、世界中に展開されてゆくということになるということであろう。
また、その展開スピードであるが、今後3ケ月でノースカロライナ州、イリノイ州、特に、シカゴで15店舗をオープンし、そこでの検証を踏まえ、最終的には、ウォルマートの不得意としてきた全米の都市部での本格展開が目的であるという。ここでも西友の立地戦略と重なるものがあり、西友はまさに日本の首都、東京で数多くの店舗を展開しており、この立地戦略も今後、アメリカで活かされることになろう。
ウォルマートは前期2011年度決算は既存店の売上高が2年連続で昨対を割り、特に、アメリカでのウォルマートの既存店の落ち込みが大きく響いているのが現状である。アメリカ国内ではウォルマート部門3,804店舗、サムズクラブ部門が609店舗、そして、海外では4,557店舗、合計8,970店舗であり、これだけ巨大になった企業にインパクトを与えるには、1,000店舗、少なくとも500店舗は必要といえる。今回のWalmart Express1号店の最終目標店舗数は公表されていないが、今回のシカゴでの検証後、ウォルマートが目標数値として、どのくらいの店舗数を打ち出すかが注目といえる。
このように、13年ぶりとなるウォルマートの新業態、Walmart Expressの1号店が地元アーカンソー州にオープンし、今後、シカゴにて15店舗を展開し、本格的な検証に入ることになる。Walmart Expressは、これまでのウォルマートの出店戦略を大きく転換する都心型食品スーパーマーケットであり、西友に良く似た基本コンセプトであるといえる。これまで西友で培われたノウハウが取り入れられ、さらに、アメリカ流にアレンジされてゆくことになろう。3ケ月後には本格的な検証体制に入る予定であるとのことで、1年後、ウォルマートがどのような、このWalmart Expressを踏まえた成長戦略を打ち出すか注目である。
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