イオン、2012年2月期、第1四半期、減収営業増益!
イオンが7/6、2012年2月期の第1四半期決算を公表した。結果は営業収益1兆1,999.61億円(-1.2%)、営業利益283.01億円(29.9%)、経常利益308.77億円(24.9%)、当期純利益57.62億円(-70.1%)となり、減収、営業、経常段階では大幅な増益となったが、当期純利益は、「特別損失として、震災関連損失306 億17 百万円、資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額177 億73 百万円を計上し、・・」とのことで、大幅な減益となった。イオンは被災地、東北にも数多くの店舗を展開しているため、震災関連損失が300億円を超え、その影響が響いたといえる。
それにしても、これだけ特別損失が発生すると、キャッシュフローも厳しい状況となる。今期のイオンの営業活動によるキャッシュフローは、-1,019.59億円(昨年-1,105.20億円)と、昨年も1,000億円を超えるマイナスであったが、今期も同様に1,000億円を超えるマイナスとなった。この時点で、今後の投資、財務改善へのキャッシュの調達が厳しい状況となり、選択肢としては、借入を増やすか、資本金を増強するか、内部留保を取り崩す決断が必要となる。
ちなみに、営業活動によるキャッシュフローが-1,000億円を超えた要因は法人税等の支払額-424.09億円(昨年-317.83億円)、仕入債務の増減額(-は減少)-388.54億円(昨年-598.04億円)、売上債権の増減額(-は増加)-384.08億円(-586.48億円) に加え、今期は税金等調整前四半期純利益が-148.14億円(昨年425.19億円)となったことが大きい。一方、プラス項目であるが、減価償却費334.20億円(昨年342.43億円)、災害損失引当金の増減額 (-は減少)174.25億円(昨年は0)、資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額177.73億円(昨年は0)等である。
そこで、そのキャッシュの調達であるが、財務活動によるキャッシュフローは231.60億円(昨年23.04億円)と、プラスになっているが、営業活動によるキャッシュフローを賄うまでにはなっておらず、したがって、内部留保を取り崩してキャッシュを埋めたといえる。実際、キャッシュフロー上の現預金は期首には3,068.20億円あったが、期末には1,802.80億円と大きく減少しており、B/S上の現金も 前期決算時には3,202.12億円であったが、この第1四半期では1,971.43億円と1,000億円以上減少している。これまで公開された2012年度の食品スーパーマーケットの第1四半期決算を見ると、現金はむしろ増加している場合が多いが、イオンは対象的なキャッシュの流れであり、それだけ、東日本大震災の影響が大きかったといえよう。
ちなみに、財務活動によるキャッシュフローが231.60億円とプラスになった要因であるが、長短借入金が241.50億円増加していることに加え、社債が197.67億円となり、有利子負債が増加しており、これも営業活動によるキャッシュフローのマイナスを補ったといえる。結果、B/Sの負債の有利子負債は1兆2,041.98億円(前期決算時1兆1,526.23億円)と増加している。したがって、自己資本比率も22.9%(前期決算時23.5%)と、財務状況は極めて厳しい状況にあり、約80%弱を負債に負う財務構造である。
さて、このような状況の中での投資活動によるキャッシュフローであるが、-489.37億円(昨年-87.47億円)と、大きく増加しており、多額の投資を実施している。その中身であるが、新規出店関連への投資、有形固定資産の取得による支出-506.79億円(昨年-537.70億円)、差入保証金の差入による支出-23.17億円(-26.58 億円)と、ほぼ、昨年同様の投資である。したがって、極めて厳しいキャッシュフローの中でも、成長戦略への投資については昨年同様キャッシュを厚く配分しているといえる。ちなみに、昨年の投資活動によるキャッシュフローが、今年と比べ少なかったのは貸付金の回収による収入1.55億円(昨年446.53億円)と、この違いによる。したがって、これらの投資活動によるキャッシュフローは内部留保及び新たな有利子負債の調達で賄ったといえ、この第1四半期はかなり苦しいキャッシュフローであったといえよう。
さて、これに対して、キャッシュを生み出す大本、原価、経費の状況であるが、原価は73.43%(昨年73.14%)となり、上昇、結果、売上総利益は26.57%(昨年26.86%)となった。一方、経費の方は36.09%(昨年36.38%)と減少した。したがって、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-9.52%(昨年-9.52%)と、奇しくも同じ数字となった。そして、これに、GMSのキャッシュの源泉ともいうべき不動産収入、物流収入等のその他営業収入が12.17%(昨年11.52%)加わり、結果、営業利益は2.65%(昨年-2.00%)と、大幅な増益となった。こう見ると、増益の要因は、マーチャンダイジング力ではなく、その他営業収入の増加によるところが大きいといえ、東日本大震災の影響は結果として、その他営業収益を押し上げ、増益をもたらしたといえよう。
このように、イオンの2012年2月期、第1四半期決算は減収営業増益となったが、営業増益の要因はその他営業収入によるところが大きく、原価、経費は原価の上昇が経費の削減で相殺されており、マーチャンダイジング力はプラスマイナス0、キャッシュを生みだせなかったといえる。また、キャッシュフローはかなり厳しい状況にあり、フリーキャッシュフローが大きくマイナスとなったため、有利子負債の調達と内部留保を大きく崩さざるをえなかったといえる。こう見ると、イオンにとっては、東日本大震災の影響は財務に大きな影響を与えたといえ、次の、中間、そして、通期へ向けて、厳しい経営環境が続くといえ、今後、この結果を踏まえ、どのような抜本的な経営戦略を打ち出すか注目である。
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