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July 20, 2011

第1四半期決算後の食品スーパーマーケットの株価動向!

   7/16の日経新聞に第1四半期決算を受けての業績予想とPER(株価収益率)との関係の記事が掲載された。見出しは「3~5月期で好業績・低PER、地方小売業が上位」、「震災後の需要取り込む」というものである。記事の中には「業績好調で低PERの2月度決算企業」のPERの低い順に30社の一覧も掲載されており、興味深い内容である。特に、この30社の中に食品スーパーマーケットが多いのが特徴であり、今後、食品スーパーマーケットの株価動向に注目といえよう。

   一般にPER(株価収益率)は1株当たりの純利益が株価の何倍になっているかを表す指標である。計算式では、株価/(純利益/株数)となり、ここから、(株価×株数)/純利益となるため、時価総額/純利益で計算することもできる。この指標が何を意味しているかであるが、購入した株のリターンがどのくらいかかるかを表しているといえ、PERが10倍であれば、株価に対して1/10の純利益であるので、同じ比率でこの水準が維持されれば、10期で株価に匹敵する純利益を回収すると見なすことができる。したがって、このPERが低ければ低いほど、株価に対する投資採算性が高いと見ることができる。ただ、このPERが低いと、その株を求める投資家が当然増えるので、分子の株価が上昇し、時価総額が上がり、結果PERが高くなる。

   ここから、PERが高い企業は株価が高めと判断でき、その後、さらに株価が上がるかどうかは難しいと予想される。逆に、PERが低い企業は、その後、株価が上がる可能性が高いといえるが、往々にして、このような企業は業績が悪く、PERの分母、すなわち、純利益が低い場合が多いといえ、株価が上昇するかどうかは難しいといえる。ところが、今回の日経の記事のように、PERが低いにも関わらず、純利益、すなわち、業績の良い企業があり、本来であれば、先に見たように、PERが低いのであれば、分母の純利益が小さいといえ、業績が低くなるところが、逆に高いいわけであるから、明らかに違和感があるPERである。したがって、この違和感のあるPERの株価は分母よりも、分子に問題があるのではということで、株価×株数、すなわち、時価総額が増加する方向に動くと見なすことができ、結果、株価が上がるか、株数が増える、すなわち、増資に動くのではと見なせるわけである。

   そこで、この日経の記事であるが、このような観点から改めて、PERと業績の関係を見たところ、明らかに、違和感のある企業が30社抽出されたという内容である。その中でベスト3を見ると、No.1和田興産PER5.4倍(本決算経常利益54.0%増、予想四半期達成率14.9%)、No.2コーナンPER6.3倍(21.7%、35.4%)、No.3ベルクPER6.6倍(22.1%、32.1%)という結果であった。ここで、予想四半期達成率は四半期であるので、25%以上が計画以上の高い利益達成率であると判断できる。このベスト3を見ると、2社、すなわち、コーナン、ベルクが記事の見出しの地方小売業であるといえ、しかも、ベルクは食品スーパーマーケットであり、まさに、記事の見出しを裏付けているといえよう。

   実際、ベルクのここ最近の株価の推移であるが、2011年2月期の本決算公表事の4/11時点ではさほど株価は上昇していないが、2012年2月期の第1四半期決算が公表された7/4には、結果が増収増益とまさに好業績であったこともあり、投資家から異常な注文が入り、大商い、株価が跳ね上がり、それまでの1,000円の壁を一気に突破、7/15現在1,074円である。まさに、この記事を裏付ける動きであるといえよう。

   記事の中にはベルク以外にも食品スーパーマーケット及び食品に重点を置いている小売業が数多く掲載されているので、その実態を見てみたい。No.7アークランドサカモトPER8.4倍(11.6%、35.7%)、No.8サンエーPER8.7倍(1.4%、26.4%)、No.9イオン北海道PER8.7倍(3.9%、45.7%)、No.11マックスバリュ西日本PER9.5倍(3.6%、14.6%)、No.12ハローズPER10.0倍(8.8%、20.9%)、No.13丸久PER10.3倍(2.1%、25.9%)、No.14マックスバリュ東海PER11.2倍(1.5%、28.3%)、No.14アークスPER11.5倍(3.4%、26.9%)、No.16イズミPER11.9倍(2.6%、26.5%)、No.20平和堂PER12.8倍(3.9%、20.2%)、No.26イオンPER15.7倍(0.5%、16.9%)、No.30PER18.6倍(194.8%、49.5%)という状況である。30社中13社であり、しかも、上位に多いといえる。

   記事では、「地方企業は投資家向け広報(IR)が手薄で、投資家の目が届きにくい。(国内証券)ことから、株価が割安に放置されやすい、・・」とのことである。ちなみに、東証1部の平均PERは15.0倍、日経業種別小売業の平均が16.0倍であるとのことであり、これを見ても、上記ランキングの食品スーパーマーケットの株価はPERが10倍以内が多く、しかも業績も良く、株価の割安感があるといえよう。

   このように、株価と業績の関係を示すPERを見ると、この記事が示すように、第1四半期決算の食品スーパーマーケット業界の業績、特に好業績の食品スーパーマーケットと連動していないのは事実であるといえる。今回、この記事に掲載されなかった食品スーパーマーケットにおいても、業績が良く、今期の業績予想が良かったにも関わらず、PERが低く、株価に割安感がある食品スーパーマーケットの今後の株価には注目である。

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