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August 2011

August 31, 2011

改めて、東日本大震災の影響を統計から見る、その2!

   前回は、総務省統計局が公表したサービス産業動向調査から東日本大震災がサービス産業に与えた影響について解説したので、今回は家計調査結果(二人以上の世帯)における震災の影響、小売物価統計調査(全国4月分)の一部品目に係る東日本地域の県庁所在市別小売価格に関する速報値の2つについて見てみる。

   さて、家計調査結果であるが、ここでは様々な角度から、東日本大震災の影響を分析しているが、少し角度を変え、寄付金の動向から見てみたい。最新の分析結果としては7/29に公表された「寄付金への支出金額の推移」を見てみると、平成7年(阪神淡路大震災の年)、平成16年、そして、今期、平成23年の3つの時期を比較しているが、東日本大震災の発生した3月度は1世帯当たりの寄付金が2,083円(平成16年177円、平成7年217円)であるので、通常の10倍近い数字となっており、異常値である。ちなみに、阪神淡路大震災が発生した平成7年1月の数字は247円(平成16年142円、平成7年1,841円)であるので、これを上回る数字であり、それだけ、東日本大震災の日本全体の家計へのインパクトが大きかったといえよう。その後、4月1,580円(129円、214円)、5月622円(233円、268円)、6月242円(207円、224円)と推移しており、6月度でほぼ通常の数字にもどったといえよう。

   ついで、4/29に公表された「東日本大震災の発生により消費行動に大きな影響がみられた主な品目等」を見てみたい。まずは、全体像であるが、消費支出及び主な費目別内訳の日別支出(名目金額指数)の推移のグラフを見ると、3/11以降、はじめの1週間の状況が特に変化が激しい動きを示している。意外なことに、食料全体はやや上昇気味であるが、ほぼ横ばいで推移している。その後、月末までこのような状況で推移し、大きな変化はないといえる。もちろん、個々の状況は後で見るように激しい変動があったが、全体は意外に落ち着いた推移であるといえる。これに対して、3/11以降、大きく下がった費目であるが、被服及び履物、そして、教養娯楽である。この2つはほぼ同じ動きを示しており、3/11以降、3/18までのほぼ1週間大きく落ち込み、その後、3/19急激に上昇し、3/25頃から横ばいとなっており、激しい変動である。

   では、個々品目ではどのような影響があったかであるが、3月度の数字を特に食料で見てみると、米(名目10.8、実質19.5、寄与度0.13)、乾うどん・そば(12.5、13.8、0.00)、スパゲッティ(15.3、22.5、0.01)、カップめん(40.8、43.2、0.04)、即席めん(29.7、31.9、0.02)、もち(37.2、43.7、0.01)、魚介の缶詰(39.8、41.6、0.02)、粉ミルク(39.7、41.7、0.01)、ヨーグルト(-6.4、-4.8、-0.01)、納豆(-6.1、-4.3、0.00)、ミネラルウォーター(148.8、161.3、0.08)、食事代(-14.1、-14.2、-0.47)、飲酒代(-35.6、-35.7、-0.19)となる。

   これをさらに日別グラフで見ると、ミネラルウォーターのみがほぼ1ケ月間通して、大きく昨対を上回っており、異常値である。これ以外のプラスとなった品目はほぼ、3/11以降、はじめの1週間で大きな山ができ、その後は、ほぼ昨年並みの数字となっている。また、マイナス品目は大きな山はなく、全体的に昨年を下回っている状況である。日別の状況では品目によって、動きが大きく違い、連続して大きくプラスになるもの、はじめの1週間が大きな山となるもの、連続してマイナスとなるものと分かれ、大部分の品目ははじめの1週間が大きな山となっているといえる。

   そして、3つ目、小売物価統計調査であるが、この調査は被災地、東北の主要都市及び全国の主要都市の主要な品目の小売価格の調査であり、3月度と4月度の価格を比較している。その結果であるが、被災地、福島で110%以上物価上昇が見られる品目は、鶏卵1パック・10個、3月度211円、4月度266円、126.1%、生理用ナプキン1袋・20個、3月度298円、4月度351円、117.8%、牛乳(店頭売り, 紙容器入り)1本・1,000mL、3月度191円、4月度221円、115.7%、食パン1kg、3月度390円、4月度444円、113.8%、灯油18L、3月度1,560円、4月度1,728円、110.8%である。ちなみに、東京都区部では鶏卵1パック・10個、3月度232円、4月度265円、114.2%、納豆1パック・50g×3 or 45g×3、3月度107円、4月度119円、111.2%の2日もウォルマートのみであり、福島の方が比較的物価上昇が見られるが、極端な食料品の物価上昇は見られないといえよう。

   このように、改めて、3/11の東日本大震災の影響を、総務省が公表したサービス産業、家計調査、そして、小売物価の3つの統計数値から見てみた。サービス産業ではキャンセル、営業時間が大きな影響であり、家計調査では何といっても水の影響が長期的に厳しい結果であったが、それ以外の品目は、はじめの1週間が大きなインパクトであったが、その後は比較的落ち着いた動向を示していた。そして、小売物価では、一部の品目を除き、比較的物価の上昇は見られなかったといえる。こう見ると、震災自身は大規模かつ破壊的な結果を東日本の広範囲にもたらしたが、そのような中で、家計も小売りも比較的落ち着いて対応した様子が伺われる。今後、急ピッチで被災地の復旧が進むと思われるが、まだまだ十部に復旧はなされているとはいえず、1日も早い被災地の復興を望みたいところである。

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August 30, 2011

改めて、東日本大震災の影響を統計から見る、その1!

   総務省統計局から、東日本大震災の影響について、様々な角度から、段階的に総括が提示されている。主な統計データは、サービス産業動向調査から東日本大震災がサービス産業に与えた影響、家計調査結果(二人以上の世帯)における震災の影響、小売物価統計調査(全国4月分)の一部品目に係る東日本地域の県庁所在市別小売価格に関する速報値の3つである。そこで、ここでは改めて、東日本大震災がサービス産業、家計、そして、小売物価にどのような影響を与えたのかを振り返ってみたい。

   まずは、サービス産業動向調査から東日本大震災がサービス産業に与えた影響であるが、この集計結果は3回に分けて公表されている。東日本・西日本別サービス産業の月間売上高(7月28日)、東日本大震災がサービス産業に与えた影響(特別集計 その2)(7月28日)、東日本大震災がサービス産業に与えた影響(特別集計その1)(6月29日)である。

   はじめの調査結果であるが、この調査は東日本と西日本に分けて調査がなされており、それぞれの地区のサービス産業の売上高が昨年と比べどのような結果となったかを集計している。その概要は、「東日本・西日本別に月間売上高の前年同月比をみると、東日本は平成23年3月の10.1%の減少の後、4月は8.5%の減少、5月は6.5%の減少、西日本は3月の6.9%の減少の後、4月は5.8%の減少、5月は4.1%の減少となり、西日本に比べ東日本が大きく減少しているが、東日本、西日本共に、3月から徐々に減少率が小さくなっている。」とのことである。

   実際、産業別に見てみると、3月度において、サービス業で影響の大きかった分野は生活関連サービス業、娯楽業 -19.8(西日本-11.4)、宿泊業、飲食サービス業-13.8(西日本-3.7)、教育,学習支援業-12.4(西日本2.6)の3つが顕著である。また、運輸業、郵便業-4.8(西日本-5.7)は、むしろ西日本の方が大きな影響を受けているといえ、物流関係は全国的な影響があったことを伺わせる結果である。

   次の2つの調査はいずれもアンケート調査であり、東日本大震災による3月11日以降の売上高への影響について約39,000事業所へ対して総務省が調査票を送り、8,126事業所の回答を得ての集計結果である。その総括であるが、「回答があった8,126事業所のうち、「影響なし」は4,648事業所(回答事業所に対する割合は57.2%)となった。「影響あり」は3,478事業所(同42.8%)で、その内容をみると、「需要減」が1,673事業所(同20.6%)と最も多く、次いで「休業や営業時間の短縮」が874事業所(同10.8%)、「原材料や物流の滞り」が861事業所(同10.6%)、「電力供給の制約」が490事業所(同6.0%)となっている。一方、「需要増や提供価格の値上げ」は155事業所(同1.9%)にとどまっており、東日本大震災に伴う需要増等は限定的であることがみてとれる。」とのことである。

   実際、各サービス業の中で影響の大きかった分野を見てみると、宿泊業、飲食サービス業62.5%、運輸業、郵便業62.2%の2分野は特に大きい。その中でも、宿泊、飲食については宿泊業68.2%、飲食業60.4%という結果である。一方、運輸業、郵便業では、道路旅客運送業が74.8%と突出しており、ついで、鉄道業60.7%、道路貨物運送業57.1%と続く。逆に、影響なしが多かったサービス業は医療、福祉82.2%、教育、学習支援業72.6%、学術研究、専門・技術サービス業66.2%、不動産業,物品賃貸業65.6%であり、明暗が分かれた。

   そして、3つめの調査であるが、これは、「平成23 年5月31 日(火)に公表したサービス産業動向調査の平成23 年3月分結果(速報)は、東日本大震災の影響により、調査票の回収が遅れていた岩手県、宮城県、福島県及び茨城県の4県以外の調査票を用いて集計を行った、・・」とのことで、被災地4県を加えての、サービス業の調査結果である。特に、売上高の減少要因を備考欄の記入状況からまとめており、貴重な生の声を集計したものである。

   その概要であるが、「「キャンセル等による仕事の中止・延期や客数の減少等」が262 事業所、「営業時間の短縮や休業」が211事業所、「計画停電」が57 事業所、「ライフラインや施設の損壊」が41 事業所、「自粛ムード」が24 事業所、「燃料などの資材の不足」が21 事業所となっており、需要の減少をうかがわせる理由が最も多かった。」とのことである。サービス業の調査結果であるので、キャンセル、営業時間等が大きな影響を与えたといえよう。

   このように、ここでは、サービス業を中心に東日本大震災の影響を総務省統計局の調査結果から見てみたが、サービス産業の調査結果であるだけに、その要因は、キャンセル、営業時間の影響が大きく、分野としては、宿泊業、飲食業、道路旅客運送業、鉄道業道路貨物運送業等が大きかったといえる。一方、影響を比較的受けなかった分野もあり、医療、福祉、教育、学習支援業、学術研究、専門・技術サービス業、不動産業,物品賃貸業等である。なお、これ以外の調査、家計調査、小売物価統計調査については、次回のブログで取り上げたい。

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August 29, 2011

消費者物価指数(CPI)、2011年7月度、0.2%増!

   消費者物価指数(CPI)、2011年7月度が8/26、総務省統計局から公表された。この7月度は、昭和30年以降、5年に1度改定される年にあたり、今年の1月度にまでさかもどって数値も修正された。したがって、今後の消費者物価指数(CPI)の基準年は平成22年度(2010年)との比較となる。そして、その結果であるが、(1) 総合指数は平成22年を100として99.7、前月と同水準、前年同月比は0.2%の上昇、(2)生鮮食品を除く総合指数は99.8、前月と同水準、前年同月比は0.1%の上昇、(3)食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は99.0、前月比は0.1%の下落、前年同月比は0.5%の下落となった。

   消費者物価指数は、このように総合指数が3つある。文字通りの総合指数、相場変動の激しい生鮮食品を除く総合指数、さらに、食料、エネルギーを除く総合指数である。気になるは、(3)の食料、エネルギーのいわゆる変動要因の大きい項目を除いた総合指数が0.5%の下落となったことである。実際、これをグラフで見ると、さらに、その傾向が鮮明である。総務省は、この3つの総合指数について、昨年度と比べた折れ線グラフを公表している。これを見ると、特に、(3)のグラフは、今年の1月以降、昨年を大きく下回って推移しており、デフレ傾向が鮮明である。また、平成22年度(2010年)を100とした場合の比較を見ると、(3)はもちろんであるが、(1)の総合指数も1月度99.5、2月度 99.5、3月度99.8、4月度99.9、5月度99.9、6月度99.7、そして、7月度 99.7と、いずれも昨年を下回っており、デフレ傾向で推移しているといえる。

   そこで、今回の改定の影響もあるとは思うが、これだけ鮮明になったデフレ傾向となった要因を見てみたい。まずは寄与度から見た要因であるが、マイナスの寄与度が大きかった項目であるが、教養娯楽用耐久財が-0.46である。この中でもテレビが-0.28と、消費者物価指数全体を大きく押し下げているといえよう。ついで、家庭用耐久財-0.14、生鮮食品を除く食料-0.05、宿泊料-0.03、携帯電話機-0.01等である。

   次に、昨年対比で見た要因であるが、マイナスの大きい順に見てみると、ビデオレコーダー-46.1、パソコン(デスクトップ型)-44.2、電気洗濯機(洗濯乾燥機)-37.7、テレビ-32.9、ビデオカメラ-30.8、パソコン(ノート型)-26.0、カメラ-25.7、電気冷蔵庫-25.5、電子レンジ-24.4、電気掃除機-21.0であり、以上が、-20%以上下落した項目である。すべて、家電関連といえ、これらのマイナスが、この7月度の消費者物価指数を引き下げ、全体がデフレ傾向になった要因であるといえる。

   一方、プラスに貢献した項目であるが、まずは寄与度で見ると、何といってもたばこ0.19であり、ついで、傷害保険料0.14、外国パック旅行0.11、航空運賃0.05、高速自動車国道料金0.11等である。次に、昨年対比で見ると、たばこ(国産品)39.2、たばこ(輸入品)37.0、さんま27.0、航空運賃22.2、すいか20.7、ほたて貝20.4であり、以上が20%以上、物価が上昇した項目である。さらに、15%以上まで見てみると、外国パック旅行19.4、婦人セーター(長袖)18.2、うなぎかば焼き16.0、灯油15.9、きゅうり15.0となる。

   以上が全体の状況であるが、さらに、食品について詳しく見てみたい。食品は食料として、外食も含めて集計されており、結果は食料全体は0.3であり、ほぼ昨年と同様な数字である。ついで、大項目であるが、家計調査データと同じ分類であるが、穀類-1.7、魚介類1.9、肉類-0.5、乳卵類-0.6、野菜・海藻1.3、乾物・加工品類-0.4、果物6.7、油脂・調味料-1.7、菓子類-1.0、調理食品1.5、飲料-0.4、酒類-2.4、外食0.2という結果である。比較的マイナスの大きな項目は穀類-1.7、油脂・調味料-1.7、酒類-2.4であり、プラスの項目は野菜・海藻1.3、果物6.7、調理食品1.5である。

   そこで、さらに、小項目まで落とし、マイナスの項目、プラスの項目を見てみたい。まずは、マイナスの小項目であるが、米類-4.7、カレーパン-1.8、即席めん-2.9、生中華めん-5.0、小麦粉-3.0、食用油-2.8、マーガリン-5.6、砂糖-2.1、酢-6.5、マヨネーズ-5.6、ドレッシング-3.0、風味調味料-5.7、中華合わせ調味料-2.0、清酒-3.3、ビール-3.9、ワイン(輸入品)-2.2、チューハイ-3.2、ビール風アルコール飲料-3.0である。

   一方、プラスになった小項目であるが、キャベツ6.1、ブロッコリー8.7、アスパラガス10.6、さといも8.3、れんこん4.5、しょうが7.1、えだまめ11.2、さやいんげん8.7、きゅうり15.0、なす5.2、トマト7.9、ピーマン9.8、干ししいたけ7.0、わかめ3.9、納豆4.9、ぶどうB8.9、もも7.3、すいか20.7、メロン12.7、調理パスタ11.1、うなぎかば焼き16.0、やきとり2.3、冷凍調理コロッケ3.1、冷凍調理ハンバーグ9.7、混ぜごはんのもと2.7、きんぴら2.0である。

   このように、この7月度は、消費者物価指数(CPI)が改定されてはじめての月となったが、結果は、平成22年度(2010年)を100とした場合は、総合指数がいずれの段階でもマイナスとなり、昨年対比で見た場合は食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数が0.5%の下落となり、デフレ傾向が鮮明となった。しかも、この1月以降、ほぼ同様にデフレ傾向が続いており、当面、このデフレが継続する見通しであるといえよう。食品スーパーマーケットとしては、デフレを前提とした経営戦略を組む必要があるといえ、今期は、すでに後半戦に入ったが、既存店の活性化、内部体制の充実が経営戦略の課題となろう。

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August 28, 2011

コンビニと食品スーパーの違い、発注、そして、顧客・・?

   コンビニと食品スーパーマーケットを分けるものは何かを考えてみたい。その違いは様々であるが、ひとつ大きな違いは発注にあるといえる。コンビニは原則、取り扱い商品をすべて発注できるが、食品スーパーマーケットの場合は、発注可能商品は売上高の5割から6割ぐらいであるといえ、発注ができない商品が大部分となる。なぜか?食品スーパーマーケットの中核商品は生鮮食品、惣菜であるからである。これらの商品は原則発注ができない。したがって、単品管理ができず、POSシステムにものりにくい商品である。実際、商品マスターを見てみると、各社各様、統一した仕様はなく、独自の管理となっており、場合によっては、同一チェーンの中でも、統一できていない場合もある。

   生鮮食品、惣菜は基本的に食材を仕入れ、店内で加工し、店舗で自由に商品化が可能な商品であり、仕入れから販売への流れはあるが、販売から仕入れへの流れはないに等しく、販売時点での情報管理、Point Of Sales、すなわち、POSが成り立たないからである。実は、コンビニもセブンイレブン1号店がオープンした当時は良く似ていた。当時、商品を単品管理しようにも、発注単位が大きく、ケース、箱での発注が原則であり、1個欲しいところが、1ケース12個、ないしは、6個でしか、注文できず、場合によっては、1箱、12個×6=72個の納入となり、単品管理がなりたたない時代があった。ちょうど生鮮食品、惣菜を店内加工するように、コンビニの店舗ではケース、箱から必要量の商品を取り出し、店内に陳列し、商品を販売していたといえる。したがって、この時代にはコンビニも単品管理はできず、POSシステムも十分に力を発揮しなかったといえる。

   これを物流改革により、1個から発注が可能なような仕組みをつくり、永い時間をかけて単品管理が可能な体制を作り上げ、POSシステムがフルに活用できる仕組みをコンビニは作り上げたといえる。いまでは単品管理は、コンビニでは当たり前になっており、しかも、この単品管理は発注と融合し、POSシステムは販売時点を抑えるだけでなく、むしろ、発注を抑える仕組みとなり、すべてのコンビニの取り扱い商品が発注可能となり、商品管理を発注面から抑えることが可能となったといえる。実際、コンビニのPOS分析には、食品スーパーマーケットでは見られない発注分析がなされており、これをIT化したものがGOT(Graphic Order Terminal)であり、POSシステムと完全一体化し、単品管理を販売時点を抑えるだけでなく、発注時点を抑える仕組みへと進化させている。
ここから販売管理の組織にも変化が生じ、食品スーパーマーケットでは、商品部が販売管理の中核であり、商品の仕入れを抑えることが重視されるが、コンビニでは商品部よりも、SV(supervisor)が販売管理の中核であり、発注をいかに抑えるかが最重要課題となる。

   よく、コンビニのように食品スーパーマーケットもGOTを活用し、商品部よりもSVを販売管理の中核に据えようという試みがなされるが、残念ながら、この成功事例は皆無に近いといえる。SVを仮においても、SVの武器はPOSシステムまでであり、販売時点を抑えることはできるが、発注を抑えるGOTを活用するにも、食品スーパーマーケットの中核商品である生鮮食品、惣菜に対しては無力であるといえ、さらに、日配、グロサリーにおいても、物流体制等、十分に発注をさえる仕組みが構築できないからである。したがって、食品スーパーマーケットのSVができる販売管理は、コンビニのSVと比べ、圧倒的な不利な環境の中での活動しかできず、十分に機能しない状況といえる。

   では、食品スーパーマーケットは、今後、打つ手がないのか?ひとつは、コンビニのように、すべての商品を販売時点だけでなく、発注まで抑える仕組みを作ってゆく方向を今後とも地道に、丹念に構築してゆくことであろう。特に、食品スーパーマーケットの中核商品、生鮮食品、惣菜において、この仕組みを作り上げることであろう。ただ、生鮮食品、惣菜は店内加工が命であり、ここが販売の中核、利益の源泉であるので、ここは最後まで残すべきであるといえ、むしろ、この支援体制こそ強化すべきであろう。

   したがって、商品管理に関しては、発注を抑えるというもりも、一歩下がり、発想を変え、顧客を抑える方向に食品スーパーマーケットは動くべきではないかと思う。コンビニと食品スーパーマーケットの顧客から見た違いは、顧客の食生活すべてを食品スーパーマーケットは満たすことができるが、コンビニはその一部でしかない。ここ最近、コンビニが生鮮食品、惣菜に力を入れているとはいえ、その差は歴然としている。

   ここから、顧客の食生活を最新のITを活用し、抑え、ここを基点に販売管理を行い、ここにSVにかわる支援組織を作った方が食品スーパーマーケットの販売管理には合っているように思える。食品スーパーマーケットががんばっても発注は売上げの50%から60%が限度であるが、顧客はポイントカードの状況を見れば、80%から90%の売上げを抑えており、ここに、食品スーパーマーケットの、コンビニと決定的に違う、ITを駆使した今後の活性化の活路があるように思う。

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August 27, 2011

帝国データバンク、未上場スーパー売上動向調査公表!

   8/22、帝国データバンクが「全国未上場スーパーの売上高動向調査」を公表した。この調査は、「売上高200億円以上の地場で活躍する全国の主な未上場スーパーを企業概要データベース「COSMOS2」(139万社収録)より120社抽出し、最新期の2010年度(2010年4月期~2011年3月期)を含め3年間の売上高動向を調査、分析した。・・」というものであり、未上場の食品スーパーマーケットの動向を把握する上では、貴重なデータである。そこで、ここでは、上場企業の動向も踏まえ、食品スーパーマーケットの売上高をもとに、日本の食品スーパーマーケットの現況について見てみたい。
 
   まずは、帝国データバンクの調査結果の要旨であるが、未上場の食品スーパーマーケットで年商200億円は120社であり、その売上総額は10兆1,901.65億円であるのとのことである。したがって、1社当たり約850億円となる。店舗数では50店舗前後となろう。また、49都道府県で割ると、約2.5社となるので、各都道府県に2社から3社、群雄割拠している割合である。いかに、食品スーパーマーケットのすそ野が広いかがわかる。ただ、この中には、なぜか、イオン系列のイオンリテール、セブン&アイH系列のイトーヨーカ堂も入っており、しかも、この2社が売上規模では、No.1、No.2であり、1兆7,114.56億円(昨対-7.50%)、1兆3,736.70億円(昨対-1.02%)であり、これらを抜くと、もう少し、全体の規模は小さくなろう。

   ついで、この調査では、食品スーパーマーケットの倒産についても取り上げており、2011年1月から7月までに食品スーパーマーケットが39件倒産し、昨対8.3%増であり、その負債総額は127.21億円、昨対50.0%減であるとのことである。したがって、倒産の規模が小さくなったとのことで、小規模の食品スーパーマーケットの倒産が増加しており、競合状況はより、激化しているといえよう。

   さて、調査結果であるが、今回公表されたプレスリリースには、全国の主な未上場スーパー売上高上位30社の一覧表があり、 2010年度、2009年度、2008年度の3期の売上高が掲載されている。No.1、No.2は先にあげたイオンのイオンリテールとセブン&アイHのイトーヨーカ堂であり、No.3から、実質食品スーパーマーケットが登場する。なお、西友については、全国に370店舗展開しており、上位を占めると思われるが、業績面での対外公表が得られなかったため、調査から除外したとのことである。

   No.3は、実質、食品スーパーマーケットの非上場No.1の売上高であるが、ヨークベニマル3,377.34億円(昨対0.07%)である。したがって、非上場の食品スーパーマーケットでは、3,000億円強が最大規模であるといえる。ちなみに、上場企業では、その他営業収入を加えた営業収入で見ると、イズミ5,023.79億円(昨対2.1%)であり、5,000億円を超える。したがって、イオンリテール、イトーヨーカ堂が、いずれも1兆円を超えており、GMSが、いかに、規模が大きいかがわかる。No.4はベイシア2,771.10億円(昨対1.06%)、No.5は万代2,545.56億円(昨対4.45%)であり、以上がベスト5である。少し気になるのはベイシアの動きであり、昨対1.06%と、やや伸び悩んでおり、主力業態スーパーセンターの新規出店が厳しいようである。

   これに続いて、ベスト10まで見てみたい。No.6はサミット2,314.54億円(昨対2.30%)、No.7はオーケー2,306.52億円(昨対6.90%)、No.8は東急ストア2,280.47億円(昨対-2.84%)、No.9はマルナカ2,068.22億円(昨対0.91%)、そして、No.10は三和1,509.60億円(昨対10.71%)である。こう見ると、全体的には微増であるが、その中ではオーケーの昨対6.90%、三和の10.71%が比較的高い伸びであるといえる。ちょうど、ここまでが売上高1,500億円以上の食品スーパーマーケットである。

   ちなみに、上場食品スーパーマーケットで売上高、ここでは営業収入が1,500億円以上の食品スーパーマーケットは、先のイズミ5,023.79億円を筆頭に、ライフコーポレーション480,821億円、平和堂3,829.55億円、バロー3,791.72億円、イズミヤ3,572.74億円、ヨークベニマル3,433.79億円、マルエツ3,322.27億円、フジ3,038.61億円、アークス3,036.08億円、オークワ2,899.59億円、イオン九州2,546.62億円、マックスバリュ西日本2,444.36億円、ヤオコー2,210.60億円、いなげや2,199.41億円、カスミ2,186.01億円、マックスバリュ東海1,564.10億円である。また、この帝国データバンクの調査結果では公表されていないが、非上場のトライアルカンパニーは2,406.69億円であり、6番目となる規模である。

   このように、帝国データバンクが公表した未上場の食品スーパーマーケットの2010年度の売上高を見ると、年商1,500億円以上が、イオンのイオンリテール、セブン&アイHのイトーヨーカ堂を除き、8社ある。これにトライアルカンパニーを入れて9社となる。一方、上場食品スーパーマーケットは16社であるので、合計、日本の食品スーパーマーケットで年商1,500億円以上の食品スーパーマーケットは25社となる。したがって、49都道府県では、2都道府県に1社の割合であるといえ、この周辺に2から3社、200億円以上の未上場食品スーパーマーケットが存在しているといえ、これが日本の食品スーパーマーケットの勢力分布の現状であるといえよう。

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August 26, 2011

スーパーマーケット販売統計調査、7月度、103.5%!

   日本の食品スーパーマーケット業界をほぼ網羅する2011年7月度の売上速報が日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会、社団法人新日本スーパーマーケット協会から公表された。結果は280社、7,595店舗の集計となるが、売上高87,322,391円、103.5%(既存店101.7%)となり、堅調な伸びを示した。同時に公開された6月度の確報が102.0%(既存店99.8%)であるので、6月度よりも、売上高の伸び率は上昇しており、食品スーパーマーケット業界の売上高は、ここ最近、好調さが継続しているといえよう。

   通常、食品スーパーマーケットの売上速報は全体売上高、既存店売上高が基本であり、それ以外では、売上高の中身である客数、客単価、さらには、客単価の中身であるPI値、平均単価の公開までであることが多い。このスーパーマーケット販売統計調査では、売上高の全体と既存店までではあるが、この数字を様々な角度、特に、食品スーパーマーケットならではの角度から分析がなされているのが特徴である。部門ごと、地域ごと、そして、規模別である。

   日本の食品スーパーマーケットは歴史的に独特な発展を遂げている。特に、世界の食品スーパーマーケットと比べても、生鮮食品、惣菜を取り入れ(ラインロビング)、その売上構成比を約50%にまで高めた業態は類稀であるといえる。また、食品スーパーマーケットはローカル性が極めて高く、各地に独自の商圏を確保した食品スーパーマーケットが厳然と存在し、大手小売業に対し、こと食品に関しては売上高で拮抗、ないしは上回っているのが実態である。

   さらに、欧米諸国の食品スーパーマーケットと比べ、寡占化が北海道等を除き、進んでおらず、中小食品スーパーマーケットが各地域に点在している。したがって、これら日本の食品スーパーマーケットの特徴をしっかりとらえた販売統計が本来必要であるが、このスーパーマーケット販売統計調査が日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会、社団法人新日本スーパーマーケット協会から公表されるまでは、数年に1回公表される経済産業省の商業統計を読み込まなければ、その実態がつかめなかったといえる。したがって、このようなスーパーマーケット販売統計調査が毎月、これだけの規模で、食品スーパーマーケット独自の3つの角度、部門、地域、規模の面から公表されるのは、食品スーパーマーケット業界にとって、実に意義深いことである。

   さて、2011年7月度の速報であるが、まずは、部門別に見てみたい。この7月度の最大の特徴は、すべての部門で全体の数字が昨対を超えたことである。このスーパーマーケット販売統計調査は昨年の4月度から始まったが、この1年強ですべての部門の数字が昨対を超えたのは初めてある。特に、好調な部門は105.8%の惣菜(構成比8.7%)、104.6%の日配(構成比18.3%)、104.2%の食品(構成比26.7%)である。ちなみに、生鮮3品であるが、好調な部門は103.2%の畜産(構成比9.3%)、103.1%の青果(構成比12.2%)である。残念ながら、水産は昨対は超えたが100.8%(構成比8.7%)であり、厳しい状況である。なお、コンビニではたばこの値上げ問題もあり、雑貨が絶好調であるが、食品スーパーマーケットでは非食品は101.8%(構成比10.7%)であり、伸び率は低いといえる。

   次に、地域別であるが、すべてのエリアで昨対を上回っており、全体の103.5%(既存店101.7%)は、特定地域の食品スーパーマーケットが牽引したわけではなく、各地域の食品スーパーマーケット全体が堅調な結果であるといえる。比較的高い伸びを示した地域であるが、104.5%の九州・沖縄エリア、104.4%の関西エリアである。気になる東日本大震災の被災地、北海道・東北エリアであるが、103.9%であり、全体の平均をわずかではあるが、上回っており、堅調な伸びである。ついで、103.6%の東海エリア、102.9%の首都圏エリア、102.7%の北信越エリア、102.6%の中国・四国エリアとなる。

   そして、規模別であるが、ここでもすべての規模で売上高が昨対を上回わった。最も高い伸びを示したのは104.0%の51店舗以上であるが、それ以外の規模でも左程大きな差はなく、103.7%の1~3店舗、103.0%の26~50店舗、102.6%の11~25店舗、102.5%の4~10店舗と続く。いずれの規模でもほぼ全体の平均に近い伸びを示しているといえ、規模による売上高の伸び率には大きな差がないといえよう。

   このように、食品スーパーマーケット業界のほぼ全体を網羅した売上速報が日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会、社団法人新日本スーパーマーケット協会の3団体合同によって公表されたが、結果は全体が103.5%と堅調な数字となった。特に、部門別、地域別、規模別の3つの角度から見ても、この7月度は堅調な数字となっており、バランスのよい売上高の伸びを示したといる。東日本大震災以降、気になる北海道・東北エリア、小規模食品スーパーマーケットの数字も堅調であり、さらに、放射能問題でゆれる青果、畜産、水産の生鮮3品の売上高も堅調である。次回、8月度、そして、年末に向け、この堅調な売上高が、今後とも継続するか、否か、その推移が気になるところである。

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August 25, 2011

ユニバース、2012年度4月度、第1四半期決算、絶好調!

   ユニバースが8/22、2012年4月度、第1四半期決算を公表した。すでに公表されたアークスとの経営統合はこの10/21となる予定であるが、経営統合前、最後の単独での決算発表となる。その結果であるが、営業収益264.50億円(5.1%)、営業利益 12.17億円(68.4% )、経常利益12.59億円(69.0%)、当期純利益7.74億円(162.2%)となり、増収増益、特に、利益がいずれの段階でも大幅増益となる好決算となった。特に、当期純利益は162.2%となったことにより、EPS(1株当たり利益)も72.99円(昨年27.84円)となり、大きく増加した。

   これを受けて、同日、8/22、ユニバースは、「業績予想の修正に関するお知らせ」を公表し、第2四半期決算を上方修正している。その予想であるが、営業収益3.1%増、営業利益42.6%増、経常利益39.9%増、当期純利益42.4%増と、特に、利益が大幅増となる。その理由について、ユニバースは、「平成23年3月11日に発生しました東日本大震災の影響や福島第一原子力発電所の事故に端を発する電力不足や放射能汚染の問題等により、当面、厳しい経済環境が続くものと見込んでおりましたが、大震災直後のライフラインの死守に向けた当社総力を挙げての取り組みが顧客のご支持向上につながったことや、当社商勢圏内の復旧・復興活動に伴う人・物の動きが売上面でプラスに作用していることもあり、・・」とのことである。

   実際、東日本大震災以降の売上高の推移であるが、7月度 106.9%(既存店106.9%)、客数103.5%、客単価103.3%、6月度 104.7%(既存店104.7%)、客数101.9%、客単価 102.7%、5月度 104.1%(既存店104.1%)、客数 100.5%、客単価103.6%という結果である。特に既存店が堅調な伸びを示しており、しかも、客単価の伸びが顕著である。したがって、売上高への貢献以上に、固定費が相対的に下がるために、経費削減効果も大きく、これが大幅な増益をもたらしている要因のひとつといえよう。

      そこで、ユニバースの増益となった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、75.07%(昨年75.91%)となり、0.84ポイント改善した。結果、売上総利益は24.93%(昨年24.09%)となった。ユニバースのこの四半期の営業数値を見てみると、全47店舗の売上高105.2%、その中身は、客数102.0%、客単価103.2%、PI値101.0%、平均単価102.1%である。したがって、客単価が上昇しているが、その要因がPI値もさることながら、平均単価のアップがはかられており、これが原価を押し上げているといえよう。ちなみに、ユニバースの客単価は2,115円、PI値1,210%(12.1個)、平均単価178円であり、通常の食品スーパーマーケットよりも、PI値の高さが光るといえる。  

   一方、経費の方であるが、21.21%(昨年22.17%)と、0.96ポイント削減している。既存店が堅調に推移したことが大きいといえるが、さらに、「今夏の電気使用制限に対する取組みについては、店舗及び本部で個別事業所毎に使用電力の目標設定を行うとともに、電気使用量の監視警報機を設置して電力使用量が規定値を超えないように監視するかたわら、食品の安全・安心対策に万全を期すことを最優先に、店舗内照明の間引き消灯や、冷凍・冷蔵ケースの霜取り時間の分散化を図る等、節電対策を実施しました。」とのことで、節電に力を入れたとのことである。  

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、3.72%(昨年1.92%)となり、原価、経費双方がバランスよく改善したため、大幅な増加となった。そして、これに不動産収入、物流収入等の、その他営業収益が0.94%(昨年0.99%)加わり、営業利益は4.66%(昨年2.91%)と大きく改善した。それにしても、これだけ、営業利益が改善することは、食品スーパーマーケットにとっては稀であり、それだけ、東日本大震災が食品スーパーマーケットの構造変化を起こしているといえ、一時的な影響ではないといえよう。  

   ちなみに、ユニバースは、営業内容だけでなく、財務内容も充実しており、この第1四半期決算においても、自己資本比率は65.6%(昨年63.1%)となり、昨年を上回り、極めて高い水準である。食品スーパーマーケットの2011年度決算公開企業約50社の平均は40.8%であり、この数字はベスト5に入る高さである。今期は、先の中間決算における上方修正が示すように、大幅な増益が期待されるため、さらに、自己資本比率の増加が見込まれ、財務の健全化が一層進むものと予想される。

      このように、ユニバースの2012年度4月期の第1四半期決算は増収増益、特に、利益が大幅な増益となる好決算となった。原価、経費、ともにバランスよく改善しての増益であり、食品スーパーマーケットとしては、理想的な収益改善といえる。しかも、同時に、中間決算を上方修正しており、この高収益が短期に終わらず、中期的に継続すると経営判断しており、この好調な決算は一時的なものではなく、構造的な底上げであるといえる。それだけ、東日本大震災がもたらしたユニバースの経営に与えた影響は大きかったといえよう。ただ、本決算予想は修正しておらず、長期的には慎重な見方をしている。ユニバースは、この10月にはアークスとの経営統合が控えているが、その統合効果がどう本決算に反映され、この好調な流れが継続するのか、その動向に注目である。

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August 24, 2011

ID-POS分析から、商品力を考えて見る!

   商品力とは何か。古くて新しい言葉のひとつであるが、中々一言で言い表すのは難しい。良く使われる表現としては、売れる力、売れる勢い、顧客から支持される力等があるかと思う。また、商品力を示す数字としては、売上高、PI値などが充てられる場合が多い。そして、ここから売れ筋、逆に死に筋等の言葉も派生し、商品力は何となく分かるあいまいな理解の上に存在しているといえる。そこで、ここでは、この商品力について、改めて、最新の研究成果、ID-POS分析の観点から考えてみたい。

   商品力は、力という言葉がついている通り、何らかの力、パワーを示したものであるといえる。したがって、そのパワーを数字としてとらえることが必要である。そして、数字として捉える上においては、商品ごとの比較ができ、しかも、これまでの数字と比べることが可能なことが課題となる。したがって、商品力は数字で判断し、数字で比較してゆくことになるが、食品スーパーマーケットで商品を数字で判断し、比較できるのは単品管理ができるPOSデータしかない。

   そこで、POSデータで商品力を定義すると、どうなるかを考えて見たい。通常のPOS分析では商品から得られる数字は売上金額、売上数量、レシート枚数の3つである。ただ、このレシート枚数はほとんどのPOS分析では、総レシート枚数のみであり、商品ごとのレシート枚数が把握できるのは稀である。ここから、商品力を表そうとすると、商品ごとの売上金額を売上数量とレシート枚数に分解して、その数字から商品力を定義することになる。

   実際に分解して見ると、まずは、売上金額=売上数量×(売上金額/売上数量)=売上数量×平均単価となる。ここから商品力を定義すると、売上金額の高い商品となり、さらには、その中身まで踏み込めば、売上金額が高くなるということは、売上数量が高くて売上金額が高い場合、平均単価が高くて売上金額が高い場合、そして、双方が高く売上金額が高い場合と3つの場合があるので、ただ単に売上金額が高いだけでなく、その中身にまで踏み込み、売上数量、平均単価との関係で商品力を定義することになる。ここから商品力は、売上数量に支えられた商品力、平均単価に支えられた商品力、双方に支えられた商品力とがあることになり、商品力の強さの源泉が示されることになる。もちろん、商品力が高いか低いかは、何らかの基準が必要になるので、原則、平均値と比べるか、過去と比べるかとなる。

   そこで、もう一歩、レシート枚数が入るとどうなるかであるが、先ほどの右辺にレシート枚数が組み込まれることになる。実際に、売上金額を分解して見ると、売上金額=レシート枚数×(売上数量×(売上金額/売上数量))/レシート枚数となる。したがって、これを少し変形すると、売上金額=レシート枚数×(売上数量/レシート枚数)×(売上金額/売上数量)となるので、売上金額=レシート枚数×PI値×平均単価となる。ここから商品力の定義は、先ほどの売上数量、平均単価の定義から、もう一歩踏み込み、売上金額を引き上げることについては共通であるが、その中身が、レシート枚数に支えられた商品力、PI値に支えられた商品力、そして、平均単価に支えられた商品力、さらには、この3つの指標の組み合わせとなる。

   通常は、ここで商品力の定義は終わるが、いずれも、商品力は売上金額が焦点となっており、その売上金額をどう分解するか、言い換えれば、どう解釈するかで、その定義が深まってゆくことになる。そこで、ID-POS分析であるが、ID-POS分析の最大のポイントは、売上金額をIDを基点にして分解することであるので、先の、売上数量、レシートに加え、IDが加わることになる。

   実際にIDを加えてみると、売上金額=ID×(レシート枚数×PI値×平均単価)/IDとなり、これを変形すると、売上金額=ID×(レシート枚数)/ID×PI値×平均単価となり、結果、売上金額=ID×ID客数PI値×PI値×平均単価となる。したがって、商品力の定義は、同じ、売上金額を引き上げることであるが、その中身は、IDに支えられた小商品力、ID客数PI値に支えられた商品力が加わることになる。

   これがID-POS分析の研究成果であるといえ、これまで、商品力と顧客、すなわち、IDとは結びつかなかったが、ID-POS分析が可能になって、その関係が明確になり、さらに、ID客数PI値という、ID当たりのレシート枚数、すなわち、購入頻度が加わることになる。したがって、この時の商品力は、同じ、売上金額を引き上げることではあるが、PI値、平均単価に加え、ID、ID客数PI値(購入頻度)が新たに加わり、商品力をはじめて、顧客、個々人の視点とその購入頻度から定義すること可能となる。

   ここへ来て、商品力とは、顧客を増やすことにより、売上金額を引き上げることができ、顧客の購入頻度を引き上げることによっても、売上金額を引き上げることができ、さらに、これまでのように、PI値、平均単価をアップさせることによっても、売上金額を引き上げることができる言葉となる。しかも、その言葉だけでなく、数値での検証も可能となり、商品力のあいあいさが消え、顧客からのアプローチと商品からのアプローチ、双方のアプローチを通じて、商品力を定義し、実際に、売上金額を引き上げてゆくことが可能となる。

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August 23, 2011

コンビニ、売上速報、2011年7月度、111.5%、絶好調!

   コンビニの2011年7月度の売上速報が8/22、(社) 日本フランチャイズチェーン協会から公表された。この売上速報は、ココストア、サークルKサンクス、スリーエフ、セイコーマート、セブン-イレブン・ジャパン、デイリーヤマザキ、ファミリーマート、ポプラ、ミニストップ、ローソンの10社、43,690店舗を集計したものであり、コンビニ業界最大規模の統計データであり、信頼度の高い数値である。結果は、全体が111.5%、既存店が109.5%となり、3/11の東日本大震災以降、最高の伸び率となった。この7月度は、食品スーパーマーケット業界も好調な売上高であり、食品関連の小売業は絶好調といえる。

   この7月度の売上高が115.5%(既存店109.5%)に至る東日本大震災以降の推移であるが、6月度111.1%(既存店109.0%)、5月度107.5%(既存店105.7%)、4月度103.3%(101.6%)、そして、3月度109.2%(107.7%)という結果である。4月度はやや伸び悩んだが、それ以外はいずれも高い伸び率であり、しかも、既存店が全体を力強く支えているのが特徴である。特に、この7月度の既存店は109.5%であり、ほぼ2桁の伸び率であり、既存店の強さが光っている。

   そこで、その要因を客数、客単価の面から見てみたい。まずは、この7月度の客数であるが、103.7%(既存店102.4%)であり、微増である。この客数も、売上高同様、東日本大震災以降の推移を見てみると、6月度104.1%(既存店102.7%)、5月度102.4%(既存店101.1%)、4月度101.5%(100.2%)、そして、3月度100.5%(100.6%)という結果である。いずれも微増であり、しかも3月度、4月度は昨対ギリギリであり、厳しい客数の伸びである。したがって、東日本大震災以降、売上高が好調な要因は客数ではないといえる。

   一般に小売業の客数、特に全体の客数が伸びる要因は新規出店にあるが、コンビニも例外ではない。そこで、この7月度の店舗数を見ると、101.6%であり、店舗はほとんど増加していないことがわかる。コンビニは食品スーパーマーケットと違い、スクラップ&ビルドが激しいため、101.6%は新規出店が少なかったわけではなく、それ以上に閉店が多かったことも考えられるので、必ずしも、新店が少なかったわけではないといえるが、それでも、結果として、微増であり、これが客数が伸び悩んだ要因といえよう。

   一方、客単価の方であるが、この7月度は107.5%(既存店106.9%)であり、客数と比べ、その伸び率の高さが際立っている。これも、東日本大震災以降の推移を見てみると、6月度106.7%(既存店106.1%)、5月度105.0%(既存店104.5%)、4月度101.7%(101.4%)、そして、3月度108.7%(108.3%)という結果である。この7月度は3月ほどではないが、それに次ぐ高い伸び率である。したがって、売上高の高い伸び率は、この客単価に支えされているといってもよく、しかも、既存店の客単価の高さによるところが大きいといえる。

   小売業では一般に客単価が伸びる要因はマーチャンダイジングによるところが大きく、コンビニにおいても、客単価アップにおけるマーチャンダイジングの重要性は同様である。そこで、客単価が伸びた要因を商品から明らかにしてみたい。(社) 日本フランチャイズチェーン協会によれば、「上旬には梅雨も明け、月平均気温は北日本から西日本にかけて高かった。中旬後半は台風による大雨や、新潟・福島豪雨が発生したが、前月に続き、冷し麺やソフトドリンクなどの夏物商材が好調であった。」とのことである。

   実際、冷し麺が属する日配食品の売上高は107.1%と高い伸びを示しているが、残念ながら全体平均の売上高111.5%を下回る数字である。また、ソフトドリンクの属する加工食品も100.7%と、わずかな伸びである。したがって、カテゴリーとしては、冷し麺、ソフトドリンクは大きく伸びたのではないかと思われるが、残念ながら、これらが属する部門、日配食品、加工食品は全体の平均よりも下がっており、客単価の好調さはこれ以外の部門によるところが大きいといえる。

   コンビニはこの2つの部門以外では、サービス部門と非食品部門がある。そこで、この2つの部門のこの7月度の売上高の結果を見てみると、サービス部門114.3%、非食品部門126.1%であり、いずれも、全体平均111.5%を上回っており、この7月度は、この2つの部門の貢献が大きかったといえる。ただ、サービス部門の売上構成比はわずか4.4%であるので、その貢献度は低い。一方、非食品の売上構成比は34.4%であるので、結果、この7月度の客単価を力強く牽引したのは、非食品であるといえる。しかも、非食品の東日本大震災以降の推移は、6月度128.6%、5月度122.9%、4月度106.2%、そして、3月度123.8%という結果である。したがって、コンビニの客単価を牽引してきたのは、この7月度も含め、コンビニの非食品部門であるといえる。ちなみに、非食品部門の主要カテゴリーはたばこ、ペットフード、乾電池、テープ、CD、電球・蛍光灯、・・等である。

   このように、2011年7月度のコンビニの売上高は111.5%(既存店109.5%)と絶好調である。特に既存店が大きく伸びたことが要因であり、その中身は客数よりも、客単価が伸びており、商品群では非食品が異常な伸びである。コンビニの主力商品は、おにぎり、弁当を中心とするファストフードから、たばこを中心とする雑貨に大きく転じたといえる状況であり、これが東日本大震災がもたらしたコンビニの構造変化といえよう。次回、猛暑がどのような影響を与えるか、その結果が気になるところである。

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August 22, 2011

食品スーパー、売上速報、2011年7月度、好調!

   2011年7月度の主要食品スーパーマーケットの売上速報を集計した。集計企業は全部で23社、店舗数で2,000店舗を超える。結果は全体が104.9%、既存店が102.8%と好調な数字となった。ここ最近の結果を見ると、6月度102.0%(既存店100.2%)、5月度101.9%(既存店99.8%)、4月度105.0%(既存店100.8%)、そして、3月度110.2%(既存店105.0%)と、震災直後、3月度、4月度に次ぐ、高い伸び率であり、食品スーパーマーケット業界の好調さを裏付ける結果となった。その中身を客数、客単価で見てみると、客数102.6%(既存店100.5%)、客単価102.4%(既存店102.2%)という結果であり、客数、客単価ともに堅調な伸びであり、しかも、既存店の客単価が好調であり、理想的な売上げの伸びを示しているといえる。

   一般に食品スーパーマーケットの売上げが伸びている要因は、新店によるところが大きい。実際、この7月度全体の客数が102.6%と堅調な伸びであることからも、全体104.9%の伸びの内、新店の要因が半分であるといえる。ただ、この7月度は既存店の客単価が102.2%と伸びたことが、もう一方の要因であることから、既存店が伸びたことも大きいといえる。したがって、震災以降、既存店の活性化が効果を発揮しているといえ、食品スーパーマーケット業界にとっては、東日本大震災は、既存店の活性化に本格的に取り組む契機となったものといえよう。ちなみに、この23社の中では、数社、PI値、平均単価の数字も公表しているが、その結果を見ると、PI値102.1%(既存店101.9%)、平均単価99.8%(既存店100.1%)であり、既存店のPI値が伸びているといえ、マーチャンダイジングの改善が確実に進みつつあるといえよう。

   そこで、この23社、個々の食品スーパーマーケットの売上速報の結果を見てみたい。No.1は、山形県、宮城県と大震災の被災地に展開し、ここ最近連続してトップを維持しているヤマザワであり、119.1%(既存店117.0%)という結果である。ヤマザワは既存店が117.0%と異常値であり、通常ではありあえない高い数字である。ヤマザワの過去7年間の数字をさかもどってみても、これだけ高い既存店の伸びを示したのははじめてであり、すごい伸びである。客数、客単価については、客数111.2%(既存店109.1%)、客単価107.3%(既存店107.5%)であり、既存店の客数、客単価ともにバランスよく改善しており、理想的な既存店の活性化が進んでいるといえよう。6月度114.2%(既存店112.3%)、5月度112.1%(既存店110.2%)であり、安定した伸びを維持しており、当面、この好調さが続くものといえよう。

   No.2は食品を強く打ち出しているホームセンター、アークランドサカモトであり、116.5%(109.4%)である。ヤマザワ同様、既存店の伸びが全体の伸びを力強く支えており、好調である。特に、アークランドサカモトは被災地、東北地方へも出店しており、ホームセンターであるがゆえに、復興需要も大きいといえよう。既存店の客数105.7%、客単価103.5%と、ヤマザワ同様、客数、客単価ともにバランスの良い伸びである。

   ついで、110%以上の好調な食品スーパーマーケットを見てみたい。No.3はバロー113.7%(既存店104.8%)、No.4はヤオコー112.3%(既存店105.1%)、No.5はハローズ110.6%(既存店104.2%)である。いずれも、既存店が好調であるが、この3社は特に、新店も順調に出店しており、これが110%以上に売上げを押し上げている要因である。そして、105%以上の食品スーパーマーケットであるが、No.6スーパーバリュー109.2%(既存店106.9%)、No.7マックスバリュ西日本108.2%(既存店101.1%)、No.8ユニバース106.9%(既存店106.9%)、No.9マックスバリュ北海道106.2%(既存店105.8%)、No.10マックスバリュ東海105.1%(既存店99.4%)という結果である。マックスバリュ西日本、マックスバリュ東海の既存店が伸び悩んでいるのが気になるが、105%以上が合計10社であり、今回集計企業は23社であるので、大半が105%を超えており、全体的に好調さが鮮明である。

   一方、この7月度、売上げが伸び悩んだ食品スーパーマーケットであるが、エコス99.2%(既存店100.0%)、マルエツ99.0%(既存店96.7%)、Olympic:フード90.9%(既存店90.9%)、トーホー90.8%(既存店96.5%)という結果である。いずれも、既存店の伸びが厳しい状況である。こう見ると、この7月度の売上げ伸率の差は明らかに既存店にあるといえ、既存店の活性化が売上げの鍵を握っているといえよう。

   このように、この7月度の食品スーパーマーケットの売上げは、一部、伸び悩んだ食品スーパーマーケットもあるが、大半は既存店が好調に推移し、全体を押し上げているのが特徴である。この数ケ月、ほぼ同じ傾向が続いており、当面、食品スーパーマーケット業界の売上げの好調さが続きそうである。なお、先にあげた食品スーパーマーケット以外の売上速報の結果であるが、ダイイチ 104.1%(既存店104.1%)、 カスミ103.6、いなげや103.2%(既存店101.0%)、マックスバリュ東北102.8%(既存店102.1%)、オオゼキ102.5%(既存店100.3%)、イズミ102.0%(既存店101.8%)、マックスバリュ中部101.8%(既存店101.9%)、PLANT 100.3%である。

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August 21, 2011

時間とID-POS分析、頻度をどう数値化するか?

   通常、POS分析に時間を組み入れる場合、絶対時間を組みいれるのが通常であり、これ以外に時間の活用方法はない。したがって、この絶対時間を活用する最高のノウハウが52週のマーチャンダイジングであり、毎週、毎週、マーチャンダイジング戦略を見直し、最大の売上げを、年間、すなわち、52週間続けてゆくことにより、年間の売上げを最高にもって行こうとする。この時、最大のポイントは52週間、最大のピークとなる商品を見つけ出すことであり、その商品が見つかれば、全力でその商品を強化することになる。通常のPOS分析では時間はこれ以外に考えられないので、いわば、この絶対時間を活用せざるをえないのが実態であり、限界であるといえる。

   これに対して、ID-POS分析ではどうか。ID-POS分析では当然、この絶対時間、すなわち、時、日、週、月、年、・・等をもちろん活用するが、これ以外にもうひとつ、個人個人、すなわち、IDの時間、いわば、相対時間を活用することがポイントであり、このID-POS分析特有の相対時間をどう活用し、売上げをあげるかが課題となる。

   ID-POS分析が通常のPOS分析と決定的に違う点は、顧客、すなわち、個人個人のIDが把握でき、結果、IDごとの購入履歴が把握できることにある。したがって、通常のPOS分析ではレシートは単なる山でしかく、そこには何の脈絡もなかったものが、ID-POS分析が可能となり、レシート1枚1枚にIDがふられるようになると、レシートの山が整然とIDごとに並ぶことになる。しかも、購入履歴順にレシートが並び、レシート1枚1枚の位置がIDと購入履歴で確定することが可能となる。結果、レシートの膨大な山は、IDごとに、商品の購入履歴順に並ぶことになり、レシート1枚1枚に見事な秩序ができあがる。しかも、レシートごとに並べることもできるが、レシートの中の商品1品1品順に並べることもできる。

   さて、この時、よく問題になるのが、レシートを日別に並べるか、月別に並べるかであるが、結論からいえば、この時間、すなわち、絶対時間は全く意味がない。並べ方は、購入履歴順に並べれば良く、この順番を間違えなければ、絶対時間はどうでも良い。ID-POS分析ではその意味で絶対時間は存在しない。あるのは、IDとレシートと、その順番であり、レシートをID順に、購入履歴順にひらすら並べて行けば良い。存在するのは時間ではなく、空間である。では、どこまでレシートを並べるか、永遠である。レシートが発生する限り、並べ続け、そこには終わりがない。

   そこで、ID-POS分析における時間であるが、そもそも時間は存在せず、あるのは空間だけであるので、発生し続けるレシートをどこで止めるかである。いわば、一瞬の間がポイントとなる。この一瞬の間、ある一瞬、どこで切るかが、ポイントである。これを絶対時間で見れば、1秒かもしれないし、1時間かもしれないし、1日かもしれない。あるいは、1年、10年、100年かもしれない。絶対時間はどこでも良く、どこかの一瞬で良い。そして、この時、IDの購入履歴、すなわち、レシートの枚数が決まる。レシートが発生しはじめてから、ある一瞬までのレシートの枚数である。これがID-POS分析の時間である。

   ちなみに、ID-POS分析ではこの時間のことを頻度と呼ぶ。頻度とは、レシートが発生してから、ある一瞬までのレシートの枚数のことであり、これがID-POS分析における時間の概念である。したがって、ID-POS分析における時間は、IDによって違う。あるIDは100枚が頻度である場合もあれば、あるIDは、同じ一瞬までに200枚が頻度である場合もある。したがって、この2つのIDはID-POS分析では時間が倍違うことになり、頻度100枚のIDは頻度200枚のIDよりも、ゆっくり時間が動いていることになり、逆に、頻度200枚のIDは、頻度100枚のIDよりも、速く動いていることになる。

   したがって、時間はIDの数だけ存在し、そこには絶対時間は存在せず、相対的な時間のみが存在するだけであり、ID-POS分析では、ID、それぞれが固有の時間をもっていることになる。そして、このおのおの時間を永くすることと、速めることがID-POS分析の売上げを上げる秘訣であり、永くすることがレシートの枚数を永遠に増やすことであり、速くすることがレシートの一定期間における枚数を増やすことである。その意味でID-POS分析では時空が混然一体となっており、ID個々の時空にプラスの方向に力を加えた時に売上げはあがり、マイナスの方向に力が加わった時に売上げが下がることになる。

   このように、ID-POS分析は通常のPOS分析と違い、時間そのものが、絶対時間から相対時間へと変化し、しかも、時間と空間が一体化し、あるのは、無限に生み出されるレシートのみであるが、それが、ID順に、さらに、購入履歴順に整然と並んだ世界となる。この整然と並んだレシートをもとに、その後発生するレシートの枚数を増やし、その発生する速度を引き上げることができた時に、売上げが上がり、逆に、レシートの枚数が減り、その速度が落ちた時に売上げが減る、これがID-POS分析の売上げの構造である。ID-POS分析に取り組む際は、この時空の原理をしっかりつかみ、戦略、戦術を考え、実戦することが要諦である。

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August 20, 2011

CF、ウォルマートの2011年度、中間決算を見る!

   前回のブログでウォルマートの2011年度、中間決算について、特に、P/L(損益計算書)に焦点を当て、解説した。そこで、今回は、CF(キャッシュフロー計算書)を中心に、一部、必要に応じてB/S(貸借対照表)についても見てみたい。特に、CFを見ることで、ウォルマートがこの中間期において獲得したキャッシュをどこに重点的に配分しているかがわかり、ウォルマートの経営戦略を垣間見ることができる。また、B/Sを見ることで、ウォルマートの出店余力等を推しはかることができ、今後の中長期的な成長戦略をうらなうことができる。ウォルマートは世界最大の小売業であり、そのCF、B/Sの現状を把握することは、日本の食品スーパーマーケット業界にとっても参考になるのではないかと思う。

   さて、ウォルマートのCFについて見てみたい。CFは営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、そして、財務活動によるキャッシュフローと、大きく3つにわかれる。まずは、営業活動によるキャッシュフローであるが、97.08億ドル(昨年100.19億ドル)である。現在は円高、1ドル=76円前後で動いているので、円換算では約7,400億円であるが、ドルでは約100億ドルであり、莫大なキャッシュを獲得していることがわかる。その中身であるが、当期純利益が75.15億ドル(昨年71.91億ドル)、減価償却費が40.27億ドル(昨年37.48億ドル)であり、この2項目で大半を占める。約2対1の割合である。これ以外では在庫が-9.09億ドル(昨年-20.86億ドル)と今期は半減したが、キャッシュフォローに影響を与える項目である。

   そして、ここからがキャッシュの配分となるが、小売業最大の投資、新規出店関連を含む投資活動によるキャッシュフローであるが、-88.92億ドル(昨年-55.81億ドル)と大きく増加し、営業活動によるキャッシュフローの大半を占めるところまで投資をしている。その中身であるが、新規出店関連への投資が-56.71億ドル(昨年-55.54億ドル)であり、全体の約60%強である。ほぼ、昨年並みの投資である。営業活動によるキャッシュフローで見ても約60%であり、昨年も同様なことから、ウォルマートが新規出店関連へ、獲得したキャッシュの約60%を配分していることがわかる。結果、合計のフリーキャッシュフローは8.16億ドル(昨年44.38億ドル)と激減したが、これは、今期はM&A関連の投資が-35.01億ドル(昨年-1.08億ドル)発生したためである。

   ついで、財務活動によるキャッシュフローであるが、-2.06億ドル(-20.45億ドル)と、昨年の約1/10である。その中身であるが、まずは何といっても配当であるが、-25.41億ドル(昨年-22.60億ドル)と、昨年よりも増加している。営業活動によるキャッシュフローの26.17%であり、いかに、配当を重視しているかがわかる。前回のブログでも取り上げたがEPS(1株当たりの利益)を冒頭に掲げる意義がここにあるといえよう。ただ、フリーキャッシュフローは8.16億ドルであるので、当然、この配当分には足りない。そこで、その中身を見ると、有利子負債関連が63.90億ドル(昨年79.14億ドル)と多額の資金調達をしており、これで、配当を賄ったという状況であり、苦しいやりくりといえる。また、自社株買いも-35.40億ドル(昨年-71.12億ドル)と昨年よりは少ないが、多額に上っており、厳しい財務活動によるキャッシュフローであるといえる。

   結果、トータルキャッシュフローは7.07億ドル(昨年22.88億ドル)となった。こう見ると、配当、新規出店への投資、自社株買への配分が手厚くなっており、そのキャッシュを営業活動によるキャッシュフローでは賄うことができず、結果、新たに借入を起こさざるを得ない財務状況にあるといえ、厳しいキャッシュのやりくりである。

   これを受けて、B/Sにおいて気になる項目であるが、まずは、純資産比率が37.61%(昨年37.80%)と、ほぼ昨年並みの水準は確保したが、もう少し、比率を高めたいところであろう。その要因であるが、負債の主要項目、有利子負債が534.60億ドル(昨年458.14億ドル)と増加し、総資産1,936.56億ドルの27.60%となったことであり、やや重くなり、財務を圧迫しているといえる。一方、資産関連であるが、出店関連の資産、土地、建物等であるが、1,539.85億ドル(昨年1,421.23億ドル)であり、総資産の79.51%である。したがって、差し引き、出店余力を算出すると、-41.90%であり、大きく負債に依存している財務構造であり、ウォルマートとしては、純資産を増やし、安定した財務基盤を確立し、成長戦略をすすめてゆきたいところであろう。

   このように、ウォルマートの2011年1月期の中間決算を見ると、新規出店関連、配当、自社株買への配分が大きな比重を占めており、これを営業活動によるキャッシュフローでは賄えない状況にある。したがって、新たな資金調達、借入をせざるをえない状況にあるといえ、結果、財務を圧迫しつつあるといえる。ウォルマートが今後とも安定的な成長を継続してゆくためにも、財務改善が課題といえ、財務戦略の見直しが必須といえよう。今期、後半に向けて、ウォルマートが引き続き成長戦略をとるか、財務改善戦略をとるか、その動向に注目である。

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August 19, 2011

ウォルマート、2011年度、中間決算、海外依存鮮明!

   ウォルマートが8/16、2011年1月期の中間決算を公表した。中間決算であるので、売上高だけでなく、P/L(損益計算書)、B/S(貸借対照表)、そして、CF(キャッシュフロー計算書)の財務3表、すべて公表された。この中で、ウォルマートが最も重視しているのはP/LのEPS(1株当たりの利益)である。ウォルマートの決算書ではEPSがP/Lの当期純利益の次に計算されており、日本のP/Lとは大きく違うところである。日本のP/Lでは当期純利益で終わるが、ウォルマートのP/Lは当期純利益の次がEPSであり、最後が株式となる。したがって、P/Lはウォルマートが事業活動によって獲得した利益を表すだけでなく、その利益がウォルマートの株主にどのくらい貢献したのかを表すものでもあり、株主を強く意識して作成している財務諸表であるといえる。

   したがって、この中間決算のウォルマートの最初のコメントは、「Walmart reported second quarter diluted earnings per share (EPS) from continuing operations of $1.09, up 12.4 percent over the $0.97 per share from continuing operations last year.」である。EPSが昨対12.4%アップになったというものであり、売上高でも、営業利益でも、当期純利益でもなく、EPS(1株当たりの利益)となる。ここが、日本の決算発表と決定的に違う点であり、株式会社としての本質、株主により設立され、株主の委託により、営業活動、財産管理、キャッシュの運用がなされていることが改めて確認できるコメントといえる。

   さて、まずは、ウォルマートの売上高について見てみたい。なお、ここからの数字はすべて、6ケ月累計で見てゆく。ウォルマートは売上高を全体、そして、既存店(国内)と分けて公表している。全体であるが、大きく、3つにわかれる。ウォルマートの中核業態、スーパーセンター、ディスカウントストア、食品スーパーマーケット等のウォルマート部門、海外事業部門、そして、サムズクラブ部門である。その結果であるが、ウォルマート部門0.5%増(売上構成比60.1%)、海外部門13.9%増(売上構成比27.3%)、サムズクラブ部門9.4%増(売上構成比12.4%)であり、合計4.9%増、2120.53億ドルである。現在、ドル安ということもあるが、それにしても、海外部門の貢献度が大きく、いまやウォルマートを牽引しているのは海外部門であるといえる。

   そこで、国内、すなわち、既存店の結果であるが、ウォルマート部門0.0%増、サムズクラブ部門2.5%増、合計0.4%増である。特にウォルマート部門は全体が0.5%増、既存店が0.0%増であるので、いかに厳しい状況にあるかがわかる。したがって、売上高では、全体は4.9%と堅調な伸びとなったが、その中身は、海外部門とサムズ部門、特に、海外部門に依存しており、中核のウォルマート部門は既存店、新店を含めた全体ともに、厳しい状況であるといえる。

   では、この中間決算のP/L全体はどのような結果であったかであるが、営業利益を見てみたい。まずは、原価であるが、75.42%(昨年75.23%)と、0.19ポイント上昇している。結果、売上総利益は24.58%(昨年24.77%)となった。一方、経費の方であるが、19.48%(昨年19.57%)と、0.09ポイントと、わずかではあるが削減した。それにしても、年商約40兆円の小売業であるにも関わらず、その経費比率が20%を切る低い数字であり、いかに、コストコントロールが徹底しているかがわかる。ここがウォルマートの利益の源泉といえ、改めて、小売業はコストコントロールが課題であるといえよう。結果、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は5.10%(昨年5.20%)となり、やや下がったが、依然として5%水準を超えており、高い収益力である。そして、これに、その他営業収入が0.70%(昨年0.70%)加わり、営業利益は5.80%(昨年5.90%)となり、わずかではあるが、率では、減益となった。ただ、高では、売上高が4.9%増となったため、3.0%の増益である。営業利益率のマイナスを売上高のプラスでカバーし、営業利益高をプラスにもっていった構図である。

   以上が営業利益であるが、ウォルマートのP/Lは米国会計基準であるため、日本のP/Lのように、次に、経常利益、そして、当期純利益へと進んでゆくわけではない。営業利益の次は、資本関係の収入が加わり、税引き前利益が算出される。IFRS(国際会計基準)の包括利益に当たる利益である。そして、さらに、税金を差し引き、最終利益が計算される。これがこの中間決算でのウォルマートが獲得した利益である。ちなみに、冒頭で解説したEPSは、この利益を株式数で割ったものである。

   このように、アメリカをはじめ、日本以外の決算を見る時には、若干、注意が必要であり、しかも、決算の中で経営者が重視する指標が全くといって良いほど違いがある。ウォルマートのこの中間決算でも、決算の冒頭で打ち出す数字はEPS(1株当たり利益)であり、株主を強く意識していることがわかる。この数字を下げないことが、経営での最優先事項といえる。日本の決算書でもEPSは開示されているが、これを強調する経営者のコメントは皆無であるといえる。日本ではもっぱら、増収増益か否かが重視され、これ以外の数字はあまり重視されないといえる。企業経営、企業統治の文化の違いともいえよう。なお、ウォルマートの中間決算のB/S(貸借対照表)、CF(キャッシュフロー計算書)については、改めて取り上げたい。

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August 18, 2011

百貨店とID-POS分析、日経MJ売上ランキングを見る!

   長年、食品スーパーマーケットのPOS分析に取り組んできた。単純な売上金額、売上数量の分析からはじまり、レシートを活用したPI値の分析に行きつき、そして、最近ではIDを基点にしたID-POS分析に至っている。ここへ来て、やっと、食品スーパーマーケットから他の小売業についてもPOS分析が可能になりつつある。特に、小売業の中でも、1店舗当たり最大規模を誇る百貨店の分析は通常のPOS分析では全く歯が立たない状況であったが、ID-POS分析を活用すれば、百貨店のPOS分析も可能であることが明らかになりつつある。

   さて、8/17、日経MJで2010年度の百貨店の店舗別の売上高ランキングが公表された。その中で、2010年度の百貨店業界の経営戦略の特徴をまとめている。見出しは、「百貨店改装「定石」崩す(テナント入れ替え)」と題し、日経MJの1面で特集記事を掲載している。特に、改装を4つのパターンに分けて、図式化しており、狙いを絞った改装が増えているとのことである。

   その4つとは、専門店導入型(客層拡大、安定した賃料収入)、サービス強化型(固定客化)、品ぞろえ特化型(他店とすみ分け)、そして、自主編集拡充型(商品に独自性)である。実に興味深い分類であり、その事例として、専門店導入型では、大丸大阪・梅田店(11年4月)、東武百貨店池袋本店(11年9月予定)、サービス強化型では西武池袋本店(10年9月)、松坂屋銀座店(17年予定)、品ぞろえ特化型では有楽町阪急(11年秋予定)、松屋浅草店(10年6月)、そして、自主編集拡充型では三越銀座店(10年9月)、高島屋大阪店(11年3月)が当てはまるという。

   ちなみに、この事例の各百貨店の2010年度の売上高ランキングであるが、大丸大阪・梅田店(49位、372.86億円、-31.1%、12,247坪、304万円/坪)、東武百貨店池袋本店(9位、1,092.59億円、-3.2%、25,140坪、434万円/坪)、西武池袋本店(3位、1,672.68億円、4.2%、2,2367坪、747万円/坪)、松坂屋銀座店(145位、121.99億円、-14.6%、7,682坪、158万円/坪)、有楽町阪急(172位、84.62億円、-14.4%、7,682坪、244万円/坪)、松屋浅草店(186位、72.53億円、-42.4%、7,404坪、97万円/坪)、三越銀座店(39位、446.79億円、8.6%、10,909坪、409万円/坪)、高島屋大阪店(7位、1,149.07億円6.5%、22,081坪、520万円/坪)という結果である。

   そこで、この4つの分類であるが、実は、これがID-POS分析と合致している。ID-POS分析の基本方程式は売上高=ID×ID金額PI値=ID×ID客数PI値×金額PI値=ID×ID客数PI値×PI値×平均単価となる。突き詰めれば、ID-POS分析における売上げは、この4つの要素で決まるといってよい。ID、ID客数PI値、PI値、平均単価である。そして、あとの2つ、PI値、平均単価は通常のPOS分析でも分析可能な指標であるが、IDとID客数PI値は、IDが把握できるID-POS分析でなければ分析できない指標であり、ここが通常のPOS分析とID-POS分析を分ける境目といえる。

   この観点から、先の日経MJの百貨店の4つの改装パターンを見た時に、実に、見事に、ID-POS分析の4つの要素が当てはまる。ID=専門店導入型(客層拡大、安定した賃料収入)、ID客数PI値=サービス強化型(固定客化)、PI値=品ぞろえ特化型(他店とすみ分け)、そして、平均単価=自主編集拡充型(商品に独自性)である。したがって、ID-POS分析の観点から見れば、この4つの改装パターンは、ID-POS分析の基本方程式に沿った政策といえ、実に、理に適った改装パターンであるといえる。

   ID-POS分析を用いた売上げアップも、まさに、この4つに取り組むことがポイントであり、まずは、IDを増やす、そして、IDの来店頻度(購入頻度)を上げる。そして、これが達成できた段階で、ID当たりの買上点数、すなわち、PI値アップを試み、最後に、付加価値の高い商品へのシフトをはかり、ID当たりの平均単価を引き上げることである。これはIDに特化したマーチャンダイジング政策であるが、これを改装にまで応用すれば、先の4つの改装パターンとなり、改装の狙いも、ID-POS分析の基本方程式のどこに焦点を当てれば良いかが鮮明となる。ちなみに、ID-POS分析では、リフト値を活用したクロスマーチャンダイジングがよく活用されるが、これも、その出発点は、ID-POS分析のはじめの政策、IDを相互に増やそうという試みであり、これが発展すれば、先の改装の専門店を導入し、客層拡大をはかる政策となる。

   このように、ID-POS分析と百貨店は、実に相性が良いといえ、百貨店の活性化は、ID-POS分析で培われたノウハウをもとに取り組むことが、理に適っているといえよう。また、食品スーパーマーケットとしても、これまでアプローチできなかったID、ID客数PI値、特に、ID客数PI値を引き上げるサービスを取り入れ、固定客化をはかって行く上で学ぶべき点が多いといえよう。ID-POS分析はその意味で、小売業全体を活性化できる可能性を秘めた分析手法といえる。小売業相互のノウハウをID-POS分析を通じて交換し、お互いにそのノウハウを活用し、相互の実績アップにつなげてゆく上での架け橋となる可能性が高いといえよう。本ブログでもこのような観点から、今後、百貨店の動向も取り上げてゆきたい。

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August 17, 2011

家計調査データ、4月から6月、福島、仙台は?

   家計調査データの四半期、4月から6月度の集計結果が総務省統計局から8/12公表された。3/11の東日本大震災後の3ケ月間の集計であり、大震災後の消費動向を把握する上で貴重なデータである。そこで、ここでは、特に、被災地、福島市と仙台市の家計調査データを昨年同時期と比較し、どのような変化があったのかを見てみたい。ただし、この時期の集計データは十分な世帯数が把握できておらず、福島市では14世帯(昨年94世帯)、仙台市では32世帯(昨年95世帯)であり、限られた世帯数である。

   まずは、全体の消費額であるが、福島市274,115円(昨対32.6%)、仙台市599,484円(昨対68.6%)と、いずれも、昨年の消費額を大きく下回っており、特に、福島市は約1/3と厳しい状況である。集計世帯数が限られていることも、もちろんあると思われるが、それを加味しても、厳しい状況であるといえよう。また、外食を除く食品であるが、福島市49,337円(昨対29.8%)、仙台市149,968円(昨対80.9%)であり、比較的仙台市は全体に比べ高い数字であるが、福島市は逆に厳しい状況にある。

   次に、食品について概況を見てみたい。食品は全部で11項目に分かれているので、それぞれを見てみる。穀類、福島市27.0%、仙台市91.5%、魚介類、福島市29.9%、仙台市72.6%、肉類、福島市36.0%、仙台市83.4%、乳卵類、福島市26.8%、仙台市97.4%、野菜・海藻、福島市30.2%、仙台市73.5%、果物、福島市36.5%、仙台市71.7%、油脂・調味料、福島市27.7%、仙台市80.5%、菓子類、福島市24.3%、仙台市87.5%、調理食品、福島市31.6%、仙台市81.0%、飲料、福島市34.1%、仙台市63.0%、酒類、福島市28.1%、仙台市98.2%という結果である。

   こう見ると、福島市で消費が比較的高かったものは、肉類36.0%、果物36.5%、飲料34.1%の3つであり、仙台市では、穀類91.5%、肉類83.4%、乳卵類97.4%、油脂・調味料80.5%、菓子類87.5%、酒類98.2%と6項目である。福島市よりも、仙台市の方が消費の回復の速さを感じる結果といえる。逆に、消費が厳しかったのは、福島市では菓子類24.3%であり、仙台市では飲料63.0%であり、極端に落ち込んでいる食品は少ないといえる。ただ、福島市は全体が32.6%であり、消費全体がまだ復調しておらず、十分な生活基盤が確立できない状況にある。

   参考に、食品の項目の中で、明らかに異常値となったものを見てみたい。福島市では、食品の平均は昨対29.8%であるが、しじみ155.1%、粉ミルク105.2%、ミネラルウォーター111.4%が100%を超えた項目である。仙台市では米150.6%、カップめん 155.2%、もち379.5%、さば107.2%、さんま187.1%、たい393.3%、煮干し152.1%、揚げかまぼこ103.9%、ちくわ192.6%、かつお節・削り節101.0%、魚介の缶詰101.4%、鶏肉102.9%、粉ミルク3200.0%、レタス108.7%、さつまいも121.3%、こんにゃく106.4%、みかん107.6%、メロン197.7%、しょう油115.2%、ケチャップ149.0%、マヨネーズ・マヨネーズ風調味料130.5%、乾燥スープ120.3%、ようかん145.0%、カステラ102.1%、ゼリー127.8%、プリン116.0%、コロッケ128.8%、カツレツ115.3%、天ぷら・フライ158.6%、やきとり107.2%、ハンバーグ120.1%、ココア・ココア飲料145.7%、清酒134.4%、ビール185.5%等であり、多岐にわたり、福島市とは対照的に消費の回復が急激に進んでいることがわかる。

   ついで、食品以外の項目について見てみたい。外食、福島市32.7%、仙台市78.5%、住居、福島市92.0%、仙台市227.5%、光熱・水道、福島市35.1%、仙台市82.7%、家具・家事用品、福島市42.1%、仙台市85.6%、被服及び履物、福島市26.6%、仙台市67.5%、保健医療、福島市26.1%、仙台市51.9%、交通・通信、福島市32.9%、仙台市61.1%、教育、福島市6.6%、仙台市40.1%、教養娯楽、福島市21.7%、仙台市55.1%、その他の消費支出、福島市32.5%、仙台市54.1%という結果である。

   明らかに、顕著な動きが見られ、住居、福島市92.0%、仙台市227.5%、教育、福島市6.6%、仙台市40.1%の2項目である。そこで、この2つの項目について、さらに、その中身について見てみたい。まずは、住居についてであるが、設備修繕・維持、福島市172.5%、仙台市426.3%、そして、工事その他のサービス、福島市164.3%、仙台市501.4%と異常値である。復興、復旧需要が数字に表れた結果といえよう。特に、設備器具、福島市432.5%、仙台市205.8%が異常値である。特に、福島市は全体が32.6%であるので、432.5%は約15倍の需要であり、ここに集中して需要が発生しているといえよう。また、工事その他サービスでは、福島市では外壁・塀等工事費が199.5%、仙台市では給排水関係工事費1006.5%と異常値となっており、復旧度合いの違いによる需要の違いが表れているといえよう。

   そして、教育であるが、高校授業料の無償化に伴い、授業料等が福島市9.1%、仙台市45.7%と大きく落ち込んだことが大きいが、これ以外でも教科書・学習参考教材、福島市13.0%、仙台市9.2%、補習教育、福島市1.5%、仙台市7.9%の落ち込みも大きい。こう見ると、被災後、教育関連への消費が最も削減された項目であるといえ、厳しい現実である。

   このように、家計調査データの四半期、大震災後の直近3ケ月、4月から6月までのデータが公開されたが、被災地の結果は福島市32.6%、仙台市68.6%と依然として厳しい消費環境であることが鮮明である。特に、福島市は深刻な状況といえ、厳しい消費環境が続いているといえる。今月末には、次の8月度の数値が公開される予定であるが、どこまで被災地、福島市、仙台市の消費環境が好転しているか、その結果が気になるところである。

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August 16, 2011

マーチャンダイジング力、無料解説、600人を突破!

   マーチャンダイジング力の無料レポートの申し込みが公表以来、600人を超えた。この指標はPI研オリジナルであり、PI研以外使っていないP/L(損益計算書)から読み取れる小売業のマーチャンダイジングの実態を数値化する唯一の指標といえる。通常、P/Lから得られる利益は営業利益、経常利益、そして、当期純利益の3つであり、決算では主に営業利益を本業の利益を表す指標として、経営の評価に活用している。ところが、食品スーパーマーケットをはじめ小売業の営業利益の中には、利益が2つ存在する。ひとつは、原価、経費から得られる利益であり、もうひとつはその他営業収入から得られる利益である。

   この2つの利益は意外なことだが、P/Lでは区別されておらず、P/Lのどこを探してもその数字はない。したがって、P/Lをただ眺めているだけでは、この2つの利益を見出すことはできず、P/Lの各項目を組み直して、新たに算出するしか、その方法がないのが実態である。ただ、利益は算出されていないが、収入の方は区別して表示している小売業が大半である。決算発表を見ると、P/Lの結果について、売上高を公表する企業と、営業収入を公表する企業がある。売上高と営業収入の違いは、営業収入=売上高+その他営業収入という関係にある。実際、2011年度の決算公開企業約50社の食品スーパーマーケットを調べて見ると、約2割強が売上高を公表しているのに対し、残り、8割弱はすべて営業収入を公表しているのが実態である。したがって、この8割弱の食品スーパーマーケットはその他営業収入が組み込まれた収入であり、この時点で、マーチャンダイジングの本質、商品売買から得られる収入を表してはおらず、マーチャンダイジングから得られる利益、すなわち、マーチャンダイジング力を読み取ることができない状況にあるといえる。

   食品スーパーマーケットも規模が小さい時にはその他営業収入は無視しても良いくらい小さかった。ところが店舗数が増えることによって、自前で物流センターを構築せざるをえなくなり、自然、物流センターからの収入が入るようになった。一方、新業態が開発され、特にNSC(近隣型ショッピングセンター)、SC(ショッピングセンター)の時代に入ると、テナント収入等の不動産収入が入るようになり、これらが売上高の数%に達するようになり、経営上無視できないボリュームとなった。したがって、この収入を従来の店舗から得られる利益と区別せざるをえなくなり、その他営業収入という項目が生まれるにいたった。

    実際、2011年度の決算公開企業約50社の食品スーパーマーケットのその他営業収入は平均2.6%にも及んでおり、当期純利益の平均0.8%を優に超え、営業利益の平均2.3%をも超えるボリュームとなっているのが実態である。したがって、いまや食品スーパーマーケットはその他営業収入なしでは利益がでない状況にあるといえる。ちなみに、この極致をいっているのがGMS(総合小売業)であり、セブン&アイHはその他営業収入13.0%、イオンは11.7%であり、営業利益はセブン&アイH5.4%、イオン3.8%という状況である。GMSは小売業というよりも、不動産業に近い業態であり、小売業の膨大なマイナスの利益を、不動産等を通じたその他営業収入の膨大なプラスの利益で、全体の利益をプラスにもっていっているのが実態である。

   そこで、マーチャンダイジング力であるが、このような経営の実態を踏まえた場合、本当に、商品売買からどのくらい利益が得られているのか不安になるが、その数字がP/Lには算出されておらず、P/Lでは伝統的に営業利益、経常利益、当期純利益のみが表示されているのが実態である。ちなみに、IFRS(国際会計基準)になると、経常利益がなくなり、営業利益にその他の利益も加えた包括利益のみとなるので、さらに、マーチャンダイジングの実態がわからなくなる恐れがある。恐らく、小売業としては、独自のP/Lを参考に公表する必要があろう。

   このような状況を鑑み、PI研では、独自に、原価から売上総利益を算出し、ここから経費を差し引き、商品売買から得られる利益、すなわち、マーチャンダイジングによって得られた利益をマーチャンダイジング力として、算出している。そして、食品スーパーマーケット各社の実態を比較し、食品スーパーマーケットの経営の本質に迫ろうとしたというのが、マーチャンダイジング力を食品スーパーマーケットの財務評価に活用した理由である。もちろん、その他営業収入は食品スーパーマーケットではまだ発展段階にあり、計上していない食品スーパーマーケットも数社ある。また、計上していても、その中に、その他営業収入にかかわる経費が含まれているのか、否かは判別できない食品スーパーマーケットが大半である。ただ、それでも、営業利益よりも、マーチャンダイジング力の方が、食品スーパーマーケットのマーチャンダイジングの実態を表しているといえ、実務的には十分に実戦活用が可能な利益であるといえよう。

   このように、食品スーパーマーケットの利益は、一般公開されているものでも営業利益、経常利益、当期純利益とあるが、いずれも、食品スーパーマーケットの本質的な利益、マーチャンダイジングの実態に迫っているとはいえず、現段階では、原価、経費差から算出する商品売買からの利益、マーチャンダイジング力が、食品スーパーマーケットのマーチャンダイジングの真の力を表しているといえよう。

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August 15, 2011

食品スーパーマーケット業界、四半期決算、好調!

   バロー、営業収益1,003.61億円(9.8%)、営業利益36.99億円(95.5%)、経常利益39.00億円(92.7%)、当期純利益22.57億円(昨年は赤字)ダイイチ、売上高223.04億円(2.8%)、営業利益5.64億円(8.5%)、経常利益5.17億円(9.2%)、当期純利益2.66億円(-20.9%)、マルキョウ、売上高680.21億円(1.7%)、営業利益15.08億円(11.8%)、経常利益16.43億円(13.9%)、当期純利益 9.34億円(10.1%)、原信ナルスH、売上高301.28億円(2.3%)、営業利益9.96億円(3.6%)、経常利益9.64億円(0.4%)、当期純利益5.13億円(前期は赤字)、いなげや、営業収益542.96億円(0.5%)、営業利益6.94億円(266.0%)、経常利益 8.07億円(185.5%)、当期純利益-2.50億円、ヤオコー、営業収益577.20億円(10.5%)、営業利益 31.21億円(56.5%)、経常利益30.74億円(57.3%)、当期純利益17.27億円(111.7%)、ヤマザワ、売上高236.26億円(10.0%)、営業利益12.19億円(183.6%)、経常利益12.28億円(182.7%)、当期純利益7.05億円(前期は赤字)、関西スーパーマーケット、営業収益291.21億円(2.2%)、営業利益3.31億円(80.4%)、経常利益4.34億円(74.6%)、当期純利益2.51億円(150.3%)、以上、本ブログで取り上げた、ここ最近の四半期決算である。

   特に、顕著な伸びを示しているのが営業利益であり、改めて営業利益のみを取り上げて見ると、バロー、営業利益36.99億円(95.5%)、ダイイチ、営業利益5.64億円(8.5%)、マルキョウ、営業利益15.08億円(11.8%)、原信ナルスH、営業利益9.96億円(3.6%)、いなげや、営業利益6.94億円(266.0%)、ヤオコー、営業利益 31.21億円(56.5%)、ヤマザワ、営業利益12.19億円(183.6%)、関西スーパーマーケット、営業利益3.31億円(80.4%)という結果である。原信ナルスHのみ、営業利益が3.6%増とやや伸び悩んでいるが、他の食品スーパーマーケットの数値はいずれも大幅な増益であり、この四半期決算は、営業利益を大きく押し上げたのが特徴といえる。

   この四半期決算は4月から6月度の決算結果であり、9月度決算であるダイイチ、マルキョウにおいても、この期間の影響は大きいといえる。この期間はちょうど、3/11の東日本大震災後の3ケ月間であり、その影響が強く表れた決算である。実際、結果を見ると、営業利益を大幅に押し上げていることから、これが東日本大震災が食品スーパーマーケット業界の経営にもたらした影響といえよう。

   そこで、その営業利益を大きく押し上げた要因が、原価にあったのか、経費にあったのかを見てみたい。その結果であるが、まずは、原価、経費双方が改善した食品スーパーマーケットであるが、バロー、原価76.52%、0.78ポイントの改善、経費23.60%、0.75ポイントの改善、原信ナルスH、原価73.22%、0.02ポイントの改善、経費23.46%、0.03ポイントの改善、いなげや、原価72.85%、0.84ポイントの改善、経費29.61%、0.19ポイントの改善、ヤオコー、原価71.02%、0.63ポイントの改善、経費27.81%、1.08ポイントの改善、ヤマザワ、原価70.72%、1.11ポイントの改善、経費24.10%、2.05ポイントの改善、関西スーパーマーケット、原価76.77%、0.13ポイントの改善、経費23.92%、0.42ポイントの改善となった。

   ついで、原価のみ改善した食品スーパーマーケットであるが、ダイイチ、原価76.99%、0.28ポイントの改善、経費22.11%、0.31ポイント上昇の1社のみである。そして、経費のみ改善した食品スーパーマーケットであるが、マルキョウ、原価79.07%、昨年と同じ、経費19.02%、0.28ポイントの改善と、1社のみである。

   したがって、原価、経費双方が改善した食品スーパーマーケットが圧倒的に多く、東日本大震災の影響は、原価の改善、そして、経費の改善、双方の改善をもたらしたといえよう。特に、バロー、原価76.52%、0.78ポイントの改善、経費23.60%、0.75ポイントの改善、ヤオコー、原価71.02%、0.63ポイントの改善、経費27.81%、1.08ポイントの改善、ヤマザワ、原価70.72%、1.11ポイントの改善、経費24.10%、2.05ポイントの改善と、この3社は顕著である。その中でもヤマザワは被災地、宮城県においても店舗展開をしており、実際に被災店舗もあり、厳しい経営状況の中、復興を果たしたといえ、今回の各食品スーパーマーケットの決算と比べても、大幅な改善となった。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、バロー-0.12%(昨年-1.65%)となり、1.53ポイントの改善、ヤオコー1.17%(昨年-0.54%)となり、マイナスからプラスへ転じ、1.71ポイントの改善、そして、ヤマザワ5.18%(昨年2.02%)となり、3.16ポイントと、通常ではありえない大幅な改善となった。

   このように、食品スーパーマーケット業界の3/11の東日本大震災後の初の四半期決算が公表されたが、その結果を見ると、大半の食品スーパーマーケットが増収増益、特に、営業利益の大幅改善が特徴といえる。しかも、原価、経費、双方が改善しており、結果として、大震災の影響が食品スーパーマーケットの利益をダブルで押し上げたといえる。ただ、この好調さが次の中間、そして、通期決算まで続くとは思えず、食品スーパーマーケット業界としては、慎重に経営の方向を見極める必要があるといえよう。今回のこの好調な四半期決算を受けて、次回、中間決算に向けて、各食品スーパーマーケットがどのような経営方針を打ち出すか注目である。

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August 14, 2011

サービスとID-POS分析、その究極の目的!

   ID-POS分析が通常のPOS分析と決定的に違う点は、IDを基点にPOS分析がはじまることである。通常のPOS分析もIDを意識していない訳ではないが、IDを区別する方法がないため、IDを意識しながらも、実際は、巨大なIDがあたかも1人存在するかの如く、ID=1として分析することになる。したがって、すべてのレシートにID番号1が振られたのと同じことになり、レシートの枚数は把握できても、レシートをIDと結びつけることができないため、レシート間の違いが分析できない。これが通常のPOS分析の限界であり、ID-POS分析との境目となる。

   したがって、ID-POS分析は、通常のPOS分析の限界からスタートすることになる。ID-POS分析のはじめのポイントは、レシート1枚1枚にID番号を振るところからはじまる。そして、ID番号が振られたレシートを、ID番号をもとに集計し直すことが、ID-POS分析の最初のステップである。通常のPOS分析では商品分類が基本となり、商品1品1品にバーコードが振られ、商品ごとに分析をすることが最初のステップであるが、これと全く同じことがID-POS分析でも行われる。ただし、ID-POS分析では商品ごとではなく、顧客ごとにIDを振り、顧客ごとに分析することが最初のステップとなる点が違う。いわば、単品管理に対して、個別管理、あるいは、ID管理とでもいう管理が基本となる。

   ここから、通常のPOS分析とID-POS分析の目的の違いが明らかになる。通常のPOS分析は商品の売上げを上げることが究極の目的となるが、ID-POS分析では商品の売上げを上げることではなく、顧客1人1人の売上げを上げることが究極の目的となる。ここが双方を分ける決定的な違いといえ、ここから手段も大きく分かれることになる。通常のPOS分析では商品をとにかく、たくさん販売するための、いわゆる、広い意味での販売促進が最良の手段となるが、ID-POS分析では、顧客1人1人の売上げをあげるために、顧客1人1人の来店頻度をあげること、いわば、来店促進が最良の手段となる。通常のPOS分析がどちらかというと量を追いかけるのに対し、ID-POS分析はどちらかというと質を追いかけるといえよう。

   そこで、今回のテーマ、「サービスとID-POS分析、その究極の目的!」であるが、一見、サービスとID-POS分析は、ダイレクトにつながらないように思える。これまでサービスというと、百貨店、ホテル、高級専門店、高級飲食店等の専売特許であり、食品スーパーマーケット等のセルフ販売を主体とした業態には存在しないものと思われてきた。むしろ、人的サービスを廃止したところからセルフサービスは生まれ、まさに、セルフ、顧客自らにサービスを委ねたところから、食品スーパーマーケットはスタートしたともいえるからである。

   ところが、ID-POS分析が可能となったことにより、その究極の目的が顧客1人1人の売上げを上げることになったことにより、顧客1人1人へのサービスが、ID-POS分析にとっては決め手となることになり、サービスを改めて考えざるをえなくなったといえる。 ただし、ここでいうID-POS分析のサービスとは、顧客に対して、従業員が直接接することではない。あくまでもセルフサービスの体制は維持しつつ、ID-POS分析を通じて、顧客への新たなサービスを開発することである。

   では、ID-POS分析におけるサービスとは何か、そのポイントは、ID-POS分析の究極の目的である顧客1人1人からの売上げを上げるための手段、来店頻度を引き上げるためのあらゆる働きかけのことである。ID-POS分析で良く用いられるクーポン、DMももちろん、そのサービスに当たるが、それ以上に重要なサービスはID-POS分析を通じて、顧客1人1人の来店動機となる商品を見つけ出し、その商品を通じて、顧客1人1人の来店頻度をひきあげる様々なサービスを開発することである。棚割の見直し、レイアウトの改善、動線の再検討、誘導POPの開発、来店動機の商品と関係の深い商品へのお薦めなどである。さらには、顧客の来店前、来店中、来店後に対してDM、POP、クーポン等を通じて、ダイレクトに顧客1人1人へ働きかけることも、ID-POS分析における重要なサービスとなろう。また、今後は、スマートフォンの活用もID-POS分析の新たなサービスとなるものと思われる。

   顧客にとっては、買い物をすればするほど、店舗との関係が商品を通じて深まり、知らず知らずの内に、馴染んでゆくことになる。はじめは来店動機となった1品からその関係ははじまるが、その1品がきっかけとなり、2品になり、3品になり、時間ととともに商品を通じて、店舗との関係が深まりつつ、広がってゆくことになり、やがては、永遠の関係が築かれてゆくことになる。これがID-POS分析が目指す究極のサービスであり、結果、顧客1人1人から、最大のキャッシュがもたらされることになる。

   このようにID-POS分析のサービスとは、食品スーパーマーケットがセルフサービスを採用したことにより、一端は放棄したサービスを、ID-POS分析を通じて、顧客1人1人の来店頻度を引き上げるという手段を開発することにより、ID-POS分析ならではの新たなサービスのことであるといえる。ID-POS分析が可能な環境にある食品スーパーマーケットは、改めて、ID-POS分析ならではの新たなサービスについて検討して欲しいところだ。

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August 13, 2011

バロー、2012年3月期、第1四半期決算、増収大幅増益!

   バローが8/5、2012年3月期の第1四半期決算を公表した。この第1四半期決算は4月から6月までの、決算期間であるため、3/11の東日本大震災後の食品スーパーマーケットの経営への影響をはかる上で重要な期間である。その結果であるが、営業収益1,003.61億円(9.8%)、営業利益36.99億円(95.5%)、経常利益39.00億円(92.7%)、当期純利益22.57億円(昨年は赤字)と、大幅な増収増益となる好決算となった。特に、利益はいずれの段階でも約2倍となる大幅増益であり、異常値といえよう。

   そこで、営業利益が95.5%増となった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、76.52%(昨年77.30%)となり、0.78ポイント改善した。結果、売上総利益は23.48%(昨年22.70%)となった。バローは、3つの主要事業があるが、今期の結果を見ると、スーパーマーケット事業の営業利益90.2%増(営業収益構成比71.33%)、ホームセンター事業の営業利益104.9%増(営業収益構成比10.45%)、そして、ドラックストア事業の営業利益163.1%増(営業収益構成比13.24%)である。営業収益構成比は圧倒的にスーパーマーケット事業が大きいが、営業利益の伸び率は、比較的原価率の低いホームセンター事業、ドラックストア事業の貢献度が高く、これらの事業の貢献もバロー全体の原価改善に寄与したものといえよう。

   一方、経費の方であるが、23.60%(昨年24.35%)と、0.75ポイント改善した。特に、今期のバローは既存店が堅調な伸びを示している。4月度14.8%(既存店5.9%)、5月度9.3%(既存店2.0%)、6月度13.0%(既存店5.5%)である。しかも、既存店の客数、客単価については、4月度(客数5.8%、客単価0.1%)、5月度(客数1.8%、客単価0.2%)、6月度(客数4.3%、客単価1.1%)であり、客数の伸びが既存店の売上増を支えているといえる。一般的に、既存店が好調な場合は相対的に固定費の経費比率が下がり、経費削減をもたらすが、バローのこの堅調な既存店の数字を見ると、これが経費比率を下げる大きな要因となったものといえよう。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、-0.12%(昨年-1.65%)となり、依然として、マイナスではあるが、その差は大きく改善し、プラスに近づいた。原価、経費、双方がバランスよく改善したことが大きいといえよう。そして、これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が3.95%(昨年3.81%)加わり、営業利益は3.83%(昨年2.16%)と、大幅な増益となった。原価、経費、そして、その他営業収入とトリプルでの増益が営業利益を大きく改善したといえ、理想的な決算結果といえよう。

   それにしても、これだけ理想的な増益のパターンは珍しいといえ、それだけ、東日本大震災が食品スーパーマーケットの経営へ与えたプラスのインパクトは大きかったといえる。通常、食品スーパーマーケットが増益の場合は原価、経費、その他営業収入の3つの数字がすべて上昇することはなく、どれかひとつ、ないしはいずれか2つが上昇ということが多いのが実態であり、3つとも上昇というのは極めて稀である。

   さて、この大幅な増益を受けて、キャッシュフローの状況であるが、意外なことに営業活動によるキャッシュフローは48.25億円(昨年59.44億円)と、減少している。当然、当期純利益は39.52億円(昨年3.86億円)と、約10倍に増加したが、昨年は資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額が14.83億円あったことに加え、法人税等の支払額が-43.61億円(昨年-22.36億円)と倍増したためである。したがって、食品スーパーマーケットの決算においては、P/L(損益計算書)が大幅な増益となっても、キャッシュフローとは必ずしも一致しないといえ、経営状況を判断する時には、必ず、現金の流れ、キャッシュフローをしっかり見る必要がある。

   ついで、投資活動によるキャッシュフローであるが、-22.29億円(昨年-20.37億円)と、ほぼ、昨年並みの投資配分を維持している。その中身は有形固定資産の取得による支出が-21.14億円(-21.40億円)が大半を占め、昨年同様、積極的な新規出店への投資を実施している。バローの1店舗当たりの新店にかかわる資産が約6億円であるので、4店舗弱の投資に当たり、四半期としては積極的な投資配分といえる。

   そして、財務活動によるキャッシュフローであるが、-13.50億円(昨年1.56億円)であり、その中身は有利子負債関連が-6.53億円(昨年7.77億円)と、財務の改善に配分している。新店への投資、そして、財務改善とバランスのよいキャッシュの配分といえ、結果、トータル12.46億円(昨年40.63億円)と内部留保も確保している。したがって、昨年よりは若干、営業活動によるキャッシュが減少したが、その配分は投資、財務、内部留保とバランスよく配分がなされており、P/L、キャッシュフローともに、バランスのよい経営となった第1四半期決算といえる。

   このように、バローの2012年3月期の第1四半期決算は、東日本大震災後の初めての第1四半期決算となったが、結果は大幅な増収増益となる好決算となった。しかも、営業利益は原価、経費、その他営業収入のすべてがバランスよくプラスとなる理想的な増益となった。また、その増益により獲得したキャッシュの配分も新規出店、財務改善、内部留保へとバランスよく配分がなされ、理想的なキャッシュの配分であるといえる。この好調な決算を受けて、今期、バローがどのような経営戦略を打ち出すか、今後の動向に注目である。

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August 12, 2011

食料自給率、平成22年、カロリーベース換算39%!

   8/11、農林水産省、大臣官房食料安全保障課から、平成22年度の食料自給率が公表された。食料自給率にはカロリーベースと生産額ベースの2つの指標がある。結果はカロリーベースが39%(昨年度40%)、生産額ベースが69%(昨年度70%)となり、いずれも、1ポイント下落した。食料自給率は一般にはカロリーベースが用いられているので、ここでもカロリーベースを主体に見てゆき、参考に、生産額ベースを見てゆく。

   まずは、食料自給率がカロリーベースで1ポイント下がった要因であるが、てん菜、小麦、いも類(ばれいしょ・かんしょ)の生産量の減少によるところが大きい。実際の数値であるが、てんさい-55.9万トン(-15%)、小麦-10.3万トン(-15%)、ばれいしょ-18万トン(-7%)、かんしょ-16万トン(-16%)と、いずれも生産量が下がっており、これがカロリーベースでの食料自給率を下げた要因である。ちなみに、生産額ベースでの1ポイントの減少要因であるが、牛乳・乳製品、米、魚介類、てん菜の国内生産額の減少が大きいとのことである。実際の数値は、牛乳・乳製品-3%(国産単価-2%)、米+1%(国産単価-12%)、魚介類-3%(国産単価±0%)、てんさい-55.9万トン(国産単価不明)と生産量ないしは単価が下がっており、これが生産額ベースの食料自給率を下げた要因である。

   ここで、さらに詳しく、各項目の平成22年度の食料自給率を見てみたい。ここではカロリーベースと生産額ベースを同時に見てゆく。米(カロリーベース98%、生産額ベース97%)、畜産物(16%:輸入飼料による生産部分51%、60%:輸入飼料による生産部分15%)、油脂類(3%、34%)、小麦(8%、9%)、砂糖類(26%、49%)、魚介類(60%、53%)、野菜(77%、81%)、大豆(25%、42%)、果実(34%、71%)、その他(22%、79%)である。食料自給率の対象となる項目は以上であり、これが、原則としてFAOの食料需給表作成の手引に準拠して作成されたものであり、国際比較がなされる項目である。ちなみに、カロリーベースの総供給熱量は2,458kcal/人・日(国産供給熱量946 kcal/人・日)である。また、生産額ベースの国内消費仕向額合計は14兆1,333億円(国内生産額合計9兆7,047億円)である。

   では、現在の食料自給率がどのような変化を遂げてきたかを、昭和40年(1965年)まで、さかもどって見てみたい。まずは、昭和40年の食料自給率であるが、カロリーベース73%、生産額ベース86%であり、かなり拮抗していた。10年後、昭和50年(1975年)になると、カロリーベース54%、生産額ベース83%と、カロリーベースが大きく下がりはじめた。そして、20年後、昭和60年(1985年)は、カロリーベース53%、生産額ベース82%と、この10年ではあまり大きな変化はない。

   そして、30年後、平成7年(1995年)になると、カロリーべースは43%、生産額ベースは74%と双方下がるが、カロリーベースは50%を割ることになる。さらに、40年後、平成17年(2005年)になると、カロリーベース40%、生産額ベース69%となり、ほぼ、現在の平成22年(2010年)のカロリーベース39%、生産額ベース69%と同じ水準となる。こう見ると、カロリーベースでは急激に食料自給率が下がっているのに対し、生産額ベースでは、比較的ゆるやかな下げであり、しかも、69%と高い水準を維持しているといえる。

   そこで、さらに、先に上げた項目の中で、特徴的なものを同様に、昭和40年にまでさかもどって見てみたい。まずは、食料自給率が一貫して高い水準の項目は、何といっても米であり、昭和40年では95%、昭和50年には110%と、100%を超え、ここがピークであり、その後、95%前後で推移し、平成22年97%である。なお、この内、主食用の米は現在に至るまで100%の食料自給率である。米についで、高い水準の項目は鶏卵(昭和40年100%、平成22年96%)、かんしょ(昭和40年100%、平成22年93%)、みかん(昭和40年109%、平成22年95%)、野菜(昭和40年100%、平成22年81%)、きのこ類(昭和40年115%、平成22年86%)である。

   一方、食料自給率が低い水準の項目であるが、大豆(昭和40年11%、平成22年6%)、大麦・はだか麦(昭和40年73%、平成22年8%)、小麦(昭和40年28%、平成22年9%)、豆類(昭和40年25%、平成22年8%)であり、以上が平成22年現在、1桁の項目である。これ以外で特徴的な項目では、果実(昭和40年90%、平成22年38%)、中でもりんご(昭和40年102%、平成22年58%)であり、みかんとは対照的な推移である。さらに、牛肉(昭和40年95%、平成22年42%)、豚肉(昭和40年100%、平成22年53%)、鶏肉(昭和40年100%、平成22年68%)等が特徴的な綱目である。

   このように、8/11、最新の食料自給率、平成22年度版が農林水産省から公表されたが、カロリーベースで見ると、39%と昨年よりも1ポイント下がり、依然として厳しい数値で推移しているといえる。生産額ベースでは69%と比較的健闘しているが、昨年よりも、やはり1ポイント下がっており、下げ基調であるといえる。食料は国の安全保障にもかかわる重要な課題であるといえ、戦略的に取り組んでゆくことが重要である。まずは、主食の米はもちろん、生鮮3品関連の自給率をいかに引き上げるか、生産、販売両面から取り組むことが課題といえ、10年単位の中長期的な戦略策定が必要といえよう。

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August 11, 2011

ダイイチ、2011年9月期決算、第3四半期、増収営業増益!

   北海道のダイイチが2011年9月期、第3四半期決算を公表した。結果は、売上高223.04億円(2.8%)、営業利益5.64億円(8.5%)、経常利益5.17億円(9.2%)、当期純利益2.66億円(-20.9%)となり、営業、経常段階では増収増益と好決算となった。なお、当期純利益が減益となった要因は、今期から資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額、0.60億円計上したためである。食品スーパーマーケット業界は2011年3月期以降の決算企業に、この特別損失が計上されたため、ダイイチも9月度決算企業であり、当期純利益に影響が出たといえる

   そこで、ダイイチの営業利益が8.5%増と増益となった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは原価であるが、76.99%(昨年77.27%)となり、0.28ポイント改善した。ダイイチ自身も「売上総利益率につきましては、仕入の強化や販売計画の見直しなどにより、・・」とのことである。また、同時に、「重点実施事項につきましては、「販売力強化策の実行」の実践として、新商品開発の強化、買いやすい量目・価格の徹底、計画的な試食・関連販売の徹底、各種コンテストの計画・実施、鮮度管理の徹底などに努めるとともに、・・」と、販売面での強化にも取り組んでおり、これらが、安定した平均単価を維持し、原価を相対的に引き下げたものと思われる。結果、売上総利益は23.01%(昨年22.73%)となった。

   これに対して、経費の方であるが、22.11%(昨年21.80%)と0.31ポイント上昇した。やや気になるのは、今期、ダイイチの既存店が伸び悩んでいることである。2010年10月99.4%、11月94.3%、12月96.7%、2011年1月94.8%、2月96.6%、3月99.8%、4月97.2%、5月94.3%、6月97.2%という結果であり、昨対を超えた月がなく、3/11の東日本大震災以降も伸び悩んでいる。したがって、相対的に固定費が上昇し、結果、経費が上昇したものといえよう。一般に、食品スーパーマーケットにおいては、既存店が好調な場合は、経費比率も下がり、逆に、低調な場合は経費比率が上がる傾向がある。経費は固定費と変動費に分かれるが、固定費は売上高に依存するため、このような傾向となるためである。

   結果、ダイイチの商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、差し引き、0.90%(昨年0.93%)となり、昨対を割った。原価は改善できたが、経費が恐らく、予想以上に上昇したためと思われる。そして、これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が1.64%(昨年1.48%)加わり、営業利益は2.54%(昨年2.41%)となり、増益となった。ダイイチとしては、原価の改善、その他営業収入の増加により、増益となったが、本来であれば、経費削減、すなわち、既存店の活性化により、相対的に固定費を下げ、増益を目指したかったところであろう。

   一方、この第3四半期、既存店の数字が昨対を割ったにもかかわらず、2.8%の増収となった要因は、昨年6月の自衛隊前店、7月の花咲店の新規出店効果が大きかったといえよう。そこで、ダイイチの新規出店戦略について、キャッシュフローをもとに見てみたい。食品スーパーマーケットの新規出店戦略は投資活動によるキャッシュフローに現れる。この中の、有形固定資産の取得による支出がこれに当たる。これ以外にも、敷金及び保証金の差入による支出もこれに当たるが、この支出は有形固定資産に比べ、わずかであり、大半は有形固定資産の支出が新規出店の割合となる。その数字であるが、-0.50億円(-4.54億円)であり、何と約1/10である。したがって、今期、ダイイチは、営業利益が大幅な増益となったにも関わらず、新規出店へはキャッシュを振り向けていないといえる。

   では、増益によるキャッシュを何に配分したかであるが、投資活動によるトータルのキャッシュフローは-0.42億円(昨年-7.02億円)であり、今期は投資を極力控えていることがわかる。一方、財務活動によるキャッシュフローは-7.16億円(昨年2.24億円)であり、プラスから、マイナスと、ここに、ほぼキャッシュの大半を配分しており、さらに、トータルキャッシュフローは1.71億円(昨年2.85億円)であり、内部留保にも回している。したがって、ダイイチは、今期、新規出店、すなわち、出店戦略を抑制し、財務改善と内部留保にキャッシュを厚く配分し、今後の不足の事態への備えをしたものといえよう。

   ダイイチ自身も、「震災発生後、一時的に飲料水や乾電池などの生活必需品の特需があったものの、お客様の不要不急の支出抑制や食料品を中心とした安心・安全志向の高まりに加え、業種の垣根を超えた企業間競争の激化などにより、依然として厳しい経営環境にありました。」とのことで、東日本大震災以降、依然として厳しい経営環境であるとの認識であり、それだけ、ダイイチにとっても東日本大震災のインパクトが大きかったといえよう。

   このように、ダイイチの2011年9月期、第3四半期決算は営業、経常段階では増収増益の好決算となったが、東日本大震災のインパクトが大きかったといえ、キャッシュを成長戦略から財務改善、そして、内部留保へと配分しており、内部体制の充実を優先する経営決断をしたといえよう。経営環境は厳しい局面が予想される中、本決算、そして、来期、ダイイチがどのような経営戦略を打ち出すか、今後の動向に注目である。

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August 10, 2011

農林水産省、買い物難民調査、1kmがポイント!

   農林水産省が8/2、食料品アクセス問題の現状に関する調査、いわゆる「買い物難民」の調査結果を公表した。この調査は、「平成22年度に開始した消費者ニーズの変化に対応した食品サプライチェーンの再編に関するプロジェクト研究の一環」の調査であり、「「フードデザート(食料砂漠)」、「買い物難民」、「買い物弱者」問題が顕在化しつつあります。このような高齢者等が食料品へのアクセスに不便や苦労がある状況を「食料品アクセス問題」と定義し、この問題への対応方向の検討を目的として、不便や苦労の要因とその地域間比較、客観的な食料品店までの距離の現状、不便や苦労を軽減するために必要な取組を分析、・・」したものである。食品スーパーマーケットにとっても、今後のマーチャンダイジング戦略、出店戦略、すなわち、キャッシュを生み出す質、量にかかわる問題であり、貴重な調査結果といえる。

   調査は多岐に渡っており、分析結果は7つの図、6つの表にまとめられている。それぞれの図表であるが、まずは、図であるが、図1(食料品の買い物で「不便や苦労がある」と答える確率の変化(全地域))、図2(食料品の買い物で「不便や苦労がある」と答える確率の変化(全地域)(自分が自転車やバイクを運転する場合))、図3(食料品の買い物で「不便や苦労がある」と答える確率の変化(全地域)(65歳以上層)(老研式活動能力指標値)、図4(食料品の買い物における不便や苦労の内容(全年齢階層))、図5(食料品販売店舗までの距離が500m以上の人口割合)、図6(生鮮品販売店舗までの距離が500m以上の人口の割合)、図7(食料品アクセスの改善の好循環プロセス)である。

   そして、表であるが、表1(店舗までの距離が500m以上の人口・世帯数推計)、表2(店舗までの距離が500m以上で、自動車を持たない人口・世帯数推計)、表3(震災前後の食料品アクセス状況の変化(岩手県、宮城県の沿岸部)、表4(食料品の買い物における不便や苦労をなくすために重要なこと(住民意識の地域間比較))、表5(買い物が不便な住民に重要な対策(市町村意識の変化))、表6(地域のおかれた条件と食料品アクセスの改善方向)である。

   この図表の中で、まずは、興味深い図であるが、図1(食料品の買い物で「不便や苦労がある」と答える確率の変化(全地域))と図4(食料品の買い物における不便や苦労の内容(全年齢階層))の2つである。図1では、距離ごとに全年齢層と65歳以上層とに分け、棒グラフで不便、苦労を確率で示している。距離については、1~2km、2~5km、5~10km、10km以上の4つの距離に分けて分析している。なお、1km未満は有意な結果が得られなかったという。したがって、1kmを超える距離から不便や苦労が顕著になる結果といえる。しかも、全年齢層が徐々に数値が上昇してゆくのに対し、65歳以上層は1~2kmで数値が跳ね上がっている。農林水産省のコメントでも、「最も利用する店舗への距離が遠くなるほど不便や苦労が高まり、道路距離が1kmを越えると不便や苦労が大幅に増大、・・」とのことで、1kmが買い物距離のポイントといえる結果である。

   ついで、図4では、その内容について詳細な項目を棒グラフで表示している。特に、ここでは大都市郊外A団地、地方B市中心市街地、農山村C町全域の3つに分けてその差を見ている。その結果であるが、ここでは、大都市郊外A団地を見てみるが、最も大きな差が出たのは、近くの店の品揃えが少ないであり、荷物をあまり運べない、商店に行くまでに坂がある、この3つが顕著である。

   一方、表の中で興味深いのは、表1(店舗までの距離が500m以上の人口・世帯数推計)と表4(食料品の買い物における不便や苦労をなくすために重要なこと(住民意識の地域間比較))である。表1では生鮮食料品販売店舗への距離が500m以上の人口が示されているが、65歳以上の人口割合が平均で37.9%、三大都市圏でも25.4%に達していることである。また、表4では、特に、大都市郊外A団地の方が購入した商品の配達サービスの充実を肯定的に見ていることである。

   そして、これらの調査結果を踏まえて、農林水産省では、「食料品アクセス問題への対策の目標として、食料品への、1)物理的なアクセスの改善と、2)アクセスの質的向上により、健康的で豊かな食生活が送られることが目指されるべきです。」と目標設定しており、この2点からフードデザート問題、いわゆる買い物難民対策の解決をはかってゆくとのことである。

   このように、ここへ来て、買い物難民が特に都市部において注目が集まる中、農林水産省が本格的な調査を実施し、その結果をまとめ、公表した。非常に興味深い内容であり、今後の食品スーパーマーケットの、特に都市部での新規出店戦略、品揃えの改善、そして、配達等のサービスの充実にかかわる課題が明確に浮かびあがったといえよう。食品スーパーマーケット業界としても、この調査結果を踏まえ、特に都市部では、ますます増加するであろう高齢者の買い物難民対策を加えることが必然的な課題となったといえよう。今後、食品スーパーマーケットが買い物難民対策をどのように組み込んでゆくか、その動向に注目である。

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August 09, 2011

マルキョウ、2011年9月期決算、第3四半期、増収増益!

   ここへ来て、食品スーパーマーケット業界の2012年3月期決算の第1四半期決算が明らかになったが、決算期間が4月から6月の3ケ月間であり、3/11の東日本大震災の影響がどのように反映されたかが注目された。その結果は増収増益、特に、営業利益が大幅増益となる食品スーパーマーケットが多く、大半が好決算となった。そこで、同じ決算期間を含む2011年9月期の食品スーパーマーケットの第3四半期決算が明らかになりつつあるので、その結果について、見てみたい。

   食品スーパーマーケット業界の9月期決算は数社であるが、その内の1社、マルキョウであるが、第3四半期決算が7/29に公表された。結果は、売上高680.21億円(1.7%)、営業利益15.08億円(11.8%)、経常利益16.43億円(13.9%)、当期純利益 9.34億円(10.1%)となり、増収増益、特に、利益がいずれの段階でも2桁の増益となる好決算となった。気になるのは売上高であるが、この第3四半期内では、「既存店の改装を9ヶ店(早岐店、東長崎店、柳川店、諫早店、久山台店、嬉野店、新貝店、清水店、新川店)行うなど営業力の強化に努めてまいりました。」とのことで、新規出店はなく、既存店の改装に留まったことが売上高が伸び悩んだ要因といえる。一般に、食品スーパーマーケットの売上高、すなわち、キャッシュを増やす方法は、新規出店に依存しており、新規出店が安定的、継続的に出店できないと厳しい面がある。

   そこで、マルキョウの出店余力と出店意欲を見てみたい。まずは、出店余力の前提となる純資産比率(自己資本比率)であるが、77.04%と、極めて高い比率であり、食品スーパーマーケット業界の中でも、トップクラスである。一方、出店にかかわる資産、土地、建物、敷金・保証金等であるが、413.05億円であり、総資産532.60億円の77.55%である。ちなみに、マルキョウの店舗数は93店舗であるので、1店舗当たりの出店にかかわる資産は4.41億円であり、2011年度の食品スーパーマーケット業界の決算公開企業約50社の平均が6.07億円あるので、かなり、低い数値である。結果、差し引き、純資産でカバーできる出店関連の資産、すなわち、出店余力は-0.51%であり、ほぼ、負債に頼ることなく、新規出店が可能な財務状況にあるといえ、先の食品スーパーマーケット業界の平均が-21.9%であるので、トップクラスである。  

   したがって、出店余力は十分といえるので、次に、出店意欲について見てみたい。まずは、投資活動によるキャッシュフローの中の新規出店にかかわる投資、有形固定資産の取得であるが、4.77億円(昨年4.98億円)である。先に見たように、1店舗当たりの新規出店にかかわる資産は4.41億円であるので、この投資額は1.08店舗分に当たる。昨年も同様な数字であるので、この2年間、ほぼ、新規出店へのキャッシュフローは1店舗強といえる。マルキョウの店舗数は先に見たように93店舗であるので、ここから、今期の店舗数でみた成長率を計算すると、1.16%である。先にみた食品スーパーマーケット業界の平均が7.0%であるので、マルキョウの出店意欲は低いといえよう。

   こう見ると、この第3四半期決算のマルキョウの売上高は出店余力が十分であるにも関わらず、出店意欲は極めて低いといえ、成長戦略への投資を控えた決算であったといえよう。では、この第3四半期決算では、どこにキャッシュを配分したかであるが、財務活動によるキャッシュフローが-19.94億円(昨年-12.63億円)であり、しかも、その中身の大半は、有利子負債の返済へ-17.53億円(昨年-9.53億円)と、大きく配分している。結果、有利子負債は23.88億円(前期決算時41.42億円)と半減しており、総資産に占める割合はわずか4.48%となった。したがって、マルキョウのこの第3四半期決算では成長戦略よりも、財務戦略に好調な決算において獲得したキャッシュを当てており、これも、東日本大震災による影響のひとつといえよう。

   さて、一方、売上高とは対照的に好調な結果となった営業利益の要因を原価、経費面から見てみると、原価は79.07%(昨年79.07%)と、奇しくも同じ数字となった。結果、売上総利益は20.93%(昨年20.93%)となった。一方、経費の方であるが、19.02%(昨年19.30%)と、0.28ポイント改善した。結果、差し引き、マーチャンダイジング力は1.91%(昨年1.63%)と改善した。そして、これに不動産収入、物流収入等のその他営業収入が0.32%(昨年0.39%)加わり、結果、営業利益は2.23%(昨年2.02%)と増益となった。こう見ると、今期の好調な増益要因は経費比率の削減効果が大きかったといえよう。

   このように、マルキョウの2011年9月期の第3四半期決算は増収増益、特に、利益が2桁増の好決算となったが、その要因は、経費が改善したことが大きかったといえる。一方、増収増益とはなったが、売上高が伸び悩んだ要因は、出店余力は十分な状況であるにも関わらず、今期は、成長戦略よりも、財務の改善にキャッシュを配分したためであるといえる。東日本大震災の影響により、今後、不安定な経営環境を見越し、成長を抑制し、財務面の改善を優先したためと思われる。それにしてもマルキョウの純資産比率は77.04%とトップクラスであり、財務の改善もさらに進んでいることからも、いつ、成長戦略に舵を切ってもおかしくないといえる。マルキョウがいつ成長戦略へと戦略転換するか、気になるところである。

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August 08, 2011

ID-POS分析における今後の技術的な課題!

   ここ最近ID-POS分析に携わる機会が多く、セミナー等で話す機会も多くなりつつある。そこで、ID-POS分析を実戦する上において、現時点で改善すべき技術的な今後の課題をいくつか上げてみたい。ID-POS分析はIDを基点に分析がはじまる。したがって、IDをいかに把握するかがまずはポイントとなる。そして、次に、そのIDと商品との関係を見つけ出し、IDの購入している商品の購入履歴をすべて把握し、将来に渡ってのIDを通じて商品から得られるキャッシュを極大化してゆくことが課題といえる。ここから、まずは、2つの技術的な課題が浮かび上がる。ひとつはIDを認識する技術である。そして、もうひとつは、IDと商品とを関連づける技術である。

   ひとつめのIDを認識する技術であるが、一般にIDを認識するというとIDの属性に目が行きがちとなる。ID-POS分析自体が、IDの属性を把握できることがメリットのひとつでもあるので、この属性を認識できる技術の確立がポイントのように思われるが、本来のID-POS分析の目的はIDを通じて生涯に渡ってのキャッシュをどれだけ多く獲得できるかにあるので、属性よりも、IDの購入履歴による差、すなわち、どれだけキャッシュをもたらしてくれるIDかを区別し、そのIDを把握できるかどうかが、実は、ID-POS分析にとっては重要な課題である。

   そこで、ここ最近、この目的に合致する可能性が高い技術として、食品スーパーマーケット業界でにわかに検討が始まったのがギフトカードである。このギフトカードはアメリカで開発され、飲食店等を中心にひろがったカードであり、ギフト用に開発されたカードである。日本でいう商品券と同じ役割をし、プリペイド方式のカードであり、まさに、ギフト用に活用されるカードである。ここ最近、日本でも飲食店、専門店を中心に普及が進み、コンビニ等でギフト用に様々な店舗のカードが店頭で販売されはじめた。

   本来、このように、ギフト用に開発され、アメリカから日本へ、そして、飲食店、専門店へと普及がはじまったギフトカードであるが、これが、ここへ来て、食品スーパーマーケットのポイントカードとして活用がはじまり、バリューカードなどの名称で、ポストポイントカードとして導入が進みはじめた。なぜ、食品スーパーマーケットで導入がはじまったかというと、このバリューカードが食品スーパーマーケットのロイヤルカスタマーをがっちりつかみ始めたからである。

   バリューカードはプリペイド方式であるため、顧客は事前にキャッシュを支払うことになる。食品スーパーマーケットは、小売業の中でも購入頻度が最も高く、しかも、購入点数が多いことから、ロイヤルカスタマーほど、定期的にキャッシュが発生し、プリペイド方式と相性も良く、自然、バリューカードへとシフトしてゆくことになる。したがって、バリューカードは結果として、ロイヤルカスタマーをしっかりと包み込み、固定化する機能が強く、従来のポイントカードよりも、よりロイヤルカスタマーに照準があったカードといえる。また、キャッシュバックの多寡により、ポイント以上のインセンティブをもたらすことができ、ロイヤルカスタマーにとっては、より価値の高いカードとなる。

   そして、もうひとつのIDと商品を関連づける技術であるが、ID-POS分析はこれまで、いわゆるJANコードでの分析が主な商品の把握方法であった。しかも、食品スーパーマーケットにとっては、売上構成比の高い生鮮食品、日配食品もすべてJANコードで把握してきたのが実態である。商品分析だけであれば、JANコードだけでも大きな問題はないかもしれないが、ID-POS分析ではIDと商品との関係をつかみ、IDの購入履歴がすべて把握できることが望ましく、しかも、可能な限り、商品の様々な情報をつかめることが望ましい。ちょうど、顧客の属性をつかむのと同様、商品の属性を把握できれば、より、IDと商品とのつながり、そして、購入履歴を分析する上において役立つといえる。特に、生鮮食品では商品分類もさることながら、商品ごとの様々な属性があり、これらを把握することがポイントといえる。

   この技術的な問題を解決するのが、次世代のバーコードと呼ばれているGS1データバーである。このバーコードはAI(Application Identifier)という技術を組み込み、様々な情報をAIでつなぎ、組み込むことができ、これまでのJANコードの13桁に数種類しか入らない技術的な問題を解決し、数10種類の情報を組み込むことができる。ここに、生鮮食品特有の属性情報に加え、ID-POS分析で得られたIDの情報を組み込んでしまえば、ID-POS分析を商品から読み取ることが可能となり、現場において、スマートフォン等で読み取ることも、技術的には可能といえよう。

   このように、ID-POS分析はこれから食品スーパーマーケットで急速に普及が進んでゆくと思われるが、食品スーパーマーケットは食品スーパーマーケット特有の課題がある。この問題を解決しながら普及がなされるといえるが、そのためのブレイクスルーとなる技術が、ID、特にロイヤルカスタマーをつかむバリューカードであり、IDと商品の様々な属性、さらには、商品にID-POS分析結果を入れ込み、生鮮食品等での活用が有望なGS1データバーであるといえよう。これ以外にも、今後、ID-POS分析の普及につながる様々な技術開発が進むものと思われるが、これらを含め、ID-POS分析を普及させてゆく可能性の高い最新動向に注目である。

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August 07, 2011

原信ナルスH、2012年3月期、第1四半期決算、増収増益!

   原信ナルスHが8/1、2012年3月期の第1四半期決算を公表した。結果は売上高301.28億円(2.3%)、営業利益9.96億円(3.6%)、経常利益9.64億円(0.4%)、当期純利益5.13億円(前期は赤字)となり、増収増益、堅調な決算となった。なお、前期の当期純利益は資産除去債務に関する会計基準の適用がなされ、13.61億円と、多額の特別損失を計上したため赤字となった。したがって、EPS(1株当たりの当期純利益)も-12.18円とマイナスであったが、今期は29.17円とプラスに転じた。ただ、各食品スーパーマーケットの第1四半期決算、特に、営業利益が大幅な増益となる中、原信ナルスHは3.6%と微増であり、東日本大震災後の特需がいまひとつ決算に反映されない結果となった。

   そこで、その営業利益が伸び悩んだ要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、73.22%(昨年73.24%)と、0.02ポイントとわずかであるが改善した。原信ナルスH自身も、「東日本大震災により、当社グループのお取引先様の一部が被害を受けたことや、お客様の購買動向の急激な変化は、商品需給のミスマッチを招き、一部の商品については、一時的な調達不足に陥りました。」とのことで、原価が安定しない、厳しい状況であったとのことである。結果、売上総利益は26.78%(昨年26.76%)となった。2011年度の食品スーパーマーケットの決算公開企業約50社の平均が24.93%であるので、やや、高めの数字といえよう。

   一方、経費の方であるが、23.46%(昨年23.49%)と、0.03ポイント下がったが、その差はわずかである。これについて、原信ナルスHは、「作業計画と連動した労働時間管理や、ISO14001の環境マネジメントと連動した環境コストの削減を進めるほか、様々な形で経営資源の適正利用、使用量の削減の取り組みを継続しております。」とのことである。気になるのは原信ナルスHの既存店の動向であるが、売上高99.7%であり、その中身は、客数99.8%、客単価100.2%であり、特に、既存店の客数の伸びが見られないことである。これまで公表された3月期決算の第1四半期決算の結果を見ると、既存店が好調な食品スーパーマーケットが多く、結果、売上高だけでなく、経費比率も改善されるケースが多い。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、3.32%(昨年3.27%)となり、若干改善したが、その差はわずかである。原信ナルスHはその他営業収入が計上されていないため、イコール、営業利益となり、この第1四半期決算は微増となった。

   これを受けて、原信ナルスHのキャッシュフローの流れであるが、営業活動によるキャッシュフローは13.08億円(昨年20.88億円)と、減少した。その要因は昨年は資産除去債務の会計基準の適用がなされ、13.61億円がプラスで計上された点が大きかったといえる。これに対し、投資活動によるキャッシュフローであるが、-5.92億円(昨年-5.54億円)と、若干であるが、増加している。その要因は新規出店関連への投資、有形固定資産の取得による支出が-6.81億円(-5.80億円)と増加したためである。原信ナルスHの1店舗当たりの出店にかかわる資産は前期決算時4.51億円であるので、2店舗弱の投資配分である。

   結果、差し引き、フリーキャッシュフローは6.27億円(昨年15.08億円)と、営業キャッシュフローの差が大きく、半減した。そして、財務活動によるキャッシュフローであるが、-14.24億円(昨年-8.94億円)と、大きく増加している。その中身は有利子負債関連が-12.27億円(昨年-6.66億円)と倍増している。フリーキャッシュフローを超える金額であり、したがって、内部留保を取り崩しており、この結果を見る限り、成長戦略よりも、財務改善にキャッシュの配分のウェイトを置いたといえる。結果、トータルキャッシュフロー-7.07億円(昨年6.39億円)となった。

   実際、B/S(貸借対照表)を見ると、自己資本比率は43.8%(昨年42.4%)と、若干上昇しており、その要因は純資産の増加と総資産の減少、特に、負債の圧縮がなされていることである。その中でも、キャッシュフローで見たように、有利子負債が118.05億円(昨年130.25億円)と削減されており、総資産536.70億円に占める割合は21.99%となった。また、現金も56.10億円(昨年62.29億円)と減少している。したがって、原信ナルスHとしては、この厳しい経営を取り巻く経営環境の中、成長戦略よりも、財務改善を優先した経営決断をしたといえよう。

   このように、原信ナルスHの2012年3月期の第1四半期決算は、各食品スーパーマーケットの結果が大幅な営業利益の増加が見られるなか、3.6%増という堅調な結果となり、やや厳しい決算といえよう。そして、その中身、原価、経費の改善もわずかであり、東日本大震災後の影響はプラス面でも、マイナス面でもほとんど、この第1四半期決算の結果には反映されていないといえる。このような中、昨年並みの成長戦略を維持し、財務改善に特にキャッシュの配分ウェイトをかけており、今後、厳しい経営環境になるとの予想といえよう。原信ナルスHの今後としては、まずは営業利益、すなわち、原価、経費の改善が優先課題といえ、次の中間決算に向け、どのようなマーチャンダイジング戦略を打ち出すか注目である。

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August 06, 2011

いなげや、2012年3月期、第1半期決算、営業大幅増益!

   いなげやが、8/2、2012年3月期の第1四半期決算を公表した。結果は、営業収益542.96億円(0.5%)、営業利益6.94億円(266.0%)、経常利益 8.07億円(185.5%)、当期純利益-2.50億円となり、当期純利益は減損損失が10.25億円発生したため赤字となったが、営業、経常段階では、増収、大幅増益となる好決算となった。なお、3月度決算企業は、前期に資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額が計上されているため、今期は計上額はほとんどなく、実際、いなげやも0円であり、当期純利益には影響していない。

   そこで、いなげやの営業利益が266.0%と大幅な増益となった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは原価であるが、72.85%(昨年73.69%)となり、0.84ポイント改善した。結果、売上総利益は27.15%(昨年26.31%)となった。一方、経費の方であるが、29.61%(昨年29.80%)となり、0.19ポイント改善した。ただ、この29.61%の経費比率は2011年度の食品スーパーマーケットの決算公開企業約50社の平均が25.18%であるので、かなり高い数字であり、さらに改善をはかりたいところであろう。結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-2.46%(昨年-3.49%)と、昨年と比べ、原価、経費双方が下がり、大きく改善したが、依然として、マイナス幅が大きいといえる。

   そして、これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が3.79%(昨年3.86%)加わり、営業利益は1.33%(昨年0.37%)と増益となった。こう見ると、いなげやは典型的な原価小、経費大を目指すマーチャンダイジング戦略であるが、経費が極端に高く、原価を十分にカバーできず、厳しい収益構造となっており、まずは、経費大をもう一段階下げ、原価に見合う、できれば、差し引き、マーチャンダイジング力をプラスにもってゆきたいところであろう。

   これを踏まえて、いなげやの出店戦略を見ると、今期は、「本年6月、当社初のエキナカに出店したブルーミングブルーミー狭山市駅店(埼玉県狭山市)ならびに同月調布仙川店(東京都調布市)の2店舗を新設し、当第1四半期連結会計期間末での店舗数は127店舗となりました。」とのことで、原価小の極致をゆく付加価値の高い食品スーパーマーケット業態、ブルーミングブルーミーをオープンしている。一方で、「既存店におきましては、営業政策を徹底すべく立川幸店(東京都立川市)など計3店舗の改装を実施し、さらに、小型店のビジネスモデルと位置付けている「ina(い~な)21」への改装を江戸川船堀店(東京都江戸川区)に実施するなど活性化をすすめてまいりました。」とのことで、特に、経費小を目指すina(い~な21)への改装を進めており、新規出店、店舗改装の業態ミックスで原価小、経費小に取り組んでいるといえよう。

   また、いなげやのこの第1四半期決算時の4月度、5月度、6月度の売上高の推移であるが、4月度101.0%(既存店98.6%)、5月度99.0%(既存店97.8%)、そして、6月度102.5%(既存店101.1%)という推移であり、既存店が伸び悩んでいる。結果、固定費がやや重く経営に負担となり、経費比率が下がりにくい経営環境にあり、今後、経費比率をさらに下げる意味でも、既存店の活性化が課題といえよう。一般に食品スーパーマーケットの経費削減はそれぞれの経費項目を下げる経費改善策を実施することも重要であるが、それ以上に、既存店を活性化し、既存店の売上高を引き上げることにより、相対的に固定費を引き下げる方が効果が高いといえる。したがって、いなげやとしても、さらに、店舗改装を実施し、経費比率を引き下げる意味でも、既存店の活性化に取り組みたいところであろう。

   ところで、いなげやは小売業業種として、食品スーパーマーケットとドラックストアを展開している。食品スーパーマーケットが127店舗、ドラックストアが100店舗であり、この第1四半期の業績は食品スーパーマーケットの売上高435.22億円(セグメント利益3.78億円、253.4%増)、ドラックストアの売上高83.81億円(セグメント利益1.56億円、前期は-0.10億円)である。売上高ではドラックストアが19.25%であるが、セグメント利益では41.26%であり、ドラックストアの利益貢献度が高いといえる。したがって、この第1四半期はドラックストアの収益改善効果も大きかったといえ、今後、いかに、ドラックストアを活性化してゆくかも課題である。

   これを受けて、通期予想であるが、営業収益2.245.00億円(2.1 %)、営業利益39.00億円(3.1%)、経常利益42.00億円(3.2%)、当期純利益14.00億円(81.0%)であり、当期純利益も含め、増収増益である。ただ、営業利益、経常利益の伸び率は、抑制気味の予想であり、いかに、この第1四半期決算の原価、経費改善効果が大きいかがわかり、これが東日本大震災のプラスの影響といえよう。

   このように、いなげやの2012年3月期の第1四半期決算は、営業利益が大きく改善しており、東日本大震災は、結果として、営業利益に大きなプラスの影響を与え、原価、経費双方が改善され、ダブルでいなげやの利益を押し上げる結果となった。ただ、この好調な状況が今後とも続くことは難しいといえ、実際、通期はいなげや自身も厳しい予想をしている。いなげやが、この第1四半期決算の好調な結果を踏まえ、今後、どのように収益の安定をはかるか、その動向に注目である。

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August 05, 2011

ヤオコー、2012年3月、第1四半期決算、増収増益!

   ヤオコーが2012年3月期の第1四半期決算を8/3公表した。結果は営業収益577.20億円(10.5%)、営業利益 31.21億円(56.5%)、経常利益30.74億円(57.3%)、当期純利益17.27億円(111.7%)と、増収増益、特に、利益がどの段階においても大幅増益となり、好決算となった。ヤオコー自身も、震災後、「いち早く平時の売場の回復、特に当社の最大の特色であります提案型の売場の展開に取り組みました。そうした取り組みに対するお客様のご支持もあって、震災特需が落ち着いた後も売上は順調に推移しております。また、販売管理費についても削減が図られたため利益面でも大きく伸長することができました。」とのことで、提案型売場展開への取り組みが、増収増益に寄与したとコメントしている。

   そこで、まずは、ヤオコーの営業収益が10.5%と増収となった要因であるが、「店舗につきましては、4月に市川田尻店(千葉県市川市)、大宮盆栽町店(埼玉県さいたま市)の2店舗を開設いたしました。また、既存店2店舗の改装も行いました。」とのことで、新店と既存店の改装がバランスよく取り組まれていることが大きいといえよう。また、この決算期間の4月度、5月度、6月度の売上高の推移をみると、4月度111.9%(既存店104.9%)、5月度109.5%(既存店101.66%)、そして、6月度111.1%(既存店103.3%)と、既存店が堅調な推移を示していることに加え、新店による売上増が加わったことが大きいといえよう。また、客数、客単価、さらには、PI値、一品単価ともにバラスンよく伸びているのも特特徴であり、安定した売上高の推移である。

   ついで、営業利益が56.5%増と、大幅に増益となった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、71.02%(昨年71.65%)となり、0.63ポイント改善した。結果、売上総利益は28.98%(昨年28.35%)となった。それにしても、この原価率は極めて低い数字であり、2011年度の決算公開企業約50社の平均が75.1%であるので、71.02%がいかに低いかが分かる。この数字が示す通り、ヤオコーは食品スーパーマーケットの中では、付加価値を追求する典型的な食品スーパーマーケットであり、今期は、震災の影響の中でも、さらに、付加価値を高めたマーチャンダイジングが実戦されたといえる。

   一方、経費の方であるが、27.81%(昨年28.89%)と、1.08ポイントと、大幅に下がった。ヤオコー自身も、「販売管理費についても削減が図られたため利益面でも大きく伸長することができました。・・」とコメントしているが、それ以上に、先に見たように、既存店の売上高が堅調な伸びを示し、結果、相対的に固定費が下がったことが大きいのではないかと思われる。一般に、食品スーパーマーケットの経費比率は既存店の動向に左右されることが大きく、既存店が伸びている場合は、経費比率も下がる傾向がある。ヤオコーにとっては、今期は震災特需の影響もあり、既存店の数字が伸びたことが経費比率を下げることになったといえよう。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は1.17%(昨年-0.54%)となり、マイナスからプラスへ転じ、大きく数値が改善した。原価、経費、ダブルで改善、特に、経費比率が大きく下がったことが大きいといえる。それにしても、ヤオコーのマーチャンダイジングは食品スーパーマーケットの中では典型的な原価小、経費大のタイプであり、経費をしっかりかけ、それ以上に付加価値を追求してゆくパターンであるといえる。食品スーパーマーケットの大半は原価大、経費小を目指し、価格訴求をかけ、その分、経費を極限まで削り、ローコストオペレーションを目指すパターンが多いが、ヤオコーは正反対のマーチャンダイジング戦略であるといえる。

   そして、これに、ヤオコーのもうひとつの強み、NSC(近隣型ショッピングセンター)等を通じて得られる不動産収入、全113店舗をネットワークする物流センター等から得られる物流収入等のその他営業収入が4.48%(昨年4.54%)加わり、結果、営業利益は5.65%(昨年4.00%)となった。こう見ると、ヤオコーの営業利益貢献度はマーチャンダイジング力よりも、その他営業収入の方がウェートが高いといえ、まさに、これがヤオコーのもうひとつの強みといえる。したがって、その分、経費を掛けることもでき、付加価値を追求するマーチャンダイジングを実戦できるといえよう。

   このように、3/11の東日本大震災後、ヤオコーのはじめての四半期決算、2012年3月期の第1四半期決算が公表されたが、結果は、震災後の特需も寄与し、増収大幅増益の好決算となった。ヤオコーが目指す付加価値を追求したマーチャンダイジング、提案型の売場展開がいかんなく発揮された結果となった。結果、既存店が堅調であったため、経費比率も下がり、震災後取り組んだ節電等の経費削減策も寄与し、大幅に経費比率が下がったことが大きく、昨年のマーチャンダイジング力のマイナスがプラスに転じ、収益性が大きく向上している。ヤオコーとしては、理想的なマーチャンダイジングが展開できたといえよう。今後、経営環境は予断を許さない厳しい状況が続くと思われるが、ヤオコーがどこまで、この好調さを維持できるか、次の中間決算の結果に注目である。

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August 04, 2011

岩手のドラックストア、薬王堂、被災後、増収増益!

   岩手県を中心に、宮城県、山形県、そして、青森県、秋田県と東北地区で店舗展開をするドラックストア、薬王堂の東日本大震災後の初の決算、2012年2月期、第1四半期の決算が7/8、公表された。結果は、売上高112.00億円(14.8%)、営業利益6.34億円(342.6%)、経常利益6.59億円(288.6%)、当期純利益-3.64億円となり、営業、経常段階では大幅な増収増益となる好決算となった。なお、当期純利益が赤字となった要因は、今決算期から計上が義務づけられた資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額が-1.10億円に加え、東日本大震災による損失が-8.27億円発生したためである。

   薬王堂の東日本大震災による影響であるが、「大きな被害を受けた岩手県沿岸の陸前高田市、山田町、大槌町においては、仮設店舗による営業を開始しております。他の地域においても、街の復興に合わせて被災店舗の復旧再開や仮設店舗による営業再開を進めてまいります。」とのことで、急ピッチで営業再開が進んでいるとのことである。ただ、実際の被災状況は、「当第1四半期連結累計期間の店舗数の推移は、3月2日開店の宮古磯鶏店を含む11店舗が津波による損壊のため閉店(営業休止)しているほか、ドラッグストア併設の調剤薬局1店を閉鎖しており、当第1四半期連結会計期間末の店舗数は119店舗(うち調剤併設型4店舗)となりました。」とのことで、営業休止店舗もあり、厳しい状況が続いているとのことである。

   そこで、まずは、このような厳しい営業状況の中でも、薬王堂の売上高が被災後2桁の増収となった要因を部門別に見てみたい。薬王堂は大きく4つに分けて部門を管理している。それぞれの部門の結果であるが、ヘルスケア部門10.4%増(32.85億円、構成比29.33%)、ビューティケア部門6.2%増(21.85億円、構成比19.50%)、ホームケア部門24.2%増(13.32億円、構成比11.89%)、そして、コンビニエンスケア部門20.6%増(43.96億円、構成比39.25%)という結果である。薬王堂自身も特にコンビニエンスケア部門が、「震災による需要により、全般に大きく伸張しました。特に震災直後の飲料やカップラーメン、加工食品、乾電池、ライト等緊急的な商品から日配商品、冷凍食品、酒類、文具用品、ペットフード等の日常品や殺虫剤等季節商品が伸張いたしました。・・」とのことで、売上高を押し上げたといえる。

   一方、営業利益が342.6%と異常値なった要因を、原価、経費面から見てみたい。まずは原価であるが、76.03%(昨年75.72%)となり、0.31ポイント上昇しており、原価の上昇が見られる。結果、売上総利益は23.97%(昨年24.28%)と、粗利は下がった。これに対して、経費の方であるが、18.29%(昨年22.80%)と、4.51ポイントと、大きく下がった。通常ではありえない下落幅であり、薬王堂自身も、「経費面では、従前からの削減活動のほか、震災後の電力消費抑制の取り組みや商品供給体制の正常化までの販売費の見直しを行いました。・・」とのことで、販売費の見直しが大きかったといえよう。

   それにしても、通常、ここまで経費比率が下がることはなく、それだけ、東日本大震災後の経営環境が被災地であるがゆえに、異常な状況であったといえよう。ちなみに、薬王堂のここ数年の経費比率であるが、2011年決算時21.65%、2010年決算時22.00%、2009年決算時22.22%であり、22%前後で推移していたので、この第1四半期の18.29%は明らかに異常値であり、震災の影響といえよう。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は5.68%(昨年1.48%)となり、大幅な改善となった。原価の上昇を経費の大幅削減でカバーしたといえる。薬王堂はその他営業利益を計上していないので、マーチャンダイジング力=営業利益となり、大幅な増益となった。

   ただ、気になるのは通期予想であり、第1四半期決算が、これだけ好決算であったにも関わらず、売上高400.00億円(-5.1%)、営業利益 9.10億円(-11.6%)、経常利益9.85億円(-13.0%)、当期純利益-2.20億円と、減収減益の予想である。それだけ、今後の経営環境は厳しい結果になるとの認識であるといえよう。

   実際、この第1四半期のキャッシュフローを見ると、営業活動によるキャッシュフローは25.12億円(昨年4.18億円)と大きく増加し、投資活動によるキャッシュフローは-0.83億円(昨年1.80億円)と大きく減少、投資を控えたといえる。そして、財務活動によるキャッシュフローであるが、-5.98億円(昨年-1.40億円)と増加したが、結果、トータルキャッシュフロー18.30億円(昨年0.97億円)となり、キャッシュを確保し、内部留保に充てている。結果、B/S(貸借対照表)の資産の現金は25.38億円(前期本決算時7.60億円)となり、今後に備えて現金を確保したといえよう。

   このように、岩手県、宮城県等中心に被災地に店舗展開をしているドラックストア、薬王堂の被災後の初めての四半期決算は、復興需要が貢献し、大幅な増収増益、好決算となった。特に、ドラックストア本体の需要よりも、雑貨、食品等の需要が全体を牽引したといえる。また、利益面では原価はやや上昇したが、経費が極端に下がり、空前の利益となった。ただ、この異常値は次の中間、そして、通期決算まで持続することはなく、特に、通期は厳しい結果を予想しており、キャッシュフローも成長戦略、財務改善に配分するよりも、まずは現金を確保する決断をしている。今後、薬王堂が、この第1四は期決算で確保した豊富な現金をどのように活用してゆくか、その経営決断に注目である。

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August 03, 2011

ヤマザワ、2012年3月期、第1四半期決算、増収増益!

   ヤマザワが7/29、2012年3月期の第1四半期決算を公開した。ヤマザワは山形県、宮城県を地盤とする食品スーパーマーケットであり、3/11の東日本大震災の影響を強く受けた食品スーパーマーケットである。ヤマザワ自身も、「平成23年3月11日の震災及び4月7日の余震におきまして当社も宮城県の店舗で大きな被害を受け、6店舗の休業を余儀なくされました。現在はすべての店舗で復旧し営業を再開しております。」とのことで、宮城県で展開している店舗が被災している。その結果であるが、売上高236.26億円(10.0%)、営業利益12.19億円(183.6%)、経常利益12.28億円(182.7%)、当期純利益7.05億円(前期は赤字)と、増収大幅増益の好決算となった。特に、各段階での利益が大幅な増益であることに加え、各社、売上高が伸び悩んでいる中、2桁の増収であり、復興需要の力強いエネルギーを感じる決算結果となった。

   そこで、まずは、ヤマザワが2ケタの増収となった要因を見てみたい。今期ヤマザワは、「設備投資としましては既存店の活性化を目的に、平成23年5月に白山店(山形県山形市)の改装を実施いたしました。生鮮売場を中心に買い易い売場への変更と、併設しておりましたドラッグ売場を拡大し利便性の向上と品揃えの充実を図りました。」とのことで、新店はなく、既存店を1店舗改装したのみであり、新店が売上増に寄与したわけではない。実際、震災以降の数ケ月の売上高の推移をみると、3月度110.5%(既存店107.7%)、4月度104.7%(既存店103.6%)、5月度112.1%(既存店110.2%)、6月度114.2%(既存店112.3%)であり、明らかに既存店が大きく伸びているのが鮮明である。それだけ、既存店が復興需要を取り込んでいる結果といえよう。

   一方、売上高以上に、利益も大幅増益であるが、その要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、70.72%(昨年71.83%)と、1.11ポイントと大幅に改善した。ヤマザワ自身も、「利益面におきましては震災の影響によりチラシ特売を見合わせたことや生鮮食品の値下げ販売の減少などもあり、・・」とのことで、ちらしと生鮮食品の値下げロスの改善が大きかったとのことである。それにしても、ちらしと値下げロスがいかに原価に直結しているかが鮮明であり、食品スーパーマーケットにとっては、この2点の改善が利益向上の鍵を握っているといえよう。結果、売上総利益は29.28%(昨年28.17%)となった。

   これに対して、経費の方であるが、24.10%(昨年26.15%)と、2.05ポイントと、通常ではありえない大幅な改善となった。これに対して、ヤマザワは、「売上面におきましては宮城県において休業店舗が6店舖あったものの、他の営業店舗において客数が伸び、お客様1人当たりの買上点数も増えたことで増加いたしました。」とのことで、既存店の客数、PI値が伸び、結果、客単価アップにつながったとのことであり、既存店の震災需要取り込みによる活性化が大きかったとのことである。一般に、食品スーパーマーケットでは既存店の売上高が上昇すると、相対的に経費、特に人件費等の固定費が下がり、結果、経費比率が改善するが、今期、ヤマザワは既存店が2桁近い伸びであり、これが経費削減に大きく寄与したものといえよう。このヤマザワの結果は、食品スーパーマーケットとしては、経費削減をはかるよりも、既存店の活性化をはかる方が経費削減につながる典型的な事例であるといえる。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は5.18%(昨年2.02%)となり、通常ではありえない大幅な改善となった。ヤマザワはその他営業収入を計上していないため、マーチャンダイジング力=営業利益となり、結果、営業利益が183.6%増という異常値となった。原価の改善もさることながら、経費の改善がさらに大きかったことがその要因といえよう。

   これを受けて、今後の中間、そして、通期予想であるが、中間決算予想は売上高500.00億円(10.7%)、営業利益15.00億円(35.7%)、経常利益15.00億円(34.0%)、当期純利益7.00億円(144.2%)と、この第1四半期ほどではないが、大幅な増収増益予想である。さらに、通期予想であるが、売上高1,000.00億円(9.9%)、営業利益27.50億円(6.2%)、経常利益28.00億円(6.2%)、当期純利益 15.00億円(93.9%)と、中間決算予想よりは、落ちついた数字であるが、増収増益の好決算の予想である。特に、売上高がはじめて1,000億円となる予想であり、売上高の伸びが顕著である。

   このように、2012年3月期のヤマザワの第1四半期決算は、被災地、特に宮城県の店舗が大きな打撃を受けたにも関わらず、東日本大震災の復興需要が寄与し、既存店の客数、客単価ともに堅調な伸びを示し、売上高が大きく上昇した。結果、経費比率が大幅に下がると同時に、生鮮の値下げロスが減少、ちらしも抑制したため、売価が相対的に上昇し、原価の改善も図られ、営業利益が183.6%増と空前の結果となった。この勢いは、次の中間、そして、通期においても継続する見込みであり、ヤマザワとしては、過去、最高の決算となるものといえよう。ヤマザワが今後、この好調な決算により生み出されたキャッシュを今後、どのように経営戦略に活かして行くのか、その経営決断に注目である。

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August 02, 2011

関西スーパー、2012年3月、第1四半期、増収増益!

   関西スーパーマーケットが7/28、2012年3月度、第1四半期決算を公表した。結果は、営業収益291.21億円(2.2%)、営業利益3.31億円(80.4%)、経常利益4.34億円(74.6%)、当期純利益2.51億円(150.3%)となり、増収増益の好決算となった。この第1四半期は、「東日本大震災の影響による商品供給の停滞と原子力発電所問題による電力使用制限等の間接的影響も重なり、景気全般に深刻な影響が懸念される状況で推移いたしました。」とのことであり、さらに、「お客様の節約志向が一層高まるなか、大震災の影響による一部商品の原材料および包装資材等の単価高騰と不安定な供給状態も影響し、経営環境は厳しいものとなりました。」とのことで、経営環境は厳しかったとのことである。

   このような厳しい経営環境の中、特に、関西スーパーマーケットの営業利益が大幅に改善した要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、76.77%(昨年76.90%)と、0.13ポイント改善した。結果、売上総利益は23.23%(昨年23.10%)となった。これに対して、経費の方であるが、23.92%(昨年24.34%)と、0.42ポイント改善した。したがって、原価、経費双方が改善され、結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-0.69%(昨年-1.24%)と、依然としてマイナスではあるが、その幅は大きく縮まり、収益性が高まった。

   そして、これに不動産収入、物流収入等のその他営業収入が1.85%(昨年1.90%)加わり、結果、営業利益は1.16%(昨年0.66%)と、大きく改善した。原価、経費、ダブルでの改善効果が大きかったといえる。また、今期は、「店舗の新設については、平成23年5月に念願でありました奈良県に第1号店となる奈良三条店(奈良県奈良市)を開店いたしました。」とのことで、奈良県への初の新規出店も決まり、結果、営業収益が2.2%増となったことも営業利益を押し上げた要因といえよう。

   こう見ると、東日本大震災の影響により経営環境は厳しい面があったとはいえ、営業利益の中身を見ると、原価、経費ともに改善されており、関西スーパーマーケットにとっては、収益性を高める契機となったといえよう。これを受けて、通期予想は、営業収益1,188.00億円(1.8%)、営業利益 20.50億円(14.8%)、経常利益 22.40億円(11.9%)、当期純利益10.90億円(22.0%)と、この第1四半期ほどではないが、増収増益基調であり、今期は好決算を予想している。

   一方、この好決算を受けて、財務面の状況であるが、自己資本比率は48.2%(前期決算時48.5%)と、大きな変化はない。したがって、負債が50%強であり、その主要項目である有利子負債は94.25億円(前期決算時94.37億円)と、ここでも変化はなく、総資産526.48億円に占める割合は17.90%である。2011年度の食品スーパーマーケットの決算公開企業約50社の平均が27.76%であるので、負債への大きな影響はないが、もう一段と、圧縮しておきたいところであろう。

   これに対して、資産の方であるが、新規出店関連の資産、土地、建物、敷金・保証金の合計は311.26億円(前期決算時315.55億円)であり、今期は1店舗新規出店がなされているが、大きな変化はない。結果、総資産に占める割合は59.12%である。したがって、自己資本比率と新規出店にかかわる資産との差、出店余力は-10.92%であり、負債への依存度は10%強である。これも決算公開企業約50社の食品スーパーマーケットの出店余力の平均が-21.91%であるので、関西スーパーマーケットの出店余力は比較的高いといえる。また、現金であるが、38.82億円(前期決算時37.52億円)であり、大きな変化はない。

   こう見ると、営業面では増収、大幅増益と好決算となったが、この好決算が財務改善には大きな影響はなく、ほぼ、前期決算時の財務状況に近い結果である。関西スーパーマーケットとしては、この好決算を活かし、財務改善にまで踏み込みたいところであろうが、この第1四半期決算では新規出店1店舗へキャッシュを配分し、攻めの経営決断を選択したといえる。関西スーパーマーケットは、長期ビジョンとして、「2020年、店舗数100店舗・年商2,000億円」の達成に向け、・・」を掲げている。現在60店舗であるので、あと40店舗の新規出店が今後約10年で達成することが必要であることからも、財務改善へのキャッシュの配分よりも、新規出店へのキャッシュの配分を優先したと思われる。

   このように、関西スーパーマーケットの2012年3月期のはじめての四半期決算が公表された。関西スーパーマーケトは3月期決算であり、4月度から6月度までの決算期間であるため、東日本大震災後の経営環境への影響がそのまま反映される決算となったが、結果は、増収増益、特に、営業利益が原価、経費、双方が改善され、大幅な増益となった。関西スーパーマーケットにとっては、東日本大震災の影響が利益の改善に寄与したといえよう。また、この好決算を受けて、獲得したキャッシュを新規出店へ配分しており、財務面の改善には踏み込まなかったといえる。関西スーパーマーケットとしては、成長戦略を優先した経営決断であるといえ、今後、成長戦略をどこまで押し進めるのか、その動向に注目である。

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August 01, 2011

家計調査データ、2011年6月度、消費低迷!

   総務省統計局から7/29、2011年6月度の家計調査データが公表された。結果は全体の消費は1世帯1日当たり、8,860.23円(96.1%)、外食を除く食品は1,920.87円(98.6%)となり、食品の方がやや下げ幅は少ないが、厳しい結果となった。5月度(全体98.4%、食品97.9%)、4月度(全体97.5%、食品99.3%)、3月度(全体91.6%、食品100.5%)であるので、3/11の東日本大震災以降、消費は厳しい状況が続いており、特に、食品が低迷しているといえよう。なお、この6月度から、被災地の調査票も回収が進み、前月度まで集計が0であった福島市もこの6月度から集計が可能となった。ただ、大槌町(岩手県)、石巻市(宮城県)の2市町は依然として、回収できない状況である。

   そこで、まずは、全体の消費が低迷した要因を大項目で見てみたい。食品1,920.87円(98.6%)、外食387.17円(99.0%)、住居610.20円(88.8%)、光熱・水道 623.53円(97.8%)、家具・家事用品388.30円(105.6%)、被服及び履物402.17 円(98.2%)、保健医療407.57円(98.9%)、交通・通信1,109.63円(89.5%)、教育247.90円(99.5%)、教養娯楽997.60円(93.2%)、その他の消費支出1,765.30円(97.9%)という結果である。

   こう見ると、住居610.20円(88.8%)と交通・通信1,109.63円(89.5%)が特に、厳しい結果であったといえる。その要因であるが、住居では、設備修繕・維持256.60円(73.7%)、その中でも、工事その他のサービスが181.37円(67.0%)となったことが住居全体の消費を下げた要因である。交通・通信については、自動車等関係費576.50円(82.2%)、その中でも自動車等購入122.30円(67.5%)、自動車等維持447.97円(87.3%)が大きく減少しており、これが交通・通信全体を下げた要因である。ちなみに、通信は385.90円(97.8%)と比較的健闘しており、自動車関連の落ち込みが大きかったといえる。

   これ以外に気になる項目であるが、CPI(消費者物価指数)でも問題となったたばこであるが、34.83円(114.5%)であり、好調である。さらに、消費世帯のみでは245.31円(120.5%)、消費世帯の割合14.2%(95.0%)であり、新たな消費世帯が増えているわけではなく、消費世帯の需要が増えているといえ、値上げ後も消費世帯はたばこをしっかり購入しているといえよう。

   一方、食品の方であるが、まずは、大項目を見てみたい。穀類205.90円(94.1%)、魚介類199.77円(96.9%)、肉類205.00円(104.6%)、乳卵類109.60円(98.6%)、野菜・海藻285.00円(97.1%)、果物88.27円(95.8%)、油脂・調味料114.17円(101.2%)、菓子類188.77円(95.7%)、主食的調理食品106.07円(104.0%)、飲料148.2円(104.9%)、酒類120.57円(96.2%)という結果である。

   全体が厳しい中でも、肉類104.6%、油脂・調味料101.2%、主食的調理食品(惣菜)104.0%、飲料104.9%と堅調な大項目もある。その要因であるが、肉類では牛肉49.27円(109.6%)、ベーコン7.27円(114.7%)の伸びが高い。油脂・調味料では乾燥スープ5.93円(116.3%)、カレールウ4.73円(109.2%)、ケチャップ1.67円(106.4%)が良く伸びている。主食的調理食品では、サラダ8.53円(107.1%)、やきとり5.17円(104.7%)の伸びが高い。そして、飲料ではミネラルウォーター9.50円(139.7%)が異常値である。ミネラルウォーターについては、5月度7.77円(131.0%)、4月度10.63円(184.4%)、そして、3月度12.84円(248.8%)という状況であり、東日本大震災以降、伸び率は下がりつつあるが、依然として高い消費額を維持している。

   これに対して、大項目で消費が厳しかったのは、穀類94.1%、果物95.8%、菓子類95.7%、酒類96.2%等であるが、その要因を見てみたい。穀類については、米が65.17円(85.6%)と大きく落ち込んでおり、これ以外は、パン77.30円(96.5%)、めん類54.37円(101.2%)と比較的堅調な消費であり、米が穀類全体の消費を押し下げたといえよう。果物では、バナナ13.60円(88.9%)、グレープフルーツ2.90円(73.1%)等、輸入品が厳しい状況である。一方、すいか9.23円(102.6%)、りんご7.30円(117.1%)は堅調な消費であり、明暗が分かれた。

   菓子類では、アイスクリーム・シャーベット26.37円(94.1%)、チョコレート6.47円(88.2%)、ゼリー8.00円(89.9%)等が伸び悩んだ。そして、酒類であるが、ビール37.67円(86.9%)、焼ちゅう22.10円(89.0%)が酒類全体の消費を押し下げた要因であるが、一方で、ウイスキー4.00円(111.1%)、清酒14.03円(109.6%)、ワイン6.27円(109.3%)等、好調な項目もある。

   また、ここにあげたもの以外で気になった項目であるが、牛乳42.97円(91.4%)、酢4.47円(88.7%)、あさり3.20円(87.3%)、しじみ1.27円(80.9%)、あじ4.97円(86.6%)、いわし1.90円(75.0%)、かつお6.07円(83.9%)、キャベツ5.53円(81.8%)、だいこん3.33円(87.0%)、わかめ3.43円(82.4%)、うなぎのかば焼き8.20円(86.0%)等であり、これらが90%前後まで消費が下がった項目である。

   このように、3/11の東日本大震災から4ケ月弱となる2011年6月度の家計調査データであるが、全体の消費は低迷しているといえる。特に食品は震災による特需が発生し、3月、4月度は比較的堅調な消費であったが、5月度に入り低迷し、さらに、6月度も5月度同様厳しい消費状況が続いている。特に、穀類、果物、菓子類、酒類等が厳しい状況であり、これらが食品全体の消費を押し下げているといえる。消費者物価指数も、たばこ、エネルギー関連を除けば依然として、デフレ基調で推移しており、当面、消費の回復は厳しい状況が続くといえよう。今後、7月、8月と夏本番となるが、昨年の猛暑の影響がどのように消費に反映されるか、気になるところである。

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