テスコ、2012年2月期、中間決算、増収増益!
テスコが2012年2月期の中間、8/27までの26週間の決算結果を10/14に公表した。テスコはイギリスに本社を置き、ヨーロッパ、アジア、そして、アメリカへとグローバルに展開している、世界第3位の規模を誇る小売業であるが、残念ながら、日本からは今年撤退を表明しており、現在、売却交渉に入っている。また、アメリカでの事業も中々軌道にのらず、苦戦を強いられている。ただ、ヨーロッパ、アジアは好調であり、この中間決算も、ヨーロッパ、アジアが寄与し、グループ全体では増収増益となった。
そこで、各地域の結果を見てみると、全体の売上高は355.30億ポンド(8.8%増)であり、その内訳は、イギリス234.29億ポンド(7.1%増:構成比65.94%)、ヨーロッパ56.73億ポンド(12.4%増、構成比15.96%)、アジア56.02億ポンド(11.7%増、構成比15.76%)、アメリカ3.04億ポンド(23.1%増、構成比0.85%)、そして、テスコ銀行5.22億ポンド(10.1%増、構成比1.46%)である。アメリカは伸び率こそ高いが、構成比は1%にも満たず、全体を牽引しているのは、ヨーロッパ、アジアである。なお、この数字は、Value-Added Tax 、いわゆるVAT、付加価値税込みの数字であり、後で見るP/L(損益計算書)では、VAT抜きで計算している。
一方、営業利益の方であるが、全体は17.73億ポンド(売上対比5.5%、昨対3.7%増)であり、結果、増収増益と好決算となった。その内訳であるが、イギリス12.73億ポンド(売上対比6.01%、昨対4.5%増)、ヨーロッパ2.37億ポンド(売上対比4.81%、昨対11.8%増)、アジア2.92億ポンド(売上対比5.59%、昨対18.7%増)、アメリカ-0.73億ポンド(売上対比-24.33%、昨対23.2%増)、そして、テスコ銀行0.44億ポンド(売上対比8.43%、昨対-65.9%増)である。アメリカが赤字、テスコ銀行が減益であり、利益についてもヨーロッパ、アジアの貢献度が高いといえる。なお、「Continuing operations exclude the results from our operation in Japan which have been treated as discontinued following our decision to sell the business.」とのことで、日本の数字は除外されているとのことである。
こう見ると、テスコは、イギリス本体の安定的な収益に加え、売上高、利益ともに成長著しいヨーロッパとアジアが増収増益を支えているといえ、まだ全体へのインパクトは薄いがアメリカは苦戦しているといえる。結果、増収8.8%、増益3.7%の増収増益となり、好調な決算ではあったが、やや利益が厳しいといえ、特に利益の改善を後半にかけては重視したいところであろう。
そこで、その利益について、P/L(損益計算書)をもとに、原価、経費面から、やや苦戦したとはいえ、増益となった要因を見てみたい。なお、P/Lでは、売上高、Revenue (sales excluding VAT)であり、税抜きの数字で計算されており、先ほどの数字とは若干違ってくる。まずは、売上高であるが、318.12億円(7.8%)であり、先の税込の売上げと比べると、10.46%となり、いわゆる消費税率は10.46%、日本の約2倍であることがわかる。
さて、原価であるが、92.22%(昨年92.10%)と、0.11ポイント上昇している。結果、売上総利益は7.78%(昨年7.90%)となった。一見、日本のP/Lとよく似ているが、この数字を見ると、ここには仕入れ原価と店舗段階での経費が含まれているものと推測され、これだけ、原価が大きくなるのではと思う。これは日本のP/L、ウォルマートのP/L、ホールフーズマーケットのP/Lとも違い、独特な計算方法である。そして、経費の方であるが、2.45%(昨年2.58%)と、0.13ポイント改善した。これは恐らく、経費といっても本部経費と思われる。言葉としても、Administrative expensesとしており、General and administrative expensesのGeneralが抜けているので、本部経費と推測される。
結果、営業利益は5.33%(昨年5.32%)と、わずかな伸びにとどまっており、やや厳しい利益構造であったことがわかる。売上高が好調であったことにより、高では好調な数字となったが、率では原価高が響いたといえよう。それにしても、小売業のP/L(損益計算書)は様々であり、日本、ウォルマート、ホールフーズマーケット、テスコ、皆違いびっくりである。中でもホールフーズマーケットは独特であり、最も詳細なP/Lであるといえる。
一方、テスコのB/S(貸借対照表)であるが、これも独特な計算方法であり、自己資本比率が計算しにくい。その理由は、資産と負債+純資産と左右にわかれてのバランスをとっておらず、資産-負債と純資産でバランスをとっているため、資産の合計、負債と純資産の合計が計算されていないためである。そこで敢えて、自己資本比率を計算してみると、資産の合計は492.93億ポンド(昨年472.06億ポンド)、純資産が170.33億ポンド(昨年166.23億ポンド)であるので、34.55%(昨年35.21%)と若干下がっており、しかも、30%台と厳しい財務状況といえる。日本ではイオンが32.30%、セブン&アイHが47.60%であるので、イオンとほぼ同じ数字である。
このように、テスコの2012年2月期の中間決算は増収増益とはなったが、利益は原価の上昇がみられやや厳しい結果であったといえる。また、自己資本比率も下がっており、しかも、その数字も低い状況にあり、財務の改善も課題といえる。こう見ると、売上げ、利益ともに伸び悩む日本からの撤退もやむをえないといえよう。テスコとしては、利益を引き上げ、財務の安定化をはかることが先決といえ、売上げ、利益ともに比較的好調なヨーロッパ、アジアへの投資を優先することも理解できるといえる。すでに、後半戦に入っているが、テスコがヨーロッパ、アジアでどのような成長戦略を打ち出すか注目である。
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