ウォルマート、2012年度決算、第3四半期、好調!
ウォルマートが11/15、2012年度の第3四半期決算を公表した。第1声は、「Walmart announces FY12 Q3 EPS from continuing operations of $0.97、・・」であり、EPS、すなわち、1株当たり利益が0.97ドルとなったとのことである。日本の決算発表では、増収増益が第1声となるが、ウォルマートの決算における最重要情報は、このEPSにあり、いかに、株主に対して、利益を生み出すことができたかを報告するのが、決算の目的であるといえる。そして、その次のアナウンスが売上高であり、「Net sales for the third quarter were $109.5 billion, an increase of 8.2 percent from last year.」であり、増収となったとのことである。
そして、3番目が、「Both Walmart U.S. and Sam's Club exceeded comparable ("comp") sales、・・」既存店、4番目が、「Walmart International increased net sales approximately 20 percent to $32.4 billion for the quarter,・・」と、貢献度の高い海外の状況、5番目が、「・・、operating expenses for the quarter.」と、営業費用、そして、最後、6番目に、「During the third quarter, the company returned $2.7 billion to shareholders through dividends and share repurchases.」と、再度、株主への貢献、すなわち、配当と自社株買いのコメントをしており、日本の決算とは異質な着眼ポイントといえよう。
特に、6番目の株主への貢献は、1番目がEPSで直接利益に加え、そこからの配当、さらには、自社株買いも株主還元であるとの明確な認識であり、特に、この3つの数字が決算にとっていかにウォルマートにとって重要な数字であるかが、鮮明な決算発表といえる。日本では、ここまで決算の冒頭で株主へ、決算結果がいかに貢献しているかを強調することはないといえ、興味深い、決算の認識の違いである。ちなみに、ウォルマートの株価であるが、10月までは53ドル前後でほぼ横ばいで推移していたが、10月に入り、株価は上昇、ほぼ右上がりとなり、11/8には60ドル寸前まで急上昇した。この11/15の第3四半期決算時には57.55ドルであり、高値を維持しており、投資家はウォルマートを買いと判断しているといえよう。
さて、ウォルマートの、この第3四半期のP/L(損益計算書)であるが、日本のP/Lとは違い、原価と経費が並列で記載され、売上高+その他営業収入から、同時に差し引き、営業利益を算出しているのが特徴である。そして、この営業利益から、資本関連の収益を差し引き、当期純利益を算出しており、いわゆる経常利益がなく、営業利益からストレートに当期純利益へと直結する。したがって、原価率、経費比率等が算出されていないので、独自に計算し、ウォルマートのマーチャンダイジング力を算出する必要がある。
そこで、そのマーチャンダイジング力を算出してみると、まずは、原価は75.42%(昨年75.11%)と、0.31ポイント上昇しており、原価は残念ながら改善できていない。結果、売上総利益は24.58%(昨年24.89%)となった。日本の食品スーパーマーケットとほぼ同じ数字である。一方、経費の方であるが、19.61%(昨年19.80%)と、0.19ポイント改善している。それにしても、以前と比べると経費比率は上昇しているとはいえ、20%を切る低い数字であり、これが、ウォルマートの強さといえ、EDLP(EveryDay Low Price)を支えるまさに、EDLC (EveryDay Low Cost)であるといえよう。日本の決算公開企業約50社でも20%を切る経費比率の食品スーパーマーケットはわずか5社であり、小売業にとって、20%の経費比率を下回ることがいかに至難の技であるかがわかる。ちなみに、イオンは35.11%、セブン&アイHは33.37%であり、異次元の世界である。
結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は4.97%(昨年5.09%)となり、下がった。原価が経費削減以上に上昇したのが要因といえ、今後、ウォルマートとしては、いかに、原価を引き下げるかが課題といえよう。そして、これに、その他営業収入が0.68%(昨年0.70%)加わり、営業利益は5.65%(昨年5.79%)と、率では減益となった。ただ、売上高が6.0%上昇しており、結果、営業利益高では3.5%の増益となり、営業利益段階では増収増益の好決算となった。その売上高の上昇要因であるが、ウォルマートの既存店は0.0%と厳しい状況であるが、新店を含めたウォルマート全体は2.6%増、サムズクラブが9.6%増、海外が8.4%増であり、サムズクラブと海外に支えられた増収といえ、今後、米国内、特に、既存店の活性化が課題といえよう。
さて、このような状況の中、ウォルマートの経営戦略はどこを向いているかであるが、キャッシュフローを見ると、営業活動によるキャッシュフロー129.14億ドル(昨年122.65億ドル)と若干増加したが、そのほとんどを投資活動によるキャッシュフローに配分している。その金額は128.14億ドル(昨年92.89億ドル)であり、中身は新店開発に加え、M&Aへの投資である。財務活動によるキャッシュフローはわずか2.84億ドル(昨年3.30億ドル)であり、いかに、成長戦略を重視したキャッシュの配分であるかがわかる。
このように、ウォルマートの第3四半期決算は増収増益とはなったが、原価の上昇が響き経費の削減で補うことができず、マーチャンダイジング力は厳しい結果となった。ただ、それを補う売上高を達成したため増収増益を確保したといえる。そして、それを後押しするかのように、キャッシュフローの大半を成長戦略に投資しており、ウォルマートはここへ来て、強気の攻めの経営に転じたといえよう。今後、残された四半期、年間最大の収入が得られる年末年始に向けて、ウォルマートがどのようなキャッシュの獲得に打って出るか、その動向に注目である。
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