酒を3つの角度、時系列、年代別、所得別に見てみる!
本ブログでは、毎月、月末に総務省統計局から公表される家計調査データについて、特に食品スーパーマーケットに関連が深い食品を中心に、その動向を取り上げている。家計調査データは、このように月報もあるが、それ以外にも季刊(四半期)、そして、年報もある。そこで、ここでは、家計調査データの年報をもとに、月報ではわからない長期的な消費額の推移、年代別の消費構造の違い、そして、所得別の消費動向について、酒に絞って取り上げてみたい。
家計調査データでは酒は7種類に分類され集計されている。清酒、焼酎、ビール、ウィスキー、ワイン、発泡酒、他の酒である。また、年報では最新が2010年であるが、1988年までさかもどることができ、約20年間の酒の各種類別の推移を見ることができる。年代は20代以下、30代、40代、50代、60代、そして、70歳以上、所得は年間300万円以下、350万円、450万円、600万円、そして800万円以上を見ることができる。そこで、これらの消費額をすべて折れ線グラフにしてみると、酒を大局的な見地から俯瞰することができ、現在、すなわち2010年度の酒の位置をそれぞれの種類ごとに把握することができる。
実際、これらのグラフを見てみると、様々なことに気付く。まずは、清酒と焼酎のこの20年間の推移であるが、対照的な動きをしており、20年前の1988年は、1世帯当たりの消費額は清酒13,257円に対し、焼酎3,186円と、何と1万円以上の差があった。ところが、清酒は年々数字が右下がりになり、逆に、焼酎は数字が右上がりになり、何と、2008年に逆転し、清酒6,833円、焼酎7,400円となった。その後、その差はさらに広がり、2010年には清酒6,250円、焼酎7,253円となり、約1,000円の差となり、再逆転は難しい状況となりつつある。グラフを見ると、1988年から見事な右下がりの清酒、逆に、右上がりの焼酎、そして2007年から、2008年にかけて双方が交差し、その後、焼酎が上、清酒が下となり、現在に至っており、栄枯盛衰がまさに鮮明である。
同様な動きは、ウィスキーとワインにもあり、約20年前の1988年にはウィスキーの1世帯当たりの消費額は5,773円、ワインは1,148円であり、約5倍の差があった。これが、ウィスキーは年々消費額を下げ、逆に、ワインはゆるやかに消費額を上げてゆき、約10年後の1998年に双方が交差し、逆転、ウィスキー2,635円に対し、ワイン3,457円となり、その後、ワインはほぼ横ばいで推移したが、ウィスキーはさらに数字を下げたため、逆転は起こらず、ワインがウィスキーを上回ったまま、2010年を迎えている。現在、ウィスキー1,252円、ワイン2,476円とダブルスコアーである。
そして、もうひとつ、ビールであるが、これも独特な動きである。ビールは、2000年から発泡酒と他の酒(第3のビールなど)が登場し、それまでの動きとそれ以後の動きは全く違い、2000年まではほぼ1世帯の消費額が30,000円前後で推移していたが、2000年以降は右下がりになり、2005年17,345円と半減、その後も下がり続け、2010年には14,075円となった。一方、2000年から発泡酒、他の酒が登場し、双方、数字をゆるやかに上げてゆき、2010年には発泡酒8,783円、他の酒2,703円となった。したがって、ほぼ、ビールが下がった分を、発泡酒、他の酒がカバーした形となっており、ビール+発泡酒+他の酒の合計は、この20年間、ほぼ横ばいで推移しているといえ、ビール系全体の中での需要の付け替えが起こったといえよう。
次に、年代別の動きであるが、清酒、焼酎は若い世代と年配の世代で対照的な数字であり、どちらも年配の世代が圧倒的に高い数字となっている。また、ウィスキーも清酒、焼酎ほどではないが、同様な傾向にあるが、ワインは40代、50代がピークで、それより若い世代、年配世代はやや低いのが特徴である。ビールについては、清酒、焼酎と同様な傾向、年配の世代が高いが、発泡酒、他の酒は若い世代が高く、ワインに近い動きである。
最後に、所得別の違いであるが、ワインは明らかに、所得が上がるごとに消費額が増加してゆく傾向が鮮明であるが、清酒、焼酎は所得による消費額の差は比較的少なく、どの所得の世帯もほぼ同じ消費額となるが、強いていえば、焼酎は所得350万円の世帯の消費額が高いのが特徴である。ビールはワイン型であり、所得が上がるに従い、消費額が増えてゆく傾向が強いが、発泡酒、他の酒はゆるやかに同様の傾向も見受けられるが、ほぼ、所得にかかわらず、同じくらいの消費額である。
このように、家計調査データの年報をもとに、過去20年までさかもどって酒7種類の1世帯当たりの消費額を3つの角度から見てみた。時系列での推移、年代別、そして、所得別の違いである。その結果、清酒と焼酎、ワインとウィスキー、ビールと発泡酒、他の酒が対照的な動きを示しており、それぞれの消費構造の違いが鮮明である。家計調査データは今回のように、カテゴリーごとに動きを追うことにより、現在の数字がどのような流れを経て、落ち着いたのか、そして、年代別、所得別ではどのような特徴があるのかがわかり、今後の仮説づくりのヒントを与えてくれる。特に、家計調査年報は過去20年間の消費額を比較することができ、消費状況を俯瞰してみることができる貴重な統計データといえよう。今後、月報はもちろんだが、この年報、そして、季刊(四半期)等も活用し、消費実態を大所高所から、本ブログでも取り上げてゆきたい。
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