酒、3/11、東日本大震災以降、9月度までの動きを見る!
前回、酒について、家計調査データの年報をもとに1988年から2010年までの約20年間の動向を清酒、焼酎、ビール、ウィスキー、ワイン、発泡酒、他の酒の7種類について俯瞰してみた。また、家計調査データでは、年代別、所得別も集計されているので、その違いも見てみた。そこで、今回は、2011年に絞り、月別の動向、すなわち、ここ最近について、特に、3/11の東日本大震災以降の状況を見てみたい。なお、家計調査データは、10,000分比という集計値もあり、これを駆使することで、酒7種類の消費データを、酒の購入世帯のみの消費額と、酒の購入世帯の割合に分けて分析することが可能となる。特に、ここでは、食品スーパーマーケットの金額PI値(客単価)と比較しやすくするために、1世帯当たりの消費額を1日あたりに換算し、酒のここ最近の動きを追ってみる。
酒は、食品スーパーマーケットの中では独特な商品群である。これはPOSデータでも検証できるが、この家計調査データの10,000分比を見ると、食品の各商品部門はほぼ100%全世帯が購入しているが、酒だけは60%強となり、約40%の家計が月間では酒を1度も購入していないのが実態である。このような商品群は食品スーパーマーケットでは医薬品があるが、この2部門が食品スーパーマーケットがラインロビングした商品群としては、来店顧客全員に購入していただくのが難しい商品群である。したがって、この2部門は食品スーパーマーケットではコンサルティングセールスが必要であり、顧客に対してきめ細かなサービスをもとに顧客の支持を獲得できるかどうかがポイントとなる。
さて、まずは、3/11の東日本大震災以降の酒の消費額であるが、3月度は97.84円(昨対96.2%)となり、若干昨年を下回る結果となった。その要因は、購入世帯の消費額が155.47円(昨対94.6%)、購入世帯の割合が62.9%(昨対101.6%)であるので、購入世帯が減少したのではなく、購入世帯の消費額が下がったのが原因である。ちなみに、この時の東北地方の食品スーパーマーケットのPOSデータを見ると、酒の数字は、軒並み50%前後まで下がっており、厳しい状況であったが、他の地区が比較的安定した数字を確保しており、全体としては昨年を若干下回るぐらいで済んでいるのが実態である。
そして、酒の各カテゴリーの3月度の家計調査データの動向であるが、清酒14.87円(昨対93.1%)、焼酎19.74円(昨対103.9%)、ビール25.87円(昨対88.4%)、ウィスキー2.81円(昨対85.3%)、ワイン5.23円(昨対88.0%)、発泡酒22.94円(昨対107.4%)、他の酒6.35円(昨対92.9%)である。焼酎と発泡酒は昨対を超えたが、他のカテゴリーは厳しい状況であった。なお、前ブログで焼酎が清酒を、ワインがウィスキーを逆転したことを解説したが、この3月度の数字も同様な傾向となっている。
次に、4月度以降、9月度までの、酒全体の推移であるが、4月度109.07円(昨対101.6%)、5月度107.94円(昨対97.2%)、6月度 120.57円(昨対96.2%)、7月度128.23円(昨対96.7%)、8月度 125.32円(昨対94.8%)、9月度 103.20円(昨対94.9%)であり、昨対100%を超えたのは、4月のみである。ちなみに、食品全体であるが、3月度 1,918.48円(昨対100.5%)、4月度 1,885.40円(昨対99.3%)、5月度 1,899.00円(昨対97.9%)、6月度 1,920.87円(昨対98.6%)、7月度 1,990.03円(昨対100.5%)、8月度 2,008.81円(昨対98.6%)、9月度 1,915.83円(昨対98.7%)である。3月度、7月度が昨対100%を超えているが、それ以外は、昨年を下回っており、食品全体も厳しい状況であるが、酒の方がさらに厳しい状況であるといえよう。
では、各カテゴリーはどうかであるが、3月度好調であった焼酎と発泡酒であるが、4月度、5月度も同様な動きであるが、6月度に入り、発泡酒は依然として昨年を上回っているが、焼酎が昨年を下回った。7月度も同様な動きであるが、8月度になると、今度は発泡酒も昨年を下回り、9月度も双方が昨年を下回り、厳しい状況である。一方、6月度に入り、清酒、ウィスキー、ワインが昨年を超えはじめた。その後、ワインは7月度、8月度、9月度も好調であり、9月度の伸び率は121.5%と高い数字である。これに対して、清酒、ウィスキーは6月度のみ昨年を上回ったが、その後は9月度まで昨年を下回ったままである。このカテゴリー以外では、その他酒が7月度、8月度のみ昨年を超えたのみであり、それ以外のカテゴリーはいずれも、昨年を下回っている。特に、ビールは深刻であり、3月度以降、9月度まで一度も昨年を超えていない。
このように、家計調査データの月報で、2011年3月度から9月度までの、ここ最近の酒の動きを見ると、昨年を上回ったのは4月度のみであり、それ以外はいずれも、昨年を下回り、しかも、食品全体の伸び率をも下回っており、酒全体の消費は厳しい状況で推移しているといえる。また、カテゴリーで見ると、3月度、4月度の前半は焼酎と発泡酒が好調であり、酒全体の消費をひっぱったが、その後、失速した。6月度に入ると、清酒、ウィスキー、ワインが伸びはじめたが、清酒、ウィスキーは6月のみであり、7月度以降、下がってしまい、その後は、ワインと他の酒が昨年を上回った。そして、9月度に入ると、他の酒も失速、ワインのみが昨年を上回る状況で推移している。今後、好調なワイン以外の他のカテゴリーがどこまで消費を回復するか、特に構成比の高いビール、発泡酒が、酒全体の消費動向の鍵を握っているといえよう。
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