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November 27, 2011

店舗DNAと商品DNA、何ができるか!

   ID-POS分析特有の分析、テスコ流として日本で広く取り入れられている分析に、商品DNAがある。チェーンストアエイジの11/15号でも、テスコの商品DNA事例として、その一端が紹介されている。これは商品1品1品の特徴を1、0、-1で表し、様々な角度から新たな商品分類を構築してゆく手法である。たとえば、容量大中小1、0、-1、健康に良い1、0、包装品である1、0、鮮度が高い1、0、日持ちする1、0、調理が簡単1、0、インスタント製品でない1、0、NBvsPB、1、0、子供向け1、0、お買い得品1、0、最高級品1、0、高価格商品vs低価格商品1、0、ベジタリアン1、0、新しい商品1、0、伝統的な商品1、0、環境配慮型商品1、0というような分類である。

   そして、ここから、因子分析を行い、いくつかの決定的な軸を抽出する。テスコでは価格重視派(経済的に豊かでない)、主流派(平均的顧客)、保守派(外見保守的で高齢者)、利便性追求派(総菜好きで、若いカップル)、健康志向派(健康的なライフスタイル)、美食派(経済的に豊か)などである。そして、このセグメントにそって、顧客をグループ化し、顧客ごとに四半期に一度ダイレクトメールを発送し、その中に、顧客グループ特有のクーポン、あるいはイベントの紹介、銀行ローンへの勧誘などを行ってゆく。これがいわゆる、テスコ流のID-POS分析の根幹である。

   このように顧客グループをつくる点がID-POS分析につながる課題であるが、実は、以前も本ブログで取り上げたが、この方向以外に、通常のPOS分析でも十分に活用できる商品DNAの活用の仕方がある。その方法とは顧客を店舗と考え、顧客分類の代わりに店舗分類を実施し、店舗ごとに商品の品揃えを決定する方法である。商品DNAに対して、店舗DNAをつくることがポイントとなる。実は、この方がはるかに歴史は古く、ウォルマートがDNAではなく、商品トレートと店舗トレートという概念を提唱し、実践している。その意味でテスコの手法はウォルマートの応用、店舗トレートを顧客セグメントに活用したに過ぎないといえる。しかも、ウォルマートはテスコのDM発送の代わりに、自動発注を作り上げ、クーポン、イベントの変わりに自動棚割り、ちらし、POP等へ応用しており、店舗の活性化につなげ、さらに、SCM、サプライチェーンマネジメントを強く意識した仕組みを作り上げているといえ、実用性が高い。

   したがって、日本においても、まずは、ID-POS分析以前の問題として、商品DNAと店舗DNAをつくり、店舗タイプ分けを行い、店舗ごとの品揃えの見直し、そして、重点商品の発注管理への応用が先決であるといえよう。そして、そこからSCMを構築し、その後に、ID-POS分析を活用したCRM、カスタマー・リレーションシップ・マネメントへ踏み込むことが自然の流れのように思う。

   実際、現状のPOS分析で商品DNAも店舗DNAも十分に構築が可能であり、しかも、商品DNAに関しては、商品を開発したメーカーのほとんどが、何らかのマーケティング調査を実施したデータを保有しており、小売業よりも幅広い情報収集ができているのが実態である。そのマーケティング調査データをもとに、商品DNAを1か0で分類し、精緻なものをつくり上げてゆけば完成度の高い商品DNAが得られる。そして、ここに通常のPOS分析、さらには、ID-POS分析を加えてゆけば、そのデータも取り込むことにより、販売実績、顧客の購入履歴、顧客の属性を加味した精度の高い商品DNAができあがるといえよう。ウォルマートよりも、テスコよりも決め細かい商品DNAが完成するのではないかと思う。

   そして、店舗DNAについても、ここ最近成長著しいGISデータを加え、これに、通常のPOS分析、ID-POS分析を加味すれば、日本独自の店舗DNAができるものと思われる。はじめは単純なモデルをつくり、それをもとに検証を繰り返すことにより、おそらく、時間とともに、かなり商圏構造を反映した店舗DNAができあがるものといえよう。

   あとは、この2つのDNA、商品DNAと店舗DNAを合体させ、店舗DNAから導きだされた店舗タイプごとに、品揃えを決定し、重点商品を明確にし、棚割りを作成し、年間52週のマーチャンダイジングを計画し、POP、ちらし等で販売促進を行い、さらに、限りなく自動発注の仕組み、サプライチェーンの適正化を図ってゆけば、適正品揃え、適正在庫、適正物流に限りなく近づいてゆくことになろう。そして、これにID-POS分析のきめ細かい顧客への対応がなされてゆけば、最強の店舗、最強のチェーンができあがるのではないかと思う。

   このように、商品DNAと店舗DNAは、実は、ID-POS分析以前の問題であり、通常のPOS分析でもメーカーの協力が得られればすぐに実現可能なテーマであるといえ、チェーンストアであれば必須のマーチャンダイジングの課題であるといえよう。そして、これにID-POS分析が加われば、さらに、精度の高い商品DNAと店舗DNAが構築でき、店舗に加え、顧客へのアプローチが可能となる。さらに、マーチャンダイジングも顧客を意識した、顧客ランクごとの政策の立案が可能になるといえよう。店舗数が50店舗、100店舗、1,000店舗となったチェーンは、商品DAN、店舗DNAの構築は必須の課題であるといえ、店舗数が少ない段階でも、チェーンストアであれば、是非、トライして欲しいテーマといえよう。

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