原信ナルスH、2012年3月期中間、増収増益!
原信ナルスHが11/2、2012年3月期の中間決算を公表した。結果は売上高633.87億円(3.1%)、営業利益20.77億円(1.5%)、経常利益20.48億円(0.7%)、当期純利益10.95億円(294.6%)となり、増収増益の好決算となった。ただ、すでに、公表された食品スーパーマーケット各社の中間決算と比べると、特に営業利益の伸び率が低く、やや厳しい決算といえよう。なお、当期純利益が異常値となったのは、昨年が資産除去債務の会計基準が適用され、特別損失を13.61億円計上したが、今期はそれが0となったためである。
そこで、原信ナルスHの営業利益がやや伸び悩んだ要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、73.51%(昨年73.50%)と、0.01ポイントとわずかではあるが上昇している。これについて、原信ナルスHは、「東日本大震災の発生は、あらゆる流通網を阻害し、当社の事業活動にも影響を及ぼしました。また、放射性物質の問題や原料原価の高騰、為替相場の急激な変化など、新たな課題も生じました。」と、コメントしており、原料原価の高騰が響いたようである。結果、売上総利益は26.49%(昨年26.50%)となった。
一方、経費の方であるが、23.21%(昨年23.16%)と、0.05ポイントと、わずかではあるが上昇した。原信ナルスHは、これについて、「作業計画と連動した労働時間管理やISO14001の環境マネジメントと連動した環境コストの削減を進めるほか、様々な形で経営資源の適正利用、使用量の削減の取り組みを継続しております。加えて、昨今の電力不足問題を踏まえた節電対策には、積極的な取り組みをいたしました。」と、コメントしており、積極的に経費削減に取り組んだとのことであるが、昨年対比を下回るまでには改善できなかったといえる。
したがって、原価、経費ともに、ほんのわずかではあるが、上昇がみられ、結果、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は3.28%(昨年3.34%)と、やや下がった。原信ナルスHはその他営業収入が計上されていないため、マーチャンダイジング力=営業利益となり、結果、営業利益も率ではわずかではあるが、下がった。ただ、売上高が3.1%増となったため、高では増益となり、増収増益の決算となった。
なお、売上高が3.1%増となった要因であるが、既存店は、売上高99.7%、客数99.4%、客単価100.3%と、昨年を下回ったが、7月に原信近江店を新設、9月に原信糸魚川東店を移転新設しており、これらが寄与したためである。こう見ると、今期の中間決算は増収増益とはなったが、原価、経費双方が若干下がっており、増収増益は新店による売上増が要因といえ、やや厳しい営業状況といえよう。
そこで、この結果を受けて、原信ナルスHが、どのように、キャッシュを配分したかであるが、まずは、営業活動によるキャッシュフローであるが、33.97億円(昨年35.64億円)であり、ほぼ、昨年並みのキャッシュを確保している。そして、その配分、まずは、新店開発を含む投資活動によるキャッシュフローであるが、-18.21億円(昨年-24.19億円)と、大きく削減している。その中身は、まさに新店にかかわる投資、有形固定資産の取得による支出であり、-17.79億円(昨年-26.37億円)という結果である。したがって、成長戦略の根幹である新規出店への投資を大きく削減したといえる。
では、その削減したキャッシュを何に配分したかであるが、財務活動によるキャッシュフローを見ると、-26.66億円(昨年-7.21億円)であり、財務の改善に充てていることがわかる。昨年度と対照的なキャッシュの配分である。その中身であるが、有利子負債への返済が-24.54億円(昨年-0.98億円)であり、財務の改善に大半を配分している。結果、負債が圧縮され、純利益が増加しているので、自己資本比率が44.7%(昨年42.4%)と改善した。ただ、結果、トータルキャッシュフローは-10.91億円(昨年4.23億円)となり、現金を取り崩す結果となり、資産の現金は52.26億円(前期本決算時62.29億円)と、減少しており、やや気になるところである。
したがって、原信ナルスHは今期増収増益とはなったが、そのキャッシュを新店開発を抑制し、成長戦略よりも財務改善を重視した配分を行うと同時に、内部留保の現金をも取り崩して、有利子負債の返済に充てており、財務の安定化を目指したといえよう。3/11の東日本大震災により、各社経営戦略の変更を余儀なくされているが、原信ナルスHも成長戦略よりも財務改善へと大きく経営戦略をシフトしていることが鮮明である。
このように、原信ナルスHの2012年3月期の中間決算は、増収増益とはなったが、これまで公表された食品スーパーマーケットの中間決算の結果とはやや内容が違い、原価、経費が若干上昇し、マーチャンダイジング力の改善をはかることができなかったといえる。また、結果、キャッシュフローも成長戦略よりも財務改善に大きく方向展開しており、それだけ、財務重視の経営戦略を優先せざるをえなかったものと思われる。今後、後半戦に入るが、経営環境は一層厳しさを増すことが予想され、原信ナルスHが、さらに財務改善の方針を徹底するのではないかと思われる。そのためにも、原価、経費の改善が課題といえ、今後の原信ナルスHのマーチャンダイジング戦略に注目である。
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