POSデータの開示を考えてみる!
ここ最近、POSデータの開示が食品スーパーマーケットからメーカーに盛んに行われており、ほぼ日本全国で見られる動きである。この傾向は、まさに、ここ数年の動きであるといえ、いっきにここへ来て広まったといえよう。もともと、このPOSデータの開示の先駆者はウォルマートであり、ウォルマートがいまから10年以上前にメーカーへPOSデータを公開したところからはじまる。日本でもこの流れを受けてPOSデータの開示がなされているように思えるが、よく見ると、ウォルマートのPOSデータの開示とは雲泥の差がある。というよりも、異質といえ、日本独自のPOSデータの開示文化が開きつつあるといえる。
そもそも、ウォルマートが10数年前にPOSデータの開示をはじめるきっかけとなったのは、巨大なデータウェアハウスを導入し、POSデータの分析に着手したことがきっかけである。この話はすでに、出版物、WEB等で何度も取り上げられているが、特に、「ウォルマートに学ぶデータ・ウェアハウジング(翔泳社)」に詳しい。それを見ると、POSデータの開示の目的が自動発注、自動棚割りに結びつけることにあることがわかる。ここが日本のPOSデータの開示と決定的に違う点であろう。日本の場合は、POSデータの開示の目的の大半が、販売促進にあるといえ、メーカーからの効果的なマーチャンダイジングの改善提案をもらうことに主眼が置かれているといえる。したがって、メーカー側の負担があまりに大きく、現状のPOSデータを分析し、そこから、販売促進の仮説をつくり、提案書にまとめ、小売業のバイヤーに提案する。そして、さらに、その後、検証が行われ、再度、提案が求められるという、本来、バイヤーがやるべき業務のかなりの部分を代行するようなことになっているといえる。
これに対して、ウォルマートの場合は、POSデータの開示には、日本ではほとんど見られない在庫情報の開示がなされており、しかも、この在庫情報の開示がPOSデータの中ではメインともいえる。なぜなら、この在庫情報とPOSデータをもとに、自動発注の仕組みをつくり、さらに、その発展系として自動棚割りまでつくるからである。したがって、メーカーは、その発注数量にもとづき、物流管理、さらには、生産管理を徹底することが求められ、これに自動棚割が加わり、店舗ごとの適正在庫管理が求められ、結果、在庫改善を通じてキャッシュフローの改善につなげることが期待される。
余談だが、実は、テスコのID-POS分析もこの点に注目しており、商品からのキャッシュフローの改善を顧客からのキャッシュフローの改善に置き換えたところにポイントがあるといえる。したがって、エンド展開ひとつをとって見ても、テスコの場合は、ID-POS分析にもとづき、キャッシュフロー最大を期待できるロイヤルカスタマーの重点商品を優先し、陳列するが、結果、顧客からのキャッシュフローが商品を通じて改善されることになる。
ちなみに、テスコとウォルマートの仕組みはPOSとID-POS分析との違いはあるが、よく似ている。いまはやりのテスコ流の商品DNAはウォルマートでもすでに通常のPOSデータで構築されており、商品トレイトという名称で商品をきめ細かく分類している。さらにウォルマートの場合は店舗トレイトも同時に作っており、この商品トレイトと店舗トレイトをもとに、自動棚割りを作成し、品揃えの適正化をはかっている。したがって、その後、自動発注につなげてゆくので、テスコのID-POS分析の原型がすでにウォルマートででき上がっていたといえる。
こう見ると、日本のPOSデータの開示は、在庫情報が不十分、というよりも、企業規模が小さく、センター機能等が十分でないため、店頭在庫管理までが限界といえ、メーカー在庫、センター在庫、店頭在庫を一気通貫で管理する必然性が薄いといえ、POSデータの開示にそぐわなかったといえよう。したがって、自動発注、自動棚割り、商品トレイト、店舗トレイトという一連のPOSデータの開示、さらには、テスコのような、ID-POS分析にもとづく、顧客面からのキャッシュフローの改善という方向にPOSデータの開示があわなったのではないかと思う。そして、残されたPOSデータの開示機能としては、日本特有のEDLPではない、ちらしを多用するHigh-Low-Price政策を前提とした販売促進への活用に集中してしまったのではないかと思われる。
今後、POSデータの開示がどのような方向に進んでゆくかであるが、日本特有の販売促進に徹すのであれば、当然、POSよりも、ID-POSデータの方が、顧客属性、顧客の購入履歴が把握できるため、はるかに価値のあるPOSデータであることから、ID-POSデータの開示に集約されてゆくことになろう。そして、これまでのPOSデータの開示は、原点にもどり、自動発注を視野に入れた発注改善、自動棚割りを視野に入れた店舗ごとの品揃えにもとづく棚割り提案による在庫管理に収斂されてゆくのではないかと思う。
時代は、前回のブログでも取り上げたテーマ、電子マネー、プリペイドカードとなりつつあり、POSデータがID-POSデータに置き換わってゆくことは必然といえる。POSデータの活用は全顧客のデータが把握できるがゆえに、機関システムともいえる物流、発注等に重点を置き、ID-POSデータは会員のみのデータであるが、販売促進には十分に活用できると同時に、キャッシュフローの大きいロイヤルカスターへのきめ細かい顧客サービスの充実、そして、特に、顧客ランクごとの販売促進政策の構築が可能であり、顧客からのキャッシュフローの改善へとつなげてゆくことができる。その意味で、これまでのPOSデータの開示は、ID-POSデータの開示がはじまることで、無理のない本来の役割にもどってゆくのではないかと思う。
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