食品スーパー、中間決算、CFから今後の戦略を読む!
食品スーパーマーケット業界の中間決算が出揃い、各社の経営の現状が明らかになったが、全体的に増収、大幅増益の決算が多く、成長性よりも、利益を重視した決算が特徴といえる。そこで、増益となったキャッシュをもとに、今後、各社、どのような経営戦略を打ち出そうとしているのかを、主要食品スーパーマーケット、一部、ホームセンターを含め15社の決算結果、特に、CF、キャッシュフローから探ってみたい。
通常、財務3表、P/L(損益計算書)、B/S(貸借対照表)、CF(キャッシュフロー計算書)の中で、注目されるのはP/Lであり、決算発表の中でも、まずは、増収増益であるか否かが、最大の関心事となる。ついで、B/Sであり、ここでは、自己資本比率、特に、負債の中身、有利子負債の比率などがポイントとなる。残念ながら、CFは財務3表のひとつではあるが、あまり関心が示されないのが実態である。その最大の要因は、CFから何を読み取るかが明確でない点にあるといえよう。
そこで、食品スーパーマーケットにとってのCFの意義であるが、その最大のポイントは食品スーパーマーケットの経営戦略の根幹ともいうべき、成長戦略の有無を読み取れることにあるといえる。CFは大きく3つ、営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、そして、財務活動によるキャッシュフローに分かれるが、この内、通常、キャッシュがプラスとなるのは営業活動によるキャッシュフローであり、マイナスとなるのが投資活動によるキャッシュフローと財務活動によるキャッシュフローである。したがって、CFはプラスとなったキャッシュを、どう投資と財務に配分するかであり、この配分の度合いを見ることによって、経営者がどちらを重視しているか、すなわち、経営戦略を推し量ることができる。
特に、食品スーパーマーケットの場合は、投資キャッシュフローの大半は新規出店への投資であり、財務キャッシュフローの大半は有利子負債の返済である。したがって、投資=成長性=攻め、財務=安定性=守り、といっても良く、CFを見ることによって、どちらを重視した経営戦略を打ち出そうとしているかがわかる。
では、実際の15社の食品スーパーマーケットの直近の中間決算を見てみると、まずは、総合計のCFであるが、営業活動によるキャッシュフローは944.61億円(昨対179.78%)であり、大半の食品スーパーマーケットが営業増益を示したように、大幅なキャッシュの増加となっている。したがって、この中間決算では昨年と比べ、各社、豊富なキャッシュを抱えたといえ、これをどのように配分したかが、まさに、各社の経営戦略を表しているといえよう。そこで、次に、成長性、すなわち、投資活動によるキャッシュフローを見てみると、-346.25億円(昨対77.03%)であり、減少、さらに、営業活動によるキャッシュフロー当たりの比率を見ると、36.66%であり、明らかに、成長を抑制していることがわかる。これは、東日本大震災の影響が大きかったものと思われる。
そして、安定性、すなわち、財務活動によるキャッシュフローであるが、-441.38億円(昨対194.53%)であり、営業活動によるキャッシュフローの46.73%である。昨年の約2倍、しかも、営業活動によるキャッシュフローの約半分を配分しており、明らかに、守りの経営戦略を重視しているといえる。そして、トータルであるが156.98億円(昨年は-150.98億円)と、昨年が内部留保を取り崩しているのに対し、今年は、キャッシュを留保しており、全体として、慎重なキャッシュの配分であることがわかる。
以上が、CFの全体像であるが、15社の中には、敢えて攻めに転じた食品スーパーマーケットもある。投資活動によるキャッシュフローが営業活動によるキャッシュフローの50%を超えた食品スーパーマーケットを見ると、平和堂76.1%、バロー72.7%、マルエツ67.6%、ベルク61.8%、マックスバリュ東海54.4%、ハローズ54.0%の6社であり、このような状況の中、積極的な経営戦略を打ち出しているといえる。一方、財務活動によるキャッシュフローの配分が50%を超えた食品スーパーマーケットであるが、イズミ84.5%、アークランドサカモト81.9%、イズミヤ80.6%、PLANT 78.2%、アークス58.8%、ハローズ53.5%の6社であり、守りを重視しているといえる。ただ、ハローズは内部留保を取り崩し、双方を重視したキャッシュの配分をしており、この中間決算では珍しいバランス型の経営戦略といえる。
このように、食品スーパーマーケットにおけるCF、キャッシュフローは、経営戦略をダイレクトに推し量ることができる財務諸表であるといえ、特に、食品スーパーマーケットにとっての最大の経営戦略、成長戦略が投資活動によるキャッシュフローを見ることによって判断できる。実際、この中間決算を見る限り、現時点では、大半の食品スーパーマーケットが攻めよりも、守りを重視し、新規出店を抑制し、財務の改善をはかる一方、内部留保をも充実させる経営戦略、すなわち、守りを固めているといえよう。ただ、このような中で、敢えて、攻めに転じる、いわば逆張りの経営を推し進める食品スーパーマーケットもあり、その動向に注目といえよう。
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