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December 2011

December 31, 2011

消費者物価指数(CPI)、2011年11月、昨対-0.5%!

   12/28、総務省統計局から、2011年11月度の消費者物価指数(CPI)が公表された。消費者物価指数は相場等を加味し、3つの総合指数がある。それぞれの総合指数の結果であるが、(1)総合指数は平成22年を100として99.4、前月比は0.6%の下落、前年同月比は0.5%の下落、(2)生鮮食品を除く総合指数は99.6、前月比は0.3%の下落、前年同月比は0.2%の下落、(3)食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は98.7、前月比は0.4%の下落、前年同月比は1.1%の下落となった。すべての数字がマイナスであり、いわゆる時間軸でみた短期、長期、そして、平成22年度比、すべてがマイナスとなる厳しい結果となった。

   消費者物価指数は、数字だけでなく、グラフでも公表されているが、それを見ると、すべての総合指数が10月度で急降下しているのが鮮明である。グラフは、平成22年度との比較、平成23年度の1月度から、11月度までの推移が3つの総合指数で示されているが、3つのグラフとも、10月度から11月度にかけて、急降下し、しかも、平成22年度のグラフを下回っており、まさに、すべてがマイナスへ動いていることがわかる。ここまで、すべての指数がマイナスで一致することは珍しいといえ、次回、12月度、そして、平成24年、1月度以降、消費者物価指数が厳しい状況になることが予想されるといえ、消費環境は今後極めて、厳しい局面を迎えるのではないかと懸念される。

   そこで、この11月度、すべての消費者物価の総合指数がマイナスとなった要因を見てみたい。前年同月比、すなわち、昨対で見た時、大きくマイナスとなった項目は食料の中の生鮮食品-8.3%(寄与度-0.34)、家具・家事用品-6.1%(寄与度-0.21)、教養娯楽-4.1%(寄与度-0.46)の3つが顕著である。ただ、このような状況の中でも、プラスになった項目もある。光熱・水道4.9%(寄与度0.35)、交通・通信1.6%(寄与度0.22)等である。この2つの項目は特にプラスの顕著な項目であるが、これ以外は教育0.2%(寄与度0.01)、生鮮食品を除く食料0.2%(寄与度0.04)、被服及び履物0.0(寄与度0.00)のみであり、それ以外はすべて、マイナスであり、全体的にはマイナスへの力が強いといえる。

   では、さらに、その中身について見てみたい。生鮮食品-8.3%(寄与度-0.34)であるが、前年同月比では、魚介類0.9%、肉類-0.2%、野菜・海藻-10.2%、果物-5.1%であるので、野菜・海藻、果物が生鮮全体の消費者物価指数を押し下げていることがわかる。その具体的な項目は、野菜・海藻では、キャベツ-43.5%、ねぎ-30.8%、だいこん-28.4%、レタス-27.1%、はくさい-24.6%、ほうれんそう-17.9%、たまねぎ -17.8%、にんじん-16.0%、ブロッコリー-15.3%、きゅうり-13.9%、にがうり-13.7%、ながいも-13.4%、ピーマン-12.6%、じゃがいも-11.8%、トマト-11.2が-10%以下の野菜である。果物では、グレープフルーツ-16.7%、かき(果物)-14.7%、みかん-11.3%が-10%以下であり、これらが生鮮食品全体の消費者物価を大きく下げているといえる。

    次に、家具・家事用品-6.1%(寄与度-0.21)であるが、電子レンジ-31.2%、電気冷蔵庫-31.2%、電気洗濯機(洗濯乾燥機)-28.2%、電気掃除機 -23.6%、電気洗濯機(全自動洗濯機)-22.0%、ルームエアコン-16.1%、電気炊飯器-14.3%、電気ポット-11.3%が-10%以下であり、家電の落ち込みが大きいといえよう。そして、教養娯楽-4.1%(寄与度-0.46)であるが、家庭用ゲーム機(携帯型)-40.3%、パソコン(デスクトップ型)-38.0%、ビデオレコーダー-35.6%、ビデオカメラ-30.6%、テレビ-28.4%、パソコン(ノート型)-24.5%、カメラ-24.2%、携帯オーディオプレーヤー-22.5%、ゴルフクラブ-19.9%、家庭用ゲーム機(据置型)-16.0%が-10%以下である。それにしてもパソコン、テレビ等の下げ率は異常値であるといえ、これが全体の消費者物価を大きく押し下げている要因といえよう。

   ちなみに、プラスになった光熱・水道4.9%(寄与度0.35)、交通・通信1.6%(寄与度0.22)であるが、光熱・水道では、灯油+13.6%、都市ガス代+6.4%、電気代+5.9%であり、交通・通信では、自動車保険料(自賠責)+12.1%、ガソリン+7.7%、自動車タイヤ+6.1%、高速自動車国道料金+4.9%が大きくプラスとなったものである。この中で気になるのは、電気代がじわじわと上昇していることであり、これ以外にも、生活に直結する灯油、都市ガスも上昇している。

   このように、この2011年11月度の消費者物価指数は、すべての指標がマイナスとなる極めて、珍しい結果となり、ここへ来て、厳しい消費環境になったといえよう。特に、生鮮食品の野菜、果物、家具の家電関連、教養のパソコン、テレビ、カメラ等が全体を大きく押し下げているといえる。問題は今後、12月度、そして、来期であるが、この結果を見る限り、厳しい局面が予想される。食品スーパーマーケット業界としては、今後、デフレが進行する消費環境の中で、いかに、平均単価を改善するマーチャンダイジング戦略を打ち出せるか、そこが最大の経営課題となろう。各社、どのようなマーチャンダイジング戦略を打ち出すか、今後の動向に注目である。

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December 30, 2011

セブン&アイH、ネットスーパーに本腰!

   12/27の日経新聞に「ネットスーパー・通販事業、セブン&アイが拡大」、「100億円投じ専用物流拠点」という見出しの記事が掲載された。いよいよ、セブン&アイHがインターネット事業に本腰を入れて、取り組むとのことである。売上高の目標も、2014年度、5,000億円とのことであるので、現在、全体の売上高が約5兆円強であるので、ほぼ10%に当たり、事業の柱のひとつとして位置付けていることが伺える。しかも、来期、2012年度を目途に、100億円を投じ、埼玉県久喜市に、セブン&アイHとしては、はじめてのネット事業専用の物流センター、1万5000平方メートルを立ち上げるとのことである。

   恐らく、セブン&アイHとしては、投資額100億円の物流センターは、手始めといえ、今後、その数倍の投資を行い、生鮮食品、グロサリーを含め、食品の本格的な物流センターを首都圏の各拠点に構築してゆくのではないかと思う。実際、すでに、物流センターを立ち上げての、食品のネットスーパー事業に関しては住友商事がサミットと組み、本格的に展開している。その状況を見ると、総投資額は200億円を超え、首都圏36か所へ物流拠点を構築する計画であり、売上高目標は1,000億円強である。したがって、セブン&アイHが本格的に生鮮食品、グロサリーを含め、ネット事業に取り組むには、今回の100億円の投資、物流センター1ケ所では、到底、首都圏の全域をカバーできず、まさに、今回の日経新聞の記事は、手始め、将来へ向けての大きな一歩といえよう。

   現在、食品スーパーマーケットのネット事業は大きく2つに分かれている。店舗配送型か、物流センター配送型かである。先のサミットは典型的な物流センター配送型であり、現時点のセブン&アイHは店舗配送型であり、日本中の大半の食品スーパーマーケットは店舗配送型が主流である。これは、店舗配送型は投資額がほとんどかからず、インターネットでの受発注の仕組みを入れれば、比較的簡単に営業ができるため、多くの食品スーパーマーケットがここ数年、参入をはじめた新規事業である。

   課題としては、店舗が物流センターを兼ねるために、来店顧客とネットスーパーの顧客とのバランスをどうとるか、人員配置、配送をどうするかが課題となる。したがって、売上高には限界があり、店舗の売上高の10%から20%ぐらいまでが上限といえ、本格的な事業としての展開が難しいのが実態である。本格的なネット事業には、やはり、専用の物流センターが必須といえるが、そのためには100億円単位の投資額が必要となり、現時点では住友商事が主導してのサミットが、この分野では先行しているといえる。

   ただ、食品スーパーマーケットではないが、生協は古くから共同配送による、ある意味ネットビジネスをカタログを通じて展開しており、その主力商品は生鮮食品を中心とした食品全般を扱っており、この分野では先行していたといえる。したがって、すでに本格参入している住友商事、サミット連合に加え、セブン&アイHが本格参入の動きを示したことにより、首都圏は、生協を含め、ネットビジネスの激しい競争が数年後には繰り広げられることが必須である。恐らく、まだ、本格参入を表明していないイオングループ、ライフコーポーレーション、ローソン等と関係の深い三菱商事、ダイエー、東武ストア、相鉄ローゼン等と関係の深い丸紅等の本格参入もありうることであり、いずれも1,000億円単位のビジネス規模となるといえ、今回のセブン&アイHのネットビジネスへの本格参入は首都圏全体の食品スーパーマーケットのビジネス構造を大きく変える可能性があるといえよう。

   記事の中では、さらに興味深い内容がある。「ネット経由で消費者の購買動向などを即座に把握できるため、鈴木会長は「売れ筋商品を素早く店に並べられる」と指摘。」、「ネットと店舗の運営の融合が進むとみる。」というくだりである。さらに、続けて、「ネット上の販売状況を基に店舗の販売計画を立てられるようになり、売り逃しや廃棄などの「ロスも少なくできる」という。」とのことであり、ネット事業をリアル店舗の活性化にもつながると判断していることである。その意味でネット事業は食品スーパーマーケットにとって別事業ではなく、新たな需要を生み出し、既存の事業の活性化につながる事業であるといえ、まさに、融合がキーワードといえる。

   このように、セブン&アイHが12/27の日経新聞によれば、100億円を投じて、はじえめての物流センターをつくり、ネット事業に本格参入するとのことで、食品スーパーマーケット、特に首都圏においては、ネット事業との関係をどう構築するかが、大きな経営課題となったといえよう。数年後には、すでに、本格参入しているサミット、事実上、ネットビジネスを展開してきた生協、そして、セブン&アイH、イオン、各商社の参入も予想され、首都圏の食品スーパーマーケットは新たな経営環境の中での、経営戦略を練る必要があるといえ、今後、どのような方向を打ち出すか、その動向に注目である。

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December 29, 2011

商品の検証とは、その2?

   前回は商品の検証について、約20年前までにさかもどり、構成比、相乗積について解説し、その後、POS分析とともに発展してきたPI値を活用しての検証にまで言及した。そこで、今回は、このPI値からの商品の検証をもう少し解説し、その後、今後、食品スーパーマーケットの商品の標準検証となると思われるID-POS分析を活用した、ID-PI値からの商品の検証について解説したい。ID-PI値を用いた商品の検証は、まだまだ始まったばかりであり、今後、食品スーパーマーケットだけでなく、メーカー、卸も含め、様々な場面で活用がなされてくることになろう。特に、ID-PI値はこれでのマーチャンダイジングに加え、メーカー、卸の専売特許ともいえるマーケティングの領域に踏み込むことになり、マーチャンダイジングとマーケティングの融合につながる商品の検証となるといえよう。

   まずは、PI値からの商品の検証であるが、PI値の原理は、すべてをレシート客数当たりの指標に換算したところがポイントであり、これにより、過去、すなわち、時間との比較、他の店舗、すなわち、空間との比較を容易にしたことに加え、はじめて、顧客に焦点を当てた商品の検証が可能となったことである。ID客数と比べると、顧客への焦点の当て方に甘さが残るが、その方向を示したことは、大きな前進といえる。

   PI値は通常、PI値のみが独り歩きして、商品の評価指標のひとつと活用されることが多いが、それは、PI値の本質からいえば、実にもったいない話である。PI値は本来、その上位概念に金額PI値があり、同列に平均単価があり、平均単価とともに活用し、商品の検証をしてゆくべき指標である。金額PI値(客単価)=PI値×平均単価であり、金額PI値(客単価)が商品の検証結果、PI値、平均単価がその原因を表しており、PI値の検証とは、金額PI値(客単価)で結果を判断し、PI値、平均単価でその原因を追究するというのが正しいPI値の使い方である。

   したがって、PI値が上がったからといって、喜んではいけない。平均単価が下がったからといって悲しんではいけない。結果である金額PI値が上がれば、それはそれで正解であり、本来の目的を達したことになる。ただ、もちろん、最高の結果は、PI値も平均単価も上がり、結果、金額PI値が上がることである。これが本来のマーチャンダイジングの目指すべき方向であり、商品の到達点といえよう。ちなみに、金額PI値の評価には6つの場合がある。金額PI値が上昇し、PI値、平均単価双方が上昇する場合、平均単価が下がり、PI値のみが上昇する場合、PI値が下がり、平均単価のみが上がる場合の3つ、そして、金額PI値が下がり、PI値、平均単価双方が下がる場合、平均単価が上がり、PI値のみが下がる場合、PI値が上がり、平均単価のみが下がる場合である。

   さて、このPI値からの商品の検証に加え、ここ最近では、ID-POS分析を通じたID-PI値からの商品の検証がはじまったといえる。これは、レシート客数にポイントカードなどを使い、IDの区別が可能となったことにより、可能となった新たな商品の検証方法である。その結果、実に興味深いことに、金額PI値が必ずしも最終的な結論ではないということになり、金額PI値を下げてもID金額PI値が上がれば正解という事例が見られ始めたことである。

   ID-PI値はID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値で算出可能となる。これまでの商品の売上高をレシート客数で割った金額PI値に対し、商品の売上高をID客数で割った金額PI値のことである。ID客数PI値がレシート客数をID客数で割った購入頻度であるので、ID客数PI値×金額PI値はレシート客数が約分され、ID金額PI値となり、双方が成り立っていることがわかる。このID金額PI値が開発されたことにより、商品の検証は新たな段階を迎え、これまでの金額PI値(客単価)を結論とみなしていたマーチャンダイジングにその先があることが判明した。そして、商品の検証にID客数PI値が加わり、結果、ID金額PI値で商品を検証することが可能となり、より、精度の高い、顧客視点に立脚した商品の検証の時代へと突入した。

   これは直観的にはよくわかる話であり、金額PI値が1回当たりの顧客の購入金額で商品を評価しているのに対し、ID金額PI値はそれにさらに、購入頻度を加え、それを加味した累計購入金額で商品を評価している点が違い、これが新たな商品の検証につながっていったといえる。しかも、その評価期間が1日、1週間ではなく、ここ最近では年間の累計金額での評価が定着しつつあり、将来的には10年、20年と、店舗が続く限りの商品の評価、検証へとなってゆくものといえよう。

   このように、商品の検証は、この20年の間に劇的に変化しており、初期の頃の構成比、相乗積の時代から、POSシステムの普及とともに、PI値での検証の時代となり、さらに、ここ最近では、ID-POS分析が可能となったことにより、ID-PI値での検証の時代へと入りつつあるといえる。今後、さらに、商品の検証方法は改良され、新たな検証方法も開発されると思うが、商品1品1品をしっかりと、食品スーパーマーケット側だけでなく、メーカー、卸も加わり、より深く検証していって欲しいところである。

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December 28, 2011

商品の検証とは、その1?

   商品の評価を検証する方法は、これまで様々な方法が考案されてきた。古くは単純な売上高(売上金額)と売上数量をもとにした評価方法である。これが最もオーソドックスであり、いまでも、広く検証に活用されている。ところが、この指標で商品を検証すると、食品スーパーマーケットでは様々な問題が発生する。主な問題点は、過去との比較、他の店舗との比較がうまくできない点である。いわゆる時間と空間の問題である。時間とは、たとえば、先週の売上高、あるいは、昨年の売上高と比較した場合、仮に、売上高が同じであった場合、果たして、これを単純に同じ商品の力があると見なして良いかである。空間とは、売上高が他の店舗と同じであった場合に、同様に同じ商品の力があると見なして良いかである。この問題を解決するために、食品スーパーマーケットでは様々な改良点が加えられてきた。そこで、ここでは、この商品の検証について、初期の検証から、最新の検証までを考えて見たい。

   食品スーパーマーケットは、新規出店がなされると、通常、数年間は売上高が上昇してゆく、そして、数年後には、売上高が上限に達し、ほぼその近辺で収束する。その後、徐々に売上高を落とし、最終的になだらかかなやや下がり気味の横ばいになってゆくのが通常である。いわゆる、これが食品スーパーマーケットのライフサイクルといえ、最終的には、20年から30年で撤退となる。したがって、その時々に、タイミングよく、てこ入れ、いわゆる活性化をしないと売上高の減少に歯止めが効かなくなり、予想よりも、早く、売上高が下がり、収束してしまう。したがって、時間で売上高を評価した場合は、このような点が加味されず、商品の評価があまり意味をなさなくなる。

   一方、食品スーパーマーケットは、原則、チェーン展開を行い、新規出店を増やしてゆくため、様々な立地に出店してゆく。その際、立地環境、あるいは、運営体制が様々な状況になるため、常に、同じ客層、同じ面積、同じ商品構成、同じマネジメントで展開できるとは限らず、様々な売上規模となってゆくのが実態である。可能な限り、チェーンオペレーションを組み、そのブレをなくすような立地への出店、社内体制を組んで臨んではいるが、実際は、大きく、売上高が店舗によりブレるのが実態である。したがって、各店舗間、いわゆる空間での売上高での単純な比較は、商品の評価を見誤る恐れが強いのが実態といえる。

   この問題を解決するために、初期の頃の、ちょうど、今から20年前ぐらいまで取り組まれてきた商品の検証方法は、構成比を算出することであった。構成比とは対象商品の売上高を全体の売上高で割って算出した数値であり、時間、空間での比較が容易となり、これを活用することにより、商品の検証精度が飛躍的に向上したといえる。この構成比はいまでも、商品の検証に活用されており、優れた評価方法であり、この応用として、食品スーパーマーケットが発明した芸術、魔術ともいうべき、相乗積がある。

   相乗積とは、構成比の原理を巧みに駆使し、売上高の構成比と粗利率を掛け、その数値を足して、複数の商品の粗利率をほぼ暗算で瞬時に計算する方法で、はたから見ているとまるで手品のように見える粗利率の計算方法である。ただ、これは魔法でも、手品でもなく、要は、原理は単純であり、粗利構成比を算出しているに過ぎない。売上高の構成比が粗利高の構成比に変わったために、理解しにくくなっただけであり、その本質は極めて単純な原理である。ただ、単純であるがゆえに、優れているといえ、相乗積はいまでも、部門の粗利管理から、棚割りの粗利管理、さらには、刺身盛り合わせの粗利管理、精肉の部位ごとの粗利管理などに応用され、現場で広く活用されている仕組みである。

   この構成比の時代は、その意味で、現時点でも相乗積だけでなく、広く、活用されている商品の検証方法であるといえ、わかりやすく、現場でも活用され、脈々と続いているといえる。

   そして、その後、登場したのが、PI値である。PI値は、POS分析の代名詞ともいえる商品の評価方法であるといえ、POS分析の普及とともに、世の中に受け入れられるようになっていった。一般にPOS分析では、商品ごとに売上高、売上数量、そして、レシート客数(レシート枚数)が算出できるため、これまでの構成比に加え、レシート客数で割ったPI値の算出が可能となったからである。一見、構成比に良く似た指標であるが、構成比が常に全体の売上高で割って算出するのに対し、PI値はレシート客数、これは限りなく、顧客1人当たりの売上高、いわば、顧客シェアに近い数値となり、顧客から、商品がどのように評価されているか、すなわち、商品の顧客からの検証が可能になる点が大きく違うといえる。

   商品の検証は、このように、初期の頃は単純な売上高の比較、そして、その後、長く、現在まで構成比での検証の時代が続いているが、POSの出現とともに、PI値の時代へと突入したといえる。そして、現在では、ID-POS分析の時代となり、新たな商品の検証の時代が始まりつつあるといえるが、これについては、別途、本ブログで取り上げたい。

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December 27, 2011

ID-POS分析でMDがどう変わるか、その2!

   前回は、ID-POS分析とこれまでのPOS分析とのマーチャンダイジングにおける違いを新MD方程式とMD方程式にもとづいて解説した。その結果、金額PI値(客単価)=PI値×平均単価については、すべて、ID-POS分析が筒み込んでおり、これまでのマーチャンダイジング戦略をID-POS分析が100%踏襲できることを示した。そして、ID-POS分析では、これに加え、ID客数、ID客数PI値(頻度)、そして、ID金額PI値がID-POS分析ならではの独特な指標であり、この観点からマーチャンダイジング戦略を構築することにより、新たな世界が開けることを示唆した。今後、恐らく、ID-POS分析が実践投入されることにより、これまでにないマーチャンダイジングのノウハウが開発されてゆくことになろう。

   ちなみに、ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値であるので、これまでのマーチャンダイジングはID客数PI値を媒介にして、ID金額PI値へとつながっており、その意味で、ID客数PI値がこれまでのPOS分析の世界とID-POS分析の世界をつなぐ架け橋となり、ID客数PI値がちょうど翻訳機の役割をはたすことになろう。ID-POS分析でのマーチャンダイジング戦略はID客数PI値をいかに理解し、これを使いこなし、実践するか、ここが最大のポイントといえる。

   実は、このID客数PI値はID客数、すなわち、ID-POS分析特有の顧客1人1人を分析する際の最も重要な基本指標ともなっており、ID-POS分析のマーチャンダイジングはまさに、このID客数PI値からはじまるといっても過言ではない。通常、顧客1人1人を分析する際には売上高の高い、低いを用いる場合が多い。ところが、売上高は、前回解説したように、従来のPOS分析、MD方程式では3D、ID-POS分析の新MD方程式では4Dとなっているため、複雑な要素が絡み、総合的な判断となり、顧客1人1人の分析には曖昧さが残る。顧客の分析はID客数が把握できてはじめてできる分析であるので、当然、ID-POS分析特有の指標で分析することが望ましいといえる。こう考えると、顧客1人1人の分析もID-POS分析特有のID客数PI値が望ましいといえ、これで顧客を分析することにより、ID-POS分析ならではの顧客ランクをつくることができる。

   実際、ID客数PI値で顧客ランクをつくると、商品の全購入顧客、1人1人が見事に分類できる。毎週その商品を購入する顧客、毎月その商品を購入する顧客、そして、毎年(年1回)その商品を購入する顧客である。その結果を見ると、驚くべきことに、ほとんどの商品で毎年(年1回)の顧客が圧倒的に多いことが判明し、マーチャンダイジングとは年間1回しか購入しない顧客を結果的には焦点を当たてていたことが判明する。ある意味、これが従来のマーチャンダイジングの限界であるといえよう。したがって、ごく単純化すれば、ID-POS分析のマーチャンダイジングとは、だまって毎週その商品を購入していただいている顧客に焦点を当て、全体の顧客の購入頻度(ID客数PI値)を引き上げ、そこに導いてゆく導線をつくることに他ならない、これがID-POS分析のマーチャンダイジングの本質である。

   売場づくり、すなわち、棚割、レイアウトの最優先事項は客導線と作業導線のバランスであり、特に、マーチャンダイジングでは客導線をどうひくか、極論すれば、客導線の良し悪しで、売上げの70%から80%を決めてしまう。ところが、顧客1人1人に対しては客導線をひきたくても、これまでひく方法がなかったが、ID-POS分析が可能になったことで、ID客数PI値にもとづいて、顧客1人1人の導線をひくことが可能となった。したがって、ID-POS分析のマーチャンダイジングとは売場の客導線と並行して、顧客1人1人の客導線をどのようにつくり、どう導いてゆくか、これが最大のポイントである。

   これまでのPOS分析にもとづくマーチャンダイジングでも52週、52回、あるいは52週、104回のマーチャンダイジングをつくることにより、客導線らしきものはあった。ただ、これは、商品のライフサイクルにもとづいて、売上げの山と谷を分析し、最大の山づくり、最小の谷づくりを特に旬、社会行事などをもとに販促をかけるという手法であった。これはこれで売上げを商品面から引き上げるには有効な手法といえるが、ID-POS分析では、これに加え、顧客(ID客数)の導線を基盤にすえるため、毎週、毎月、毎年(年1回)の顧客のどこにリーチし、どのくらいの時間をかけて、どのような方法で顧客の構造変化をもたらすのかを重視する。したがって、山でのリーチ、谷でのリーチ、この場合、どの顧客に、どのような働きかけを、どのくらいパワーをかけるかがポイントとなり、その結果をしっかり数値で検証し、次にいかす、これがID-POS分析特有のマーチャンダイジングといえる。

   そこで、もうひとつ、重要なポイントがある。これまでのPOS分析では、対象商品の商品売上げを分析するのみで、他の商品との関係を分析することは、同時購入を除いてできなかった。同時購入だけは、レシート客数のレシートを分析すれば可能であるので、ここまでが限界であった。ところが、ID-POS分析ではID客数に基点を置くため、ID客数が購入している全商品をほぼ永遠に分析することが可能となる。したがって、商品同士の関係をより深く把握することが可能となり、これまでのPOS分析では見えなかった新たな領域のマーチャンダイジングの世界を見ることができる。

   なお、これについては、来年以降、食品スーパーマーケット業界で本格化するであろうID-POS分析の実践事例をもとに、本ブログでも優先的に取り上げてゆきたい。ID-POS分析はまだまだはじまったばかりであり、今後、様々なマーチャンダイジングが食品スーパーマーケットの中で創意工夫され、生れてくることになると思う。まずは、これまでのマーチャンダイジング戦略をすべてID-POS分析で洗い直すところからスタートすると、スムースにID-POS分析特有のマーチャンダイジングへの移行が可能となろう。

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December 26, 2011

オーケー、2012年3月期、中間決算、成長戦略にシフト!

   12/20、日経新聞に食品スーパーマーケット、オーケーの全面広告が掲載された。飯田社長が店内でカートを押しながら、笑顔で買い物をしているスナップ写真を大きく掲げての全面広告である。見出しは、「出店用地を求めています。あなたの土地を有効活用してみませんか。」というものであり、郊外立地600坪以上、1,000坪以上が標準、都内立地は330坪以上が標準とのことであり、日経新聞の読者の中の地主に力強く訴えた全面広告である。実は、この同じ12/20、オーケーが2012年3月期の中間決算を公表しており、この全面広告は、この決算の公表日に照準を合わせている。中間決算がその補強材料ともなる効果を狙ってのことであるといえ、ここへ来て、オーケーが成長戦略にシフトする狼煙をあげたともとれる、日経新聞への全面広告である。

   その中間決算の結果であるが、売上高1,167.42億円(昨対100.71%)、営業利益72.16億円(昨対127.24%)、経常利益73.90億円(昨対127.54%)、当期純利益42.00億円(昨対123.71%)となり、残念ながら、売上高は伸び悩んだが、利益はいずれの段階でも大幅な増益となり、好調な決算であったといえよう。日経新聞の全面広告の頭には、「経営目標は「借入なしで年率30%成長の達成」です。2014年3月期の達成を目指しています。」とのスローガンを入れており、この中間決算の売上高、昨対100.71%とは大きな乖離があるが、この全面広告を中間決算と同日に打ち出したことで、2年後を視野に入れた成長戦略への経営戦略のシフトを不退転の強い決意で飯田社長自ら宣言したといえよう。

   これについて、オーケー自身は、「立地開発が遅れております。いろいろと仕組みを考え、特許も出願しておりますが、思うようには参りません。誰もが理解出来る簡単な仕組みにして、地主様にとって有利な賃料を提案できれば間違いなく成果が上げられるはずです。改善して取り組んで参ります。」と、賢明に取り組んでいるとのことであるが、それも含めて、今回の日経新聞での全面広告につながったといえよう。

   さて、この中間決算で特に営業利益が大幅な増益となった要因を、原価、経費面から見てみたい。まずは原価であるが、78.81%(昨年79.69%)と、0.88ポイント改善した。結果、売上総利益は21.19%(昨年20.31%)となった。これについて、オーケーは、「当社が値下額を負担して行う広告売価継続値下を強化したこと、競合店の特売が減ったこと等の要因で、競合店対抗値下が 2億79百万円減少、売上原価率が0.9%低下しました。」と、コメントしており、3/11の東日本大震災以降の競合店の特売の減少が大きかったとのことである。ちなみに、オーケー自身は、「3月11日に東日本大震災が発生、多くの商品が円滑に調達出来ないという異常事態になり、加えて計画停電・液状化等で対象の店舗では営業が不能となる等、誠に困難な状況でした。」とのことで、少なからぬ影響が生じたとのことである。

   一方、経費の方であるが、15.19%(昨年15.41%)と、0.22ポイント削減しており、ほぼ食品スーパーマーケットの限界値に近い数値となった。ちなみに、決算公開企業約50社の中ではNo.1の低い経費比率であり、No.2がトライアルカンパニーの16.49%であるので、いかに、15.19%が突出しているかがわかる。もちろん、ウォルマートの19.3%をはるかに下回っており、オーケーは規模はともかく、経営の質では世界的水準に達しているといえよう。これがオーケーの経営理念「高品質、Everyday Low Price」を支える原動力といえよう。これについて、オーケーは、「前年中間期に比べ、情報誌代 63百万円減、リース料 1億45百万円減、水道光熱費 82百万円減、等が寄与しまして、売上は横ばいですが経常利益率は 6.24%と想定外の高い数値となりました。」とのことである。

   結果、差し引き、商品売買から得られるマーチャンダイジング力は、6.00%(昨年4.90%)であり、原価、経費双方がバランスよく改善したことにより、大幅な改善となった。オーケーのP/Lではその他営業収入が計上されていないため、マーチャンダイジング力=営業利益となり、大幅な増益となった。

   さて、気になる成長戦略であるが、この好決算を受けて、純資産比率が47.60%(昨年39.83%)となり、財務基盤が安定した。有利子負債は145.52億円(昨年145.85億円)と大きな変化はないが、現金が287.51億円(昨年271.74億円)と、有利子負債を大きく上回っており、実質無借金経営であるといえ、成長戦略に経営戦略をシフトするための財務基盤は整いつつあるといえよう。

   このように、オーケーが12/20、中間決算の公表と同時に、日経新聞で出店用地を求める全面広告を出し、事実上、成長戦略へ経営戦略の舵を切る宣言をしたといえる。残念ながら、この中間決算では売上高は100.71%と伸び悩んだが、反面、利益はいずれの段階でも大幅な増益となり、結果、純資産比率が大きく上昇し、財務基盤の安定化が図れた。残り、後半、そして、今後、特に、2014年3月期の達成目標「借入無しで年率30%の成長」を実現のため、オーケーがどのような成長戦略を打ち出すのか、その動向に注目である。

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December 25, 2011

ID-POS分析でMDがどう変わるか、その1!

   ID-POS分析がいよいよ実戦段階に入りはじめた。今後、食品スーパーマーケット業界では、これまでのPOS分析に加え、ID-POS分析が、特に、マーチャンダイジングの基本分析となってゆくことになろう。ID-POS分析は理論的にはこれまでのPOS分析を100%包み込む分析であり、これまでのマーチャンダイジング戦略はすべてID-POS分析で説明が可能である。さらに、これまで見えなかった観点から、従来のマーチャンダイジングを見ることができ、新たなマーチャンダイジング戦略の構築につながってゆくことになろう。

   では、なぜ、ID-POS分析がこれまでのPOS分析を理論的に包み込んでいるかであるが、それは、どちらの分析も、売上げの原因を追究してゆくことになるが、これまでのPOS分析で解明できる売上構造はすべて、ID-POS分析で解明できるが、逆に、ID-POS分析で解明できる売上構造はこれまでのPOS分析では解明できない部分があるからである。この解明できない売上構造の部分がID-POS分析特有の分析であり、これが、今後、これまでのマーチャンダイジングを変革してゆくことになる起爆剤となる。

   そこで、その売上構造の違いであるが、これまでのPOS分析で、最も単純な分析は、売上高=売上数量×平均単価である。この平均単価は売上高/売上数量であり、双方が成り立っていることがわかる。そして、これがもう1歩発展したものが、レシート客数が入った分析となる。この場合のPOS分析は、売上高=レシート客数×金額PI値(客単価)となる。金額PI値は売上高/レシート客数であるので、双方が成り立っていることがわかる。この金額PI値はさらに、金額PI値=PI値×平均単価と分解でき、PI値は売上数量/レシート客数であるので、売上数量×平均単価=売上高であるので、双方が成り立っていることがわかる。したがって、売上高=レシート客数×金額PI値=レシート客数×PI値×平均単価となり、これが、これまでのPOS分析の基本方程式である。

   そして、この基本方程式、いわゆるMD方程式に従い、すべての商品の売上げを分解し、その商品の売上げをあげるための様々な仮説検証がマーチャンダイジング戦略そのものであったといえる。したがって、これまでのマーチャンダイジングをごく単純化すれば、レシート客数を増やす、PI値を増やす、平均単価を増やす、あるいは、これら、いずれか、ないしは、すべてを増やす政策であったといえる。ここからも、わかるように、従来のマーチャンダイジングは、徹底的に商品こだわった政策が基本であり、しかも、レシート客数、PI値、平均単価の3つの要素が基本指標となっている。

   これに対して、ID-POS分析はどうか。ID-POS分析も売上げを商品から見る点は同じであるが、その基点をレシート客数に置くのではなく、ID客数に立脚することに最大の特徴がある。これまでのPOS分析同様、商品を分析してはいるが、単に商品が売れた、売れないではなく、まず、その商品を購入しているID客数がいったい何人いるかが最初の出発点となる。レシート客数の場合も同じように思えるが、実はID客数とは決定的な違いがある。ID客数は時間とともに増加するが、その伸びはどこかで落ち着き、限りなく一定の数字に近づいてゆく。これに対して、レシート客数は時間とともに増え続け、ID客数の収束とともに伸び率は小さくなるが、ほぼ永遠に増加してゆくことになる。

   したがって、ID-POS分析の次の関心事は、そのID客数がいったい何回商品を購入するか、すなわち、購入頻度、ID客数PI値が次の重要指標となる。ID客数PI値=レシート客数/ID客数であり、まさに、ID客数が時間とともに、どのくらいの頻度で購入しているかを表す、ID-POS分析特有の指標である。そして、当然、次のID-POS分析の関心事は、そのID客数が1回当たりいくらその商品の購入しているか、何個購入しているか、いくらで購入しているかとなり、これは、これまでのPOS分析の金額PI値、PI値、平均単価そのものであり、ここから先は、これまでのPOS分析の領域となる。

   まとめると、ID-POS分析は、売上高=ID客数×ID客数PI値×金額PI値=ID客数×ID客数PI値×PI値×平均単価となる。また、ID客数PI値×金額PI値は約分すると、売上高/ID客数となるので、これをID金額PI値とすることができる。したがって、売上高=ID客数×ID金額PI値=ID客数×ID客数PI値×金額PI値=ID客数×ID客数PI値×PI値×平均単価となり、これが新MD方程式である。

   さて、こう見ると、これまでのPOS分析はID-POS分析を完全に包み込んでいるといえ、さらに、これまでのPOS分析ではなかったID客数とID客数PI値、さらには、ID客数PI値×金額PI値=ID金額PI値が加わっており、ここがID-POS分析特有の新たなマーチャンダイジング戦略を構築してゆく鍵を握っているといえ、同時に、これまでのマーチャンダイジングでは説明不能であった、新たに判明したマーチャンダイジングの世界であるといえる。

   マーチャンダイジングとは、レシート客数と金額PI値、そして、PI値、平均単価からのみ見るのではなく、ID-POS分析が可能となった場合は、まず、ID客数、そして、ID客数PI値、さらには、1回当たりの売上げ、金額PI値ではなく、ID客数、1人1人が購入している売上げの中身を見ることがポイントであり、この数字の変化をもたらすことが、ID-POS分析特有のマーチャンダイジング戦略であるといえる。

   なお、ID-POS分析のマーチャンダイジング戦略は、これに加え、ID客数が基点となったことにより、さらにダイナミックに変化してゆく。これについては、稿を改めて解説したい。
   

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December 24, 2011

コンビニ、売上速報、2011年11月度、10.4%、好調!

   コンビニの好調な売上げが止まらない。12/20、2011年11月度の売上速報が(社)日本フランチャイズチェーン協会から公表された。この数字は、同協会の正会員、ココストア、サークルKサンクス、スリーエフ、セイコーマート、セブン-イレブン・ジャパン、デイリーヤマザキ、ファミリーマート、ポプラ、ミニストップ、ローソンの10社、44,250店舗の集計データであり、ほぼ、日本全国を網羅し、信頼性の高い数値である。その結果であるが、全体の売上げは10.4%(既存店7.5%)となり、新店よりも、既存店の伸びに支えられた結果であり、この11月度も依然、コンビニは好調な売上げを維持しているといえる。

   同協会も、「今月は平年に比べ気温が高く、全店既存とも今月は平年に比べ気温が高く、売上高が2ヶ月連続プラスとなった。天候にも恵まれ、特に惣菜、嗜好品が好調であった。また、たばこの売上げは依然として伸長している。」とコメントしており、暖冬に加え、たばこの効果が大きいとのことである。たばこは、コンビニでは非食品に分類されるが、その非食品の売上げは24.8%(構成比35.0%)であり、全体を大きく牽引していることがわかる。以前のコンビニは、非食品の構成比がここまで高くはなかったが、たばこの値上げ、そして、3/11の東日本大震災後は非食品の伸び率が異常値となり、いまや、コンビニの主力、ファストフードを含む日配食品4.0%(構成比32.5%)を伸び率、構成比ともに上回り、コンビニ=非食品といってもよいくらいの地位を占めたといえる。ちなみに、残りの部門であるが、加工食品1.5%(構成比27.7%)、サービス18.0%(構成比4.8%)であり、いかに、非食品が重要な部門となったかがわかる。

   そこで、非食品について、構成比を中心に、昨年10月の値上げ前から、現在、11月までどのような推移をたどってきたのかを見てみたい。2008年度、非食品30.2%(日配食品34.9%)、2009年度、非食品31.9%(日配食品33.9%)である。そして、たばこの値上げ直前の2010年8月、非食品30.1%(日配食品34.5%)、2010年9月、非食品40.1%(日配食品29.9%)、たばこ値上げ後の2010年10月、非食品27.2%(日配食品37.2%)、2010年11月、非食品31.0%(日配食品34.4%)、2010年12月、非食品33.7%(日配食品34.4%)であり、2010年度累計では、非食品32.1%(日食品33.8%)という状況である。2010年9月度だけ、非食品が日配食品を逆転したが、年間では日配食品が依然として、コンビニの主力部門であったといえる。

   そして、2011年度に入り、1月、非食品34.0%(日配食品33.1%)と、ここで再逆転、非食品が日配食品を上回る。2月、非食品34.6%(日配食品33.2%)、3/11の東日本大震災の起こった3月、非食品36.4%(日配食品31.4%)と、その差がさらに広がる。4月、非食品31.9%(日配食品33.8%)と、また逆転、5月、非食品35.7%(日配食品32.4%)と再逆転、6月、非食品36.3%(日配食品32.1%)と、その差が広がる。7月、非食品34.4%(日配食品33.1%)、8月、非食品34.1%(日配食品33.5%)と、また、その差が縮まる。9月、非食品33.4%(日配食品33.5%)と微妙に逆転、10月、非食品34.7%(日配食品33.5%)と、再逆転、そして、11月、非食品35.0%(32.5%)と、突き放したといえる。なお、9月度は、前年が非食品40.1%であったので、その反動といえ、実質、非食品が日配食品を上回っているといえ、2011年度は4月を除き、非食品が日配食品を上回ったといえ、恐らく、通年でも非食品が日配食品を上回り、コンビニにとっては、歴史的な1年となろう。

   さて、商品面では、非食品、すなわち、雑誌、書籍、新聞、衣料品、袋物類、文房具、ブラシ、玩具、雑貨、たばこ、ペットフード、乾電池、テープ、CD、電球・蛍光灯、電卓、燃料、人形、サングラス、履物、園芸用品等がコンビニの売上げを支えたが、これを客数、客単価で見てみたい。この11月度は客数4.6%(既存店2.1%)、客単価5.5%(既存店5.3%)であり、客数よりも、客単価、しかも、既存店の客単価が大きく伸びているのが特徴である。したがって、まさに、既存店の非食品が客単価を上昇させ、結果、コンビニ全体の売上げを力強く引き上げたといえよう。

   ちなみに、非食品に関しては、これを専門に取り扱うホームセンターの数字も現在好調に推移しており、特に、被災地、東北地方で展開しているホームセンターの業績は好調である。その意味で、今年は、非食品、すなわち、雑貨が売上げのキーとなっているといえ、食品スーパーマーケット業界としても、改めて、今後、雑貨を見なおす必要があろう。

   このように、2011年11月度のコンビニの売上速報は10.4%(既存店7.5%)となり、好調さが続いており、小売業の中でもずば抜けて高い成長率を維持している。しかも、新店よりも既存店の数字が好調であるのが特徴であり、その要因がたばこを含む非食品、すなわち、雑貨にあるといえる。コンビニはおにぎり、弁当、パン、おでん、デザートなどの日配食品が長らくメインであったが、今期、2011年度はその座を非食品に明け渡し、コンビニ、非食品の時代が到来したといえよう。来期、再度、日配食品が盛り返すのか、それとも、その差がさらに開いてゆくのか、コンビニの今後の動向に注目である。

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December 23, 2011

ダイイチ、2011年9月本決算、札幌戦略が課題!

   北海道、帯広、旭川を地盤とする食品スーパーマーケット、ダイイチの2011年9月期の本決算が11/4に公表された。本ブログでは2011年9月期決算企業については、PLANT、マミーマート、マルキョウをすでに取り上げたので、これで、9月期決算の上場企業は全部で4社であるので、最後となる。そのダイイチの2011年9月期の本決算の結果であるが、売上高298.88億円(2.3%)、営業利益7.17億円(13.3%)、経常利益6.55億円(14.3%)、当期純利益3.39億円(-14.2%)となり、当期純利益は資産除去債務に関する会計基準の適用に伴う特別損失の計上、連結子会社の税金費用の発生などにより減益となったが、営業、経常段階では増収増益、特に、利益が大幅に増益となる好決算となった。

   ただ、気になるのは、自己資本比率であり、35.4%(昨年34.0%)と、昨年よりは改善したが、負債に大きく依存する財務構造であり、今後、いかに、財務基盤の安定化をはかるかが課題となろう。ダイイチは、現在、「帯広市を中心に11店舗、旭川市を中心に8店舗、札幌市に2店舗の合計21店舗」を展開しているが、それぞれの営業結果は、「地域別の売上高につきましては、帯広ブロックは145億3百万円(前年同期比2.0%増)、旭川ブロックは107億47百万円(同4.2%増)、札幌ブロックは46億25百万円(同1.0%減)となりました。」とのことで、札幌ブロックが課題となっている。

   今後、ダイイチとしては、来期、「札幌地区の基盤強化を目指し3店目となる「発寒中央駅前店」を開店いたします。同時に、他の既存店についても売上高の増加に全力を挙げ、企業の体質強化と業績の向上を進めてまいります。」とのことで、札幌ブロックに新規出店を計画している。財務に余裕があれば、他のブロックにも新規出店を計画したいところであろうが、現在の自己資本比率では、新規出店を絞らざるを得ず、札幌ブロックに照準を合わせたといえよう。実際、成長戦略については、「札幌地区においては、5店舗100億円の体制を早急に確立すべく努力いたします。新規出店はキャッシュ・フローと人材育成を重視し、1年に1~2店舗を安定的に出店する方針であります。」と、コメントしており、今後、札幌戦略が最優先で進められてゆくことになるとのことである。

   ダイイチはこのように堅実な新規出店を実施する一方、既存店の活性化にも、積極的に取り組んでおり、今期も、「当連結会計年度の重点目標である「帯広自衛隊前店および旭川花咲店の早期黒字化」に総力を挙げて取り組み、お客様からの高いご支持をいただき、自衛隊前店においては、売上高および経常利益ともに当初計画を大幅に上回りました。また、花咲店においては、次年度の黒字化が可能となりました。」とのことであり、これらの取り組みが、今期の増益をもたらした一因であるといえよう。

   その利益であるが、ダイイチの営業利益が大幅な増益となった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、76.78%(昨年76.95%)と0.17ポイント改善した。結果、売上総利益は23.22%(昨年23.05%)となった。一方、経費の方であるが、22.44%(昨年22.34%)と0.10ポイント上昇した。結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は0.78%(昨年0.71%)となった。原価は改善したが、経費が上昇したため、マーチャンダイジング力の上昇はわずかとなったが、率で見ると109.85%であり、堅調な上昇率である。そして、これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が1.62%(昨年1.47%)加わり、営業利益は2.40%(昨年2.18%)となり、増益となった。やや気になるのは、マーチャンダイジング力<その他営業収入であり、ダイイチとしては、さらに、原価、経費を改善し、マーチャンダイジング力の充実をはかりたいところであろう。

   ちなみに、食品スーパーマーケット、決算公開企業約50社のマーチャンダイジング力の平均は-0.3%であり、ほぼ半数の食品スーパーマーケットがマイナスであるので、ダイイチのマーチャンダイジング力は高い位置にある。また、その他営業収入の決算公開企業約50社の平均は2.57%であるので、食品スーパーマーケット業界全体がマーチャンダイジング力<その他収入という構図であり、マーチャンダイジング力>その他営業収入の企業は約10社ぐらいであり、いかに、マーチャンダイジング力をプラスにもってゆき、しかも、その他営業収入を上回ることが、いかに食品スーパーマーケットの経営にとって難しいことであるかがわかる。

   このようにダイイチの2011年9月期の本決算は、営業、経常段階では増収、増益となる好決算となったが、経費の上昇が見られ、原価の改善効果が薄れたため、課題を残す結果となったといえよう。また、自己資本比率が昨年よりは上昇したとはいえ、35.4%と、負債に大きく依存する財務構造であり、今後、課題の札幌ブロックでの新規出店を積極的に進めてゆく上でも、もう一段と、負債を圧縮し、自己資本比率を引き上げてゆきたいところであろう。来期、ダイイチがマーチャンダイジング力を強化し、財務の安定化をどのようにはかってゆくのか、その動向に注目である。

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December 22, 2011

マルキョウ、2011年9月決算、自己資本比率77.5%!

   食品スーパーマーケット業界2月期、3月期の中間決算の公表が終わり、次の第3四半期決算の公表がはじまろうとしているが、9月期決算企業は11月、12月に決算発表がある。9月期決算の上場食品スーパーマーケットは、マミーマート、ダイイチ、PLANT、マルキョウの4社であるが、本ブログではPLANT、マミーマートについてはすでに取り上げたので、今回は、11/15に決算発表があったマルキョウについて取り上げたい。

   マルキョウは食品スーパーマーケット業界の中では屈指の自己資本比率の高さを誇る企業であり、今期77.5%(昨年75.8%)と、ヨークベニマルの79.9%につぐ高さであり、ほぼ限界に近い数字である。決算公開企業約50社の単純平均が40.8%であるので、70%を超える数字がいかに高いかがわかる。しかも、マルキョウは昨年の75.8%をさらに引き上げており、財務の安定化が経営戦略の最優先課題となっているといえよう。

   そこで、マルキョウの自己資本比率の高さの要因をP/L、キャッシュフロー、B/Sの財務3表から見てみたい。まずは、P/Lであるが、今期の結果は、売上高909.74億円(1.3%)、営業利益17.72億円(-1.4%)、経常利益19.47億円(1.4%)、当期純利益9.24億円(-22.1%)と、増収減益とやや厳しい決算であった。各食品スーパーマーケットの今期決算は、特に利益が好調であるが、マルキョウはやや苦戦しているといえよう。ただ、当期純利益は資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額が1.90億円発生したための数字であり、営業活動によるキャッシュフローは、この分が加わり、29.31億円(昨年28.62億円)と増加している。したがって、今期のキャッシュフローはやや厳しい決算結果ではあったが、キャッシュは増加しており、経営面ではプラスとなった。

   では、この増加したキャッシュをどう配分したかであるが、投資活動によるキャッシュフロー-17.94億円(昨年24.31億円)であり、ほぼ50%を投資に充てている。なお、昨年の数字がプラスになったのは、定期預金の払戻による収入が41.34億円(今年6.35億円)あったためであり、これを差し引くと、昨年も-17.03億円であり、ほぼ、昨年同様の投資への配分である。その投資の中身であるが、新規出店にかかわる有形固定資産の取得による支出は-6.19億円(昨年-7.04億円)であり、それほど大きい配分ではない。最も大きな配分は定期預金の預入による支出-19.35億円(昨年-11.35億円)であり、この項目が最大の投資項目である。これは投資というより、むしろ財務の安定化をはかる投資であるといえ、実質、純資産の増加へ寄与しているといえよう。

   そして、財務活動によるキャッシュフローであるが、-22.46億円(昨年-40.13億円)と、何と、この2年で60億円強の配分であり、しかも、有利子負債への配分が-20.04億円(昨年-37.04億円)と大半である。マルキョウが昨年、今年と財務の安定化に経営戦略をシフトしていることが鮮明である。結果、負債が削減され、純資産が増加し、自己資本比率が上昇したといえる。

   実際、B/Sの総資産は529.53億円(昨年532.10億円)と削減され、純資産は410.14億円(昨年403.38億円)と増加しており、自己資本比率の増加が理想的に改善している。この2年間のキャッシュの思い切った財務の安定化への配分の結果といえ、強い経営の意思が感じられる決算内容である。

   そのB/Sであるが、負債はわずか総資産の20%強にまで圧縮されており、有利子負債は21.37億円(昨年41.42億円)と半減、恐らく、来期は無借金経営になる可能性が極めて高く、自己資本比率も、さらに数%上昇し、ヨークベニマルを抜き、食品スーパーマーケット業界No.1となるのではないかと思われる。ちなみに、マルキョウの純資産の資本金は総資産の11.32%であり、決算公開企業約50社の平均が17.3%であるので、資本金が増加しての財務の安定化ではなく、利益剰余金が増加しており、いわゆる内部留保が年々増強してゆく形での自己資本比率の上昇である。

   一方、資産の方であるが、マルキョウの最大の特徴は新規出店関連の資産にあり、土地、建物、敷金保証金(その他)は、409.39億円、これは総資産の77.31%であり、1店舗当たり4.22億円(全97店舗)と、決算公開企業約50社の平均6.07億円の7掛け、資産を持たない新規出店を可能にしていることも大きいといえる。結果、自己資本比率で割った出店余力は0.19%とプラスであり、決算公開企業約50社の平均が-21.9%であるので、出店余力も十分といえる。

   このように、マルキョウの2011年9月期の本決算は増収減益とやや厳しい決算となったが、キャッシュフローは資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額が発生したことにより、実質プラスとなり、キャッシュは増加した。そして、その増加したキャッシュを有利子負債の削減に思い切って配分し、財務の安定化に経営戦略の優先度を置いたといえる。結果、自己資本比率が増加し、食品スーパーマーケット業界屈指の安定した財務基盤を確立した。恐らく、来期も同様に財務の安定化をはかり、無借金経営をめざし、結果、決算公開企業約50社のNo.1の自己資本比率を達成するのではないかと思われる。来期、マルキョウが、今期同様、財務基盤の確立を目指した経営戦略を打ち出すのか、注目である。

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December 21, 2011

マミーマート、2011年9月期本決算、増収増益!

   食品スーパーマーケット業界の決算は大半が2月期であり、ついで、3月期が多く、この2ケ月が大半を占める。ただ、これ以外の決算月の食品スーパーマーケットもあり、5月期、そして、9月期等も数社ある。その9月期の決算の上場食品スーパーマーケットであるが、4社あり、マミーマート、ダイイチ、PLANT、マルキョウである。そこで、ここでは、その1社、マミーマートが11/14に公表した2011年9月期の本決算の結果を見てみたい。特に、9月期決算は、前期の最後、3/11に東日本大震災が起こったこともあり、後半、4月から9月は、その影響が強く表れて、このような非常事態を受けて、どのような経営戦略を打ち出したかが問われる決算といえる。

   さて、全体の結果であるが、売上高828.77億円(0.5%)、営業利益18.41億円(20.7%)、経常利益22.62億円(21.8%)、当期純利益11.99 億円(68.2%)となり、増収増益、特に、利益がいずれの段階でも大幅な増益となった。

   この結果を見ると、売上高が伸び悩んでいるが、その要因は、「店舗展開におきましては、平成22年11月に西堀店(埼玉県さいたま市桜区)、平成23年2月に昭島中神店(東京都昭島市)、平成23年6月に蓮田山ノ内店(埼玉県蓮田市)を新規出店いたしました。店舗の改装につきましては、16店舗を実施いたしました。したがって、当連結会計年度末の店舗数は60店舗となりました。」とのことで、新規出店が3店舗にとどまったことが大きいといえよう。

   また、「連結子会社であった株式会社ギガ物産は、低価格商品に強みを持つ食品スーパーとして業容の拡大を図ってまいりましたが、同社における低価格商品の開発や販売体制において、当社の共有すべきノウハウの蓄積はその役割をほぼ果たし、同社の更なる発展・成長のためにはその低価格商品開発力、販売ノウハウを今後ディスカウント業態で生かすことが必要であるとの認識のもと、平成23年3月に当社の保有するその全株式の譲渡を行いました。」とのことで、ギガ物産が連結から外れたことも影響しているといえよう。実際、マミーマート本体の個別決算の売上高は105.80%であるので、堅調な伸び率である。

   一方、営業利益が大幅に上昇した要因であるが、原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、75.42%(昨年75.94%)と、0.52ポイント改善した。これについて、マミーマートは、「徹底したコストダウンによる野菜を中心とした低価格戦略、顧客ニーズに対応した良質で割安感のある品揃えを実現するためディスティネーション商品(お客様がその商品を目指してご来店いただける商品)の開発等を推進してまいりました。」とコメントしており、商品開発に力を入れたとのことである。結果、売上総利益は24.58%(昨年24.06%)となった。

   これに対して、経費の方であるが、23.79%(昨年23.70%)と、0.09ポイントとわずかではあるが上昇した。結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は0.79%(昨年0.36%)と、倍増した。経費は若干の上昇が見られたが、それ以上に、原価の削減が大きく寄与したといえよう。そして、これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が1.44%(昨年1.49%)加わり、営業利益は2.23%(昨年1.85%)と増益となった。やや気になるのは、その他営業収入がマーチャンダイジング力を大きく上回ることであり、今後、マーチャンダイジング力の改善が課題といえよう。

   この好決算を受けて、マミーマートがどのような経営戦略を打ち出したかであるが、営業活動によるキャッシュフローは35.08億円(昨年18.56億円)と倍増しており、好決算がそのままキャッシュフローに反映されている。そして、この豊富なキャッシュをどう配分したかであるが、投資活動によるキャッシュフローは-0.97億円(昨年-39.35億円)と、投資への配分を大きく削減している。実際、新規出店にかかわる投資、有形固定資産の取得による支出も-13.57億円(昨年-42.18億円)と激減しており、成長戦略を封印したといえよう。

   したがって、財務活動によるキャッシュフローは-33.08億円(昨年22.87億円)と、その差、何と55.95億円であり、昨年とは対照的な配分、ここに、今期のキャッシュの大半を当てているといえる。その中身は、有利子負債の返済がほとんどであり、今期は思い切った財務改善に舵を切ったといえる。結果、自己資本比率も56.6%(昨年50.2%)となり、安定した財務基盤の確立へつながったといえよう。

   このように、マミーマートの2011年9月期の本決算は増収大幅増益となり、特に、原価の改善が寄与し、利益を大きく押し上げたといえる。そして、その結果、獲得した豊富なキャッシュの大半を財務改善に充て、新規出店、すなわち、成長戦略を抑制した経営戦略を打ち出し、守りをがっちり固めたといえる。マミーマートは9月度決算ということもあり、まさに、3/11の東日本大震災の影響を強く意識しての経営行動であるといえよう。来期、マミーマートが、さらに、財務の改善に入るのか、それとも反転、成長戦略を打ち出し、攻めに転じるのか、その動向に注目である。

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December 20, 2011

これまでのPOS分析とID-POS分析の役割分担!

   12/19の日経MJに、「自動発注の導入加速、食品スーパー」、「東武ストア、小型店に生活用品向け」、「いなげや、数年以内、EDLP全店に」という記事が掲載された。食品スーパーマーケットが自動発注への取り組みを強化しはじめたという内容であり、今後、食品スーパーマーケット業界へ急速に広がってゆくことになろう。この自動発注にはPOS分析が不可欠であり、POS分析は、今後、この自動発注をはじめ、いわゆる、食品スーパーマーケットの基幹業務、SCM(サプライチェーンマネジネント)の方へより活用が進んでゆくことになろう。したがって、ここ最近、食品スーパーマーケット、メーカー、卸で関心の高いID-POS分析はマーチャンダイジング、販売促進、個店対応へと、役割分担が分かれて行くことになると思われる。

   一般に、自動発注の仕組みの根幹はPOSデータが鍵を握っている。自動発注に必須の安全在庫の算出にはPOS分析が前提となるからである。自動発注は安全在庫の水準を在庫量が切った時点で自動に発注がかかる仕組みであるので、その安全在庫の基準設定にPOSデータが活用される。実際のPOSデータの活用は、基準在庫量、そして、標準偏差等を用いて安全在庫量が決定され、その安全在庫量を切った時点で自動発注がかかることになる。したがって、自動発注の対象商品のPOS分析にもとづいた、需要予測、基準在庫の設定、安全在庫の設定は一連の流れであり、ここにPOS分析が必要不可欠の仕組みとなる。

   当然、その延長上には、同じ商品でも店舗ごとに売上げが違う場合もあるので、店舗ごと、商品ごとに需要予測、基準在庫、安全在庫が異なり、必然的に店舗別の品揃え、店舗別の棚割へと発展してゆくことになる。さらに、店舗数が増えると、在庫の確保、物流センターとの連動、メーカー、卸との連携が必要となり、自然、SCMへとつながってゆく。その意味で、自動発注は、POSデータを活用しての仕組みのひとつではあるが、その延長線上には自動棚割、物流センター、メーカー、卸との連携、すなわち、SCMにつながるテーマがあるといえる。

   ちなみに、この日経MJの東武ストア、いなげやの記事の内容であるが、東武ストアは、「2012年2月期から、売場面積1000平方メートル前後の小型店を対象に衣料品と生活用品の2分野で自動発注システムの導入を始めた。基準在庫量を下回ると、自動的に商品を発注する仕組み。」とのことである。一方、いなげやは、「現在、EDLP(エブリデー・ロー・プライス=毎日安売り)業態の「いなげや、ina(いーな)21」の10店舗に導入しているが、これを数年以内にいーなの全27店舗に拡大する方針。いーなでは特売をしないため、需要予測が立てやすい。冷凍食品を中心に販売の波が小さい商品群が対象。」とのことである。

   このような動きは、今後、食品スーパーマーケットの小型店では必須の仕組みとなってゆくことになるといえよう。すでに、マルエツの小型食品スーパーマーケット、マルエツプチでは加工食品に自動発注が導入されており、イオングループのすでに首都圏で200店舗を超えた「まいばすけっと」も自動発注を取り入れている。いずれもPOS分析をもとにした発注点管理による自動発注であり、POS分析が不可欠なシステムとなっている。

   では、ここ最近、食品スーパーマーケット、メーカー、卸の関心の高いID-POS分析は、今後、どのような役割を担ってゆくことになるかであるが、ID-POS分析は食品スーパーマーケットの全顧客の約70%前後の販売データであるので、全顧客の販売データではない。その意味で、食品スーパーマーケットの基幹業務と連携させるには無理のあるデータである。ただ、顧客1人1人の全購入履歴を把握できるので、商品の販売動向を顧客面から捉え直すことができ、商品ごとの顧客構造の変化と商品どうしの関係、つながりを顧客面から分析することが可能となる。さらに、これまでのPOS分析は理論的にも、ノウハウとしてもすべて包み込むことができ、新たなマーチャンダイジングのノウハウの開発も可能である。

   したがって、ID-POS分析はこれまでのPOS分析で取り組まれたマーチャンダイジング関連、特に、販売促進にかかわる分析、ノウハウ等を吸収し、新たなマーチャンダイジング戦略を創ってゆく役割を担うことになろう。しかも、ID-POS分析は、顧客の購入履歴に立脚したPOS分析であることから、これまでの本部中心のPOS分析から、店舗に基点をおいたID-POS分析へと転換が進み、文字通り、本部が店舗の個店対応を全面支援する組織改革にもつながってゆくことになろう。

   このように、今回取り上げた自動発注は、これまでのPOS分析を用いて構築する食品スーパーマーケットの基幹業務の一環であり、SCMへとつながってゆくことになる仕組みといえる。これまでのPOS分析は、今後、ますます、食品スーパーマーケットの基幹業務の根幹に位置づけられることになると思われるが、一方で、ID-POS分析は、これまでのPOS分析が担ってきたマーチャンダイジング、特に、販売促進、個店対応の仕組みづくり等への置き換え、活用、新たなノウハウづくり、そして、組織改革へと、その活用がなされてゆくことになろう。来年度は、その意味で、ID-POS分析の食品スーパーマーケットでの役割が、より明確になり、一層高まることになろう。

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December 19, 2011

食品スーパーマーケット、売上速報、11月度、102.3%!

   2011年11月度の食品スーパーマーケット、22社の売上速報をまとめた。総店舗数は2,062店舗であるので、ほぼ1社当たり平均100店舗となり、比較的規模の大きな食品スーパーマーケットが多いが、展開地域もほぼ全国を網羅しており、現時点での食品スーパーマーケット業界の動向を反映しているといえよう。なお、10月度からユニバースがアークスに経営統合したため、ユニバースの売上げはアークスとして集計されている。結果、アークスの店舗数も253店舗となり、マルエツの262店舗に肉薄し、食品スーパーマーケット業界でも、ライフコーポレーションの223店舗を超え、トップクラスの店舗数となった。

   さて、11月度の結果であるが、全体の単純平均が102.3%(既存店99.0%)となり、堅調な結果となった。10月度が102.7%(既存店99.8%)と比べると、若干下がった感はあるが、ほぼ同じといえ、今期前半の好調な勢いはなくなったとはいえるが、安定した売上げを維持しているといえよう。ちなみに、9月度以前の数字であるが、9月度100.1%(既存店97.9%)、8月度100.5%(既存店98.5%)、7月度104.9%(既存店102.8%)、6月度102.0%(既存店100.2%)、5月度101.9%(既存店99.8%)、4月度105.0%(既存店100.8%)、そして、3月度110.2%(既存店105.0%)である。こう見と、3月、4月が好調であり、5月以降は、7月の上昇分を除き、ほぼ堅調な売上げの推移が続いているといえる。

   また、この集計食品スーパーマーケット22社の中には客数、客単価、そして、PI値、平均単価を公表している企業もあり、その結果を見ると、客数100.3%(既存店98.1%)、客単価101.0%(既存店100.6%)であり、客数よりも若干、客単価が上回っており、客単価が比較的堅調であったといえよう。その中身であるが、PI値102.9%(既存店102.3%)、平均単価97.1%(既存店97.8%)であるので、平均単価は下がったが、PI値が良く伸びており、PI値に支えられた客単価アップであるといえる。したがって、デフレ環境に加え、東日本大震災の影響も薄れ、再び、競争が激化し、価格競争が影響しているものと思われ、今後、いかに、平均単価を改善するためのマーチャンダイジング戦略が課題となろう。

   では、今回の集計食品スーパーマーケット22社の個々の数字を見てみたい。まずは、売上げが好調な食品スーパーマーケットであるが、105%を超えた企業が5社ある。スーパーバリュー117.5%、アークランドサカモト111.6%(既存店103.1%)、ヤマザワ110.1%(既存店108.7%)、バロー109.9%(既存店100.5%)、ハローズ108.5%(既存店100.6%)である。No.1、No.2ともにホームセンター関連の商品構成が強いスーパーセンター業態であるといえ、特に、ホームセンター関連の数字に支えられた結果といえよう。また、新規出店も積極的であり、特に、スーパーバリューは、ここ最近でも9/8に府中新町店、11/3に国立店を新規オープンしており、19店舗となり、新店の貢献度が高いといえよう。

   No.4のバロー、No.5のハローズも既存店と全体との伸び率の差が大きく、新店に支えられた売上げであるといえ、トップ5の内、4社が、このような厳しい経営環境の中、攻めの積極的な経営戦略であるといえる。これに対して、No.3のヤマザワは、これらの食品スーパーマーケットとは一線を画し、既存店が、今回集計企業22社の中で最も伸び率が高く、108.7%と絶好調であり、この既存店が全体110.1%を支える原動力となっているといえる。この高い伸び率、特に、既存店の数字は、ほぼ、3月度の東日本大震災以降維持しており、食品スーパーマーケット業界の中でも際立った既存店の伸び率である。

   これについで、全体の売上げが100%以上の食品スーパーマーケットであるが、ヤオコー104.8%(既存店100.0%)、マックスバリュ北海道104.0%(既存店104.0%)、マックスバリュ東北103.9%(既存店104.8%)、マックスバリュ中部103.9%(既存店99.0%)、アークス103.1%(既存店102.1%)、マックスバリュ西日本102.2%(既存店99.0%)、マックスバリュ東海102.0%(既存店96.6%)、ダイイチ101.8%(既存店101.8%)、イズミ推定101.2%(既存店推定101.2%)という結果である。

   一方、残念ながら、昨年の数字を下回った食品スーパーマーケットであるが、カスミ99.6%、エコス98.7%(既存店99.4%)、オオゼキ98.1%(既存店97.5%)、トーホー97.8%(既存店93.3%)、いなげや97.6%(既存店95.2%)、PLANT97.4%、マルエツ93.7(既存店91.9%)、Olympic:フード82.5%(既存店82.5%)という結果である。こう見ると、首都圏の食品スーパーマーケット、オオゼキ、いなげや、マルエツなどが、比較的厳しい状況にあるといえる。

   このように、2011年11月度の食品スーパーマーケット22社、約2,000店舗強の売上速報を集計してみたが、全体としては、堅調な売上げであるといえ、ここ数ケ月ほぼ安定した数字を確保しているといえよう。特に、ここへ来て、新規出店を積極的に展開しはじめた食品スーパーマーケットの好調さが際立っているといえる。また、ヤマザワの数字が東日本大震災以降、極めて高い水準で維持されており、既存店の数字が絶好調であることから、マーチャンダイジング上の大きな変化があったものといえよう。一方、気になるのは首都圏の食品スーパーマーケットであり、新規出店が少ないことに加え、既存店も厳しい状況にあるといえる。いよいよ、今年も年末が近づいてきたが、このような状況を踏まえ、来期、各食品スーパーマーケットがどのような成長戦略を打ち出すか注目である。

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December 18, 2011

神戸物産、2011年10月期、本決算好調、増収増益!

   業務スーパーを全国にFCで展開する神戸物産の2011年10月期の本決算が12/15、公表された。結果は、売上高1,506.82億円(9.0%)、営業利益35.96億円(26.1%)、経常利益35.81億円(26.0%)、当期純利益17.54億円(85.0%)となり、売上高もさることながら、利益がいずれの段階でも大きく増加し、増収増益の好決算となった。この結果について、神戸物産は、「当社グループは食品メーカーとして安全・安心な商品を安定供給する為、「第6次産業『真』の製販一体」という目標のもと、原材料の調達からオリジナル商品の製造、店舗での販売に至るまでを一貫して行える組織体制の強化に取り組んでまいりました。」と、コメントしており、製販一体となった組織体制の強化が好業績に貢献したとのことである。また、一方で、3/11の東日本大震災後の復興需要等も好業績に貢献したといえよう。

   神戸物産の直近11月度現在の数字を見ると、売上高108.1%、営業利益126.3%であるので、ほぼ、2011年10月期の本決算の数字を維持しており、現時点でも好業績が継続しているといえ、業務スーパーは好調な数字といえよう。ただ、同じ、業務スーパーを展開しているトーホーのC&C事業、Aプライス96店舗の11月度の結果を見ると、売上高98.8%(既存店92.8%)という結果であり、神戸物産の数字が際立っているといえる。ちなみに、神戸物産は11月現在580店舗であり、内、578店舗がFCであり、直営はわずか2店舗である。したがって、ビジネスモデルは、小売業よりも、コンビニに近いといえ、決算構造も、コンビニとほぼ同じ内容である。

   さて、神戸物産の2011年10月度の本決算が好調に推移した要因を、特に大幅な増益となった営業利益の中身を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、93.79%(昨年94.19%)と0.40ポイント改善した。それにしても90%を超える原価率であるが、これがFC特有の原価構造であるといえる。食品スーパーマーケットでは、75%前後となるのが通常ではあるが、FCでは、いわゆるフランチャイズフィーを引いたものであるといえ、これだけ高い数字となる。したがって、売上総利益が本部に入るフランチャイズフィーの大部分であるといえ、結果、売上総利益は6.21%(昨年5.81%)となった。

   一方、経費の方であるが、3.82%(昨年3.74%)と0.08ポイント上昇した。ちなみみに、神戸物産の経費構造の中で最大のものは、通常の小売業と違い、人件費ではなく、運賃となる。今期は、この運賃が1.31%(昨年1.27%)と若干上昇しており、人件費は0.96%(昨年0.97%)と若干減少しており、この運賃に、その他の経費の上昇が経費全体を押し上げたといえる。結果、差し引き、営業利益は2.39%(昨年2.07%)と、原価の改善が寄与し、大きく増加した。

   こう見ると、神戸物産のビジネス構造はFCが主体であるがゆえに、原価の改善をいかにはかるかが、経費の改善よりもはるかに大きく、しかも、経費項目の中でも、原価改善にもかかわる運賃を同時に抑えるかが、利益改善の鍵を握っているといえよう。したがって、まさに製販一体となった製造だけでなく、物流センターを含めた、物流改善も原価改善にかかわるテーマであるといえ、投資戦略も店舗ではなく、この一連のプロセス、工場、物流センター、物流、いわゆるロジスティックスへの投資が課題といえよう。

   実際、気になるのは、これらの投資が多額に及び、しかも、その大半を有利子負債で賄っていることである。神戸物産の2011年10月期の自己資本比率は28.7%(昨年30.5%)であり、70%以上を負債に依存した財務構造である。その負債の主要項目は、有利子負債であり、総資産484.73億円の35.34%(171.31億円)を占める。ついで買掛金114.83億円であり、総資産の23.68%である。したがって、財務的には利益を生み出す源泉である製造、ロジスティックスへの今後の投資がかなり圧迫されているといえ、いかに、財務改善をはかるかが大きな課題といえよう。

   そこで、キャッシュフローを見ると、営業活動によるキャッシュフローは21.47億円(昨年38.23億円)と、意外にも減少している。これは、たな卸資産の増加が原因であり、今期はキャッシュの入りは好決算により増加したが、出の特に、たな卸資産の増加が大きく、キャッシュをここに充てたためである。そして、問題の投資活動によるキャッシュフローであるが、-49.21億円(昨年-18.35億円)と大幅に増加し、しかも、営業活動によるキャッシュフローを大きく、上回っている。したがって、財務活動によるキャッシュフローで補わざるをえず、44.78億円(昨年66.94億円)となり、この大部分を長期借入金で賄っている。本来であれば、好決算を財務改善につなげたいところであったと思われるが、キャッシュの流れはむしろ逆流であり、厳しい財務状況であるといえよう。

   このように、神戸物産の2011年10月期の本決算は、営業面ではFCの店舗数も増加し、増収となり、また、今期は原価改善も図ることができ、大幅な増益となった。ただ、財務面では、この好調な営業成果を活かしきれず、投資を長期借入金で賄っており、結果、自己資本比率が30%を下回るという結果となった。神戸物産としては、今後、このアンバラスをどう解消し、好調な営業面を財務改善につなげられるかが課題といえよう。来期、神戸物産がどのような財務戦略を打ち出すか、その決断に注目である。

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December 17, 2011

クロスマーチャンダイジング、花盛り、効果は?

   ここへ来て、クロスマーチャンダイジングが食品スーパーマーケットの売場で積極的に展開されはじめている。特に、ここ最近のクロスマーチャンダイジングは、食品スーパーマーケット側からのクロスマーチャンダイジングに加え、メーカー側からのクロスマーチャンダイジングがむしろ増加しており、様々な事例が登場している。特に、メーカー側からの事例は、食品スーパーマーケットへの支援だけでなく、クロスマーチャンダイジングに取り組むメーカーが販売促進へも活用しはじめており、新たなステージに入りつつあるといえよう。ただ、販売促進といっても、消費者へダイレクトに販売促進するのではなく、クロスマーチャンダイジングの事例を業界紙、誌等に掲載することで、食品スーパーマーケットの売場を抑え、結果、消費者への販売促進であり、間接的な販売促進といえる。

   そこで、本ブログでは、この典型的な事例として、まず、メーカーの広告を兼ねたクロスマーチャンダイジングの事例を取り上げ、ついで、食品スーパーマーケット側からの従来のクロスマーチャンダイジングの事例を取り上げてみたい。メーカー側からの広告を兼ねたクロスマーチャンダイジングは日経流通の記事から、食品スーパーマーケット側からの従来のクロスマーチャンダイジングはチェーンストアエイジ誌から、その事例を取り上げる。

   まずは、メーカー側からの広告を兼ねたクロスマーチャンダイジングであるが、12/16の日経流通新聞に掲載された。テーマは「新しい店舗のパン売り場をクロスMDでサポート、ライフ」であり、その横に、「Vol.8、Yamazaki MCrew Report」とあり、山崎製パンのクロスマーチャンダイジングの広告である。山崎製パンにはMクルーという食育や食の安全・安心に関する専門教育を受けた専門スタッフがおり、このMクルーがライフコーポレーションの店舗で食パンとカップスープのクロスマーチャンダイジングに取り組んだ事例である。テーマは「新スタイル、つけパン・ひたパン」であり、Mクルーがパン売場で接客している写真、パンフレット、手書きPOPなども掲載されており、印象深い紙面構成となっている。

   また、クロスマーチャンダイジングの効果について、ライフの食品日配部門の種村チーフが、「販売点数は通常の奨励販売員に比べて格段に多く、・・」とコメントしている。さらに、記事の中でも、「効果的に行えば客単価アップにつながるクロスMDだが、異なるジャンルの商品の同時購入を喚起し、実際の購買行動に結びつけるためには、・・」と取り上げており、同時購入はID-POS分析の指標のひとつであり、数字こそ示されていないが、効果が高いことを示唆している。

   次に、食品スーパーマーケット側からのクロスマーチャンダイジングであるが、チェーンストアエイジの12/15、1/1合併号で、「クロスMDベストプラクティス」として取り上げられている。クロスマーチャンダイジングの売場写真とともに4ページの特集記事であり、全部で15事例が掲載されている。サブタイトルが「「食シーン」を意識した提案が続々と、チェーンストアエイジ誌が選ぶ2011年注目のクロスMD」であり、2011年度のまさに食品スーパーマーケットの珠玉のクロスマーチャンダイジングであるといえよう。

   その15事例であるが、典型的なクロスマーチャンダイジングをいくつか見てみたい。まずはプライムマート真岡店の「カット野菜×ドレッシング×加工肉」であり、このクロスマーチャンダイジングはヤオコー、ヨークベニマル、サミット、いなげやでも実施されているという。また、フードスクエアカスミ日立神峰店の卵料理関連のクロスマーチャンダイジング、マスダ湖北店のカレーのクロスマーチャンダイジングでは、いずれも、調理器具の雑貨が同時に陳列されており、食品だけでなく雑貨とのクロスマーチャンダイジングも取り入れている事例が取り上げられている。また、これが進化すると、ヨークベニマル保原店の大根、カブ、キュウリ×漬物調味料×スライサー・ピーラーと、生鮮食品と加工食品と雑貨のクロスマーチャンダイジングとなる。

   メーカー、食品スーパーマーケットの両事例とも、実に興味深いクロスマーチャンダイジングであるが、残念ながら、検証結果が示唆されているが、公表されていない。本来、クロスマーチャンダイジングはまずは、クロスする双方の商品の顧客を相互に増やし、さらに、その中身である顧客の購入頻度、購入金額を増やすことが目的であり、その数字を検証することにより、さらに、クロスマーチャンダイジングの精度が上がってゆくことになる。

   ここ最近ではID-POS分析も浸透しつつあり、クロスマーチャンダイジングの効果検証も正確にできる環境が整いつつあるので、食品スーパーマーケット、メーカーともに、実際の数字で検証してゆくことが可能になりつつあるといえよう。その意味でクロスマーチャンダイジングも次の段階に入ったといえよう。アイデアを競う段階から、ID-POS分析により、正確な効果検証を行い、最適、最強の商品同士の組み合わせを見つけ、強力なクロスマーチャンダイジングの売場をつくる段階である。来年は、どのようなクロスマーチャンダイジングが見られるか、食品スーパーマーケット、メーカー、双方の動向に注目である。

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December 16, 2011

MD評価表からレポートを作成するポイント、その2!

   前回はMD評価表から、マーチャンダイジングの評価レポートを作成する上においてのポイントを特に、MD評価表をどう読み解き、どこに着目し、どのような点に気を付けてレポートすれば良いかを解説した。そこで、今回は、MD評価表と現場との連動をどうはかり、その状況をどうレポートに組み込むかを解説してみたい。MD評価表のマーチャンダイジングの評価レポートの数字の解説に加え、現場の状況がこれに反映されれば、より、MD評価表の活用が全社的に広がり、本部、現場一体となった顧客の声に基づいたマーチャンダイジングの改善が促進されよう。

   鶏が先か、卵が先か、MD評価表はよく議論の対象となる。すなわち、MD評価表を見てから、現場を見るか、現場を見てからMD評価表を見るかである。理想的には双方が一致することであるので、どちらからでも良いといえるが、現場は当然、現場優先、本部は現場ほど現場に触れる機会がないので、MD評価表優先となろう。したがって、双方がMD評価表を通じてコミュニケーションをはかることで、双方の認識が一致し、本部、現場の一体化が生れるといえ、その意味では、MD評価表からマーチャンダイジングレポートを本部が作成し、現場の声を反映させることが、レポートを全社的に活用する上においては重要なポイントといえよう。

   では、どのように、現場の声をレポートに反映させるかであるが、まずは、前回、解説したように、本部が数字を限界まで解明することである。ここが第1ステップとなろう。そして、その結果、現時点の全社として共有すべき象徴的なマーチャンダイジング改善の課題となる商品、店舗を特定することが第2ステップである。そして、可能であれば、その商品、店舗へ出向いてゆき、現場の写真、動画をとり、担当者になぜ、このようなマーチャンダイジングを実践しているのかを確認することが第3ステップである。もちろん、現場から写メールを送ってもらっても良い。

   その際、課題となる商品、店舗であるが、第1優先は全社の数字を大きく改善する可能性の高い商品、店舗を選定することである。そして、第2優先は、正反対、全社の数字に大きな影響を与える可能性の高い商品、店舗を選定することである。この2つが優先課題であるといえ、後は、その次に課題となるもの、短期的に解決可能なもの、中長期的に解決可能なものなどを選定すると良い。そして、必ず、その商品、店舗の写真、動画、場合によっては図などのイメージをレポートに加えることがポイントである。できれば、現場のコメントも欲しいところだ。

   現場のコメントに関しては、共通の言語として、MD評価表を前提に会話をすることがポイントである。MD評価表は本部、現場の共通の言語、顧客の声を反映したものであるので、ただ、現場の声を拾うのではなく、なぜ、金額PI値が変化したか、その要因がPI値にある場合は、PI値がアップした具体的なアクション、平均単価がアップした場合も、その要因を、現場とともに、確認することである。そして、そこから、全社がすぐに取り組める要素を引出し、これをレポートに写真、動画、そして、MD評価表とともに、簡潔にまとめることがポイントである。

   では、どのような頻度でレポートを作成するかであるが、大きくは2つに分かれよう。ひとつは週別の速報、戦術的なレポートである。そして、もうひとつは、月別のまとめ、戦略レポートである。その違いであるが、週別の戦術レポートは、即時に業績アップ、課題改善が可能なものが望ましく、金額PI値の高い商品を中心に取り組むと良い。また、レポート枚数も、写真も含め、できれば1枚か2枚に集約したいところだ。これに対して、月別の戦略レポートは、週別のまとめと同時に、可能な限り、金額PI値の低いものまで目を配りたいところだ。また、昨年同月との比較も加えられればなお良い。レポート枚数も4、5枚から7、8枚ぐらいまで欲しいところだ。さらに、写真もベストショットに加え、課題ショットも加えると、内容が充実することになろう。

   したがって、年間12ケ月、52週であるので、週別は年間52回の速報、戦術レポートを1回につき、1、2枚発信し、月別は12回、週別のまとめ+アルファとしての戦略レポートを1回につき数枚発信し、本部と現場の一体化をはかり、MD評価表を媒介にし、顧客の声にもとづいたマーチャンダイジングの改善を図ってゆきたいところだ。

   このように、2回に渡って、MD評価表からレポートを作成するポイントについて解説したが、MD評価表は現場で日々発生している商品と顧客との接点を数値化した数表であり、まさに、顧客の声にもとづいたマーチャンダイジングの評価表である。現場は現場の情報しか触れる機会がないのが実態といえ、全店の情報が即座に集まる本部が週別の戦術レポート、月別の戦略レポートを可能な限り、現場の声を取りいれ作成し、発信することがポイントである。そうすることにより、本部も現場を理解し、現場も全店舗の中で自らの位置をつかみ、双方が顧客の声に立脚したマーチャンダイジングを実践してゆくことが可能となろう。

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December 15, 2011

MD評価表からレポートを作成するポイント、その1!

   MD評価表は文字通り、マーチャンダイジングを評価するための帳票であるが、どの指標をもとに、どのように評価し、さらに、それをレポートにするには、それなりのコツが必要である。特に、商品数が多く、店舗数も多い場合には1枚の帳票では足りず、縦横に帳票が広がってゆくので、何がポイントなのかがわかりにくくなり、マーチャンダイジングの評価があいまいになってしまいかねない。そこで、ここでは、MD評価表から、どのようにマーチャンダイジングを評価し、その評価レポートをどのように作成してゆけば良いのかを解説してみたい。

   MD評価表は、この20年間で、様々な進化を遂げ、最新のMD評価表はID-POS分析で用いる新MD評価表であるが、ここでは、その原点ともいうべき、基本中の基本のMD評価表をもとに、マーチャンダイジングの評価とその評価レポート作成のポイントを解説してみたい。これができれば、ID-POS分析の場合も、商品からID、すなわち、顧客への転換に過ぎず、基本は同じ、応用が可能であるので、まずは、ここを抑えることがポイントといえよう。ただし、将来、ID-POS分析が一般に普及すれば、これが逆転し、先に、ID、顧客からマーチャンダイジングを抑え、次に商品への応用となろう。

   まずは、MD評価表の基本構造であるが、商品の数字を3つの角度から見るのが基本である。客数(レシート枚数)、買上金額、買上点数である。そして、これを商品間、店舗間のマーチャンダイジングを比較するために、PI値、すなわち、客数当たり(レシート1枚当たり)に換算して、指標化することになる。ここで客数(レシート枚数)のとらえ方であるが、基本は全客数(総レシート枚数)を原則とするが、商品ごとの客数(レシート枚数)が把握できるのであれば、新たに客数PI値を加え、PI値も全体で割ったPI値、商品ごとの客数で割ったPI値(PPI)も算出するが、ここでは、全客数(総レシート枚数)の場合を取り上げる。したがって、MD評価表の指標は、ここから、金額PI値=PI値×平均単価のたった3つの指標となる。金額PI値が買上金額/客数、PI値が買上点数/客数、平均単価が買上金額/買上点数であるので、この数式が成り立っていることがわかる。

   さて、マーチャンダイジングの評価であるが、MD評価表はこの3つの指標、すなわち、金額PI値=PI値×平均単価で成り立っており、しかも「=」で結ばれているので、左右を分けて考えることがポイントである。すなわち、左、金額PI値が結果、右、PI値と平均単価が原因であり、因果関係を表している。したがって、金額PI値が高いのか、低いのか、上がったのか、下がったのかを見極めることが最初の着眼点であり、その次のポイントが、その原因がPI値にあるのか、平均単価にあるのかを見極めることである。基本はこの1点であり、これがマーチャンダイジングを評価するポイントである。

   ちなみに、このMD評価表から仮説を作る場合も、この応用であり、まず、結果、すなわち、金額PI値の目標設定が先であり、次に、仮説、すなわち、PI値を引き上げるのか、平均単価を引き上げるのか、あるいは、平均単価を引き下げて、それ以上にPI値を引き上げるのかなどの方針を決定し、その具体策、すなわち、仮説を策定することになる。

   次に、マーチャンダイジングの評価ポイントであるが、MD評価表をもとに、評価する際には必ず、縦、横のソートをかけることが必須である。ソートは、まずは、結論、金額PI値のソートであり、ついで、必要に応じて、PI値、平均単価のソートである。その結果、左上に金額PI値の高い商品、金額PI値の高い店舗が来ることになる。したがって、どんなに商品数が多くても、どんなに店舗数が多くても、たった1枚のMD評価表で重点商品、重点店舗を一目で把握することが可能となる。ちなみに、左に店舗の平均値(合計)、上に商品の平均値(合計)をもってくれば、左上の数字がMD評価表全体の結論であり、この数字を引きあげることが、全商品、全店舗のマーチャンダイジングの水準を引き上げることになるといえ、この数字をいかに高めるかが、マーチャンダイジングの最終目標となる。

   そして、そのために、縦に見てどの商品が全体へ対してインパクトがあるのか、あるいは、今後、伸びる可能性があるのか、横に見て、どの店舗が全体へのインパクトがあるのか、あるいは、今後、伸びる可能性があるのかを見極めることが、マーチャンダイジングの評価レポート作成へとつながってゆく。そして、そのためには、MD評価表のサブ帳票として、先月との比較、昨年との比較、すなわち、時間の観点を入れることもレポートを作成するには必須といえよう。

   このように、MD評価表は単純な縦、商品、横、店舗の帳票であるが、これを縦横の金額PI値でソートすることにより、たった1枚の結論が導かれ、これをもとにまずは評価レポートを作成し、ついで、時間、すなわち、先月、昨年比較を加味すれば、さらに、レポートに深みが増すことになる。まずは、MD評価表に金額PI値でソートをかけ、ラインマーカーで縦、商品、横店舗を俯瞰し、両極端、すなわち、数字の良い商品、店舗と悪い商品、店舗を色塗りし、ついで、先月、昨年対比も同様に色塗りすれば、商品ごと、店舗ごとの強さ、弱さが鮮明になる。これができれば、あとは、MD評価表から浮かび上がった事実をもとに、数字改善の方向性を店舗、商品双方から検討すれば良い。ここまで来れば、後は、それをわかりやすくレポートにするだけであり、結果、論旨明快な簡潔なマーチャンダイジングの評価レポートが作成できよう。

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December 14, 2011

ユニバースの2012年2月期、中間決算を見る!

   10/21、ユニバースとアークスが株式交換を行い、正式に、ユニバースがアークスの100%子会社となった。これにより、ユニバースは上場廃止となり、今後はアークスグループとしての決算となるが、この中間決算に関しては、11/21、アークスから公開された。ユニバースの決算はこれまで4月決算であったが、今後はアークスに合わせ、2月決算となるので、この中間決算も2012年2月期の中間決算となる。なお、この経営統合により、ユニバースの代表取締役社長は三浦紘一氏が務めるが、新たに代表取締役会長を置き、アークスの横山清氏が就任した。また、アークスにも新たにユニバースの社長、三浦紘一氏が代表取締役会長に就任し、相互に経営を統括することになる。結果、アークスは代表権を3名、横山清氏(代表取締役社長)、三浦紘一氏(代表取締役会長)、そして、福原朋治氏(代表取締役副会長)のトロイカ路線を敷くことになった。

   なお、この新体制発足に伴い、組織強化にも入っており、11/14、「アークスグループの組織強化を図るべく、以下の組織を新設いたします。(1)業務改革室、アークスグループの業務改善および運営基盤の強化を目的とし、業務改革室を新設いたします。(2)社長室、トップマネジメントのサポート体制の強化および拡充を目的とし、社長室を新設すると共に秘書室の機能を統合いたします。」とのことで、新たな組織を新設した。しかも、峰松繁氏(業務改革室、室長)を三菱商事から、花牟礼真一氏(社長室、室長)を三井物産から迎え、三菱、三井グループとの関係も強化するなど、ユニバースとの経営統合を機にアークスの経営マネジメントの強化をはかったといえる。

   さて、ユニバースの2012年2月期の中間決算の結果であるが、営業収益537.92億円(4.1%)、営業利益25.94億円(40.4%)、経常利益26.67億円(40.1%)、当期純利益14.92億円(64.6%)となり、増収、大幅増益、好決算となった。特に、利益はいずれの段階でも大きく増加しており、3/11の東日本大震災以降の特需も影響していると思われるが、異常値である。ちなみに、10/12に公表されたアークスの中間決算であるが、売上高1,543.43億円(2.1%)、営業利益50.38億円(10.4%)、経常利益54.11億円(8.6%)、当期純利益23.59億円(-17.6%)であり、ユニバースは売上高ではアークスの1/3であるが、利益は1/2であり、ユニバースの収益性の高さが光る中間決算といえよう。なお、アークスの当期純利益が減益となったのは、2月度決算企業は資産除去債務に関する会計基準の適用がなされるため、今期、その影響額5.69億円を特別損失に計上したためである。

   そこで、ユニバースの営業利益が大幅に増益となった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、75.17%(昨年75.71%)と0.54ポイント改善した。結果、売上総利益は24.83%(昨年24.29%)となった。一方、経費の方であるが、20.89%(昨年21.64%)と0.75ポイント改善した。特に、販売促進費7.84億円(昨年8.31億円)、94.34%、水道光熱費8.83億円(昨年9.29億円)、95.04%と、この2項目が大きく下がっており、東日本大震災の影響が大きいといえよう。また、販売促進費が下がった要因は東日本大震災により、3月、4月度のちらし商品の確保ができず、十分にちらしが打てなかったことによるといえ、これが原価の改善にもつながったといえよう。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は3.94%(昨年2.65%)であり、その差1.29ポイントと大幅に改善しており、東日本大震災の特需の影響もあると思われるが、原価、経費ダブルでの改善というユニバースの収益性の高さが光る中間決算となった。そして、これに不動産収入、物流収入等のその他営業収入が0.93%(昨年0.97%)加わり、営業利益は4.87%(昨年3.62%)となった。ちなみに、アークスの今期中間決算での営業利益率は3.26%(昨年3.07%)である。

   一方、ユニバースの財務の安定度を表す自己資本比率であるが、この好調な中間決算の結果を受けて、有利子負債を削減するなど負債を圧縮し、65.1%(昨年63.1%)と改善している。しかも、65.1%はアークスの56.6%よりも約10ポイント高く、食品スーパーマーケット業界の中でもトップクラスである。ユニバースの収益性の高さに加え、財務の安定性も増した中間決算であるといえよう。

   ただ、この中間期では、アークスとの経営統合にともない「自己株式を1,355,400株、1,515百万円取得いたしました。」とのことで、ここへ、この中間ではキャッシュを大量に投入したため、成長戦略、財務改善にキャッシュを十分に回せなかった点が気になるところではある。

   このように、ユニバースがアークスに経営統合されて、はじめての中間決算が公表されたが、結果は増収、大幅増益の好決算となり、本体、アークスを超える好決算であり、アークスを特に利益面で支える決算となったといえよう。今後、両企業はまさに一体となった体制づくりが急速に進んでゆくと思われるが、残り後半を含めた本決算がどのような結果となるか、来年、2012年2月期のアークスの本決算に注目である。

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December 13, 2011

ポイントカード、プリペイド、ハウスカードの時代へ!

   12/11の日経MJで「ナナコ」が取り上げられた。見出しは、「「ナナコ」利便性を向上、セブン&アイ」であり、小見出しは、「入金上限5万円に」、「ベニマルも導入」、「ポイント交換、手数料廃止」である。現在、食品スーパーマーケット業界ではポイントカードが急激に普及しているが、その大半は、決済機能のないポイントカードである。今回、ヨークベニマルが採用する「ナナコ」は決済機能、それも、プリペイドでの決済機能付きのポイントカードであり、しかも、すでに、導入しているセブン&アイHのグループのクレジットカード等とのポイント交換も視野に入っており、利便性の高いポイントカードとなる。

   このようなプリペイドのポイント、かつ、ハウスカードは、食品スーパーマーケット業界では、すでにイオングループがマックスバリュ等でWAONの普及を積極的に進め、先行しており、イオンの独壇場であったといえる。それが、日経MJの記事では、来春から、セブン&アイH傘下のヨークベニマル、ヨークマート、合計240店舗での使用が可能になり、流通業界、2大グループにおいて、本格的に食品スーパーマーケットでプリペイドカードが使えるようになる。食品スーパーマーケット業界へ与えるインパクトは大きいといえ、今後、全国の食品スーパーマーケットが、プリペイドのポイント、かつ、ハウスカードの検討を余儀なくされることになろう。

   ちなみに、一般に、ポイントカードは大きく決済機能があるかないかで、2つに分かれる。そして、決済機能がある場合、先に決済するか、後に決済するかで、さらに2つに分かれる。現在、食品スーパーマーケットで主流のポイントカードは決済機能がない単純なポイントカードある。そして、決済機能が先にあるポイントカードの代表的なものがクレジットカードであり、決済機能が後にあるポイントカードが、今回のナナコ等のプリペイドカードである。さらに、その中でも、ポイントカード全般にもいえることであるが、ハスカードか汎用カードかがあり、汎用カードの代表的なポイントカードがedy、SUICA等である。その意味で、今回のヨークベニマルへのナナコの導入はプリペイドのポイントカード、かつ、ハウスカードであり、現時点では食品スーパーマーケット業界は後塵を拝しているといえ、この点で2大流通グループに大きく後れを取ることになる。

   では、プリペイドのポイントカードがなぜ食品スーパーマーケットにインパクトを与えることになるかであるが、その兆候を示す、まさにポイントが、この日経MJで確認することができる。

   その1つ目が、今回、ナナコはヨークベニマル、ヨークマートへの導入に際して、「ナナコにチャージできる金額を引き上げる。従来の上限金額は29,999円だったが、来年3月13日から5万円にする。同時に買い物でナナコを利用してたまったポイントを電子マネーに交換する際の手数料を無料にする。」とのことである。その背景には、「利用者からチャージ金額の引き上げを求める声が増えていた。」とのことある。

   実際、ID-POS分析を実施すると、食品スーパーマーケットのS顧客は週数回買い物をしており、1回当たり、3,000円前後の買い物となる。したがって、月間では5万円を超える買い物となるのが実態であり、29,999円のチャージではA顧客までの対応となり、S顧客へのサービスが十分でないといえる。本来、ポイントカードの最大の目的はS顧客を特定し、S顧客へのきめ細かな対応を徹底させ、S顧客との強固な絆を築くことにある。ところが、チャージ29,999円では、食品スーパーマーケットのプリペイドカードとしては十分とはいえない。ここを改善に入ることにより、ヨークベニマル、ヨークマートが今後、S顧客へのサービスレベルを向上させることができ、競合する食品スーパーマーケットにとっては少なからぬ影響が生じるものと予想される。

   そして、もう1点、「ヨーカ堂やそごう・西武が発行しているクレジットカードのポイントをナナコポイントに交換できるサービスを始めたことが追い風となり、10月の決済件数は5,300万件と前年同月に比べ23%拡大した。」とのことである。この時点ではナナコの主要顧客はセブン・イレブンのコンビニであるといえるが、これは食料品への潜在ニーズを示しているといえ、ヨークベニマル、ヨークマートでも同様な効果が生れると予想される。

    このように、ナナコが来春から、食品スーパーマーケット業界の雄、ヨークベニマル、そして、首都圏のヨークマートに本格導入されることにより、先行するイオングループのWAONと激突、いっきに、プリペイド、かつ、ハウスカードのポイントカードの時代に食品スーパーマーケット業界が突入することになる。残念ながら食品スーパーマーケット業界は、大半が決済機能のないポイントカードであるので、特に、S顧客へのサービスで大きな差が生じる可能性が高いといえる。したがって、現状のポイントカードの機能強化に入るか、自らプリペイド、かつ、ハウスカードのポイントカードを導入するかの選択となり、いずれにせよ、S顧客への対応如何が、食品スーパーマーケットの明暗を分けることになろう。

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December 12, 2011

商品を洗え、磨け、輝かせ!

   来年度のID-POS分析のキャッチフレーズを決めた。「商品を洗え、磨け、輝かせ!」である。来年度はID-POS分析が食品スーパーマーケット業界に急速に広がってゆくと予想されるが、それにともない、メーカー、卸にもID-POSデータが数多くの食品スーパーマーケットから大量にもたらされることになろう。なぜなら、ID-POSデータはこれまでのPOSデータと違い、食品スーパーマーケットとメーカー、卸が一体となった協働での実践が必須となるからである。特に、ID-POS分析は顧客1人1人の購入履歴を1年以上に渡って中長期的な観点から分析することが原則となるので、その量は膨大、まさにビックデータとなり、そこから何を読み取り、どのような仮説をつくり、どのようなアクションを起こし、その結果をしっかり検証し、次の仮説づくりにつなげることが求められる。これは食品スーパーマーケット側だけでできる話ではなく、メーカー、卸の全面協力なくしてできないといえ、まさに、製販配の協働事業となるからである。

   このような中で、大量のビックデータに惑わされることなく、溺れることなく、泳ぎ切るには、ID-POSデータを活用する羅針盤が必要であり、その羅針盤を活用するための指針が必要である。すでに、羅針盤についてはIT技術の急速な発展により、その環境は整いつつあるが、肝心の指針については、様々な方向が示されており、あいまいなものが多い。

   そこで、現時点で、今後、数年間を見通し、独自に考えた羅針盤の指針となるID-POS分析におけるキャッチフレーズが、「商品を洗え、磨け、輝かせ!」である。ID-POS分析は、古くて新しいテーマではあるが、その実践的な活用は、まだまだはじまったばかりといえる。このキャッチフレーズをもとに、ID-POS分析に取り組んでゆけば、恐らく、1年でID-POS分析の本質が理解でき、このビックデータを誰でも実践の中で使いこなせるようになろう。

   さて、ID-POS分析のキャッチフレーズのはじめの言葉、「商品を洗え!」であるが、これは、これまでのPOS分析で取り組み、慣れ親しんできた商品からの売上げという概念を顧客1人1人の購入履歴をもとに洗い直し、売上げを顧客概念から改めて捉え直すという意味である。すべての商品は顧客1人1人の購入履歴により成り立っており、通常、食品スーパーマーケット1店舗当たり、年間1,000人に及ぶ購入顧客が存在することがID-POS分析では確認されている。したがって、ID-POS分析に取り組む大前提は、この約1000人の少なくとも丸1年間のID-POSデータを1人1人確かめ、その顧客構造をつかむことが出発点となる。売上げとは単に数が増えるとか、価格が変化することではなく、顧客構造が変わることによりもたらされるものである。この事実を、ID-POS分析により、商品1品1品の丸1年間の全購入顧客の購入履歴を分析し、まさに、商品を洗い直すことが、ID-POS分析における最初の課題といえる。

   次に、「商品を磨け!」であるが、商品を洗い終わると、商品1品1品の顧客構造が、1人1人の顧客の購入履歴により、鮮明になる。そこで、次のアクションは当然、商品の売上げをあげるために何をするかとなるが、ここでのポイントが食品スーパーマーケット、メーカー、卸が協働で仮説をつくり、その仮説を実際の食品スーパーマーケットで取り組んでゆくことである。まさに、顧客の海の中に商品を投げ込むことになるが、むやみやたらに投げ込むのではなく、ID-POS分析により慎重に仮説をつくり、海原に入ってゆくこととなる。まさに、これは、商品が顧客によって磨かれることであるといえ、しかも、食品スーパーマーケットだけではできず、メーカー、卸の全面協力が必須となる。すなわち、製販配一体となった顧客からの仮説検証であるといえ、これが商品を磨きが上げることにつながってゆくといえよう。

   そして、「商品を輝かせ!」であるが、商品を洗い、磨き終われば、自然、その商品の独自固有のID-POS分析におけるノウハウが確立される。これはまさに、商品の輝きそのものであるといえ、食品スーパーマーケットのどのような経営環境にも応じることができるフレキシブルな応用範囲の広い独自固有のノウハウの確立を目指して欲しいところである。これができることによって、まさに、商品が輝くことになろう。この独自固有のノウハウは食品スーパーマーケット、メーカー、卸、製販配の協働事業による成果であるといえ、顧客1人1人の購入履歴により商品が輝き、ID-POS分析が目指す、現時点でのゴールとなろう。

   このように、来年度以降、食品スーパーマーケット業界では、ID-POS分析の本格導入が進み、メーカー、卸に、まさにビックデータが大量に多方面からもたらされることになろう。このような中で、このキャッチフレーズ、「商品を洗え、磨け、輝かせ!」を合言葉に、製販配が一体となって取り組んでゆけば、大きな方向を誤ることなく、顧客1人1人の購入履歴に裏付けられた独自固有のノウハウを商品1品1品で作り上げることが可能となろう。来期、2012年度は、まさに、ID-POS分析の新たな時代の幕開けとなろう。

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December 11, 2011

ホームセンター絶好調、2012年度、中間決算!

   ホームセンターが、3/11の東日本大震災以降、業績が絶好調である。主要上場企業3社の2012年度の中間決算、コメリ、DCMホールディングス、アークランドサカモトを見ると、いずれも増収増益、特に、利益が大幅増益であり、その好調さが伺える。また、(社)日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会が12/1に公表したホームセンター40社、3,271店舗の2011年10月度の最新の数字を見ると、売上高105.2%(既存店102.2%)であり、ホームセンター業界全体の売上高も堅調な数字であり、小売業界の中でも、好調さが際立っているといえよう。

   そこで、その好調さの要因であるが、まずは、(社)日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会の集計値で全体像を確認してみたい。ちなみに、この統計数値は40社のホームセンターであるが、その40社とは、アイリスプラザ、アークランドサカモト、アヤハディオ、イオン九州、エンチョー、カインズ、カーマ、カンセキ、菅文、ケーヨー、コーナン商事、コメリ、サンデー、サンワドー、Jマート、ジュンテンドー、セキチュー、ダイキ、ダイユーエイト、チャンピオン、東急ハンズ、ナフコ、ナンバ、西村ジョイ、ハイエース、服部タイヨー、バロー、ハンズマン、フタガミ、ホーマック、ホームインプルーブメントひろせ、ホームセンターアグロ、ムラウチホビー、メイクマン、山新、ユニー、ユニリビング、ユーホー、LIXIL ビバ、ロイヤルホームセンターである。

   特に、この10月度に伸びている部門は、構成比25.3%を占めるDIY 素材・用品112.5%、構成比5.0%のカルチャー113.3%、構成比2.5%のサービス111.8%、構成比9.9%の電気110.7%であり、この4部門の伸びが顕著である。特に、電気は3/11の東日本大震災以降、異常値となっており、3月度148.7%、4月度123.5%、5月度130.7%、6月度139.2%、7月度134.6%、8月度102.2%、9月度112.7%、そして、10月度 110.7%と、8月度は昨年の猛暑の影響があると思われるが、それ以外は高い伸び率を維持しており、ホームセンター全体を力強く牽引している。また、ホームセンターの中核、DIY素材・用品であるが、3月度113.9%、4月度112.3%、5月度106.9%、6月度111.3%、7月度112.4%、8月度108.2%、9月度114.5%、そして、10月度 112.5%であり、好調である。

   このような追い風を受けて、主要3社の2012年度の中間決算の結果であるが、コメリ営業収益1,601.32億円(6.9%)、 営業利益134.26億円(37.1%)、DCMホールディングス営業収益2,311.24 億円(6.1%)、営業利益143.09億円(49.7%)、アークランドサカモト売上高491.56億円(8.4%)、営業利益49.93億円(42.8%)と、いずれも好調な決算であり、特に、営業利益が異常値となっているのが特徴である。これは小売業界全体の傾向でもあるが、売上げよりも、今期は特に利益が好調であるといえ、ホームセンターはその中でも際立っているといえよう。

   では、営業利益が好調である要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、コメリ67.01%(昨年68.28%)、1.27ポイントの改善、結果、売上総利益は32.99%(昨年31.72%)、DCMホールディングス69.55%(昨年69.72%)、0.17ポイントの改善、結果、売上総利益は30.45%(昨年30.28%)、アークランドサカモト65.84%(昨年66.71%)、0.87ポイントの改善、結果、売上総利益は34.16%(昨年33.29%)となった。

   一方、経費の方であるが、コメリ27.66%(昨年28.23%)、0.57ポイント改善、DCMホールディングス25.21%(昨年26.93%)、1.72ポイント改善、アークランドサカモト23.99%(昨年25.57%)、1.58ポイント改善という結果である。こう見ると、コメリは原価、DCMホールディングスは経費、アークランドサカモトは経費と、改善ポイントが異なるが、いずれも、原価、経費双方が改善して、利益を押し上げていることがわかる。

   結果、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力はコメリ5.33%(昨年3.49%)、DCMホールディングス5.24%(昨年3.35%)、アークランドサカモト10.17%(昨年7.72%)と、いずれも大幅増益となった。また、これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入を加えた営業利益は、コメリ8.66%(昨年6.74%)、DCMホールディングス6.25%(昨年4.43%)、アークランドサカモト10.17%(昨年7.72%)となった。いずれも、大幅増益であり、小売業界の中でも極めて高い収益率である。

   そして、この好調さを受けて、今後の各社の経営戦略であるが、キャッシュフローを見ると、コメリは投資を増加し、攻め、DCMホールディングスは財務を強化し、守り、アークランドサカモトも財務を強化し守りを固めるようである。ちなみに、自己資本比率はコメリ46.0%、DCMホールディングス45.6%、アークランドサカモト59.7%であり、アークランドサカモトは財務基盤が安定している中での、さらに守りの戦略であり、堅実な経営戦略をとっているといえよう。

   このように、ホームセンター業界は、3/11の東日本大震災以降、好調を維持しており、この10月度を見ても、売上げが既存店を含め好調な結果である。また主要3社、コメリ、DCMホールディングス、アークランドサカモトの2012年度の中間決算を見ると、売上げもさることながら、利益が大幅増益であり、しかも、原価、経費双方が改善しており、好調な決算結果となった。おそらく、このまま年末、年始を迎え、通期は例年になく、増収大幅増益の好決算となるものといえよう。ホームセンター業界が、この好調さを受け、来期、どのような経営戦略を打ち出すか、注目である。

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December 10, 2011

メーカーとID-POS分析、何ができるか!

   ID-POSデータは小売業からのみ生まれる販売データであり、現時点では消費者、すなわち、顧客1人1人の購入履歴の把握が可能な唯一のPOSデータであるといえる。通常のPOSデータも顧客への販売データを把握することができるが、あくまでサマリーの数字であり、顧客1人1人の購入履歴にまで踏み込むことはできない。したがって、ID-POSデータをメーカーが小売業から入手することで、これまでのPOSデータでは見えなかった世界、メーカーが開発した商品の購入顧客1人1人の購入履歴を把握でき、その商品の売上構造を顧客面から正確に把握することが可能となる。また、現時点ではあまり精度は高くはないが、顧客の属性をもつかむことができ、どのような顧客が商品を購入しているかがつかめる。さらに、ID-POSデータは顧客が購入している対象商品以外の全商品の購入履歴まで把握することが可能となるので、メーカーが開発した商品と相性の良い商品が何かをつかむことも可能となる。

   このように、ID-POSデータはメーカーにとって、これまでのPOSデータではけっしてつかむことのできなかった3つの大きなメリットがあるといえる。まとめると、1つ目がメーカーが開発した商品の全購入顧客の詳細な購入履歴が把握でき、売上構造を顧客面から捉えることができることである。2つ目がその購入顧客の様々な属性が把握できることである。そして、3つ目が、その商品と相性の良い商品を見つけ出すことができることである。

   では、このID-POSデータの3つのメリットを実践でどう活かすかであるが、まずは最初のメリット、1つ目であるが、商品の全購入顧客の購入履歴が把握できることであるが、これは、これまで、商品の販売促進を考えた場合、商品の売上高の多寡を分析し、売れている時期に商品をさらに売り、売れない時期には何らかの底上げをはかることや、売れている店舗の成功事例を他の店舗へ水平展開したりしてきた。これに対して、ID-POS分析では、その状況も分析するが、それ以上に、売上高の多寡を顧客構造にまで踏み込み、高頻度の購入顧客、低頻度の購入顧客、そして、残りの中頻度の購入顧客に分けてとらえ、販売促進の目的を、商品の顧客構造の変化をもたらし、顧客全体の購入頻度を引き上げることに主眼を置くことになる。

   したがって、ID-POS分析おいては、売上げがあがるとは、商品の数が結果としては増えたり、価格が結果としは改善されたりするが、ここを見るのではなく、顧客1人1人の購入履歴がどのように変化したかを見ることになる。すなわち、高頻度の顧客がどのように変化し、どのくらい増えたのか、低頻度、中頻度の顧客はどう変化したかを読み解き、さらに、新たな商品の購入顧客が増えたのかどうかを見ることになる。そして、この購入顧客の構造変化をもたらすためには何が有効な政策かを、中長期に渡って仮説を立てて検証してゆく、これがID-POS分析の1つ目のメリットである。

   次に、2つ目のメリットであるが、ID-POS分析によって顧客属性を把握できることであるが、これは、現時点では、食品スーパーマーケットのポイントカードの属性把握の精度は必ずしも高いとはいえず、しかも、その情報も限られているのが現状であり、課題が残るメリットではあるが、それでも、傾向値を読み取ることは可能であり、これまでのPOS分析では見ることのできなかった領域に踏み込むことが可能となる。現状、実務的に共通に活用できる顧客の属性は性別、年齢別、住居別、そして、購入ランク別までのデータであるといえるが、これらをID-POS分析で見ることにより、メーカーの開発した商品のコアの顧客や何らかの販売促進において、強く反応した顧客などの把握が可能となる。当然、これは今後の商品開発や、販売促進の改善にもつながってゆくことになろう。また、一方でメーカーはマーケティング調査を様々な角度から実施しており、その調査データとID-POS分析結果を比較することにより、精度の高いマーケティング調査データができあがるといえよう。

   そして、3つ目のメリットが、相性の良い商品を見つけ出すことであるが、これは、これまでのPOS分析でも同時購入をしている相性の良い商品を分析することはできたが、その同時購入をしている顧客がどのような顧客か、さらには、その顧客がその後その商品を購入しているのか、過去はどうであったか、また、同時購入はしていないが、ある期間の中では購入しているかなどにまで踏み込むことができ、幅広く相性の良い商品を探し出すことができると同時に、その顧客の購入状況をもつかむことができる。商品の動きだけではなく、顧客面から商品の相性を見極めることが可能となることがメリットといえる。これによって、商品ごとの顧客層を把握することができ、重なっているのか、独立しているのか、その程度はどのくらいかがわかり、次の販売促進につながる。特に、最近はやりのクロスマーチャンダイジング戦略には必須の分析といえよう。

   このように、メーカーから、ID-POS分析を見た場合、大きく、3つのメリットがあるといえ、これら3つのメリットを享受するためにも、小売業から可能な限り、長期かつ継続的なID-POSデータを入手し、新たな商品開発、そして、今後の販売促進につなげてゆくことが、メーカーにとってのID-POS分析のメリットといえよう。この3つのメリットはいずれも、これまでのPOS分析では踏み込むことができなかった領域であり、メーカーとしては、ここまで踏み込み、小売業とのID-POS分析での協働研究を通じて、商品の活性化をはかって欲しいところだ。

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December 09, 2011

オークワ、5000億円、Chain Store Ageで特集!

   Chain Store Age、12/1号で和歌山の食品スーパーマーケット、オークワの特集が組まれた。タイトルは、「オークワ、スーパーリージョナルチェーンの5000億円構想」である。オークワの中期構想、2018年2月期、年商5000億円について取り上げたレポートであり、いよいよ、食品スーパーマーケット業界も年商5000億円の時代に突入することになろう。現在、食品スーパーマーケット業界では、2011年度本決算で年商5000億円を超えているのは広島のイズミのみである。これについで、年商3000億円を超える上場食品スーパーマーケットはライフコーポレーション、平和堂、バロー、イズミヤ、ヨークベニマル(セブン&アイH)、マルエツ、フジ、アークスであり、オークワは2,899.59億円と、わずかに3000億円を下回るが、ほぼ3000億円といえる。

   したがって、今後、数年の間に年商5000億円の食品スーパーマーケットが次々に誕生することになろう。そのポイントは、Chain Store Ageのタイトルにもあるように、「スーパーリージョナル」であるといえる。上記、3000億円クラスの食品スーパーマーケットはいずれも1エリアではなく、数エリアへのドミナント展開に積極的であり、中でも、ライフコーポレーションは首都圏と近畿圏、アークスは今期ユニバースを経営統合したことにより、北海道と東北という広域エリアでの展開もはたしている。オークワも地元は和歌山県であるが、近畿、そして、ここ最近は東海を第2のドミナントエリアとして本格展開が始まっており、年商5000億円の鍵を握るのは「スーパーリージョナル」というキーワードといえよう。

   さて、Chain Store Age、12/1の記事の内容であるが、大きく2つに分かれての6ページに渡る特集記事である。ひとつはオークワの成長のエンジンともいえるスーパーセンターについての現状、そして、もうひとつが、今回のタイトルとなったオークワの中長期経営計画についてである。ここでは、まず、この5000億円構想について見てみたい。記事でも言及しているが、2018年2月期に年商5000億円を達成するには、今後約6年で2000億円の増収が必須となる。そして、そのためには、オークワの平均店舗当たりの売上高が約20億円であるので、100店舗の新規出店、ないしはM&Aが必要といえる。

   記事の中では言及していないが、オークワの2011年度の本決算を見ると、オークワの新規出店関連への投資は48.31億円であり、1店舗当たりの平均的な出店にかかわる資産は6.16億円であるので、7.8店舗、約8店舗である。したがって、これを今後、6年間続けた場合は、48店舗となるので、目標の半分となり、このペースでは目標達成は難しいといえよう。したがって、どこかで成長戦略に経営資源を集中させるか、年商1000億円クラスの食品スーパーマーケットのM&Aが必要となろう。実際、記事の中では、「売上高2000億円の上積みをオークワは、1500億円強を単独で、600億円から700億円をM&Aでクリアする考えだ。」とのことで、財務内容を裏付けるコメントである。

   ちなみに、2011年度の投資活動によるキャッシュフローへの営業活動によるキャッシュフローの配分比率は40.3%であるので、イズミの67.6%、平和堂の88.9%、バローの71.0%よりも低い。一方、自己資本比率も56.4%と安定しているので、投資余力は十分といえ、どこかで、成長戦略に舵を切り、同時にM&Aへの投資に踏み切ることも十分に考えられる財務状況である。

   では、成長戦略のエリアをどこに置くかであるが、記事の中では、小見出しで「岐阜県を中心に東海圏を攻める」とのことで、東海圏へこれまで以上の投資が成されることになるといえよう。現時点でも、記事の中でも言及されているが、2007年のオークワ愛西プラザ店の開業を機に、翌年、名鉄パレを傘下に治め、2011年にはフードセンター富田屋と業務提携し、2013年度には在庫型物流センターとプロセスセンターを新たに開設するとのことで、結果、売上規模が約720億円になり、このエリアでの1000億円達成が視野に入ったとのことである。

   そして、もうひとつの記事の内容、スーパーセンターについてであるが、小見出しを追ってみると、「スーパーセンターオークワ橋本店開業」、「SuCの売上構成比15%超」、「ターニングポイントになった南紀店」、そして、「3年後には20店舗、売上高600億円」である。また、記事の中で現状のオークワのスーパーセンター13店舗の一覧表が掲載されているが、小見出しにもある南紀店のみ76億円と突出しているが、その他の12店舗はほぼ30億円であり、スーパーセンターという業態が安定し、確立されたといえ、今後の成長戦略を担う戦略業態となったといえよう。

   このように、このChain Store Ageの記事を読む限り、オークワが成長戦略に軸足を移したといえ、タイトルにもあるようにスーパーリージョナルチェーンとして、地元、和歌山県、そして、近畿圏に加え、新たな成長戦略の拠点として、岐阜県を中心に東海圏がまさにスーパーリージョナルの拠点なりつうあるといえるよう。そして、その成長のエンジンともなる戦略業態であるスーパーセンターが軌道に乗り始めたといえる。現時点ではまだ静かな動きであるが、来期以降、オークワがいつギアチェンジするか、そして、同様に3000億円クラスの食品スーパーマーケットがどう動くかが注目である。今後、数年以内に、食品スーパーマーケット業界はM&Aを含めた「スーパーリージョナル」をキーワードに、新たな成長戦略の時代に入るのではないかと思われる。

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December 08, 2011

ちらし、POPを科学する!

   ちらし、POPは食品スーパーマーケットにとって販売促進の最大の武器であり、各社各様、様々なノウハウが開発され、実践されてきた。ところが、その効果を測定する方法は意外なほど開発が進んでいない。その要因はその目的が当然のことではあるが、客数アップ、すなわち、集客にあり、ついで、売上げアップにあったからであるといえる。この2つを追い求めると、自然、売上高=客数×客単価になり、ちらし、POPの目的が客数が上がったか、または、客単価を必要以上に落とさずに、客数アップとなり、売上高もアップしたのかが問われ、そこで、終わってしまい、次の展開が難しくなる。

   この方程式をさらに、売上高=客数×PI値×平均単価、あるいは、ここにID客数を導入し、売上高=ID客数×ID金額PI値=ID客数×ID客数PI値×PI値×平均単価と3D分析、4D分析に入ったとしても、これは商品の販売にかかわる指標であるので、商品の動きが変わったか、否かを見ており、ちらし、あるいは、POPが評価されているわけではないといえる。

   本来、ちらしもPOPも、それそのものは売上げには直接関係はなく、商品を引き立てる間接的な役割であり、いかに商品を引き立てているかを評価しなければならないはずであるが、それが、商品を通じた客数、ないしは、売上げで評価されると、そこには大きなズレが生じる。このズレを解消しない限り、ちらしとPOPはいつまでも正当な評価が得られず、結果、確かに、これまで様々なノウハウが開発されてきたが、今後の発展、新たなノウハウ開発にはつながりにくいのではないかと思われる。

   では、どうしたらよいか。その答えは、ちらしに載った商品、POPを貼った商品の客数、売上げでちらし、POPを評価するのではなく、ちらし、POPそのものを評価するような評価指標を開発し、その指標にもとづき、ちらし、POPを改善してゆくことにあるといえよう。

   その評価指標とは何か、現時点では、客数、売上げではなく、時間での評価がふさわしいように思える。顧客の時間をいかに獲得するか、これを、ちらし、POPの新たな評価指標とすることにより、特に売上げとは一線を画した評価が可能となるからである。そもそも、ちらし、POPは商品ではなく、商品を顧客に伝える媒体であり、媒体の評価は売上げではなく、時間の方がふさわしいように思える。ただ、現状の食品スーパーマーケットでは、この時間を正確にはかる仕組みはないが、理論の構築は可能であり、仮説を作ることは、検証が不十分とはなるが、可能である。また、ここ最近は食品スーパーマーケットがWEBを活用してネットスーパーを併設するケースが増えているので、このWEBでは時間を正確にはかることが可能であり、このWEBを解析して、現状のちらし、POPに応用することは、すぐにでも可能である。

   ちなみに、ネットスーパーは、今後、ID-POS分析の時代になると、同じ会員カードを使い、ポイント、キャッシュバックなどの特典もつけることが可能となるので、実際の店舗と顧客IDで融合され、同時にID-POS分析を実施することが可能となる。時代とともに、ネットスーパーの売上げ構成比も増え、顧客によっては店舗よりも、ネットスーパーの方が利用割合が高まることもあるといえ、ネットスーパーの役割は、食品スーパーマーケットにとっては、ますます重要になってゆくことになろう。そうなれば、ちらし、POPもネットスーパーから時間測定が類推できるようになり、より、時間の測定精度が増してゆくと思われる。

   さて、時間の理論、基本方程式であるが、ID-POS分析の基本方程式を応用することによって、次のように、時間を分解することが可能となる。時間=ID客数×ID-TI値=ID客数×ID客数PI値×PI値×平均時間である。ここで、ID-POS分析では平均時間の代わりに、平均単価を入れており、価格を掘り下げるか、時間を掘り下げるかの違いである。また、この数式から、ID-TI値=ID客数PI値×PI値×平均時間となる。

   この方程式の意味するところであるが、時間とは、大きく4つ、すなわち、ID-POS分析同様、4Dで分析ができ、4つの角度から顧客の時間最大をめざすことがポイントであるということになる。すなわち、ちらし、POPを見る顧客を増やすこと、その顧客当たりのちらし、POPを見る時間(ID-TI値)を増やすことである。そして、そのためには、3つのポイントがあり、まずは、ちらし、POPを見る頻度(ID客数PI値)を増やす、すなわち、何度も見てもらえるちらし、POPをつくることである。次に、ちらし、POPの注目度(PI値)を引き上げること、すなわち、価格が最も大きい要素であるが、これ以外にも写真(動画)、キャッチコピー、色、文字の大きさ、書体などを工夫することも重要である。そして、最後が、ちらし、POPを見る時間(平均時間)を増やす、すなわち、商品の説明、メニュー提案、産地の表示など、顧客が欲しい、知りたい情報をふんだんに提供することである。

   おそらく、この3つは数値、そして、概念として意識してはいなかったとは思うが、ちらし、POPをつくる時は自然、無意識に検討し、実践してきたことではあると思うが、実際、時間を科学すると、このような方程式ができあがり、3つのポイントがクローズアップされる。実際のちらし、POPで、これらを正確に測定することは難しいが、WEBでは正確に測定できるので、ネットスーパーを併設しているのであれば、是非トライし、リアルの店舗に応用して欲しいところだ。また、実際にこのような数値が測定できなくとも、理論としては成立しているので、仮説をつくり、取り組むことは可能であるので、この3つのポイントを意識してちらし、POPづくりに取り組むと、高い効果が期待できよう。

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December 07, 2011

PB、本格成長の時代へ突入か?

   ここへ来て、大手小売業、食品スーパーマーケットがPBの拡充に入り始めた。12/3の日経新聞に「PB「高級」「格安」幅広く」という見出しで、大手小売業がPBの品揃えの幅を広げるとの記事が掲載された。小見出しは、「イオン、「半額品」800品目へ」、「セブン&アイ、高価格品、5倍に」、「メーカーの戦略左右、PB受託生産、成長の糧」であり、大手小売業、食品スーパーマーケットがPBの拡充に入るとの内容である。また、12/5の日経流通では、バローの社長、田代正美氏のインタビューが掲載されているが、その中で、写真入りで「度肝を抜く低価格」18円のPBの豆腐が取り上げられており、バローもPBをさらに強化してゆくとのことである。

   本来、PBはインフレ時にディスカウント価格として登場し、NBとの価格差で存在感を際立たせるのが基本戦略であるが、現在は、中長期的にデフレが進行しているにもかかわらず、大手小売業、食品スーパーマーケットがPB開発に力を入れているのが実情である。その理由の一端が、12/5の日経新聞の1面トップ記事に掲載されている。見出しは、「デフレ経済、実感とズレ」であり、小見出しは「食品など必需品値上げ」、「テレビなど大幅値下げ」、「物価が「二極化」」である。

   記事の中では財・サービス別の消費者物価の図が掲載されているが、これを見ると、家電などの耐久消費財の1997年を100とした場合、右下がりに直線上に急角度で下がっており、さらに、衣料などの半耐久消費財もなだらかな下げが見られる。これに対して、食品、ガソリンなどの非耐久消費財はむしろ上昇傾向が見られるのが実態である。また、サービスもほぼ同じ傾向で上昇傾向が見られ、消費者物価はまさに2極化しているのが実態といえる。さらに、これを裏づけるように、記事の中では、内閣府の10月の消費動向調査で、消費者が1年後の物価見通しは「上昇する」との回答が69.5%と大半を占めたとのことである。消費者の感覚はデフレではなく、インフレであるといえ、実際、消費者物価指数も、こと非耐久消費財(食品、ガソリン等)ではその傾向を示している。

   したがって、消費者と直接接している大手小売業、食品スーパーマーケットが消費者の意識を感じ取り、PBの拡充に動くのもうなづける話である。また、セブン&アイが高価格品のPBに力を入れるのも理に適っており、全体としてデフレ傾向が鮮明であるので、このような状況下では付加価値の高い商品を強化することで、平均単価を引き上げ、金額PI値を維持しようとする政策が課題となる。その意味で、高価格品をPB化することにより、全体の平均単価を引き上げることにつながり、デフレとインフレ双方に配慮した政策といえ、絶妙なタイミングでのPB戦略といえよう。

   さて、大手小売業、イオンとセブン&アイのPB戦略であるが、日経新聞によれば、「イオンはメーカー品より5割前後安く、主力PB「トップバリュ」より低価格の「ベストプライスbyトップバリュ」の品目数を、来年3月までに現在の約300から800にする。」という。また、「通常、PBはどの店も価格は一律だが、ベストプライスは店ごとの判断で価格を変更する。競合店の動向を見ながら値下げし集客力を高める。」とのことである。さらに、「一方で食材や産地にこだわった「トップバリュセレクト」も2014年2月までに現在の5倍の500品目に増やす。」とのことであり、価格よりも価値を重視したPBの強化も同時に行うという。

   一方、セブン&アイであるが、「高価格品PB「セブンゴールド」を13年2月までに30品目に拡充する。」という。このセブンゴールドは「主力PB「セブンプレミアム」より価格が2倍以上高いが、高品質の原料や高級レストランの調理方法を取り入れたのが特徴。」そして、「セブン-イレブン・ジャパンやイトーヨーカ堂が販売し、数億円にとどまるゴールドの売上高を14年2月期に100億円以上に伸ばす。」とのことである。

   また、この記事の中では、ヤオコーが冷食PBを4倍の80品目に拡充、日本生活協同組合連合会も主力PBより1から2割安い「コープベーシック」を1割増の280品目に増やすとのことであり、大手小売業だけでなく、食品スーパーマーケットもPBの拡充に入る動きが見られるという。さらに、記事の中では、これらのPBを受託生産するメーカーが増えているとのことで、中には、これを糧に急成長しているメーカーもあるという。

   このように、本来デフレ化では価格そのものが下がってゆくので、PBとNBとの価格差が縮まり、PBの存在価値が薄れるところであるが、実際のPBの動向はむしろ逆、より、大手小売業、食品スーパーマーケットがPB戦略を拡充しはじめているといえる。その背景には、先に見たように、耐久消費財(家電等)、半耐久消費財(衣料等)に対し、非耐久消費財(食品、ガソリン等)が正反対の動きをしており、食品はデフレよりもインフレ傾向を示していることが大きいといえよう。したがって、経済全体はデフレ基調で進むものと思われるが、こと食品はむしろインフレ気味で推移する可能性が高いといえ、ここにPBが注目される理由があり、今後、食品スーパーマーケットとしては再び価格競争の激化が予想されるといえよう。

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December 06, 2011

リフト値を科学する!

   リフト値はID-POS分析の世界では広く使われている指標であるが、意外に、その本質は未解明な部分が多い。そもそも、その発祥段階がID-POS分析ではなく、通常のPOS分析であることもあり、ID-POS分析でのリフト値との区別がつかなくなり、混同されている点もあると思われる。そこで、ここでは、ID-POS分析の観点から、改めてリフト値を再検討し、その本質を掘り下げてみたい。結論からいえば、従来のリフト値はID-POS分析のリフト値にすべて包み込まれる関係にあり、リフト値の本質を理解するには、ID-POS分析のリフト値を理解することが先決である。

   リフト値がID-POS分析以前に活用された要因は、データウェアハウスの時代が先に到来したためであるといえる。時期は1990年代、いまから約20年前ぐらいとなるが、この頃、ウォルマートが本格的にデータウェアハウスの導入に踏み切り、膨大なPOSデータの分析に着手する。その大量データ分析の一環として、併売分析なども行われ、あの伝説ともなった「ビールとオムツ」の話が生れることになるが、これが恐らく、リフト値が小売業で注目される最初のキッカケといえよう。もちろん、この時代にID-POS分析が本格化していたわけではなく、ウォルマートはいまでも、本格的なID-POS分析はしていないので、ID-POS分析のリフト値ではなく、通常のPOS分析のリフト値、すなわち、レシートのリフト値であるといえる。

   では、レシートのリフト値とIDのリフト値とはどう違うかであるが、すべての分析をID客数で見るか、レシート客数で見るかの違いである。さらに、リフト値は双方から分析することにより、新たなリフト値が生れる。通常リフト値というと、併売分析をもとに同時購買のリフト値を算出するが、この時点でレシートのリフト値が前提となっている。なぜなら、同時購買は1つのレシートに同時に対象商品と関連商品が入っているレシートのことであり、ID客数では把握できない分析であるからである。ID客数では、レシートにかかわらず、購入全レシートの全購入商品を見るために、同時購買されているかどうかは判断がつかないからである。したがって、ID客数では、同時併売も含む、期間併売が分析対象となる。一方、レシート客数では、期間併売がID客数が把握できないため、判別が不能であり、レシート客数からは、期間併売が全く把握できない。

   したがって、同時併売と期間併売はレシート客数とID客数、双方の分析を通じて得られる指標であるといえ、あい補い合う関係にあるといえる。そして、この2つのリフト値を分析することで、双方のリフト値に同時購入の場合のリフト値、期間購入の場合のリフト値の2つのリフト値、合計、4つのリフト値を算出することが可能となる。これが、ID-POS分析時代のリフト値であり、この4つのリフト値は、ID客数だけからでも、レシート客数だけからでも算出することはできず、双方があいまってはじめて算出される、まさに、ID-POS分析ならではのリフト値といえる。

   そして、リフト値は、これで終わらない。まだ先がある。売上金額、売上数量への拡張である。これは、レシートの中身をさらに掘り下げ、対象商品、関連商品の売上金額、売上数量の同時併売、期間併売の数値を算出し、そのリフト値を算出することである。これにより、ID客数のリフト値2つ、レシート客数のリフト値2つに加え、売上金額のリフト値2つ、売上数量のリフト値2つが算出でき、合計8つのリフト値が算出される。

   では、ここから何をリフト値に期待するかであるが、従来のPOS分析ではリフト、すなわち、対象商品を持ちあげるために、どの関連商品が最も効果があるかを見ているが、何を持ち上げるかが不明確であった。それが、ID客数のリフト値により、顧客IDを増やす商品の選定、レシート客数のリフト値により、購入回数を増やす商品の選定、同様に、売上金額を増やす商品の選定、売上数量を増やす商品の選定へと、何がを特定できることになる。また、同時か期間かが判別でき、同時購入していない関連商品でも期間購入している商品であるかもしれず、同時購入だけでは見えない領域をもマーチャンダイジングの対象とすることができる。

   さらに、これをID客数の属性、すなわち、性別、年齢、顧客ランクなどに分割すると、関連商品との関係を掘り下げることが可能となり、特に、Sランクの顧客のみのリフト値を算出することにより、A、B顧客と明らかに有意差があれば、S顧客特有のマーチャンダイジング戦略を構築することもできる。

   このように、リフト値はまだまだID-POS分析の中でも研究開発が未開拓の分野であるといえ、基本は同時、期間の2つであるが、これが、ID-POS分析になると、ID客数、レシート客数、売上金額、売上数量の4つに分かれ、2×4=8個となる。さらに、これがIDの属性にまで踏み込めば、2倍、3倍と増えてゆくので、いくらでも、自由にリフト値をつくり上げることができ、それぞれのリフト値を応用したマーチャンダイジング戦略をつくることが可能となる。また、ここでは言及しないが、通常リフト値は割って算出する指標であるが、これを引き算で算出するリフト値もあり、単に深めるだけでなく、次元の違うリフト値をつくることもでき、リフト値は今後、ID-POS分析の新たな研究領域を広げ、新たなマーチャンダイジング戦略をつくってゆくことになろう。

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December 05, 2011

RDS-POS、協働MD研究委員会、経過速報!

   12/1、(財)流通システム開発センター主催、RDS(全国地域POSデータ)を活用した小売業側のマーチャンダイジング研究委員会の第2回目が終了した。この委員会は、今期は私が委員長をさせていただき、RDS-POSデータを最新のMD評価表に落とし、実際に食品スーパーマーケットでどのようにRDS-POSデータを実践的に活用できるかを見極めることが課題となる。そして、来期はその研究成果を活かし、現在RDSに参加している約400店舗の食品スーパーマーケットにWEBを通じて、無償で最新のMD評価表を提供し、日々のマーチャンダイジング、特に、現場の方の営業活動に役立てていたくことを目的としている。ちなみに、RDSへの食品スーパーマーケットの入会は無料であり、全国、企業規模に関係なく、1店舗から参加可能であり、現時点でもPOSデータをRDSに送信すれば、その地域のPOSデータと自店のPOSデータとの比較が、WEBで可能である。現時点でも、最新のMD評価表ではないが、客数PI値、金額PI値、PI値、平均単価で比較可能である。

   今回の協働MD研究委員会の正式委員は、RDSに加盟している食品スーパーマーケットを中心に構成されており、東北から1社、首都圏から1社、近畿から1社の3社の食品スーパーマーケットが中核となり、これにIT、システム開発、コンサルティング会社などが加わっている。また、オブザーバーとして、RDSを支えているIT企業、RDSのデータをメーカーに販売している企業、そして、食品スーパーマーケットの業界誌も参加しており、総勢約20名となる。来春には、今回の委員会での研究成果を報告書に取りまとめる予定である。その後、まずは、現在の約400店舗の食品スーパーマーケットの方に最新のMD評価表をWEBでお使いいただき、随時、新たな参加企業を募ってゆく予定である。

   前回、第1回目の研究委員会は10/5に開催されたが、この時は、初回ということでもあり、食品スーパーマーケットがRDS-POSデータをどう最新のMD評価表を通じて活用するか、また、どのようなカテゴリーから協働MD研究をはじめるか、今後、どのように現場での活用を行ってゆくかなどであり、具体的な協働MD研究にまでは踏み込めなかった。

   これに対して、今回、第2回目は前回決定した研究課題カテゴリーに、実際のRDS-POSデータをもとに各委員の食品スーパーマーケットが取り組んでいただき、さらに、その売場写真も研究課題に加えたので、直近のRDS-POSデータと迫力満点のアップでの各カテゴリーの売場のカラー写真が連動した、まさに、協働マーチャンダイジングの研究会となり、現場の生々しいやりとりが交わされ、臨場感のある研究委員会となった。各委員の食品スーパーマーケットはRDS-POSを通じて、自店と地域とのPOSデータを比較検討するだけでなく、この研究委員会で、東北地区、首都圏、近畿地区のRDS-POSデータをも比較検討し、さらに、各地区の店舗の売場写真もお互いに比較しあい、加えて、参加メンバー間の議論がなされ、2重、3重、4重のRDS-POSデータの活用につながったといえる。

   あとは、これを各食品スーパーマーケットが、現場に持ち帰り、現場でRDS-POSデータを実践活用できるかが、今回の協働MD研究委員会の目的であり、次回までの課題といえる。RDS-POSデータは食品スーパーマーケットとしては、本部が活用することはもちろんであるが、それ以上に、1店舗1店舗の現場担当者が活用することが、さらに重要なポイントであり、今回は、そこに照準を合わせている。

   さて、研究課題カテゴリーであるが、菓子パン、ヨーグルト、カップ麺、スナック、豆腐、牛乳、加工肉であり、これに、参考カテゴリーとして、生鮮食品から、その他農産、そして、つゆ、焼酎(乙類)が加わり、このカテゴリーの自店のPOSデータとRDS-POSデータを最新のMD評価表で、客数PI値、金額PI値、PI値、平均単価、そして、SKU数で比較し、合わせて、実際の売場の写真と連動しながら、議論してゆくという流れが、今回、できあがったといえる。次回は、今期、最後となるが、今回の2回目、全参加メンバーで議論した内容を踏まえ、委員である東北、首都圏、近畿の食品スーパーマーケットがどこまで現場に落とし込み、結果、その数字がどのように変化したかを、RDS-POSデータと改善後の売場写真で検証する予定である。

   今回、研究委員会を通じて、改めて感じたことであるが、現場のマーチャンダイジングの理解を深めるには、数字だけの検証ではなく、写真、すなわち、イメージを連動させることが、いかに重要かがわかった。しかも、映像は小さくてはだめであり、カラーで可能な限り、大きく、鮮明なものが良いといえる。今回も、写真はパワーポイント1枚に写真1枚としており、これとRDS-POSデータを同時に見ることによって、各委員、オブザーバーの方からも様々な意見がもらえ、食品スーパーマーケットの各委員もすぐに改善できる課題、中長期的に改善すべき課題が鮮明になったのではないかと思う。

   このように、第2回目のサプライチェーン、協働MD研究委員会が無事終了し、残すところ、あと1回となったが、何とか、最新のMD評価表も食品スーパーマーケットの現場で実践的な活用が可能であるようであり、これに迫力のある売場写真が加わることにより、より、現場での実践活用が進んでゆくのではないかと思う。また、参加しているIT企業では、今後、このシステム開発を本格的に進め、いずれ、RDS加盟約400店舗でのWEBでの閲覧が可能なような仕組みを作ってゆくことになろうが、これまで、最新のMD評価表がうまく動き、実際、東北、首都圏、近畿の食品スーパーマーケットの各委員が活用できはじめているので、この点も乗り切れるのではないかと思う。次回の委員会は3月の予定であるが、食品スーパーマーケットの各委員が、RDS-POSデータを現場にしっかり落とし込み、数字が改善していることを期待したい。

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December 04, 2011

クロスマーチャンダイジングを考えてみる!

   ここ最近、食品スーパーマーケットの新たなマーチャンダイジング戦略のひとつとして、クロスマーチャンダイジングが定着しつつある。これは食品スーパーマーケット側だけの動きではなく、メーカー側も企業の枠を超えて、連携がはじまり、共同で食品スーパーマーケットへ提案することがはじまったことにもよる。今後、これに、食品スーパーマーケット側からID-POSデータがメーカー側に提供され、生鮮食品、惣菜等がクロスマーチャンダイジングに加われば、強力なマーチャンダイジング戦略の構築につながる可能性を秘めているといえよう。

   ちょうど、12/2の日経流通新聞にクロスマーチャンダイジングの記事が掲載されている。これを見ると、今年の冬は鍋をキーにクロスマーチャンダイジングが全国的に展開されるようである。記事の見出しは、「クロスMD、冬の「家ナカ」に的」、「メルシャン、ワインと鍋提案」、「サントリー、ミツカンと連携」であり、本格的に、この冬、鍋商材を通じたクロスマーチャンダイジングを展開するとのことである。特に、今年は、3/11の東日本大震災という大惨事があったことにもより、「絆」需要を掘り起こすことが、クロスマーチャンダイジングをよりクローズアップさせているという。

   記事の内容を見ると、まず、メルシャンであるが、昨年もこの時期にワインとカレー鍋、トマト鍋との好相性をうたい同時陳列をし始めたとのことで、今年は昨年の3.5倍に対象店舗数を増やすとのことである。特に、メルシャンの主力商品である「「フロンテラ」、「フランジア」といった約15種類のブランドのワインを販促対象に設定。」とのことで、これをもとに、「甘口や辛口など味わいが豊富なワインが、和・洋・中でバリエーションが広がっている鍋料理に合わせやすい点をアピールし、家庭内需要の拡大を図る。」とのことである。

   一方、サントリーは、「金麦」がクロスマーチャンダイジングの中核商品となるとのことで、クロスマーチャンダイジングのための販促費を昨年より1割増やしたとのことである。特に、サントリーは、「金麦で、鍋料理に使われる酢じょうゆのミツカンと連携。全国のスーパー約4000店舗で、鍋料理との組み合わせを提案する。」とのことである。「もともと金麦は家族だんらんの場で飲むコンセプトで開発した商品。」とのことで、サントリーとしては、「鍋を囲んで絆を確かめ合うケースも増える。」との読みがあるとのことである。「出荷数量は2000万ケースと例年にないペースで売れていることから、販促費を上積みして販促拡大を狙う。」とのことである。

   また、見出しにはないが、記事の中ではキリンビールのクロスマーチャンダイジングについても触れている。「キリンビールが照準を合わせるのは12月に多く開かれるホームパーティ。江崎グリコと初の共同販促に乗り出し、ウイスキーと菓子の組み合わせを提案する。」とのことである。「スーパー数百店の酒類売り場や催事場に共同販促コーナーを設置。「富士山麓」などのウイスキーで、江崎グリコ「ポッキー」との組み合わせを訴求する。」とのことである。

   こう見ると、今年の冬は、メルシャン、サントリーを軸に、ミツカン、江崎グリコが加わり、様々なクロスマーチャンダイジングが全国の食品スーパーマーケットで展開されるといえよう。一方で、食品スーパーマーケット側も生鮮食品、豆腐、こんにゃく、ちくわ、かまぼこ、牛乳、チーズなどの日配食品を中心に独自にクロスマーチャンダイジングが進んでいる。特に、生鮮食品の野菜、果物、牛肉、豚肉、鶏肉、鮮魚では様々なクロスマーチャンダイジングの展開がなされているのが実態である。

   したがって、今後、食品スーパーマーケット側がID-POSデータをクロスマーチャンダイジングの検証指標として活用、公開が進んでゆけば、クロスマーチャンダイジングの精度が上がり、きめ細かい対応が可能となり、あらゆるメーカーを巻き込んでのクロスマーチャンダイジングの展開も可能となろう。特に、ID-POS分析特有の指標のひとつIDリフト値を活用すれば、同時購買だけでなく、期間併売もリフト値で確認でき、クロスした商品同士の相性が正確に把握でき、次のクロスマーチャンダイジングの展開につながってゆくことになる。

   このように、クロスマーチャンダイジングは今年の冬、例年になく、メーカー各社が本腰を入れて食品スーパーマーケットに提案がなされ、この年末は、日本全国の食品スーパーマーケットの売場がクロスマーチャンダイジングの実践の場と化すのではないかと思われる。食品スーパーマーケットとしても、これに生鮮食品、惣菜、日配食品をいかにからめ、さらに強力なクロスマーチャンダイジングを実践できるかが、問われている年末であるともいえる。そして、そのためにも、ID-POS分析ができる環境にある食品スーパーマーケットは、今回のクロスマーチャンダイジングの結果をしっかり分析し、来期のマーチャンダイジング戦略に活かして欲しいところだ。

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December 03, 2011

Chain Store Age、12/1、ゼナのPOS分析を投稿!

   Chain Store Ageの最新、12/1号へ、ゼナのPOS分析記事を投稿した。表紙の裏側全面2ページの内容である。私の担当はゼナを中心に、滋養強壮剤のPOS分析とその解説記事であるが、これ以外にも、ここでは、鹿児島のタイヨー、朝仁店と浦上店のゼナのマーチャンダイジング戦略も取り上げられており、興味深い内容である。ゼナは、食品スーパーマーケットの滋養強壮剤の中ではml単価が極めて高く、付加価値アップの典型的な商品であり、しかも、金額PI値も高く、売上げへの貢献も期待できる商品である。

   まずは、ゼナのPOS分析結果であるが、今回は、健康飲料のカテゴリーではなく、滋養強壮剤のカテゴリーを分析対象とした。正確には指定医薬部外品となり、ここ最近、食品スーパーマーケットでもマーチャンダイジングの強化が進みつつあるカテゴリーである。滋養強壮剤のPOS分析にあたっては、通常の商品の分析と違い、マーチャンダイジングの質をいかに組み込むかが課題となる。今回は、その指標として、ml単価を参考指標とした。ちなみに、ml単価が活躍する食品スーパーマーケットのカテゴリーは、この滋養強壮剤とワインである。この2つのカテゴリーは、マーチャンダイジングの量が問われるだけでなく、それ以上に質が問われるといえ、いかに、マーチャンダイジングの質に着目するかが課題となる。

   そのml単価であるが、今回の滋養強壮剤のPOS分析にはゼナが2種類、ゼナF0-Iα50mlとゼナF0-ジンジャー50mlが分析対象となったが、前者がml単価9.4円、後者が10.9円であり、ほぼml単価10円の商品である。リポビタンDがml単価1.3円であるので、いかに、ゼナのml単価が高い数字であるかがわかる。今回のPOS分析では、滋養強壮剤の金額PI扱店ベスト12品の一覧表を紙面に掲載したが、ゼナについで高いml単価の商品はml単価4.4円のアルフェネオ50mlであり、その次がml単価3.8円のリポビタンこども50mlである。同じ、リポビタンでも、子供用の方がml単価が高めである。したがって、ml単価10円がいかに高いかがわかり、ゼナのマーチャンダイジングの成否は、まさに、マーチャンダイジングの質を高めるといっても過言ではない。

   このゼナの投稿記事の見出しも「「ゼナ」シリーズ、滋養強壮剤で存在感」、「店格アップの決め手に!」、「高額箱入りドリンク剤カテゴリーの活性化戦略」であり、まさに、マーチャンダイジングの質を高めることにより、店格アップが図れるという見出しにした。ワインも同様に店格アップが図れる商品であるといえるが、この両者はml単価の高い商品をいかにマーチャンダイジング戦略に組み込むかが課題となる。ちなみに、ゼナの平均単価はゼナF0-Iα50mlが471.4円、ゼナF0-ジンジャー50mlが544.2円であるので、食品スーパーマーケットの全商品の平均単価200円弱の2倍以上であり、ゼナはml単価だけでなく、平均単価アップもはかれる商品であるといえる。

   特に、現在、食品スーパーマーケットを取り巻く経営環境は厳しく、デフレが長期間継続し、当面続きそうであり、来期も厳しいといえよう。したがって、デフレの時の最大のマーチャンダイジングのテーマは、PI値よりも、平均単価アップが決め手となり、平均単価アップ戦略がマーチャンダイジングの課題となる。そして、そのためには、価格を上げることではなく、平均単価の高い商品のPI値を引き上げることであり、これがデフレ時代の最大の課題といえる。その意味で、ゼナはマーチャンダイジングの質を高め、店格アップをはかるだけでなく、平均単価を引き上げる典型的な商品であるともいえる。

   実際、今回の紙面では、鹿児島のタイヨー、2店舗のゼナのマーチャンダイジング事例が取り上げられているが、共通したマーチャンダイジング戦略は多箇所展開であり、冷蔵ケース、レジ脇、催事コーナーなどでゼナを展開している。さらにクロスマーチャンダイジングも検討しているという。この多箇所展開はまさに、客数PI値の高い場所で平均単価の高い商品を展開し、そのPI値を引き上げるマーチャンダイジング戦略であるといえ、理に適った手法であるといえよう。記事で取り上げられたタイヨー朝仁店は、この多箇所展開をマーチャンダイジング戦略の基本に据え、日本一を目指すという。

   ただ、今回、この滋養強壮剤のPOS分析を通じて、特に気になった点もある。滋養強壮剤のそれぞれの単品の客数PI値が全体的に10%から15%、高くても30%強であり、まだまだ、食品スーパーマーケットでの認知度が低いことである。このPOS分析は全国約400店舗の2010年8月から2011年7月までの丸1年間の分析結果であるので、大部分の店舗でゼナをはじめ、滋養強壮剤のマーチャンダイジングが確立できていないという結果であり、食品スーパーマーケットとしはもったいない取りこぼしといえよう。今回、この記事とPOS分析結果をもとに、滋養強壮剤のマーチャンダイジング戦略を検討して欲しいところだ。店格がアップするだけでなく、デフレ対策のマーチャンダイジングにも寄与するものといえ、トライする価値は高いといえよう。

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December 02, 2011

家計調査データ、2011年10月、たばこ異常値!

    2011年10月度の家計調査データが、11/29、総務省統計局から公表された。結果は、外食を除く食品は1,940.68円(99.3%)と、若干昨年を下回った。消費支出全体は9,213.06円(99.4%)であるので、ほぼ、全体に準じた結果となった。この中で、異常値ともいえる結果となったのは、たばこであり、たばこ35.68円(267.1%)である。昨年はたばこの値上げあったため、その反動であるといえるが、それにしても凄まじい伸びである。

   そこで、まずは、たばこについて、その動向を見てみたい。家計調査データは10,000分比という数字が公表されており、これを活用すると、消費額を消費世帯のみの消費額と消費世帯の割合に分けることができる。これを用いることにより、たばこの267.1%の伸びが、たばこの消費世帯の数字が上がったのか、それとも、消費世帯の割合が増加したのかがわかる。その結果を見てみると、消費世帯の数字は260.61円(149.9%)、消費世帯の割合は13.7%(178.3%)であるので、双方が上昇しているが、消費世帯の割合の方が増加率が高く、かなりの割合で消費世帯が戻ったといえよう。

   さらに、9月度を見てみると、たばこ35.87円(47.6%)、消費世帯の消費額270.49円(60.3%)、消費世帯の割合13.3%(79.0%)であるので、昨年のたばこ値上げ前の駆け込み需要が異常値をたたき出しているといえ、この10月度と全体は変わらぬ数字である。それにしても、9月度と10月度のたばこの消費額がほぼ同じ数字であり、値上げにより、たばこの消費額が下がってはいないようである。参考に、一昨年の10月度の数字であるが、全体の消費額31.65円(92.8%)、消費世帯の消費額198.03円(92.3%)、消費世帯の割合16.0%(100.5%であるので、むしろ、増えているといえる。ただし、消費世帯の割合は16.0%から13.7%へと減少し、消費世帯の消費額が198.03円から260.61円へと増加しているので、喫煙人口は減少、その減少した喫煙者が値上げ分をほぼ吸収した結果といえよう。その意味では、今回の値上げは、バランスを加味した絶妙な値上げ率といえよう。

   さて、このような中で、消費を伸ばした部門は、唯一、住居707.23円(137.0%)のみといえ、この部門が大きく消費を伸ばしている。その中身であるが、地代9.61円(136.1%)、他の家賃地代4.23円(144.0%)が大きく伸びているのに加え、設備修繕・維持が357.13円(188.5%)と、さらに大きく伸びている。その中でも、設備器具151.19円(281.7%)、給排水関係工事費37.00円(207.0%)、外壁・塀等工事費60.68円(355.6%)、植木・庭手入れ代17.74円(159.4%)が異常値であり、ここへ来て、3/11の東日本大震災の影響も一段落し、住居関連の修繕に消費を費やしたのではないかと思われる。

   では、食品はどうかであるが、先のブログでも取り上げたが、消費者物価指数がデフレ傾向を示している中、それぞれの部門を見てみると、穀類253.52円(106.2%)、魚介類200.71円(97.8%)、肉類207.90円(100.3%)、乳卵類108.26円(99.1%)、野菜・海藻280.81円(96.9%)、果物96.29円(97.9%)、油脂・調味料107.23円(98.7%)、菓子類188.23円(97.7%)、主食的調理食品117.87円(104.0%)、飲料126.61円(103.6%)、酒類101.13円(93.2%)という結果である。大きく伸びた部門はないが、穀類、主食的調理食品、飲料が堅調な数字であり、魚介類、野菜・海藻、果物、油脂・調味料、菓子類がやや厳しい結果といえよう。

   そこで、堅調な部門の項目を見てみると、穀類では、米122.74円(115.1%)が伸びており、その中身は、消費世帯の消費額228.57円(115.2%)、消費世帯の割合53.7%(99.9%)であり、消費世帯の消費額が増加しており、価格の上昇が見られるのではないかと思われる。主食的調理品、すなわち、惣菜では、弁当39.45円(108.2%)、サラダ8.81円(107.1%)が、飲料ではミネラルウォーター8.71円(127.4%)、緑茶11.26円(120.8%)が異常値であり、全体的に好調である。

   一方、消費が厳しい部門であるが、魚介類では、貝類が8.52円(78.1%)と大きく落ち込んでいる。特に、かき(貝)1.77円(58.5%)、ほたて貝 2.52円(76.5%)が激減しており、東日本大震災の影響がここへ来て出ているのはないかと思われる。野菜・海藻では、生鮮野菜185.52円(96.4%)、乾物・海藻21.81円(97.5%)、大豆加工品35.48円(97.7%)、他の野菜・海藻加工品37.97円(98.5%)と、全体的に低迷気味である。果物では、ぶどう8.90円(87.3%)、オレンジ0.61円(95.0%)、バナナ11.45円(96.7%)等が下がっている。油脂・調味料では調味料97.03円(98.2%)の方が下がっており、特に、ケチャップ1.55円(92.3%)、マヨネーズ・マヨネーズ風調味料3.19円(92.5%)、酢3.19円(93.4%)、食塩1.29円(95.2%)等が下がっている。そして、菓子類であるが、ゼリー3.13円(91.5%)、カステラ1.87円(92.1%)、スナック菓子10.32円(95.0%)等が下がっている。

   このように、2011年10月度の家計調査データは、たばこが、昨年の値上げ後の反動があり、異常値となり、大きく消費を伸ばしている。ただ、その中身は消費世帯は減少したが、ほぼ値上げ分で消費額を相殺しており、たばこ全体の数字は、もう少し様子を見る必要があるが、大きな変動がないようである。また、消費者物価がデフレ基調を示す中、全体の消費では、修繕等の住居関連の消費が伸びているのが特徴である。東日本大震災の影響が落ち着き、修繕に目が向き始めたといえよう。そして、食品は大きな変動はないが、やや気になるのは生鮮食品、鮮魚、青果の落ち込みである。特に、鮮魚は東北地方が三陸をはじめ一大産地でもあり、気になるところである。いよいよ、今年も年末となるが、この状況を踏まえ、厳しい年末年始が予想されるが、その動向に注目である。

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December 01, 2011

食品スーパー、中間決算、CFから今後の戦略を読む!

   食品スーパーマーケット業界の中間決算が出揃い、各社の経営の現状が明らかになったが、全体的に増収、大幅増益の決算が多く、成長性よりも、利益を重視した決算が特徴といえる。そこで、増益となったキャッシュをもとに、今後、各社、どのような経営戦略を打ち出そうとしているのかを、主要食品スーパーマーケット、一部、ホームセンターを含め15社の決算結果、特に、CF、キャッシュフローから探ってみたい。

   通常、財務3表、P/L(損益計算書)、B/S(貸借対照表)、CF(キャッシュフロー計算書)の中で、注目されるのはP/Lであり、決算発表の中でも、まずは、増収増益であるか否かが、最大の関心事となる。ついで、B/Sであり、ここでは、自己資本比率、特に、負債の中身、有利子負債の比率などがポイントとなる。残念ながら、CFは財務3表のひとつではあるが、あまり関心が示されないのが実態である。その最大の要因は、CFから何を読み取るかが明確でない点にあるといえよう。

   そこで、食品スーパーマーケットにとってのCFの意義であるが、その最大のポイントは食品スーパーマーケットの経営戦略の根幹ともいうべき、成長戦略の有無を読み取れることにあるといえる。CFは大きく3つ、営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、そして、財務活動によるキャッシュフローに分かれるが、この内、通常、キャッシュがプラスとなるのは営業活動によるキャッシュフローであり、マイナスとなるのが投資活動によるキャッシュフローと財務活動によるキャッシュフローである。したがって、CFはプラスとなったキャッシュを、どう投資と財務に配分するかであり、この配分の度合いを見ることによって、経営者がどちらを重視しているか、すなわち、経営戦略を推し量ることができる。

   特に、食品スーパーマーケットの場合は、投資キャッシュフローの大半は新規出店への投資であり、財務キャッシュフローの大半は有利子負債の返済である。したがって、投資=成長性=攻め、財務=安定性=守り、といっても良く、CFを見ることによって、どちらを重視した経営戦略を打ち出そうとしているかがわかる。

   では、実際の15社の食品スーパーマーケットの直近の中間決算を見てみると、まずは、総合計のCFであるが、営業活動によるキャッシュフローは944.61億円(昨対179.78%)であり、大半の食品スーパーマーケットが営業増益を示したように、大幅なキャッシュの増加となっている。したがって、この中間決算では昨年と比べ、各社、豊富なキャッシュを抱えたといえ、これをどのように配分したかが、まさに、各社の経営戦略を表しているといえよう。そこで、次に、成長性、すなわち、投資活動によるキャッシュフローを見てみると、-346.25億円(昨対77.03%)であり、減少、さらに、営業活動によるキャッシュフロー当たりの比率を見ると、36.66%であり、明らかに、成長を抑制していることがわかる。これは、東日本大震災の影響が大きかったものと思われる。

   そして、安定性、すなわち、財務活動によるキャッシュフローであるが、-441.38億円(昨対194.53%)であり、営業活動によるキャッシュフローの46.73%である。昨年の約2倍、しかも、営業活動によるキャッシュフローの約半分を配分しており、明らかに、守りの経営戦略を重視しているといえる。そして、トータルであるが156.98億円(昨年は-150.98億円)と、昨年が内部留保を取り崩しているのに対し、今年は、キャッシュを留保しており、全体として、慎重なキャッシュの配分であることがわかる。

   以上が、CFの全体像であるが、15社の中には、敢えて攻めに転じた食品スーパーマーケットもある。投資活動によるキャッシュフローが営業活動によるキャッシュフローの50%を超えた食品スーパーマーケットを見ると、平和堂76.1%、バロー72.7%、マルエツ67.6%、ベルク61.8%、マックスバリュ東海54.4%、ハローズ54.0%の6社であり、このような状況の中、積極的な経営戦略を打ち出しているといえる。一方、財務活動によるキャッシュフローの配分が50%を超えた食品スーパーマーケットであるが、イズミ84.5%、アークランドサカモト81.9%、イズミヤ80.6%、PLANT 78.2%、アークス58.8%、ハローズ53.5%の6社であり、守りを重視しているといえる。ただ、ハローズは内部留保を取り崩し、双方を重視したキャッシュの配分をしており、この中間決算では珍しいバランス型の経営戦略といえる。

   このように、食品スーパーマーケットにおけるCF、キャッシュフローは、経営戦略をダイレクトに推し量ることができる財務諸表であるといえ、特に、食品スーパーマーケットにとっての最大の経営戦略、成長戦略が投資活動によるキャッシュフローを見ることによって判断できる。実際、この中間決算を見る限り、現時点では、大半の食品スーパーマーケットが攻めよりも、守りを重視し、新規出店を抑制し、財務の改善をはかる一方、内部留保をも充実させる経営戦略、すなわち、守りを固めているといえよう。ただ、このような中で、敢えて、攻めに転じる、いわば逆張りの経営を推し進める食品スーパーマーケットもあり、その動向に注目といえよう。

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